(亀山薫)
特命係第三の男と呼ばれたあいつを覚えているだろうか
(陣川公平)陣川です。
本日付けで特命係に配属されました。
よろしくお願いします!あっ…すいません。
張り込みか…。
捜査好きのくせに早とちり
おまけに思い込みの激しいその男は…
面目ない。
俺たち特命係にとって迷惑以外の何ものでもなかったのだが…
(電話)はいよ!はいはい。
(電話)はい特命係。
はあ。
陣川公平ですか?ええ知ってますけど。
また何かやらかしたんですか?わかりました!すぐそちらへ向かいます。
(杉下右京)陣川警部補がどうかされましたか?身柄を拘束されたそうです。
殺人容疑で。
おやおや。
(米沢守)免許証を所持していたので身元はすぐにわかりました。
(伊丹憲一)瀬口信大42歳か。
(三浦信輔)死因は?
(米沢)頭部骨折による脳挫傷。
恐らく一番上の段から一気にここまで転がり落ちたと思われます。
(伊丹)突き落とされたとするなら殺しだな。
(芹沢慶二)先輩!先輩先輩先輩!何だよ静かにしろ!あすいません。
重要参考人が出たそうです。
何?このマンションの郵便受けで被害者ともめてた男です。
今青山署で取り調べ受けてます。
(伊丹)何者だ?それが…うちの1係の経理マンだって。
(ノック)どうぞ。
(陣川)杉下さん亀山さん!警視庁特命係の杉下と申します。
亀山です。
少々よろしいですか?どうぞ。
何ですかこの格好は?いやぁ今日はたまたま非番で。
それで警察手帳も携帯してなくて。
ご迷惑をおかけしました。
何があったのか話していただけますね。
あの男が死んだのは僕のせいなんです。
陣川さんが突き落としたって事ですか!?違いますよ!自分はそんな事していません。
君が亡くなった瀬口さんともみあっていたという情報がありますがそれは本当ですか?確かにもみあったのは事実ですけど…。
待てっ!アイッタ…。
(陣川)慌てて追いかけてあの階段まで来た時には…。
えーっ!?君と瀬口さんはどのような関係だったのでしょう?いやそれは…。
いつものあれなんじゃないすか?指名手配犯だと勘違いして逮捕しようと思って張り込んでた。
そうでしょ?違います!今度に限ってはれっきとした人助けなんです。
人助けって誰を?陣川さん…今の立場わかってます?殺人の重要参考人なんですよ?だとしても言えないものは言えません。
はい失礼。
コラァ特命係の亀山!ん?ん?陣川警部補の身柄は警視庁に移送します。
取り調べも自分たちのほうで。
仕方ありませんね。
仕方ありませんね。
行きましょうか。
はい。
瀬口さんはお1人でお住まいだったのですか?ええ何でもだいぶ前に離婚したとか。
ここです。
勤め先は大東京印刷。
校正課。
羽振りがよかったようですねぇ。
かなり高いんですよこのお酒。
高そうっすね。
右京さん。
これ。
億ションですよ。
買う予定でもあったんですかね?おや。
こちらもすごいですよ。
えっ8000万!?この部屋には不釣合いな額ですねぇ。
毎回現金で入金されています。
出所をたどるのは難しそうですね。
うわ…。
相変わらずのようですねぇ。
ええ。
でも陣川さん一体何しようとしてたんでしょうね。
彼は確かに短絡的かつ粗こつなところはありますが嘘をつける人間ではありません。
人助けというからには本気で誰かを助けようと思っていたに違いありません。
ですね。
『投資FACTORY』…。
ん?何かありました?ええ。
警察関係の本の中に1冊だけこんなものが。
株の本ですか?そのようですね。
ファンドマネージャー?なるほど。
陣川君の忘れてはならない重要な特性がもう1つ。
美人に翻弄されやすいという事でしょうか。
…はい。
はいかしこまりました。
警察の者ですけど紫藤社長いらっしゃいますでしょうか?
(和代)はい。
(紫藤咲江)どうしてこの動きが読めなかったの?あなたたち何年この仕事してるの!
(武川)ですが昨日までの動向で大崎ケミカルがこんなに急騰するなんて想定外すぎます!言い訳はいいわ。
とにかく一時的なものかどうか分析急いで。
押目の気配があったらそこで買い。
絶対に見逃さないで。
社長お客様です。
(咲江)3時まで待ってもらって。
(和代)警察の方だそうですが。
場が閉まるまでここを離れられるわけないでしょ!そんな事もわからないの?
(和代)申し訳ありません…。
かまいません俺たちは。
3時まで待ちますから。
今118円55テイクンです。
右京さんあのファンドマネージャーって何なんすか?投資家から預かった資産で株を売買して利益を上げそれを投資家に還元するのが主な仕事ですねぇ。
要するに株のプロですか?こちらの会社の場合一任勘定つまり運用する側が自由に銘柄を選んで売買できる契約のようですね。
まあそれだけ彼女のファンドマネージャーとしての手腕が投資家に信頼されているという事でしょうか。
何でも知ってますね。
先ほどの雑誌の受け売りですが。
(チャイム)お見苦しいところをお見せしてしまって恥ずかしいですわ。
いえいえ。
でも真剣勝負ですからつい。
失礼します。
お客様からお預かりしてる大切な資金を動かすわけですからこちらも命がけでなくては務まりません。
株の売買をするというのは細かな変化を見逃さない洞察力と素早い判断力が必要なのでしょうねぇ。
ええ。
でも相場は生き物ですから何年やっても完璧というわけには。
さっきもある銘柄が急騰したのを予測できなくて利益をフイにしてしまいました。
ちなみにおいくらぐらいフイにされちゃったんすか?たいした事ありません3億円くらいでしょうか。
明日には必ず取り返します。
明日って…えっ!今日はもう終わりなんですか?すいませんね。
あまり縁のない世界なもので。
あ…いえ。
東京証券取引所の立会い時間は午前9時から11時までの前場と昼休憩を挟んで12時半から3時までの後場に限られています。
ですから株の売買ができるのは基本的に3時までなんです。
4時間半の真剣勝負ってわけですか。
ええ…。
あの…何かお話があったんでは?あぁすいませんすいません。
あのこの男性に見覚えありませんか?いいえ。
この人が何か?お住まいは乃木坂のマンションですね?ええ。
どうしてご存じなんですか?先ほどこちらの瀬口信大さんがそのマンションの階段で転落死されました。
その事件の重要参考人として陣川公平という男が身柄を確保されました。
えっ!?ご存じなんですか?陣川君。
調べればわかる事ですからお話しします。
陣川さんと会ったのはつい1週間前の事でした。
深夜遅く帰宅しようとした時…。
(足音)ああっ!
(陣川)大丈夫ですか?誰か!誰か助けて!何してんだ!この痴漢野郎!
(陣川)痴漢じゃないですよ!その方が倒れたから…。
警察ですよ警察!イテテテ!
(咲江)陣川さんは最近多発していた痴漢事件の犯人を捕まえようとして夜な夜な警戒して回っていたそうです。
彼のやりそうな事ではありますねぇ。
間違って捕まっちゃうのもいかにも。
失礼。
でそのような経緯で陣川君と知り合いになられたあなたは彼にストーカー被害の相談を持ちかけた。
陣川さんからお聞きになったんですか?いえ彼は何も。
ですが想像に難くはありません。
あの…陣川さんは今どちらに?身柄は青山署から警視庁に移されました。
取り調べを受けてる真っ最中だと思います。
陣川さんにはご迷惑をおかけしてしまって…。
いい加減何か話してくださいよ。
やってないならやってないでいいんですよ。
どちらかというとそっちのほうが我々だって大助かりなんですから。
私だって身内に手錠をかけるような真似はしたくないんですよ。
多少の不都合は目をつぶって調書では都合よくまとめてあげますから。
それはよくありませんね。
何ですって?身内を庇ったりしたら警察に対する世間の信頼が失われてしまうじゃないですか。
クッ!先輩先輩…。
おい!誰のせいでこんな事になってると思ってんだ!!何で僕に当たるんすか。
あれ…。
おう亀!おめえこちらの元特命係の陣川某様を何とかしろ!「何とかしてください」でしょ?彼に手を焼いているのならここは我々に任せていただけませんか?まこっちもやりたくてやってるわけじゃないんで。
紫藤咲江さんに会ってきました。
え?痴漢の件もストーカーの話も聞きましたよ。
痴漢!?ストーカー!?いえ…。
陣川君そろそろ本当の事をお話しになったほうがよろしいと思いますよ。
はい。
先週の事です。
痴漢と勘違いしたお詫びがしたいと紫藤さんに食事に誘われてでその時ストーカーに悩んでいるという話を聞きました。
その際彼女はストーカー被害に遭っている事を口外しないように念を押されたんですね?彼女言ってました?いいえ彼女は何も。
ですが想像に難くはありません。
で?紫藤さんはマスコミへの露出も多いですし投資家に知られると信用問題になりかねないと言われて…。
だからって黙秘するかよ。
そして君は彼女のマンションで変装をしてストーカーを待ち伏せしていたわけですね。
はい。
郵便受けにいたずらをする現場を押さえて二度としないように説得をするつもりでした。
(陣川)何してるんだ!警察だ。
あれっ?待てっ!
(陣川)おとなしくしろ!待てっ!アイッタ…。
待てー!えっ?えーっ!?
(陣川)おい大丈夫か!
(陣川)おい!おいしっかりしろ!おい!
(警官)何やってんだ!おいどうした?
(伊丹)階段を踏み外して落ちて死んだと。
(芹沢)まるっきり事故じゃないすか!最初から全部話してればこんな面倒な事にはならずに済んだんじゃないんですか?だけど紫藤さんやストーカーの事を話さないようにしたら結局は何も言えなくなってしまって…。
ううん!えー刑事部長に報告してくる。
(伊丹)あ調書はお前がまとめとけ。
(芹沢)いやいやちょっと待ってくださいよ!これで一件落着。
ですね?
(中園照生)事故という事で記者クラブのほうは文書発表で処理しておきました。
最悪の事態は回避できたようです。
(内村完爾)気に食わん。
何でまた特命係が出張ってきたんだ?あ…ですが今回に限っては杉下たちのおかげで…。
バカ者!元はと言えば陣川だって特命係だ。
はあ…ごく短い期間在籍して。
感染したんだ。
…は?特命係の悪〜い何かが陣川に取りついた。
そのせいに決まっとる。
(亀山美和子)その陣川っていう人面白そうじゃない。
(美和子)何か会ってみたいかも。
やめといたほうがいいって。
こっちだってこれっきりにしてほしいんだから。
(宮部たまき)どうかされましたか?はい?
(美和子)右京さん何か引っかかってます?腑に落ちない事が少々。
え何すか?いくら陣川君といえども毎日仕事を休むわけにはいきません。
たまたま非番で張り込みをしたその日にストーカーの瀬口さんと遭遇したというのがいささか出来すぎている気がしましてね。
っていうかそうなっちゃうのが陣川さんなんすけどね。
もう1つ。
はい。
昼間会った印象では紫藤咲江という女性はかなり頭の切れる人間です。
まあ社長をやってるぐらいですからね。
彼女ならばストーカーの撃退方法はいくらでも見つかると思うのですがなぜ陣川君という銘柄を選んだのでしょうねぇ。
警察だからでしょうか?まあ…言われてみれば。
ねえねえ紫藤咲江って紫藤コンサルティングの?何だお前知ってんのか?いやライター仲間で株や投資に詳しい人からよく聞かされてたのよ。
働く女性の憧れの的なんだって。
へえ〜そうなんですか。
でもファンドマネージャーとかいうとMBAなんか取ったエリートで指一本で何千万も動かすみたいなバブルっぽい印象があるじゃないですか。
正直そう思ってましたけど。
でも紫藤咲江は短大を出て証券会社の事務職のOLをしてたんだけどどうしてもファンドマネージャーになりたくて必死で勉強してそれでようやくなれたと思った矢先に会社が自主廃業しちゃったの。
あ〜何かあったなそういうのな。
で再就職もうまくいかなくて仕方なくデイトレードで資金を貯めて今の会社をゼロから立ち上げて女1人でコツコツ頑張ってあそこまでのし上がったわけ。
なるほど案外苦労人てわけか。
(美和子)不況で株価が伸び悩んだ時も大手の投資ファンドとかがまるで注目してない銘柄に逆張りしてそれがすっごい値上がりしてそれで一躍注目されたんだって。
(角田六郎)暇か?あ角田課長おはようございます。
(陣川)何で帰るんですか?いやぁお前さんとかかわると何か面倒に巻き込まれそうでな…。
(陣川)あおはようございます。
おはようございます。
陣川さん何やってんですか?自分にできる事があったら何でも言ってください。
お2人のお役に立つのが一番のお礼だと思いまして。
帰ってもらうのが一番役に立つんですよ。
あのー未解決の難事件とか何でもお手伝いしますんで。
お願いしますからね1係に帰って電卓叩いててくださいよ。
そんな事おっしゃらずに。
亀山君いいじゃありませんか。
せっかくです。
紅茶でもいかがですか?はい。
え?紫藤咲江さんからストーカーの相談を受けた時の話ですか?ええ。
あ…。
どうぞ。
ではひと口だけ。
最初は…。
ええ最初は?いたずら電話についての相談でした。
これが部屋の通話記録です。
(陣川)色の付いてるのがいたずら電話なんですね。
ええ。
大抵は夜更けです。
1時とか遅い時には3時すぎの時とかもあります。
内容はどんな?何も言わないんです。
それがかえって不気味で。
では失礼します。
(陣川)うわ!うわ…何だこれ!?
(咲江)うわ大変!すぐに手を洗わないと!いや大丈夫です。
こちらですどうぞ。
(陣川)いやあのホントに大丈夫ですから。
いえ部屋で洗ってください。
どうぞ。
えっ!?それでお前部屋まで行っちまったのか?そりゃまずいだろう!もちろん職務としてですよ。
誤解しないでください。
わかってますわかってますよ。
課長!続けて。
で家の中に入ってからなんですが…。
すいませんありがとうございました。
あの人です。
(咲江)ずっとこの部屋のほうを見張ってたみたいで私と目が合ったら逃げ出して…。
自分が捕まえてきます!待って。
危ない事をしないでください。
(電話)僕が出ます。
(電話)誰なんだあんた?おいいい加減にしろ!
(電話の切れる音)
(角田)そうか…。
そりゃストーカーに間違いないな。
そいつが死んだ瀬口だったってわけか。
これが被害者の所持品です。
拝見します。
はい。
そうですか…第三の男のご帰還ですか。
今後ともいろいろお世話になります。
いやいやお世話しなくていいですよ。
亀山君。
はい。
「×××」…。
あまたあった。
伏せ字ですかね?そのようですねぇ。
(陣川)それ紫藤さんの自宅の番号ですよ。
えっ?なるほど。
ストーカーの相手だから名前を入れるのを憚られたんでしょうかねぇ。
かけた時間も全部夜中ですもんね。
間違いありません。
瀬口信大はやはりストーカーだったんです。
そのようですねぇ。
バチが当たったんだあいつは。
いやぁよかったですね陣川さん。
これですっきりして経理のお仕事に気持ち良〜く戻れますね。
ですが自分は…。
いやいやいやこれ以上サボってるとね俺たちが1係の係長さんに怒られちゃうんですよお願いしますよ。
わかりました。
ではこちらで失礼します。
失礼します。
はいどうもご苦労様でした。
どうも。
どうも。
どして?ここから先は彼には聞かせたくない話になるでしょうからねぇ。
え?瀬口さんの死体検案書によると右足関節つまり足首に水平に幅5ミリのうっ血があります。
というと?
(米沢)こんな感じです。
はあ。
は?被害者の瀬口さんはこの辺りで陣川君ともみ合いになり走って逃げました。
あちょっ…。
ええこちらのほうへ。
ですがこっちのほうが表通りには近いですよねぇ。
どうして瀬口さんはわざわざ階段のほうへ向かったのでしょう?あっ!調書にありましたよ。
瀬口は自分の車を階段の下に止めてたそうです。
車で逃げようと考えれば当然こっちを選ぶんじゃないすかね?あっ…。
瀬口さんはここから転落した。
はい。
何すか?わずかですがここにこすったような跡がありますね。
あぁホントだ。
瀬口さんの足首には線状のうっ血。
もし何者かがここにロープを掛けて…。
反対側まで引っ張っておいたとするとどうなるでしょうね?走ってくれば当然足をとられて…。
殺人の可能性が出てきましたね。
(複数のテレビ音声)どうぞ。
失礼します。
株式市場が閉じているお昼休みでもお仕事をなさってるんですねぇ。
ごめんなさい。
この時間は投資家さんへのリポートや後場に向けての情報収集に当ててるんです。
出直してきましょうか?いえ少しなら大丈夫です。
これいつも流しっ放しなんですか?
(咲江)ええ。
株価に影響するニュースがいつ流れるかわかりませんから。
ちょっとうるさくても勘弁してくださいね。
それはいいんですけど同時に流れてて内容とかわかるんですか?慣れです。
こうしてお2人と話していても必要なニュースは決して見逃しません。
さすがですねぇ。
大きなニュースは放っておいても目に入りますが本当に価値のある情報は普通の人が何気なく見過ごしてしまうようなところに隠れてるんです。
例えば?ある企業の創業者のご葬儀の時にまったく取引のない業種も違う企業の社長さんが弔問されてるのをたまたまお見かけしました。
もちろん同窓でもなく出身地が同じでないという事は調べてすぐにわかりました。
結果数日後2つの企業は業務提携を発表した。
ほぉ…で株が上がったわけですか?その時はかなりの利益を出しました。
一見何の関係もなさそうなものが実は繋がっている。
興味深いですねぇ。
例えば何の接点もなさそうな瀬口さんがあなたのストーカーになったように。
は?瀬口さんがどうしてあなたに付きまとうようになったのかそのきっかけとか何かお心当たりはありませんか?雑誌かテレビにでも出てるの見たんじゃないですか?いやしかしそれだけではあなたのお住まいになってるマンションの場所やまして電話番号まで突き止めるのは難しいとは思いませんか?何がお聞きになりたいんですか?はっきりおっしゃってください。
ではお言葉に甘えて。
昨日のこの時間どちらにいらっしゃいました?この部屋にいました。
今日と同じようにリポートを書いたり情報をチェックしたり。
お1人で?ええ。
この部屋にはスタッフは入ってきませんし集中したいので電話も取り次がないように言ってありますから。
スタッフはみんな昼休みは基本的に外食ですから社長がどうされていたかはちょっと。
あでも受け付けにいたあなた方なら社長が出かけたかどうかってのはわかりますよね?いえそれが社長の部屋から裏口を通って直接エレベーターホールや階段にも出られますから。
という事はそれを使えばどなたの目にも触れずに外出が可能なわけですね?はい。
なるほど。
ありがとうございました。
瀬口さんはどんな仕事をされてたんでしょうか?うちが請け負ってる印刷物に誤植や表記漏れがないかをチェックするのが主な仕事でしたね。
という事は瀬口さんはこちらで印刷されている印刷物のすべてに目を通されていたわけですね。
ええ彼は主任でしたので。
仕事以外の生活態度はいかがでした?酒は好きでしたね。
ギャンブルとかはやっているような様子はなかったですけど。
株などはいかがでしょう?株ですか。
うちはダメなんですよ。
ダメとおっしゃいますと?うちは上場企業が株主総会の前に株主に送る資料や決算発表に財務諸表などの印刷も請け負っている関係で社員の株取引は禁止されているんです。
なるほど。
インサイダー取引を防ぐためですね。
(美和子)これが紫藤コンサルティングが主に売買しているセクターのリストです。
拝見します。
セクターって何だよ?株の銘柄をその企業の業種ごとに分けたもの。
ファンドマネージャーっていってもすべての銘柄を幅広く買うんじゃなくてその人ごとに得意な業種とかあるわけ。
紫藤社長が主に取り扱っているのは建設化学繊維などの分野のようですねぇ。
最初に会った時に株が急騰した大崎ケミカルも化学のセクターに入るわけですか。
へえ…建設化学繊維。
こちらが大東京印刷に印刷を依頼している企業のリストです。
え〜「タカミ開発ミナモト繊維」。
(美和子)こっちも建設や化学や繊維関係の会社ばかりですね。
どうやら繋がったようですね。
え?美和子さんお願いついでにもう1つ頼みを聞いていただけませんか?
(美和子)はい。
よし!陣川さん何やってんすか?いやあのお2人がまだ何か調べているようなので気になりまして…。
気になっているという事は君にも何か心当たりがあるのではありませんか?ななな…何ですか?心当たりって。
紫藤咲江さんが瀬口さんを事故に見せかけて殺すために自分を利用したのではないか。
君は心のどこかでそう思っているのではありませんか?どうして紫藤さんがストーカーを殺す必要があるんです?瀬口さんはストーカーではありませんよ。
はい?瀬口さんの携帯電話の発信履歴はいずれも深夜でした。
それは紫藤咲江さんの証言とも一致します。
ええ。
だったら…。
ストーカーの無言電話ならば何度も何度もかけそうなはずですよねぇ。
それが一晩に一度だけというのは妙じゃありませんか?妙ですね。
ならばこうは考えられませんか?彼女は仕事柄深夜に帰宅する事が多い。
自宅の電話で連絡を取ろうと思えば深夜にかけるのは当然ですし一度かけて用件を済ませばそれ以上かける必要がない。
つまり一見瀬口さんがストーカーである事を示していた証拠も見方を変えれば2人が知り合いである可能性に変わるんです。
そんな!だって現に郵便受けには…。
すべては…自作自演が可能です。
本人ならば君を連れてくる前にあらかじめ細工をしておく事は容易でしょう。
あの人です!窓から見えた人影も急ぎ足で歩いている人物を見つけてその背中を指せばいいだけの話です。
あの電話が瀬口さんからだったとしてもいきなり見ず知らずの男が出れば無言で切るのは当然でしょう。
瀬口はね上場企業の株価の変化に直結する情報を手に入れられる仕事をしてたんですよ。
しかも銀行口座には出所不明の高額の入金がありました。
瀬口さんと紫藤社長はストーカーとその被害者ではなくインサイダー情報を売る人間と買う側の人間だった。
そう考えればすべてが繋がりませんか?だけどそれなら余計に殺す必要なんかないでしょう?ここ半年ほど前から瀬口さんの口座に入金される金額が桁違いに増えています。
情報の取引が恐喝に変わったと考えれば十分殺人の動機にはなりえます。
彼女はそんな事をする人じゃありません!こんな朝早くから何の用でしょう?1つご報告があります。
瀬口さんの死亡に関して警視庁は事故だと正式に発表しました。
そうですか。
あれ?ホッとされないんですか?ホッとするも何も私はその人とは無関係です。
いいえそうではなく陣川君の無実が証明されたんですよ?妙ですねぇ。
最初にお会いした時も昨日もあなたはまるで陣川君の事を気にされていない。
そんな…。
私は彼にはとても迷惑をかけたって。
いいえ僕が妙だと言ったのは陣川君が瀬口さんを誤って殺してしまったかもしれないという可能性をあなたがまるで考えようともしなかった点です。
陣川さんには被害者を突き落とす理由もメリットもありません。
私は最初から事故だと信じていただけですから。
ああ!ひょっとして陣川君は突き落としていないという確証があったんじゃありませんか?例えば瀬口さんが転落するようにあらかじめ細工がされていたとか。
何を言いたいのかまるでわかりません。
誤解しないでください。
我々はただ瀬口さんの周辺を調べるうちにまことに興味深い情報を手に入れたものですからそれをお伝えしようと思って伺っただけなんです。
あっ!でももう8時半ですよ?市場が開く9時までには出社しないとまずいんでしたよね。
どうぞ。
いえまだ少しなら大丈夫です。
タクシーを飛ばせば10分で着けますから。
という事は昼休みの間に会社を抜け出してここまで往復する事も可能なわけですね?2人ともやめてください!何しに来たんです!紫藤さんこの人たちはあなたが瀬口を殺したと誤解してるんです。
おやおや。
どうして私がそんな事を?瀬口って男はあなたに不正なインサイダー情報を流した揚げ句恐喝までしたせいで殺されたって。
陣川!あんたいい加減にしろよもう!そんなふうに思ってたんですか。
本来ならば動機は追及の切り札にするつもりでしたが仕方ありませんねぇ。
亀山君。
杉下さんあれから考えたんですけど瀬口はやっぱりストーカーだったんです。
間違いないですよ。
はい?だって僕が見た時あいつは確かに郵便受けに手を突っ込んでいたずらをしていました!瀬口さんの受け取った報酬は銀行などの口座を経由していません。
現金を手渡すにしても人目を気にしなければならない。
何しろ彼女は有名人ですからね。
だとすれば…こんな方法はどうでしょう。
あなたは現金をコインロッカーに預ける。
そしてその鍵をマンションの郵便受けの内側に貼り付け瀬口さんに取りに来るように連絡をする。
鍵1つならば差込口から手を入れて取り出す事も簡単でしょう。
そしてあの日も瀬口さんはコインロッカーの鍵を取りにここに姿を見せた。
(陣川)何してるんだ!インサイダー情報の横流しに加え恐喝まで行っていた瀬口さんです。
相手が何者であれ当然必死になる…。
逃げ出してきた瀬口さんをあなたは階段で待ち伏せしていた…。
(瀬口信大)あっあっああっ!ああっ!そしてあなたはロープを素早く回収する。
えっ…?えーっ!?いかがでしょう。
ちょっと待ってください。
あの男がこの階段を使うかどうかなんて誰にもわかるわけないじゃないですか。
あなたがあらかじめ瀬口さんにこの階段を使うように指示しておけば済む事じゃありませんか。
実際瀬口の車はこの階段の下に止まってましたからね。
残念ですけど刑事さんは肝心な事忘れてますわ。
はい?おとといの昼私はずっとオフィスにいました。
皆さんに伺ったのですがどなたもそれを証明できませんでした。
オフィスを抜け出したという事も証明できないんじゃありません?手順を誤ったみたいですね。
株だって売買の手順を1つ間違えれば大儲けが大損になるの。
あなたがどうしても私を犯人にしたいのならもっと緻密な手順が必要だったはずですわ。
(咲江)失礼。
ミナモト繊維4600円で7万株売りね。
社長ミナモト繊維の売りの指示ならもう出てますけど。
あ…そうだったわね。
ごめんなさい。
(複数のテレビ音声)
(携帯電話)もしもし。
え…?わかりました。
(テレビ音声)今日は急にすいません。
大事な話って何かしら?はい。
杉下警部は変わり者ですけど刑事としては優秀です。
この先どんな証拠を見つけるかもわかりません。
そうなれば本当に犯人にされてしまうかもしれません。
そんな事…。
その前に手を打つ必要があると思うんです。
実は警視庁内でも特命係は刑事部長ににらまれてまして。
ですから紫藤さんのほうから正式に抗議すれば捜査をやめさせる事もできるんじゃないかって。
(テレビ音声)それでですね…。
ごめんなさいもう戻らないと。
(テレビ音声)運転手さん急いで。
(運転手)はいわかりました。
後場は?今開きました。
大崎ケミカル1万2000株買い!はい。
お待ちください。
場が開いたのよ邪魔しないで。
大崎ケミカルは今日は買いではないと思いますよ。
え?つい今しがたあなたがカフェレストランでご覧になったニュース実は一昨日の昼に放送されたものなんです。
何ですって!?彼の奥さんに頼んで集めてもらったニュースの中からようやく見つける事ができました。
ここに会社のロゴマークが見えます。
「大崎ケミカル」。
調べたところこの方は開発部門の責任者でした。
大崎ケミカルは企業規模は小さいですが開発力には定評があり特に高分子接着剤での技術は世界レベルだそうです。
その技術がアメリカの宇宙開発で採用されれば株価は大きく上がる。
株価に関する情報ならどんな些細な事も見逃さないあなただからこそ見つける事ができた。
さすがです。
ですがあなたは一昨日このニュースが流れた時刻にご自分のオフィスにいたとおっしゃいました。
だとするならば当然その時点でこの情報を知っているはずです。
しかしあなたはあの日の午後大崎ケミカルを買うような指示は一切出していない。
そうなんです。
それこそがこのニュースが流れた時刻つまり瀬口さんが殺害された時刻にあなたがオフィスにいなかったという何よりの証拠なんです。
悔しいわ…。
私と同じぐらい目の利く人間が他にもいたのね。
優秀なファンドマネージャーのあなたがどうしてインサイダー情報という禁断の果実に手を出してしまわれたのでしょう?怖かったの。
自分の資産を扱っている時にはまるで感じなかった。
でも顧客の数や運用する金額の桁が100倍1000倍と増えるに従って失敗したらという不安もどんどん膨らんでいった…。
抱えきれないほどに。
そして瀬口さんに声をかけた。
一度だけのつもりだった。
でもあの男はそれを許さなかった。
やっぱり脅迫されてたんですね。
もう1つよろしいですか?このニュースをオフィスにいて見ていた。
見ていたけれども気づかなかった。
そう反論する事もできたはずです。
どうしてそうされなかったのでしょう?最後の意地みたいなものかしら。
だってプロのファンドマネージャーとしてそれだけは絶対に認めるわけにはいかないから。
なるほど。
少しだけいいですか?どうぞ。
あなたを騙すような真似をして何て言うか…。
ごめんなさい。
紫藤さん。
あなたには本当に申し訳ない事をしたと思ってます。
(陣川)うぃ〜!どうです?自分も犯人逮捕に今回はしっかり貢献できたでしょ?ねえ〜そうそうよくやった。
陣川警部補殿!よーし!僕だってね電卓叩きながら日々成長してんですから!捜査対象に惚れちゃうのは変わってないけどね。
亀ちゃん。
亀ちゃん?それ言う?あ聞こえちゃいました?ごめんなさいね。
ごめんなさい。
別に自分はあの人に惚れたりなんかしてないし。
だから傷ついたりもしてないわけで…。
ねえ。
言葉と態度がバラバラだもんね〜。
あれが陣川君なんだ…。
この前お見えになった時もあんな感じでしたよ。
顔はイケてるのに残念なタイプだねぇ。
はい大丈夫?
(陣川)大丈夫…。
(陣川)気持ちいい…。
でもさ紫藤咲江の事そんなに好きだったのによく彼女落とす計画に乗ってくれましたよね。
そっちに話振るなってのお前は。
だって気になるんだもん。
どうしてですか?それは…彼女が犯人だと信じたからです。
おう。
自分も特命係の一員ですから。
ポッ。
(笑い)
(美和子)いいぞ陣川!
(陣川)はい〜OKOK。
杉下警部。
はい。
あんたはよくやる!偉い!
(笑い)どうもありがとう。
2015/09/14(月) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
[新]相棒 season6[再][字]
杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)の名コンビがあらゆる難事件に挑みます!豪華ゲストもお見逃しなく!
詳細情報
◇番組内容
第2話「陣川警部補の災難」
特命係 第三の男 陣川公平(原田龍二)が帰ってくる!?
美人に弱い彼が今度はファンドマネージャ(高橋ひとみ)に翻弄され、とんだ災難に巻き込まれるも右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)が見事解決!?
◇出演者
水谷豊・寺脇康文・鈴木砂羽・高樹沙耶(益戸育江)
原田龍二・高橋ひとみ
川原和久・大谷亮介・山中崇史・山西惇・六角精児
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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