クローズアップ現代「堤防決壊 その時住民は」 2015.09.15


おさいふには愛と夢が詰まってる。
メキシコのおさいふ家族ありがと〜う!グラシアース!
関東、東北地方を襲った記録的な豪雨。
多くの河川で堤防が決壊し今も行方不明者の捜索が続いています。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
国谷キャスターが取材のためきょうとあすは私、高井がお伝えしてまいります。
今回、最も大きな被害が出た茨城県の鬼怒川流域。
線状降水帯と呼ばれる発達した雨雲が居座り続け川の水位を一気に押し上げました。
こうした災害同じような気象条件が重なればいつ、どこで起きてもおかしくありません。
こちら、青い線は河川です。
1級河川に加え毛細血管のようにたくさんの川が日本全体に流れています。
氾濫や堤防の決壊のおそれはどの地域にもあるといえます。
そうした中、求められるのは逃げ場を失う前の避難です。
しかし今回堤防が決壊した茨城県常総市では一部の地区にしか、事前に避難が呼びかけられていなかったことが明らかになりました。
そして、避難が呼びかけられた地区でも、多くの住民が残り濁流の中で命の危険にさらされていました。

今回の災害で、常総市内で救助された人は、これまでに3800人以上に上ります。
これだけの住民が川が氾濫した中取り残されたのです。
常総市では10日の午前6時過ぎ北部の若宮戸地区付近で川の水が堤防を越えました。
それからおよそ7時間後。
三坂町地区で堤防が決壊。
市のおよそ3分の1が浸水しました。
最初に水があふれた若宮戸地区に住む石山洋子さんです。

2階に避難した石山さんは救助が来るまで、およそ7時間自宅に取り残されました。
この地区には未明の午前2時20分から避難指示が出ていました。

石山さんは、朝まで繰り返し防災無線を聞いていましたが避難しませんでした。
鬼怒川よりも市の東側を流れる小貝川の氾濫を心配していたからです。

石山さんのように小貝川を心配する声はインターネット上でも数多く見られました。
34年前に小貝川が氾濫したときの映像です。
石山さんの自宅も浸水の被害を受けました。
一方で、鬼怒川が氾濫した記憶はありませんでした。

どういうふうに避難したか皆さんに聞いて回ってまして。
避難してないです。
2つの川に挟まれた若宮戸地区。
石山さんの近くに住む50世帯に取材したところ避難しなかったと答えたのは20世帯。
どう避難すべきなのか判断できないまま、4割が自宅にとどまっていたのです。
いったん避難したにもかかわらず再び自宅に戻り取り残された人もいます。
中島謙一さんです。
中島さんの自宅は決壊した堤防から1キロ東にあります。
地区に避難勧告が出たことを知った中島さん。
午前7時ごろ車で市の施設に避難しました。

10日の朝常総市の周辺から気象会社に投稿された画像です。
道路が冠水した様子などが数多く寄せられています。
午前10時過ぎ。
近くの町から投稿された写真。
青空が見えたというコメントがあります。
このときの雨雲の様子です。
常総市では雲が途切れ雨が弱まっていました。
自分の地区に追加の避難の情報はなく天気も回復したと判断した中島さんは、午前10時半過ぎ自宅に戻ることにしました。

当時の鬼怒川の水位の増加量を示すデータです。
上流で降った雨で中島さんが避難していた間に水かさは、およそ2メートル上昇していました。
午後0時50分ごろ自宅近くの堤防が決壊。
濁流が押し寄せたのはその僅か4分後と見られています。
水につかった中島さんの自宅。
このまま救助を待つしかありませんでした。

災害時の避難を研究している静岡大学の牛山素行教授は常総市で住民への聞き取り調査を進めています。

牛山さんは、過去の経験や目の前の状況だけにとらわれず多くの情報から判断することが重要だと指摘しています。

現場では今も多くの人たちが行方の分からない家族や知人を捜し続けています。

懸命な捜索活動が続いています。

スタジオには、河川災害に詳しい、関西大学教授、河田惠昭さんです。
よろしくお願いします。
よろしく。
河田さんは、さまざまな災害ご覧になってきました。
今回の災害をどうご覧になってますか?
これはね、いろいろなところで新しいステージに入っていると考えなければいけないということですね。
新しいステージ?
例えばね、雨の降り方っていうのは、これまで経験したことがない雨の降り方をしている。
特に鬼怒川というのは、南北に流れていますから、上流で最初に降らずに、下流側から降ってるんですね。
ですから下流の水面が上がっているので、流れにくくなってるって、こういうことはね、実は想定してないんですね。
それからね、やはり県がね、そういう特別警報が出たときに、栃木県にも出てるわけですよね。
ですから、県レベルで連携、それからね、やはり市町村はね、これだけの大きな被害を受けると、対応できなくなりますからね、それをどう助けるかっていうことは、起こってからでは遅いわけですよね。
ですからもっと早く災害対策本部を開設して、市との連携を進めていただく。
今度は市のほうは、従前のハザードマップどおりに実は浸水が起こっていて、市役所が水没してるんですね。
市役所が機能を失ってしまった、これがやっぱり、大きな課題になってる。
そして、今度は住民が避難指示、避難勧告に従わずに逃げなかったっていう、これですよね。
やはり避難しないと、自分が被災するということは、なかなか理解されていないといいますか。
私も現場に入ったんですが、住民の方にお話を伺うと、長くそこの地域に住んでいるから、先ほどもありましたけど、小貝川、こちらの氾濫のことが気になったですとか、自分の家はこれまで災害に遭ってないから、大丈夫だろうと思った、そういった思い込みのようなものがあるように感じました。
そうですね。
経験をすると、それが非常に強く残りますのでね、34年前の小貝川が氾濫したときの、この川の流域の特性というのは、全く変わってるんですよね。
当時は水田しかなかった所に、住宅が建て込んでいるとか、道路が出来ているとか、昔と違うということで、昔のやり方が間違ってるんではなくて、新しいステージに向かって、変えていかなきゃいけない。
それを理解できないと、犠牲になるっていう時代になってるっていうことですね。
先ほど、自治体の対応の話も出ましたが、具体的には、どうしたらいいんですか?
それは、要するに起こってからの対応っていうのは、ほとんど限られていますから、特に水害の場合は、雨が降り始めてからの余裕の時間、リードタイムというんですが、あるんですよね。
そのときに一体、何をするかということを、事前に関係者が知ってるということは、とても重要なことでね。
起こる前に知っている?
決めておく、情報がなくても、そのとおりにやるっていう、そういう、タイムラインと私たち呼んでるんですけど、そのときそのときの人が判断するんではなくて、こういう状況になったら、こういうふうにするっていうことをあらかじめ決めて、それをみんなが知ってるっていう社会しないと、今回のような被害がまた繰り返すということですね。
そして茨城県常総市だけではなくて、こういった災害は全国どこでも起こりうるということなんでしょうか。
そうですね、たまたま鬼怒川でこういう雨が降ったわけで、ほかの都市でね、これぐらいの規模の雨が降ると、どこの川もあふれるということですよね。
鬼怒川だけで、約6億5000万トンの雨が降ってるんですよね。
これって、浜名湖と同じぐらいの水の量なんですよ。
こんな雨がね、降っちゃうと、どこの川もあふれるって考えなきゃいけないですね。
さて、今回の豪雨なんですが、取材を進めますと、実は別の場所でも、堤防の決壊の危険性が潜んでいたということが明らかになりました。
命を守るためにどうしたらいいのか、こちらをご覧ください。

今回の豪雨で決壊した鬼怒川の堤防です。
実はここ以外にも決壊の危険が迫っていた可能性があることが分かりました。
決壊した堤防の上流にある筑西市。
決壊の5時間前筑西市で撮影された映像です。
堤防の上の亀裂から水が噴き出しています。
同じような現象はほかの場所でも確認されていました。
河川工学が専門の早稲田大学の関根正人教授です。
この現象は、堤防が複数の箇所で崩壊しかねない危険な兆候だったのではないかと見ています。

関根さんは増水した川の水がしみこんで堤防の内部が飽和状態となり水が噴き出したと考えています。
決壊の翌日、関根さんは堤防の状態を確認するため鬼怒川沿いを調査しました。
川の水があふれた常総市の若宮戸地区である異変に気付きました。

水が湧いてるのか。
かもしれない。

堤防の外側に出来た水たまりの中から湧き出し続ける水。
決壊から丸1日たっているにもかかわらず、しみこんだ水が出ていたと見られます。
川の増水が長時間にわたるほど堤防内部の水圧は高まります。
その結果、川の水があふれる前に内部から崩壊しほかの場所でも決壊する可能性があったというのです。

鬼怒川では100年に一度の大雨に耐えられることを目標に堤防などの整備が進められています。
決壊した堤防はまだかさ上げなどが完了していませんでした。
ただ、工事が完了していたとしても、決壊や氾濫は防ぐことができなかったと関根さんは考えています。

堤防の決壊や氾濫からどう命を守るのか。
過去の水害を教訓に独自の対策を進めている地域があります。
愛知県清須市です。
15年前の9月に発生した東海豪雨。
川が氾濫し、10人が死亡。
およそ7万棟が水につかりました。
この豪雨のあと、市が作成したハザードマップです。
堤防が決壊することを前提にどう避難すべきか地域ごとに色分けしています。
ピンク色の地域は川に近く氾濫すると逃げ場を失うためできるだけ早く自宅から避難しておく必要があるとしています。
その地域の一つ、新川東部地区。
自主防災会の会長武藤康正さんです。

武藤さんたちは住民が安全に避難するための情報を独自の地図にまとめました。
避難するための安全な通り道や水の流れやすい方向などを詳しく記しています。

氾濫が起きたときの水の深さが分かるように町内のおよそ50か所に堤防の高さなどを示す目印をつけました。
住民がふだんから川の水位を意識し、いち早く避難できるようにするためです。

堤防の決壊による甚大な被害をどうすれば防ぐことができるのか。
先月、国が改訂した避難に関するガイドラインです。
市町村に対して川の水位などを基準に、いち早く避難勧告や避難指示を出すよう求めています。
特に、氾濫すると家が倒壊するおそれがある川に近い地域では氾濫する前に区域の外に避難する必要があるとしています。
いち早く区域外に避難する地域をどう線引きするのか。
今後、全国の河川で検討していかなければなりません。

施設で守るのではなく、それも含めて川のそばにいる人を逃がそうという、この国の取り組み。
どうご覧になりましたでしょうか。
新しいステージに入ったということで、これまでのやり方ではまずいわけで、そうすると、それに応じた、新しいやり方を入れなきゃいけない。
そうすると、川が氾濫したときに、直ちに命の危険にさらされている人たちには、そこから違う所に避難していただくというようなことがいるわけですね。
例えば東京の荒川辺りですと、そういう人たちが100万人単位でおられますのでね、だから事前にそれを指定しておくってことも、これから大変重要な問題になるわけですよね。
事前に決めておくことで、実効性が保たれるということですか?
そういうことですね。
特にね、大きな災害になればなるほど、情報が錯そうしてですね、あるいはないという問題が、それぞれちぐはぐな対応が自治体によって行われて、それが被害を大きくするということになりますのでね、例えば、私たちタイムラインというのを考えているんですが、情報がなくても、この時点で自治体がこういうことをやっているということを事前に知っておれば、そのときに、たまたま情報がなくてもですね、こういうことをやっているという共通の認識で、連携ができるっていうふうな制度を入れてはどうかと、こういうことをお願いしているんですね。
連携するために、具体的に事前に決めておくということですね。
そう、そのときにやると、必ず失敗するんですね。
事前に決めておけば、それを訓練によって、スキルがアップしますのでね、ですから、そういうことを日頃からやっていただくことが大切だと思いますが。
一方で、住民側としてはどういうことができるというふうにお考えですか?
これは今回もそうだったんですが、やはり個人個人がいきなり危険にさらされてる状況になっていますから、やっぱり地域コミュニティーといいますか、そういうところがやっぱり、頑張っていただかなければいけない。
特に、災害時の弱者と呼ばれる方がどんどん増えていますし、高齢者も増えていますので、1人でどうするという判断がとても弱くなっているので、やっぱり地域の力を発揮していただくということが、必要だと思うんですが。
そういう意味でも、これまでと災害というのは変わってきているということなんですね。
ですから、要するに、昔のルールが間尺に合わなくなっているといいますか、その新しいステージで、必ずしも有効ではないということなんですね。
ですから、昔と同じような災害による被害の出方をしないというふうに、考えていただくことがとても大事でですね、これはやっぱり、個人個人の災害に対する考え方を変えていただく必要があるだろうというふうに考えていますが。
災害自体も、住民も、行政もすべてが変わってきて、新しいステージに入っている。
ですから、どこかが1つのところを変えると、非常に被害が少なくなる時代ではなくて、それぞれの関係するところで、少しずつ努力を継続してやっていただいて、それが全体として、被害を少なくする時代に入ってきているということですね。

この水害だけに限らずですね、今、次々と災害が相次いでいますね。
改めてなんですが、今、必要なこと、どういうことでしょうか?
それはこれまでの環境とか状況と変わった時点で起こっていますから、これまでの体験、経験で得た知識だけでは、乗り越えられないわけですね。
ですから、それがどういうふうな被害につながるかを、きちっと評価して、新しい取り組みを進めていただく必要が出ていると思いますが。
今回の常総の例もまだ捜索、続いていますけれども、ちゃんと検証しなくてはいけないということですね。
徹底的に検証して、それを直していくっていう、そういう努力が継続的に必要になっているということですね。
今夜は関西大学教授の河田惠昭さんと共にお伝えしました。
河田さん、きょうはどうもありがとうございました。
2015/09/15(火) 02:12〜02:38
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「堤防決壊 その時住民は」[字][再]

9日から11日にかけて記録的な豪雨となった関東北部と東北南部。広い範囲が浸水し、多くの人が自宅などに取り残されることとなった。避難する際の課題を検証する。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】関西大学教授…河田惠昭,【キャスター】高井正智
出演者
【ゲスト】関西大学教授…河田惠昭,【キャスター】高井正智

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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