TOPM-ON! MUSICみんなの映画部 活動13『幕が上がる』[後編]

みんなの映画部 活動13『幕が上がる』[後編]

みんなの映画部 活動13『幕が上がる』[後編]

みんなの映画部 活動13『幕が上がる』[後編]

Base Ball Bear/チャットモンチー

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今月は、演出家・平田オリザの小説を映画化した『幕が上がる』。平田オリザを敬愛する小出部長は、終映後、悩んでいた……。

TEXT BY 森 直人(映画評論家・ライター)


活動第13回[後編]
部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)
今回観た作品:『幕が上がる

 

活動第13回[前編]はこちらから

 

観客が想像力を働かせる隙間があったか?

──ところで脚本担当が『桐島、部活やめるってよ』で共同脚本を務めた喜安浩平さんですね。

小出 比べちゃうのは野暮だけど、『桐島~』っていうのは今までの青春映画が描けていなかった、青春における大切な1ピースを見つけた映画だと思うんですね。映画に描かれた時間だけじゃなく、その後の人生に関してもすごく大きな影響を及ぼすワンエピソードとして想像できて、僕ら観客の人生にもフィードバックされるのが『桐島~』のすごさだった。『幕が上がる』の原作にも同じようなすごさがあるんですよ。

福岡 たぶん原作が良いから入ってくるセリフがすごく良くて、若い子にもちょっと深いことを考えさせられる言葉がたくさんあったと思う。

小出 うーん……考えさせるまでに至ってるのかなぁ。観客が想像力を働かせる隙間があったか? と。考える余地とか。

──逆に言葉で映画を埋めちゃってる感じがありますよね。『桐島~』にはすごく隙間があったけど。

小出 そうですよね。『桐島〜』ってあんまり親切な映画ではないから、観終わったあと、人によって反応がバラバラでしたよね。「なに言ってるのか全然わかんなかったけど」って置いてきぼりにされた人とか、「なんか暗かったね(笑)」って言いながら出て行くカップルとか、僕みたいに思いっきり打ちのめされちゃった人とか。でも、そこにあの映画の本質があると思う。行間にたくさんメッセージが詰まってる映画だけど、わかる人もいれば、わからない人もいる。それがむしろ、あの映画の世界はスクリーンのこっち側にもある世界なんだというのを感じさせてくれたんですよね。で、『幕が上がる』映画版はむしろ余白を埋めて、全部わかるようにはっきりと見せようとしている。

福岡 あのさ、ナレーションで自分の気持ちをさおりちゃんが言うじゃない。それで彼女が「いま自分めっちゃ最悪」とか内心思ってるんだなってわかる。あれとかはすごくよかったなと思った。

小出 ええと、原作は実は全部それなんですよ。全編さおりの自分語りというか、一人称で進んでいくの。

福岡 なるほどね~。それをナレーションに置き換えたんだ。

小出 一人称だから他の登場人物には見えない部分も多くてさ、それがまた想像力をかきたてるんだけど。だからね……観れば観るほど原作の良さっていうのが、どんどん持ち上がってきちゃった。もちろん、僕も映画は映画で観なきゃと思っているんだけど、粗いなと思ったところを、どうしても原作の印象が補填しちゃうんだよね……。

──甦ってきちゃうのね。

小出 そうそうそう。“蘇る原作の素晴らしさ”っていう。もう一回言っとこう、“蘇る原作の素晴らしさ”(笑)。

 

ももクロのメンバーの演技は5人ともすごくよかったよね

福岡 演技ってことに戻るけど、最初にムロツヨシさんが演じた溝口先生に、ももクロちゃんたちがすごい低いテンションで、しかもタメ口でしゃべるじゃないですか。「えっ、ももクロちゃん、こういう演技をするんだ!」って最初びっくりしちゃった。

──意外に悪いJKですよね(笑)。

福岡 超・今ふうの女子高生をやってるよ! って。でもだんだん印象が変わっていって。憧れの吉岡先生(黒木 華)に出会ってから、どんどん悪い感じがなくなっていくのがいいなと思った。

小出 うん。ももクロのメンバーの演技は5人とも本当にすごくよかった。

福岡 よかった。配役もばっちり。

小出 実際、ももクロのメンバーが平田オリザさんのワークショップを受けたらしくて。だから劇中で上演する『銀河鉄道の夜』のセリフ回しだったりとか、全体のももクロの演技に平田オリザっぽい演出の筆致を感じるというか。

福岡 あ、そうなんだ。

小出 きっとワークショップを通じて、段違いに上手くなったんだろうなっていう感じがした。だって演技、すっごくナチュラルだったじゃん。

──平田さんのメソッドを本広監督が積極的に取り入れていて、その意味でコラボレーションの意義が起こってますよね。

小出 それは随所に感じました。

福岡 平田オリザさん、この映画に感動して泣いたらしいよ。

小出 う~ん、それはなんでなんだろう……

福岡 ちょっと! せっかくまとめられそうだったのに(笑)。

 

C-20150322-MK-1919メイン写真は、“こんな小出祐介は見たことはない”というほどの作り笑顔でしたが、本当は終始このような難しい表情……。

C-20150322-MK-1917あっこちゃんが、めちゃくちゃ美味しい名店のお菓子を持ってきてくれました!