女事件記者、冴子の危険な殺人取材 2015.09.16


(君恵)オスッ!
(川村冴子)オスッ!何怒ってんだよ。
ちょっと怒るの私のほうなんだよ。
先週号もあなたに特ダネ持ってかれてお目玉くらっちゃったんだから。
それは先輩がドジだから。
言ってくれるじゃん。
じゃあね!待ちな!触んなスケベ!スケベ!?はは〜んその顔は痴漢にやられたな。
もう〜後ろ後ろ前!前って!?一度でいいからそういう目に…。
え!?いいやなんでもない。
こんな地獄抜け出してたまには南の島かなんかでのんびりしたいよね〜。
南の島か〜いいなあ〜。
ハワイ!タヒチ!グアム!フィジー!サイパン!沖縄?
(佐々木)そうだ。
仕事ですか?仕事だよ。
当たり前だろ。
来月の第1週に「リゾートの穴場」と銘打った特集が…。
松井!差し替えろって言っただろ。
担当は名護市にある…。
名護市ってあのサミットの?そう。
名護市にあるカヌチャ・ベイリゾートだ。
カムチャッカ…え?バカだね。
カムチャッカはもっと北だろ。
カヌチャベイだ!カヌチャ。
なんか舌かみそうな名前ですね。
気がのらないんだったら…。
行きます!行かせていただきます。
沖縄だって南の島だ。
南の島がどうかしたのか?えっいや別に…。
わかりました。
川村冴子ただいまよりカムチャ…。
カヌチャ。
ぐちゃぐちゃ言ってないで早く行ってこい。
はい。
すみません。
あっ!ごめんなさい。
(緒方浩平)すてきなおしりですね。
失礼ね。
セクハラで訴えるわよ!おたくが勝手に座ってきたんだろ。
あーヤダヤダ…。
出だしからこれじゃ先が思いやられるわ。
あっ待って〜!あいつぅ…。
いらっしゃいませ!お世話になります。
ハワイみたい!カヌチャ・ベイホテルへようこそ。
カヌチャ・ベイ…。
どうぞ中に。
はい。
お持ちいたします。
あありがとう。
ああーっ!いやぁ〜天国だーっ!
そこはまさにこの世のパラダイスのように思えました
でもその天国で私は思いもかけぬ連続殺人事件に巻き込まれてしまったのです
ゴルフも悪くないな…。
(戸田)どちらさまでしょうか?勝手に写真を撮っては困ります。
(栗林孝幸)戸田さんそうかたいこと言わなくても。
何かの取材ですか?申し遅れました。
わたくし週刊トピックスの川村冴子と申します。
(栗林健介)君たちいつになったら打たせてくれるんだ。
すみません。
お嬢さんなるべくかっこよく撮ってくださいよ。
いいんですか?どうぞどうぞ。
いくぞ…。
ナイスショット!ありがとう。
(孝幸)よしじゃあ僕も。
ナイス…あっ!まいったなー。
まだまだ未熟だな。
(薫)それはお父さまとキャリアが違うんですもの。
ありがとうございました。
あの人たちどっかで見たような気がするんだよな〜。
あいつ!ちょっとあなたストーカー?ストーカー?こんなとこまでつき回されちゃ迷惑よ。
悪いけどね俺にもいちおう好みってのがあるんだ。
おたくこそあの栗林一家とどういう関係が?栗林一家?知らないのか?あの初老の男さ。
栗林健介と言って世界的に名前の知られた建築設計界の大物だよ。
へぇー他の3人は?娘の薫とその婿養子で栗林孝幸。
女はまあ…秘書ってとこだろな。
栗林孝幸…。
あっ!思い出した!この間うちの雑誌のグラビアに出てた家族だ。
うちのグラビア?こう見えても私週刊誌の記者なの。
ハハッ…あっそう。
なによっ!そのバカにした態度は。
あなたずいぶん詳しいけどあの一家とどういう関係が?さあ?どういう関係でしょう。
なんだあいつ…。
ううう…仕事仕事。
うわ〜っ!クジラ島とはよく言ったもんね。
ごめんなさい無理言って。
1時間後に迎えにきてください。
無人島か〜夢があるかなーっ!あっおしまいか…。
えっ!?ああっ…。
キャーいやぁ〜!ああっ!死んでる…。
(サイレンの音)
(比嘉刑事)おおっ〜。
すると男にいきなり抱きつかれて振りはらったときにはもう死んでいたと。
ええ…。
本当はあなたがやったんじゃ?男に乱暴されそうになって夢中になって抵抗しているうちに思わずナイフで…ブスッと。
ちょっと刑事さん…。
正直に言ったほうがいいよ。
事情が事情だから…。
正当防衛か…いや悪くしても…過剰防衛ですむかもしれない。
バカ言わないで。
どうして私がナイフなんか持ってるの?男が持っていたとも考えられる!じゃあ身体検査でもなんでもすればいいでしょ!そんなものはね…とっくに捨てたに決まってる。
だったらとっと探せばいいでしょ!言われなくても今探してるよ。
クジラ島東の岩陰に黄色のカヌーを発見しました。
カヌーだと!?
(金城刑事)はい。
船底にかなりの血痕が。
それからこの先の岩肌にもてんてんと…。
すると何か!被害者はカヌーの上で刺されてなんとかこの島にたどり着いたもののそこで力尽きたと。
(金城刑事)たぶん…。
あああ…。
疑いは晴れたでしょうか?刑事さん。
私のこと疑うなんて見当はずれもいいとこだわ。
あー血がついてるー。
買ったばかりなのに〜。
今から洗ってもなぁ…。
捨てるしかないか。
なんでこんなもの入ってるの…?トラみたい…こんなシーサー見たことないわ。
はっ!?血…。
あの男わざと私のポケットに…。
だとしたら…。
まさかこれがダイイングメッセージ…!
(携帯電話)は〜いもしもし…。
ん?あっ!はいもしもし。
(佐々木)「何やってんだ!」編集長!昨夜そっちで殺しがあったらしいな。
ずいぶん早耳ですね。
世界中のニュースが瞬時に伝わる世の中だぞ。
(佐々木)「沖縄のニュースぐらい伝わるよ」ごもっとも。
なにがごもっともだよ。
その様子じゃ詳しいことは何も知らないみたいだな。
(佐々木)「殺された男の名前は仲川昇」ナカはにんべんに中3本川の川ノボルは日の下に升。
日の下に升…「昇進」の昇ですね。
年齢は26歳。
名護市の出身だが最近まで東京でフリーターをしてた。
東京で?仲川がいつ沖縄に戻ったのか。
犯行の動機はなにか。
そのへんのところはまだわかってない。
ところで川村よ…。
被害者は取材に来ていた某誌の女性記者に抱きついたまま息絶えたとニュースにあるんだけど…まさかお前じゃないだろうな!クーッ!やっぱりおまえか!実はそうなんです。
ですからぜひともこの事件は私の手で真相究明を!
(佐々木)「余計なことするな!」殺人犯だぞ。
下手に首突っ込んだらおまえ自身にも危害が…。
大丈夫です。
十分注意して。
ダメだ!編集長…。
いいからすぐに帰って来い。
これは業務命令だぞ。
わかりましたよ。
帰ればいいんでしょ帰れば!もうー…。
運転手さん!壺屋通りに行っていただけます?こういう縞模様のシーサーをおいてあります?うちにはないですね。
ちょっとわからないね。
注文を受けたりとか…。
…ありがとうございました。
…すみませんありがとうございました。
やっぱりないか…。
えーっ!こんなお魚見たことない!へぇ〜。
ちょっと何するんですか!?ドロボー!待ちなさいよーっ!またあなたなの!?残念でした。
追っかけっこはあいつの勝ちだな。
…あなたいったい何者?ルポライター!?緒方浩平といいます。
私は…。
週刊トピックスの川村冴子ちゃん。
なんで知ってるの?知ってるよ〜。
昨夜から一躍有名人じゃない。
でそのルポライターさんがどうして行く先々で現れるの?そっちが勝手に俺の周りをうろちょろ…。
うろちょろですって!まあまあそうカッカしないの。
実は大事な事件の真相を追って沖縄まで飛んで来たんだけど昨夜その糸が1本切れちゃったんだ…。
糸が切れた!?おたくに抱きついて死んだ男だよ。
あなたの追ってる事件てなんなの?そいつはまだ言えないな。
またそういう顔する。
怒ってばかりいると小じわが増えちゃうよ。
大きなお世話です。
ほーら1本増えたよ。
ところでさ…仲川は死ぬ前に何か言ってなかったか?あるいは何か渡されたとか?当たっちゃったみたいだな。
でさっき市場でバッグをすられそうになった。
正解だろ。
つまりあのひったくりの男も今度の殺人事件に何か関係があるってことね。
まあそうだろな。
で仲川に何を渡されたの?そんなこと答える義務ないわ。
おや!?言っとくけどあなたのこと全然信用してないの。
ルポライターとか言ってるけど本当は殺された仲川さんやあのひったくり男の仲間かも知れないし。
仮に本物のルポライターだとしたら商売敵になるわけだし。
ということはおたくもこの事件の真相を追っかけてみようと…。
まあね。
警察に任しておいたほうが…。
冗談じゃない!ここで引き下がったら女が廃るわ。
ずいぶん威勢がいいじゃないか。
よしわかった。
1個だけヒントをあげるよ。
ヒント?仲川のことが知りたかったら渋谷の「めんそーれ」って店へ…。
渋谷って…東京の渋谷?めんそーれだ。
ハッカタバコじゃないぞ。
ねぇなんでそんなこと教えてくれるの?ヒップ85のお礼だよ。
もっと大きいよ…。
よし…いいだろう。
ご苦労さん帰っていいぞ。
はい。
失礼します。
ところでね…川村くん!はい。
殺人事件の方はどうなってるかね?殺人事件?とぼけんじゃないよ!お前が巻き込まれた事件のことだよ。
だってあの事件には首を突っ込むなと…。
バカヤロー!お前が言われたとおり素直に引っ込むようなタマか。
ハハハッ…。
ただこれだけは言っとくぞ。
ひとつわかったことは逐一報告すること。
ひとつ身に危険が及んだときはただちに手を引くこと。
いいな?わかりました。
(玉城)仲川さんのことね。
新聞見てびっくりしたんだよ。
常連だったんですか?ああ。
ここ2〜3年顔を見せなくなったがそれまでは毎週来てたんだよ。
もっともショウさんが仲川が名字ってことは新聞で初めて知ったんだ。
ショウさん…。
みんなあだ名で呼び合ってたからね。
今みんなと…?ということは他にも仲間が?ああいつも3人一緒だったからね。
ええと…ショウさんとカズさんともうひとりは…そうだっコウコウさん!ちょっと待ってください。
ショウさんと…あとカズさんと…えーとコウコウさん。
このカズさんとコウコウさんもやっぱり来なくなったんですか?来なくなったんですよ。
原因はたぶん…加奈子だと思うな…。
えっ!加奈子?安仁屋加奈子っていってね。
ここで働いてたんだよ。
安仁屋…沖縄の人ですね?そう。
これがいい子でね〜。
器量よしで働き者で…正直言ってあの子目当てに来る客ってのは少なくなかったと思うよ。
じゃあこの例の3人も…加奈子さんを目当てに?はい。
そういうこと。
で結局どうなったんですか?勝ったのはね1番男前のコウコウさん。
それからねお互いの間柄があんまりうまくいかなくなってうちでも大事な常連さんを3人いっぺんになくしたってわけよ。
そうだったんですか…。
あの加奈子さんは今でもお店に?いいやコウコウさんとできてからすぐに店を辞めちゃったよ。
風のうわさじゃその後コウコウさんともうまくいかなくて加奈子は沖縄へ戻ったらしい。

(店員)いらっしゃいませ。
おいもういいかい?ああ…すみません。
あとひとつだけお願いします。
ショウさんがこんなものを持ってたかご存じないですか?こんなシマウマみたいなシーサー見たことないな。
よっ!ああプレイガールのお姉さん。
人聞きの悪いこと言わないでよ。
プレイガールはうちの雑誌の名前。
私は身持ちの固い女でとおってるんだから。
ちょっとなによその笑い。
わかった!プレイガールになりたくてもなれないって…!大きな声出さないでよ。
それよりなにか用なの?用があるから呼び止めたんでしょ。
沖縄の事件?そう。
あんたが死体に抱きつかれた事件よ。
その後わかったことあるの?聞いてどうするの?決まってるでしょ。
記事にするのよ。
あのねおたくとうちはライバル関係よ。
大事なネタを敵に教えるバカがどこにいるのよ。
わかってるわよそんなこと。
だけどここんとこあんたに抜かれっぱなしでさリストラの第1候補にされそうなんだよ。
それはお気の毒に。
ねえ気の毒でしょ。
そう思ったら少しでも…。
残念だけど今のところお裾分けするほどないの。
またまた…。
本当だってば。
コラッ逃げるのか。
薄情者!もう〜勘弁してよ。
誰が勘弁するか!私は大学の先輩なのよ!先輩が恥を忍んで頼んでるのにそういう…。
だから申し訳ございません!
(2人)キャー!ああ…。
大丈夫?なんだよ今の車。
酔っぱらい運転か!ふざけんなーっ!ああーっ!?ん?ハッ!誰かそこにいるの?キャーッ!《犯人の狙いはこのシーサーに間違いないわ》《でも今警察に届けたらシーサーのこと話さないわけにはいかないし…》《第一そんなことしたらあいつに…》ほら見ろだから言わないこっちゃない。
ささっとしっぽまいた方がいいんじゃないのか。
冗談じゃないわ…。
負けるもんですか!・
(電話のベル)はい…編集長〜。
なんだよその声は!?なんかあったのか?いいえ別に…。
そうか…。
たいして役に立つかどうかわからんが殺された仲川がフリーターの前に勤めてた工務店がわかったんだ。
工務店?仲川は大工の卵だったんだよ。
工務店の名前は…。
上司とケンカ?ああ…仲川は見かけによらず気の短かいやつでさ偉いさんに文句言われてケツまくっちゃったんだ。
それにしてもあの仲川が殺されたとはな…。
やっぱり矢野さんがよんだのかな。
矢野さんて誰?ああ…うちの設計技師だった人さ。
仲川とは妙にうまが合ってよ。
亡くなったの?酔っぱらって電車にはねられたんだ。
ご家族は?独りものさ。
だから遺品の整理なんか全部仲川がやったらしいぜ。
(和夫)動くな!あのときのひったくりね。
てめぇ〜。
やっぱりあなただったのね…。
昨夜私の部屋に忍び込んだのはあなたでしょ!いったい何が欲しいのよ!那覇から東京まで追い回すくらいだからよっぽど大切なもの…。
うるさい!黙ってシーサーを渡せ。
やっぱり…あのシーサーにどんな意味があるの?あんたには関係ない。
そうは言わせないわ。
命が懸かってるんだから。
頼むから渡してくれよ。
ケガさせたくないんだ。
よく言うわよ。
殺そうとしたくせに。
殺そうとした!?とぼけないで!車でひき殺そうとしたじゃない!ちょっと待てよ!俺はそんな…。
もう一度沖縄へ行きたい!?はい。
川村おまえ…。
お願いします。
このままだとすべてが中途半端に終わってしまいます。
沖縄へ行ったら結論が出るという確信でもあるのか?必ず出して見せます。
お願いします編集長。
(インタビュアー)「栗林さんこのプロジェクトのポイントをひとつ…」
(孝幸)「ひとつだけですか。
難しいな…」「これに限らず僕の設計のポイントはいかに都市への貢献度を高くするかです」
(インタビュアー)「…と言いますと?」
(孝幸)「街路を部屋として認識することです」「これが僕の都市建設のポイントです」せんぱ〜い!あっ!誰かお捜しですか?い…いやその…。
川村っ!こんなとこで奇遇だね!何が奇遇よ。
飛行機に乗る前からずっとつけてたくせに。
バレてた…。
じゃあプレイガールもいよいよ事件の真相究明に乗り出したと。
そういうこと。
ならこそこそつけないで堂々と取材すればいいじゃない。
別につけてなんかないわよ。
今度こそあんたなんかに負けないからね!まあお互いがんばりましょう。
カヌチャ・ベイに行くんじゃないの?その前に寄るところがあるの。
えっ寄るとこ?あっ!やだレンタカー!ちょっと待てーっ!あっタクシー!すみません。
安仁屋加奈子さんという方を…?向こうの方だと思うよ。
ありがとうございます。
あのー失礼ですけど安仁屋加奈子さんですよね?
(加奈子)東京にいた頃の話?あなたがめんそーれというお店で働いていた頃のことを。
何も話したくありません。
思い出したくもないんです。
この間クジラ島で殺人事件があったことは…ご存じですよね?被害者の仲川昇という人は以前めんそーれの常連客でした。
つまりあなたとは顔なじみの…。
帰ってください!安仁屋さん…。
何も話したくないと言ったはずです。

(君恵)キャーッ!!あの声は…。

(君恵)誰かーっ!先輩っ!?ちょっと先輩どうしたのよ?あれあれ…。
知ってる人なんですね。
知りません。
ウソ知ってるんでしょ。
知りません!
(君恵)か川村…。
落ち着いて!とにかく警察に知らせなくちゃ。
(パトカーのサイレン)またあんたかい…。
今度も死体に抱きつかれたっていうんじゃないだろうね?いいえ。
抱きつかれたのはこの人です!冗談じゃないわよ!私は見つけただけ!つまりあんたが第一発見者だね?私ね見つけただけなんですよ!何も関係ないんですよ!あー!わかったわかった!金目のものを奪われた形跡はありませんね。
身元は?免許証を持ってました。
こら!横から見るんじゃない!すみませーん…。
まったく…。
曽根和男と…。
〔みんなあだ名で呼び合ってたからね〕〔今みんなって言いましたよね。
ということは他にも仲間が?〕〔ああ。
いつも3人一緒だったからね〕〔えーと…ショウさんとカズさんと…〕曽根和男…カズさん!刑事さん殺された男の人は小さなシーサーを持ってませんでした?シーサー?持ってませんでしたよ。
シーサーがどうかしたのか?いえ…。
まったく…警察ってどうしてしつこいんだろうね。
これじゃまるで犯人扱いじゃない!第一発見者を疑えっていうのは捜査の鉄則ですよ。
そうか…。
私って第一発見者なんだ。
ということは…。
もしもし編集長?スクープ!大スクープです!タイトルはこうつけてください。
「本誌美人記者が見た!謎の殺人現場」君…ジャマジャマ!細かいことは今から説明します。
あーっ!ちょっと!なによ!?やっぱり来てたのね…。
曽根和男が殺されたって?さすが早耳ね…。
曽根和男はめんそーれの常連客で「カズさん」て呼ばれてた人だと思うけど…。
つまり「ショウさん」こと仲川昇と同じ仲間だったわけだ…。
仲良し3人組のうち2人が殺された…。
残っているのは安仁屋加奈子さんの恋人だった「コウコウ」って人だけ…。
危険だな…。
コウコウも?おたくだよ。
曽根ってのはずっと君のことをつけ狙ってたんだろ?その曽根が殺されたってことは次は君が狙われる危険がある…。
とっくに狙われてるわ。
私なら…。
なんだって!?初めはてっきり犯人は曽根さんだと思ってた。
でも…。
あれは絶対事故なんかじゃないわ。
明らかに私と曽根さんを狙った者の仕業よ。
まさか俺だと思ってるわけじゃないだろうな?違うの?俺だったらもうちょっと手際よくやるよ。
かもね。
怖くないのか?怖いわよ。
夜中にうなされてとび起きたことだってあるわ。
でも今さら退くに退けないわ。
提案があるんだけどな…。
提案…?そろそろお互いの手持ちのカードを見せ合わないか?つまり情報交換…てこと?2人も人が殺されたうえに君まで狙われてるんだよ。
意地張ってる場合じゃないだろ?これを仲川から?これが私のポケットに入ったのは…。
あのとき以外に考えられないわ。
この縞模様…マジックで書いたみたいだけど何の意味が…?それがわからないのよ。
でも曽根はこのシーサーを狙っておたくをつけまわしてたんだろ?そして仲川さんと曽根さんを殺した犯人もおそらくこれを…。
私の持ち札はこんなとこね…。
今度はあなたのカードを見せて。
ほんじゃまあ乾杯!建築設計の世界では年に1度あるテーマに基づいて広く一般から作品を募る「ゴールデン・ビルト賞」っていうコンペティションがあるんだ。
ゴールデン・ビルト賞…?そのコンペに入賞した者は一流の建築家として認められるっていうまあ言ってみれば建築界の芥川賞だな。
去年そのコンペで金賞を受賞したのが…大城孝幸くんていう若者だ…。
大城…孝幸…?おたくも会ってる奴だよ。
私も会ってる…!?そう。
ここのゴルフ場でね…。
〔何かの取材ですか?〕栗林…孝幸?正解です。
孝幸は栗林健介の一人娘に婿入りしたから名字が変わっちゃったんだけど…旧姓は「大城」。
仲川や曽根と同じこの町の出身者だよ。
ちょっと待って…「タカユキ」って漢字でどう書くの?コウコウ…。
じゃあめんそーれで仲川さんや曽根さんが一緒だった「コウコウ」っていうのは…。
大城孝幸だ。
まさか…。
彼が2人を殺したなんていうんじゃ…。
その可能性は十分にあるな…。
仲川曽根旧姓大城孝幸の3人は同じ高校を卒業して一緒に上京してる…。
「コウコウ」は進学して建築を専攻して…仲川は工務店に勤めて大工修行。
曽根は家電メーカーの下請け部品工場に就職した…。
そしてなにかっちゅうとめんそーれに集まって旧交を温め合ってたわけだ。
…でそのめんそーれのマドンナが安仁屋加奈子嬢だよ。
待って。
加奈子さんを巡って3人の友情にヒビが入ったのはわかってるけどそれはもう何年も前の話でしょ?今さら殺し合いするなんて考えられないな…。
そりゃそうだ。
でもな上京して成功したのは大城孝幸だけであとの2人は惨めな境遇に落っこっちゃった…。
…惨めな?仲川が工務店を辞めたのは知ってるだろ?実はさ曽根も勤めてた工場がつぶれて職を失ってるんだよ。
じゃあお金に困った2人が成功した孝幸さんを強請ろうとして逆に殺されたってこと?そういうことだけど…強請るにはそれなりの材料がいるな。
加奈子さんを捨てたってこと?もっと大きな問題だ。
考えてもみろよ。
今や建築家として成功した孝幸がたかが女の問題で強請られたぐらいで殺人まで犯すと思うか?確かに…。
じゃあ何なのもっと大きな問題って…。
その問題を解くカギがおたくの手の中にあるんじゃない。
シーサー…?そう。
恐れ入りますが少々お時間の方いただけないでしょうか?あなた…確か…。
栗林健介の秘書です。
どうぞ…。
わざわざお呼び立てして申し訳ない。
私のことはご存じでしょうな?もちろん。
さすがに秘書の方も美人ですね。
彼女独身ですか?甘く見ちゃいけませんよ。
ああ見えても空手の達人でね。
ますますタイプだ。
お嬢さん写真はうまく撮れましたか?お望みでしたらいつでも差し上げますがその前にご用件をお聞かせください。
まあどうぞ…。
このままで結構です。
そうですか…。
何ですかこれ…?見ての通り小切手帳です。
ここに好きなだけの金額を書き込んでお持ちください。
どういう意味ですか?お互い時間は大切にしましょうよ。
どういう意味かあなた方にわからないはずはないと思いますがね。
死んだ矢野のこともそうやって買収したのか?矢野…?〔矢野さんて誰?〕〔うちの設計技師だった人さ〕あなたはゴールデン・ビルト賞の審査委員長だ。
そのあなたが…こともあろうに大城孝幸が矢野が応募してきた作品を盗んだのを黙認した。
違いますか?盗作…!?そして孝幸はその作品で見事金賞を射止めあなたの娘さんと結婚してめでたしってわけだ…。
君…私を誰だと思ってるんだ?仮にも「世界の栗林健介」と呼ばれる男だ。
そんなバカな真似するわけ…。
ところが違うんですよ。
世界の栗林だか何だか知らないがあなたは一歩家に入れば筋金入りの親バカだ。
早くに奥さんを亡くしたあなたは残された一人娘を溺愛してる…。
その娘さんのためなら…。
(栗林)いい加減にしたまえ!君はいったいその矢野という男とどんな関係なんだ?矢野は…妹の亭主でした。
羨ましいぐらい仲のいい夫婦でね…。
でも妹は妊娠中毒症にかかってお腹の中の子供と一緒に死にました…。
それ以来矢野は酒浸りになって見る見るうちにボロボロになった。
俺は奴をなんとか立ち直らせたくて必死になって励ましてときには殴ったりもしました。
そしてやっと…。
〔ゴールデン・ビルト賞…?〕
(矢野信彦)〔ええ応募することにしました〕〔でもすごい権威のある賞なんだろう?〕〔だからこそ応募のしがいがあるんですよ〕〔自信あるのか?〕〔もちろん!絶対に入賞してみせますよ〕〔そうか…〕〔がんばれよ!〕
(矢野)〔はい!〕入賞はともかく俺は矢野が立ち直ったのが何より嬉しかった…。
でも矢野の作品は入賞しませんでした。
そればかりか応募作品リストにも載っていなかった。
おかしいと思った俺はすぐに矢野に連絡をとろうとしたがすでに勤め先を辞めアパートも引き払った後でした…。
しかたないから俺は矢野の知り合いを片っ端から訪ねて歩きました…。
そして妙な噂を耳にしたんです。
ゴールデン・ビルト賞の金賞を受賞した作品が矢野が得意としていた手法にそっくりだというんです。
しばらくして差出人不明のハガキが届きました。
ハガキ…?俺にはすぐにそれが矢野からのものとわかりました。
これです…。
「僕は汚い男です。
僕は駄目な奴です」…。
「僕のことは忘れてください」…。
矢野は自分の作品を盗まれたんだ。
俺が確信したのはこのときです。
しかしいくら矢野がおとなしくても自分の作品を盗られて黙っているはずがない。
黙らせることができるのはあなたしかいません。
あなたは矢野を買収しようとしただけじゃない!おそらく…。
〔君がもしノーと言えば二度とこの世界で生きていけなくなる〕〔それでもいいのか?〕…絵空事だな。
絵空事だと!?君の言ってることには何の根拠もない。
自分勝手な想像だ。
これは何だ?何のために俺たちを買収しようとしたんだよ!?根も葉もない噂をまかれたら仕事に差し支えると思っただけだ。
根も葉もない噂ですって!?この問題に絡んで2人もの人間が殺されてるのよ!ほう…何か証拠でもあるのかな?証拠って…!いずれにせよ私には何の関係もない話だな。
もういいよ帰ろう。
こんな奴と話してもそれこそ時間の無駄だよ。
買収と脅迫に負けた矢野は情けない奴でした。
名誉欲に目がくらんだあなたの娘婿も腐ってる。
でもね…一番汚いのはあなたですよ。
行こう…。
(栗林)よせ!何もするんじゃない。
今度ゆっくり違うことしようね。
(女の泣き声)
(栗林)薫か?お父さま!薫…いいか?孝幸のことは諦めるんだ。
そんな!なんとかならないの!?遅いんだ。
もう何をやっても遅すぎるんだよ…。
あの女秘書…マジで空手やりそうだったな。
安手のアクション映画じゃねえっつうの!勝つ自信あった?ぜんぜん!頼りないの!まあここで俺たちに危害加えるほど栗林もバカじゃないだろう…。
それにしても驚いたわ。
仲川さんと同じ会社で働いてた矢野っていう人があなたの義理の弟さんだったなんて…。
矢野が死んだとき…ちょうど中近東に取材に行ってたんだよ。
仲川って男が遺品を整理してくれたって知ったのは帰国した後だ。
仲川さんはそのときに盗作の証拠になるものを見つけたのね。
たぶん設計図の原図だと思うんだよ。
その隠し場所のヒントがあのシーサーなのね…。
明日もう一度安仁屋加奈子さんに会ってみるわ。
彼女ならきっと何か知ってるはずよ。
俺も一緒に行くよ。
東京へ帰るのかしら?たぶんね…。
孝幸さんがいなかったみたい…。
見捨てられたんだろう。
見捨てられた!?栗林は自分に火の粉が飛んでくる前に孝幸のことを切る気なんだよ。
どうしても話していただけませんか…。
あなた…死んだ仲川や曽根から聞いてたはずだ。
大城孝幸の盗作の秘密をつかんだこと。
そしてそれをネタに強請ろうとしてたこと…。
そのために2人が殺されたことも知ってたはずだ。
…何も言えません。
どうして…?どうして何も言えないの!?加奈子さん…。
その手首の傷…大城孝幸さんと別れたときにつけたものですね?…孝幸さんは自分の立身出世のためにあなたを捨てて…栗林健介の娘薫さんをとった。
そして捨てられたあなたは…。
やめてください!あなた方には何の関係もない話じゃないですか!加奈子さんあなた…まだ孝幸さんを愛してるの?でも彼は親友を2人も殺した犯人かもしれないのよ。
そりゃあ仲川さんや曽根さんがやったことだって立派とは言えないわ。
でも彼らはその代償を命で払ったのよ。
もう二度と戻ってこないのよ!どこへ行くの!?すべてはここから始まったんです…。
「白い煙と黒い煙」…。
知ってますかこの話?昔は教科書にも載っていたそうで…私たちも小さい頃から何度となく聞かされた話です。
昔…この辺りでは貧しさのために本土へ働きに行く娘たちが大勢いました。
娘たちは那覇の港から船に乗せられ本土に向かいました。
(加奈子)でも親たちは那覇まで見送りに行くわずかな足代さえなかったのです。
(加奈子)見送りに行けない親は名護湾を見下ろすこの場所で娘を乗せた船が沖合いを通るのを見送るしかありませんでした…。
もちろんお互いの姿が見えるはずはありません…。
でもそのとき親子は…白い煙と黒い煙の向こうに…お互いの姿をはっきりと感じ合っていたんです。
大城さん仲川さん曽根さんの3人が高校を卒業してここに集まったのも…白い煙と黒い煙の話を繰り返し聞かされながら育ったこの土地の者としては当然のことだったのかもしれません…。
そのとき3人は友情のしるしに小さなシーサーを持つことにしたんだそうです。
それが…このシーサーなのね?いいえ…。
違う…!?一度めんそーれで見せてもらったことがありますけど3人が持っていたのはごく普通のシーサーでこんな縞模様なんかついてませんでした。
でも仲川さんが私に渡したのは確かにこのシーサーよ。
その後にこれを狙って曽根さんが…。
そんなこと言われても私には…。
わかった。
それじゃあねもう一度最初から順序立てて話してもらえるかな?…最初から?めんそーれに顔を出さなくなった仲川と曽根に再会したところから。
雨の降る夜でした…。

(加奈子)そのときですズブ濡れの2人が飛び込んできたのは…。
(仲川)〔加奈子!〕
(加奈子)〔死なせて!〕〔離して!離してよ!!〕〔死なせて!離して!!〕〔バカだな…。
なにもコウコウなんかのために死ぬことなんかないだろう!〕〔そうだよ。
あんな薄情な奴とは別れた方がよかったんだ〕〔元気出せよな?〕〔本当に二度とバカな真似はしないな?〕〔ええ…〕
(曽根)〔よかった…〕〔許せないのはコウコウの野郎だ。

(曽根)〔ああ頭にくるぜ!〕〔いいのよもう。
私が忘れたらすむことだから…〕〔いいやそうはいかない!なんとか思い知らせてやる方法はないのかな…〕〔あるぜ…〕〔俺コウコウが震え上がるような弱味を握ってんだ…〕それってもしかして設計図か何かじゃ…?仲川さん以前勤めていた工務店で仲のよかった矢野という人が亡くなった後遺品の整理をしているときにそれを見つけたと言ってました。
〔盗作だって!?〕〔以前矢野さんが自分の大事な作品を盗作されたと言ったことがあるんだ〕〔そのときはたいして気にも留めなかったんだが…〕〔出てきたんだよその設計図の原図が…!〕〔俺はただの大工だが設計図を見る目は普通の人間よりはある…〕〔でその設計図がコウコウが賞をとった作品に似てたんだな?〕〔細かいところは多少変えてあったが基本的にはそっくりだ〕〔そっくり…〕〔どうだ?コウコウから好きなだけ金をふんだくれるぜ!〕私…なんとか2人を思いとどまらせようとしたんです。
でも…どうしても聞いてくれなかったんです。
〔でその原図は今どこにあるんだ…?〕〔そいつは言えねえよ。
お前口が軽いから〕〔チェッ…〕〔怒るなよ。
わかったよじゃあヒントだけやるよ〕〔ヒント…?〕〔シーサーだよ〕〔シーサー?〕〔もしも俺に何かあったら俺の持ってるシーサーを見てみな〕〔どこに隠してあるかすぐわかるはずだ〕やっぱりこのシーサーに秘密が…。
けど仲川が持ってたのはこのシーサーじゃなかった…。
そうでしょう?でも私のポケットにこのシーサーが入ってたのは間違いないんだから…。
まいったなあ…。
また振り出しに逆戻りだよ…。
…停めて!ペア…?そう!うっかりしてたんだけど…。
普通シーサーってペアで飾ってあるものじゃない。
口の開いてるのと閉じてるので。
そりゃ確かにそうだよ。
シーサーってのは口が開いてる方は外的を威嚇して閉じてる方は家を守るんだ。
お土産屋さんでもたいていペアで売ってるし…。
それがどうかしたの?鈍いわねえ!つまり孝幸さんたち3人が買ったシーサーもペアじゃなかったかってこと!でも…あいつらシーサーは1人1個ずつしか持ってなかったよな?ああ…。
わかった?3人が1個ずつのシーサーを持つには2組のシーサーを買わなくちゃいけない…。
てことは1個だけ余っちゃうでしょ?〔でこの余ったやつはどうする?〕〔うーんそうだな…〕〔俺たちがここで友情を誓い合った記念に奉納するってのはどうだ?〕〔それいいよ!じゃあこれが僕たちのものだという目印を…〕〔なんかシマウマみたいじゃないか?〕〔白い煙と黒い煙を象徴してるしいいよ!〕〔さすがコウコウ!わかってるぜ!〕なるほど…確かにありそうな話だな。
けっこうお利口じゃない。
ということは設計図は…。
絶対この辺にあるはずなんだけどなあ…。
ねえ近くに小さなお社なかった?お社…?ほら地元の人がいろんな物をお供えしてる場所…。
そこだ!設計図は見つかったかな?出てこいよ栗林孝幸くん…。
よくここがわかったな…。
そっちこそよくわかったじゃないか。
縞模様のシーサーって聞けばすぐにわかるさ。
なんだって!?加奈子さん…。
あったか?
(加奈子)あったわ。
これだ…!加奈子さんあなた…。
ごめんなさい!でも私…この人についていきます。
どこについていくんだよ?今さら逃げ場なんてどこにもないぞ。
わかってるさ!ただ…このいまいましい設計図だけは…。
あっダメ!ジャマするな!やめろ!
(加奈子)逃げて孝幸さん!動くな!何やってんだ…やめろ!動くなよ!やめろ!加奈子…勘弁してくれ。
やめろ!私も連れてって!早く乗れ!どこへ行く気…?待てー!!クソッ!どこへ逃げる気だ!?あの人…死ぬ気だわ。
えっ!?やっぱりあなただったのね…。
ああ…そのとおりだよ。
仲川も曽根も…このナイフで殺った。
(孝幸)仲川が盗作の証拠を握っていると脅迫してきたとき俺は要求通りの金を支払う約束をしたが最初からそんなつもりはまったくなかった…。
(孝幸)一度要求に応じたら二度三度と脅迫されることが目に見えていたからだ。
仲川は約束通り取り引き先のクジラ島に近づいてきた…。
〔うわーっ!!〕
(孝幸)仲川は設計図を持っていなかった。
(孝幸)奴も俺が本当に取り引きに応じるかどうか疑っていたんだ。
(ヘリコプターの音)〔クソッ…!〕完全に死んだと思っていた仲川が…まだ生きていたのは大誤算だったよ。
あいつは必死にクジラ島までたどり着き…あんたに抱きついて息絶えた…。
仲川が死ぬ前に俺のことを喋っていたら…あんたも殺さざるをえない…。
だが上空にヘリがいて近づくのは危険だった。
じゃああの日から私のことを監視していたのね…。
ところが曽根もあんたをつけ回してるのを知ってあのとき仲川があんたに盗作の証拠を渡したと気づいたんだ。
だから私もろとも盗作の証拠を抹殺しようとした…。
だが…あんたはしぶとく生き延びた。
実をいうとあの日もあんたを狙っていたんだ。
(孝幸)ところがそのとき…。
〔コウコウ…!〕〔うっ…!〕殺してしまった…。
俺は…この手で親友を2人も殺してしまったんだ。
あいつらが悪いんだ…。
あいつらなら何があっても最後には俺の気持ちをわかってくれるって信じてた。
それなのにあいつら…俺のことを脅迫して…。
クソッ…!どうして盗作なんてバカなこと考えたの?…あんたにはわからないだろうな。
貧しい農家のせがれが郷土の期待を一身に背負わされる苦しみなんて…。
俺は…ショウやカズみたいな奴らとはわけが違う。
学校の成績はいつもトップだった。
そんな俺を…親戚や街の有力者が応援して大学まで行かせてくれた。
俺はみんなの希望の星だったんだ。
希望の星として輝くために俺は必死で努力した。
だが…。
だが俺にはそんな期待に応えられるだけの才能がなかったんだ!
(孝幸)ゴールデン・ビルト賞は俺たち新人にとっては最大の登竜門だ。
しかも俺にはもし入賞すれば薫と結婚し栗林健介の後継者になれるという大きなオマケまでついていた。
(孝幸)だが締め切りが目の前に迫っても俺には何のアイディアも浮かんでこなかった…。
〔ダメだこんなもの!〕
(孝幸)そのとき隣の所長室にすでに送られてきている応募作品が何点か保管されているのを思い出した…。

(孝幸)俺は矢野信彦という男の作品に心奪われた。
(孝幸)そこには俺にはとても思いつかないような斬新なキラメキがあった…。
(孝幸)最初はあくまでも参考にするつもりだったんだ。
(孝幸)だがやればやるほど…。
(孝幸)俺には到底この作品を超えるものは作れない。
(孝幸)そうわかったとき…。
…盗作を決意したのね。
俺の作品…正確には矢野の作品だが…。
見事に金賞を射止めたよ。
だが…こんなことがバレずにすむはずがなかった…。
それを知った矢野さんが抗議に来た…。
〔バカもん!きさまこの私の顔によくも泥を塗ってくれたな!!〕〔申し訳ありません!!〕〔出てけ!きさまの顔なんか二度と見たくない〕〔待ってお父さま!彼を許してあげて〕〔ダメだ。
これは孝幸だけの問題じゃない〕〔栗林健介の名誉にも関わることだ〕〔いくらお前の頼みでもきくわけにはいかん〕〔でもゴールデン・ビルト賞は決まってしまったのよ〕〔今さら取り消すなんて…それこそ栗林健介の名前に関わるんじゃない?〕〔お願いお父さま!お願いだから彼を助けてあげて!お父さま!〕
(孝幸)結局親父は薫の涙に負けた…。
(孝幸)いや…それ以上に自分のメンツにこだわったんだ。

(サイレンの音)どうやら終わりが近づいたようだな…。
私を殺す気…!?死んじゃダメ!!離せ!俺には死ぬ自由もないのか!?どこまで自分勝手なのよ!あなたを必死になって逃がそうとした加奈子さんの気持ちがわからないの!?孝幸さん!!加奈子…。
死なないで!!お願い死なないで!!加奈子…。
血が出てるじゃないか!えっ…?大丈夫よ。
大丈夫なわけないだろう。
…なぜ始末しなかったの?始末…?少なくとも彼の盗作の証拠は消えたはずよ。
そんなことをしても彼の罪が消えるわけじゃありません…。
でもあなた彼を助けようとして…。
助けたかった。
最後に彼が私を頼ってきたときどんなことをしてでも逃がしてあげたかった…。
でもわかったんです。
わかった…?どこまで逃げても彼の心の傷は治らないって…。
結局この設計図が…彼の人生を狂わせてしまったのね…。
いいえ。
大都会の魔力があの人の人生を曲げてしまったんです。
大都会の…魔力…。

そのとき2人の心を何がよぎっていたのか…私にはわかる術もありません…
でも私は…
白い煙と…黒い煙…。
これ…。
ん…?今まで集めた資料。
よかったら使ってよ。
自分で書かなくちゃ!おたくに任せるよ。
でもそれじゃ…。
いいからいいから。
今度のことは誰に頼まれたわけじゃないし…次の仕事もあるしね。
緒方さん…。
いい記事書いてくれよ!もう行っちゃうの?うん…。
今度はどこへ…?東ヨーロッパ。
東ヨーロッパ…危なくないの?そうね…鉄砲玉とか…ミサイルとかが飛んでくるかもな。
死なないでよ…。
だって…せっかくいいケンカ相手ができたんだもん!約束するよ。
生きて帰ってくる。
きっとよ。
あっ…これもセクハラかな?もうっ!イテッ!じゃあね…。
よしよし…あいつにしちゃ上出来だ!これで建築界のボス…栗林健介も失脚ってわけだ。

(電話のベル)もしもし?おう川村か!よくやった!ありがとうございます!ところでいつ帰ってくるんだ?はっ!?「は?」じゃねえよ。
仕事は山ほどたまってんだからさ…。
お前なあ…おいなんだよこれ?うるせえなあ!おい川村!?聞こえてんのかお前!?なんにも聞こえませ〜ん!!は〜いいらっしゃ〜い
開店と同時にお客さんでにぎわう店内
ここは創業82年の老舗パン屋さん
2015/09/16(水) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
女事件記者、冴子の危険な殺人取材[再][字]

沖縄サンゴ礁の海、見知らぬ男の死体に抱きつかれて…白い煙と黒い煙に隠された凶器

詳細情報
◇出演者
水野真紀、船越英一郎、藤谷美紀、角野卓造、清水章吾 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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