きょうの健康「大人の中耳炎と難聴」 2015.09.16


「きょうの健康」今日は「大人の中耳炎と難聴」です。
中耳炎といいますと子どもの病気という印象があるんですけれど実は大人にも多いという事なんですね。
しかも放っておきますと難聴になるかもしれないという事なんです。
今日は中耳炎と難聴の関係について詳しくお伝えします。
お話は慶應義塾大学教授の小川郁さんです。
耳鼻咽喉科がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
どうぞよろしくお願い致します。
中耳炎大人にも多いんですね。
そうですね中耳炎はやはり子どもの病気という印象が強いんですけれども実は大人特に高齢者にも多いという事で高齢者の場合は老化による難聴として放置されている事も多いという事ですね。
この中耳炎はそのまま放置してますと炎症が内耳という所まで波及して聴力の回復が難しくなる。
そういった難聴になる事もあるんですね。
時には完全に聴力を失ってしまうという事もあるので注意が必要です。
そうならないために詳しく教えて頂きたいんですけどまずきょうのポイントをお願いします。
まずはこの「難聴の陰に中耳炎あり」ですね。
こちらからお願いします。
はい。
ある患者さんの例を紹介したいと思います。
68歳の女性のAさんですけれども1年ほど前から両方の耳が聞こえにくくなりました。
年のせいで耳が遠くなったのかなと思って補聴器をつけようと考え耳鼻咽喉科を受診しました。
すると意外にも老化による難聴ではなく中耳炎と診断されました。
中耳炎は痛みがあるから難聴とは間違えにくいような…。
どうなんでしょうか?お子さんの中耳炎の場合にはこの中耳という所に非常に強い炎症が起きますので痛みが出ますけれども大人の中耳炎の場合の多くは痛みがないというのが特徴でそういった意味では老化による難聴と間違いやすいという事ですね。
ですので…。
A子さんがかかっていたそうしますと病名としては…。
この病気ちょっと難しい名前ですけれども……という事で老化による難聴と間違いやすいという事ですね。
こういう方の場合には老化による難聴と思って補聴器を使っているという方も少なくないんですね。
それではこの滲出性中耳炎これについて詳しく教えて下さい。
これは耳の構造ですけれどもまず耳のあながありますね。
これが外耳で鼓膜があってここが中耳という所ですね。
この中耳の奧には今度は音を感じる細胞のある内耳という所があります。
この中耳は実は耳管という管を通って鼻とつながってるんですね。
この滲出性中耳炎の場合にはこの耳管が通常は開いたり閉まったりするんですけれども耳管が開きにくくなってしまうという事でこの中耳に滲出液という液体がたまってしまう。
そうするとこの鼓膜が振動しにくくなって聞こえが悪くなるという事なんですね。
なるほど。
先ほどAさんの場合には両方の耳が聞こえにくくなってましたけどこれはそういう事はあるんでしょうか。
そうですね。
こういう老化によって起こる変化というのは通常は両方の耳に同じように起きますのでですので両方の耳管の働きが悪くなるという事で両方の耳に同じような状態が起こってくるという事なんですね。
それで老化による難聴と間違えてしまう。
それではそうではなくて滲出性中耳炎という病気だと気が付くサインといいましょうかそれは何かあるんですか?これが残念ながらはっきりとしたサインがないんですね。
ですのでこの滲出性中耳炎も老化によって起こる難聴も徐々に徐々にそして両方の耳に起きますのでなかなか区別が難しいという事ですのでやはりある年齢になって聞こえにくいなという事になったらまずは耳鼻咽喉科の専門医を受診して頂きたいと思いますね。
受診をせずに補聴器を自分で買いに行ったりあまりしない方がいいという事になりますね?そういう事ですね。
まず受診という事ですね。
はい。
この滲出性中耳炎ですが治療としてはどういう事になるんでしょう?まずはのみ薬による治療を行います。
こういったお薬をのむんですけれども3か月あるいは長くても半年ぐらいこういう治療を行ってもなかなか改善しないという事になると手術。
手術といっても比較的簡単な手術ですけれども鼓膜チューブ留置術というこういう手術を行いますね。
鼓膜に鼓膜チューブというチューブを入れるという手術です。
そうするとこの鼓膜チューブは先ほどの開かなくなった耳管の代わりをしてくれるという事で鼓膜の外側と内側の換気をしてくれるんですね。
それでつながる訳ですね。
そういう事ですね。
これでもどんな…鼓膜に入れるものですから大きさとしては。
非常に小さなチューブですね。
このように非常に小さくてシリコンでできてる。
そういったチューブですね。
ですのでこれだけ小さいので小さなあなが開いた状態ですけれども聞こえにはほとんど影響がありません。
また日常生活の中でも例えば洗髪をするとか入浴をするという時も普通にやって頂いても特に問題はないという事ですね。
さっきちょっと触ってみましたらシリコンですからすごく軟らかい。
そうですね。
ですので鼓膜にもそういう意味では優しいという事ですね。
負担がない。
今度は今日の2つ目のポイントですね。
これはどういう事なんでしょう?もう一人ある患者さんの例を紹介したいと思います。
一時はよくなったんですが…1年後どうも聞こえがもっと悪くなったという事で久しぶりに耳鼻咽喉科を受診したところBさんは回復が難しい難聴になっていたという事です。
なるほど。
回復が難しい難聴。
そうしますと本当中耳炎を甘く見て油断してはいけないという事だと思うんですけれども特に気を付けなければいけない中耳炎どういうものがあるか教えて頂けますか?難聴になる可能性がある。
この「難聴になる」というのは回復の難しい難聴になる可能性のある中耳炎ですけどもまずは慢性中耳炎。
そして真珠のような塊ができる真珠腫性中耳炎。
もう一つが好酸球というのが悪さをする好酸球性中耳炎というこれが代表的な中耳炎ですね。
それではまず慢性中耳炎から教えて頂けますか?左側が正常な鼓膜です。
鼓膜非常に薄い膜でこういう光沢があって非常にきれいですね。
ところが慢性の中耳炎という状態になりますとこのように鼓膜が全くなくなってしまう。
これはあなが開いてて奧の音を伝える骨がこうやって見えている状態ですね。
実は鼓膜というのは非常に再生力が強くて例えば何かでつっついてあなが開いても通常は普通にまた閉まってくる。
再生して鼓膜のあなが塞がるんですけれども何回も何回も繰り返しこの炎症が起きると再生力がだんだん悪くなってあなが開きっ放しになるんですね。
特に高齢者の場合には免疫力つまりばい菌に対する抵抗力がなくなってきます。
弱くなってきますのでこういう炎症を繰り返しやすくなるという事ですね。
そうすると鼓膜にあなが開きやすくなってくるという事ですね。
ですからこのBさんのようにこういう状態を放置をしていると中耳の炎症がもっと広がってしまって奧の内耳という所先ほどお話ししたように音を感じる細胞がある所ですのでこれが壊れてしまうと回復が難しくなってしまうという事なんですね。
なるほど。
この慢性中耳炎の治療はどうしたらいいんでしょうか?まずは炎症が起きる。
ですからばい菌がついている訳ですね。
ですのでまずはのみ薬あるいは点耳薬こういったものでばい菌を取って炎症を抑えるという事ですけどもただそのまま鼓膜のあなをそのままにしてますとまた炎症を繰り返すという事になりますね。
ですので基本的には鼓膜のあなを閉じる手術。
鼓膜形成術あるいは鼓室形成術といった手術を行うという事になります。
薬と手術という事ですね。
それでは今度は2番目になりますけれども真珠腫性中耳炎ですか。
これはどういうものでしょうか?真珠のような塊ができる中耳炎ですね。
これが真珠腫性中耳炎の鼓膜の像ですけれどもここに鼓膜がありますね。
鼓膜の一番上の所に一見あなが開いているように見えますね。
奧に真珠のような塊があると。
ちょっと光ってるような。
あれが真珠腫というものですね。
で鼓膜のあなみたいな所は実はこれはあなではなくて鼓膜が奧の方に入り込んでいる。
つまり鼓膜というのは皮膚の一種ですからあかが出る訳ですね。
そうすると奧に入り込んだ所の皮膚から出るあかがたまってきてしまう。
耳あかがたまっていくんですか?それで真珠のような?こういう塊になって。
ここにばい菌がついて炎症が起きますと特殊な酵素が出て周りの骨をどんどん溶かしていく。
ですので周りが溶けてまた大きくなってまた真珠の塊も成長していくという事ですね。
ですのでこの真珠腫がどんどん大きくなっていくと例えば奧の方に顔面神経というのがあります。
この顔面神経にダメージがくると顔面神経まひが起きますね。
あるいはこれをもっと上の方にいくとここにはもう脳ですね。
こちらまでいくと例えば髄膜炎が起こる。
あるいは脳膿瘍が起こるといった命の危険にもなるようなそういう状態になる訳ですね。
ですのでやはりこういう真珠腫ができたという事になりましたら正確にこの真珠腫を取り除くそういう手術が必要になるという事ですね。
今度は3番目ですね。
これはどういうものでしょう?好酸球性中耳炎はこれは最近注目されている中耳炎ですけど中高年に増えている。
そしてアレルギーが関与しているという特徴がありまして…あるいは好酸球性の副鼻腔炎という鼻の病気も持ってる方が結構多いですね。
この病気の特徴は…つまり内耳という所に炎症が波及するのが早いという事です。
時には聴力を完全に失うような場合もありまして大体6%ぐらいの方が全く聞こえなくなるというような報告もありますね。
治療はこれはどうしたらいいんでしょうか?これの治療は軽症も重症もキーワードはステロイドですね。
ですので真珠腫性中耳炎とか慢性中耳炎は手術をして治すというような事ありましたけれどもこの病気の場合にはステロイドを使って中心に治療していくという事になりますね。
ステロイド薬を用いれば治ると考えていいんでしょうか?このステロイドは病気の進行を抑えてある程度もちろん改善はするんですけども大本の原因がこれで治る訳ではないという事で残念ながら今のところ完治するというのはなかなか難しいんですね。
ですので炎症が内耳に波及する波及して回復しないような難聴になるのを予防するという意味でこういった治療が重要になります。
進行を防ぐという事ですね。
今日は「大人の中耳炎と難聴」という事でお話を伺いましたが一番気を付けなければいけない事どういう事でしょう?聞こえづらいというのが中耳炎のせいかもしれないと老化によって起こる難聴なんだからしょうがないと放置しないでまずは正確な診断を受けるという事です。
中耳炎の場合には多くの中耳炎が聴力が回復できるという事もありますのでなるべく早く診断をつけて予防していくという事が大切だと思います。
はい。
まず受診という事ですね。
そういう事ですね。
今日はありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/09/16(水) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康「大人の中耳炎と難聴」[解][字]

中耳炎は子どもだけでなく中高年にも多い。高齢者の場合、加齢性の難聴と間違えやすく、治療が遅れて聴力を失ってしまうことがあり得るので注意が必要だ。

詳細情報
番組内容
中耳炎は子どもだけでなく中高年にも多い。高齢者の場合、加齢性の難聴と間違えやすく、治療が遅れて聴力を失ってしまうことがあり得るので注意が必要だ。中高年に多い中耳炎には、しん出性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、好酸球性中耳炎がある。治療はのみ薬のほか、鼓膜チューブ留置術、鼓膜形成術、鼓室形成術などの手術がある。早期発見には、耳鼻咽喉科を受診して、聞こえが悪い原因を調べることが勧められる。
出演者
【講師】慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教授…小川郁,【キャスター】桜井洋子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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