高速道路のある一点から決まって音がする。車が通るたびに段差か何かがあって必ず音がするのだ。アメリカ英語にはこれを一つの単語で表せるのだが、残念ながら日本語ではそうはいかない。
雨が降ると川からいやなにおいがする。下流の話だ。ドン・キホーテのあるあたりの話である。おれはドン・キホーテに安いラム酒を買いに歩く。上流の人間しか立ち入れない元町の裏道を歩いて買いに行く。裏道にすら上流の人間しか入れないバーがある。外で酒を飲むことができないアル中がカウンターの中のマスターと目があってしまったときの心持ちをあらわすウェールズの単語があるが、残念ながら日本語では表せない。
ここで、4種類ほどしかラム酒を飲んだことのないおれのラム酒銘柄ベスト3を紹介しよう。
第3位・ブルガル・アネホ。これはてんでよくない。なにかのアルコールになにかの色が付けられただけという感じがする。ウイスキーにおけるトリスとまでは言わないが(トリスをウイスキーと認めるかどうかという話だが)、なにかしっくりこない感じがする。ゆえに第3位である。
第2位・マイヤーズ・オリジナル・ダーク。ストレートで飲んだ瞬間に喉が少し灼ける感じがする。昔からある砂糖菓子のような香りがする。しっかりしている。腰がある。グッとくるところがある。悪くない。だから第2位である。
第1位・キャプテン・モルガン。第1位はこれである。ショットグラスに注いだ瞬間から甘い香りが広がる。なにせ「香料」が足されているのだ。そして、口に含んでみれば程よい甘さが広がる。なんだ、結局甘い酒が好きなのか? カシャーサでも飲んでいろ、ということになるかもしれない。とはいえ、カシャーサにはない味の奥行きがあるのである。おまけに値段も安い。安っぽさも悪くない。高いラムなど知った話か。それにこいつはドン・キホーテで買える。悪くない。コーヒーとの相性も悪くない。高いアードベッグをめったに飲まないおれの、目下のところの主戦はこれである。おれの安さを知るがいい。
ちなみにもう一種類はアップルトンとかいうのだが、すっかり味を忘れてしまった。さらには、サントリーかどこかの、やけに安いラムがあるのだが、まだ手を出していない。ラベル表示のあまりの無味乾燥さに妙味を感じられない。とはいえ、逆になにかを秘めている可能性もある。
まあいいさ、今夜は飲もう。
さあ、酒を飲もう。
精神科医に言われたことなんて忘れちまおう。
存在しないバーで、ありもしない夢を語り合おうぜ。