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【神奈川】

戦争へ踏み込めば戻れぬ 多摩区の登戸研資料館で企画展

放火用の兵器とみられる長さ約1メートル、直径1〜1・5センチの棒。左手前は、焼夷(しょうい)武器の模型。棒を切断して、このように点火剤として武器に付けた可能性がある=多摩区の明治大学平和教育登戸研究所資料館で

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 旧日本陸軍の秘密戦研究機関「登戸研究所」の一九四五年当時の様子を伝える企画展が、川崎市多摩区の明治大学平和教育登戸研究所資料館で開かれている。注目の展示品は、初公開となる長さ約一メートル、直径一〜一・五センチほどの棒二本。本土決戦時に米軍に火を放つ目的で開発された兵器とみられる。国会で安全保障関連法案の審議が大詰めを迎える中、戦争の真実を物語っている。 (山本哲正)

 棒は、登戸研が四五年春に疎開した長野県駒ケ根市に残っていた。住民の好意で今年五月末に資料館に寄贈された。燃えやすい樹脂を直径一〜一・五センチの棒に固め、中に繊維状の芯が通っている。火をつけると二十センチほどの炎が出るため、この地域の住民は、蜂の巣退治に役立てていたという。

 資料館によると、材質の調査などの必要があるが、登戸研で開発した殺傷能力のある兵器では現存する唯一の物になりそうだ。本土に攻めてくる可能性があった米軍をかく乱するため、棒のまま使おうとしたか、切って小さくして点火剤として、焼夷(しょうい)武器に使った可能性がある。

 この棒は、竹やりと同様、物資不足などで武器の生産が十分できない、戦争末期の追い込まれた状況を伝える。

 明治大文学部教授の山田朗(あきら)館長(58)は「放火用の兵器は簡易。敵に肉薄して使うから、使用者の命の保証はなく特攻に近い。特攻は『犠牲を無駄にするのか』と続けられたが、引くに引けなくなるのが戦争」と看破。戦争が起きてナショナリズムが高揚すると抜け出すのは難しくなると指摘する。

 安倍晋三政権は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、安全保障関連法案の成立を急ぐ。山田館長は「最初から戦争状態に踏み込まないことが大切。国政が危険な今、『ここまでしても戦争はやめられなかった』という真実を見てほしい」と話す。

 企画展は、この棒のほか、実用に至らなかった直径十五メートルの風船爆弾の写真資料なども展示している。開館は原則水曜〜土曜の午前十時〜午後四時。入館無料。

 

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