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【千葉】

県内でも「安保反対」のうねり

 安全保障関連法案をめぐる参院での与野党攻防が十六日夜、激しさを増した。与党が法案の成立を急げば急ぐほど、廃案を求める声は県内でも広がり続ける。

安保法案に反対する教員の会の設立メンバーになった千葉大名誉教授の木村忠彦さん=千葉市で

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◆[学者]平和だから研究できる

 千葉大名誉教授の木村忠彦さん(71)ら県内の学者有志が週内に「安保法案に反対する教員の会」を設立する。木村さんは十六日、「戦後に私たち学者が研究に打ち込めたのは、日本が平和に経済成長できた歴史があったからだ。その歴史を支えてきた憲法を次の世代に残したい」と訴えた。

 教員の会は、木村さんを含む千葉大名誉教授ら計九人が呼びかけ人になり、十八日に設立を発表する。

 木村さんは同大大学院理学研究科教授などを歴任。二〇〇九年に定年するまで四十年近く、物理学を教えた。「法案に賛成、反対いずれの立場でも、多くの人は絶対に戦争をやるべきではないと思っている」と指摘。だが安保法案が成立すれば、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)で武器使用を認める範囲が広がるため「日本が戦闘に巻き込まれる可能性は高くなる」と危機感を抱く。

 「日本の平和的イメージや、国内の非政府組織(NGO)が海外で積み重ねてきた国際的な信用も、台無しになる恐れがある」と話す。十七日は国会前に足を運び、抗議行動に参加する予定だ。「もし法案が成立しても、教員の会は法律の廃止に向けて活動したい」と話している。(中山岳)

「安保法案はリスクを確実にアップさせる」と話すプリティ長嶋県議=市川市で

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◆[議員]保守系でも「反対当然」

 「議員の根本は、国民・県民・市民の生命・財産を守ること。だが安保法案は(国民らの)リスクを確実にアップさせる。議員である以上反対せざるを得ない」。市川市選出の県議でタレントのプリティ長嶋さん(60)は訴える。

 多くの世論調査で安保法案には反対が五割を超えている。「国会議員が『守る』と言っているのに、守られる国民は『嫌だ』と。矛盾でしょ」

 安倍晋三首相ら与党幹部の視線の先にいるのは国民ではなく、アメリカだとにらむ。「そうでないと、この矛盾が説明できない」

 自民党の政策に近く、保守系議員を自認。しかし、原発再稼働と安保法案だけは「まるっきり違う」と語る。信条・政策の異なる政党の議員とも共闘。今月六日に市川市で行われた安保法案反対集会に、地元の県議・市議十七人でつくる「『安保法制』に反対する県議・市議の会」のメンバーとして反対演説も行った。

 仮に法律が成立しても、あきらめは禁物という。「反対の大きな流れはできた。次の国政選挙で、反対の議員を国会に送り込めば、安保法案の廃案などリバース(ひっくり返すこと)も可能だ」 (服部利崇)

「平和でなければ、人間らしい生活が維持できない」と訴える三橋恒夫さん=千葉市中央区で

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◆[障害者]福祉と両立しない戦争

 「県障害者・患者九条の会」事務局長で、車いすで生活する三橋恒夫さん(66)=千葉市中央区=は「福祉と戦争は両立しない。われわれ障害者は平和でなければ、人間らしい生活を維持することができない」と訴える。

 「障害者を生み出す最大の原因は戦争。足の切断や失明などだけでなく、身体に傷がなくても精神障害になる人も多い」と批判。今月六日には、県内の身体、知的、精神障害者の当事者や、団体の代表者、医師や弁護士らが呼び掛け人となって「県障害者・患者九条の会」を設立した。

 「戦前戦中は、障害者は戦争に役に立たない者として『米食い虫』『非国民』とさげすまれた」と指摘。「ひとたび戦争や、戦争を準備するような世の中になれば、また『米食い虫』とののしられる社会が来る。絶対にそういう時代にはさせない」と語気を強めた。 (村上一樹)

「育児を通して心配事が尽きない」と語る荒瀬千秋さん=八千代市で

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◆[ママ]子ども、家庭守らねば

 「安保関連法案に反対するママの会@ちば」メンバーの荒瀬千秋さん(41)=八千代市=には、三歳の長男がいる。「今ここで声を上げなかったら、後で息子に『何で反対しなかったの』と問われたときに恥じてしまう。後悔するのは嫌だから」。人前で話すのは好きではないが、居ても立ってもいられず、街頭活動などではマイクも握る。

 長男は東日本大震災のあった二〇一一年に生まれた。東京電力福島第一原発事故による放射能汚染や、特定秘密保護法、そして今回の安保法案。

 「何を食べさせたらいいのか。戦争に巻き込まれそうになったら…。育児を通して心配事が尽きない」

 「だれの子どももころさせない」がママの会の合言葉。「ママにとって一番は、子どもや家庭、家族を守ること。法案が力の原理で通されても、あきらめないし、忘れない」 (村上一樹)

東京基督教大の山口陽一教授

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◆[宗教者]キリスト教では剣で救いはない

 東京基督教大=印西市=の山口陽一教授(実践神学)は「キリスト教の教えでは、剣をとることは救いをもたらさない。愚かな選択をしないでほしい」と強調する。

 同大学の教職員・役員有志は七月末、安保法案に反対する声明を発表。「いたずらに危機感を煽(あお)るのではなく、冷静な対話を貫く外交こそ最強の抑止力」と主張した。山口教授は声明の呼び掛け人の一人で、ほかにも学校運営の中心メンバーが名を連ねた。「今ここで何か言うべきだという危機感があった」と振り返る。

 法案が衆院で強行採決された七月十五日と、大規模な抗議行動があった八月三十日に国会前に駆けつけた。

 「憲法を守るべき立場の人が、憲法を守らない。そんな不正義が行われているときに、『間違っている』ときちんと言うことが愛国心ではないか」と話す。

 多くの学生が、かつて戦争した歴史を学んでいるため、「なぜこんなやり方が通るのか」と、抗議行動に参加しているという。

 法案の採決が迫る中、「採決されたとしても、おかしいことはおかしいと言い続けなければいけない」と訴えた。 (三輪喜人)

 

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