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【埼玉】

「育休退園」差し止め訴訟 母親、涙ながらに「この制度はおかしい」

記者会見で意見陳述に込めた思いを語る原告の母親(中)ら=さいたま市浦和区で

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 下の子が生まれて親が育児休業を取ると、二歳児以下の保育園児を原則退園させる所沢市の「育休退園」制度は違法だとして、母親らが市に運用差し止めを求めた行政訴訟。さいたま地裁で十六日に開かれた第一回口頭弁論で、意見陳述に立った原告の母親は涙ながらに思いを訴えた。 (谷岡聖史、服部展和)

 意見陳述したのは市内在住の会社員の女性(37)。夫と小学三年の長女、保育園児の次女と三女の五人暮らしだ。十月下旬には四人目の子どもの出産を控えている。出産後に育児休業を取ると、今年四月に入園したばかりの一歳児クラスに通う三女が制度の対象になり、十二月末で退園しなければならなくなる。市が「育休退園」制度を始めたのは四月だが、女性がそれを知ったのはわずか一カ月前の三月だったという。

 「妊娠初期だったこともあり、強い不安を感じ、ショックのあまり出血してしまいました」

 この日、大きなおなかを抱えて証言台に立った女性は声を詰まらせた。女性は、保育園をやめなければならないことを三女に伝えると、三女が「なんで、なんで。いやだ」と不安に思って騒いだと証言。「そんな様子を見ているのがいたたまれない」「保育園に入園できたのに、このままではすぐに退園することになってしまうので、三女に申し訳ない」と続け「(上の子が退園しなくても済む)以前の制度に戻してほしい」と訴えた。

 閉廷後の記者会見で、女性は「肉体的にも精神的にもきつかったが、この制度はおかしいと伝えたかった。制度が良い方向に向かってもらえればと法廷に出た」と思いを語った。

 原告の母親らは六月に提訴し、追加提訴分も含めて一時は十四世帯の十八人が原告だった。その後、上の子の在園継続が認められた原告らが訴えを取り下げたため、現在は十世帯の十三人が原告となっている。

 原告が提訴と同時に、退園の仮差し止めを求めた申し立てについては七月、さいたま地裁が在園継続を申請できることを挙げ「市が継続を決定すれば退園処分を受けることはない」として却下の決定をした。

 

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