関東・東北豪雨:米全滅、農家悲鳴 土砂で麦作付け困難
毎日新聞 2015年09月16日 10時52分(最終更新 09月16日 11時16分)
関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市では、収穫期を迎えていた米を中心に農作物が大きな影響を受けた。大量のごみや土砂が流れ込み、多くの田畑で手がけられている裏作の作付けのめども立たない。実りの秋を前に、農家は「作業再開まで長引けば、さらに被害が広がる」と悲鳴を上げる。
たわわに実った稲は泥で変色し、横倒しになっていた。決壊場所の南東約1キロの同市三坂町の水田付近で、近くに住む専業農家、飯田光良さん(59)が土砂を重機で取り除いていた。
110ヘクタールの田畑を所有する大規模経営で米や麦、大豆を育てているが、ほぼ全域が水没した。主力の米は、収穫できれば売り上げ約3000万円を見込んでいたが全滅した。11月に迫る麦の作付けに、整地も間に合いそうにない。
昨年、2000万円かけて買い換えた農機具4機はローンが残る。農薬や肥料も今年だけで1000万円かかった。農機具倉庫の米の乾燥機も水没。県の農業共済に加入しているが、補償は一部にとどまる見込みだ。高校卒業後、農業一筋の飯田さんは「40年間で最大の危機だ」と嘆く。長年、恵みをもたらしてくれた肥えた土が土砂に埋まったこともつらい。
県によると、被災時の水田は収穫が始まったばかりで、浸水地域の水田の約8割が刈り取り前だった。豪雨による県内の農業被害は現時点で約18億円だが、水害が広域にわたった常総市の分は算定できておらず、今後大幅に増える見込みだ。同市は「まずは被害の全容把握に努める。水害を機に離農者が出ないよう最大限の支援をしたい」としている。【松岡大地】