高校生のデモや集会への参加といった政治活動は、学校外なら原則として認める。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことを受け、そんな内容の通知案を文部科学省が検討している。46年前に高校生の政治活動を広く制限して以来の方針転換に、専門家からは「一歩前進」との声があがる。

 高校生の政治活動は、学生運動の広がりを受けた1969年の旧文部省通知で、放課後や休日に学校外で行う場合も「教育上の観点から望ましくない」と制限された。ただ、デモに参加する高校生もおり、実態に合わない部分もあった。

 通知案ではまた、主権者としての意識を高める政治教育について、国の政策など現実の動きも取り上げるよう促した。教える際には、教員が自分の主義主張を言わないよう配慮を求めており、政治的中立性を保ちながら教える難しさが今後も課題となりそうだ。

 下村博文文科相は15日の記者会見で、選挙権を持つ高校生の政治活動について「緩和することがあるべき方向だ」としたうえで、「18歳はできるけど、18歳になっていないとできないということだと学校が混乱する。どう見直すか検討したい」と述べた。

 通知の内容は今後、与党などの意向を受けて変わる可能性があるが、10月ごろまでにすべての高校に出される見通し。(高浜行人)

■政治意識育まれる

 《林大介・東洋大助教(政治学)》 選挙権を持つ生徒はもちろん、未来の有権者の政治意識を育てる意味で、18歳未満の生徒に校外での政治活動を認めるのは評価できる。学校側が学業への悪影響を懸念するのは分かるが、憲法が保障する思想・信条の自由に関わる問題であり、海外では高校生世代がデモをしたり、議員に働きかけたりするのは普通の光景だ。課題を感じ、行動することで健全な政治意識は育まれる。学校の柔軟な運用が望まれる。生徒側にも学業に支障をきたさない責任ある行動が求められるのは当然だ。

■萎縮への懸念残る

 《小玉重夫・東大教授(教育学)》 政治活動の面では、イデオロギー対立が終わり死文化していた制限がようやく緩和された。政治教育の面では、具体的な政治的事象の扱いを推奨するなど、全体として一歩前進だ。ただ、懸念もある。まず、校内の政治活動を禁じることで、生徒の自主性が妨げられないか。生徒会が主催の政治討論会など、生徒の自治活動が抑制されかねない。また、教員が主義主張を述べないよう国が求めることは現場の萎縮につながりかねないし、政治的な介入で現場が混乱するおそれもある。