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【政治】

安保法案 きょう審議打ち切り 深まる疑念、矛盾

 与党は十五日、安全保障関連法案に関する参院特別委員会で中央公聴会が開かれたことを受け、十六日に審議を打ち切り、同日にも委員会採決に踏み切る構えだ。週内に参院本会議で法案を可決、成立させる方針。衆参両院で二百十時間を超えた審議では、法案の違憲性が指摘され、国民が戦争に巻き込まれるとの懸念が出された。しかし、安倍晋三首相ら政府側は野党の質問をかわしたり、同じ説明を延々と繰り返すのみ。本紙が選んだ論点を検証すると、疑念や矛盾は強まっている。 (生島章弘)

 本紙は法案の審議入り以降、十の論点を選び、政府がどう答弁したかを毎週報じてきたが、十五週間たった今も、議論が深まった項目はほとんどない。

 政府は、他国を武力で守る集団的自衛権行使を憲法解釈の変更で容認したが「行使は自国防衛の目的に限られる」と主張。長年認めてこなかった政府見解と齟齬(そご)はないとの説明を繰り返した。米軍駐留の是非が争点だった砂川事件の最高裁判決を一部引用して「政府には『必要な自衛の措置』を考え抜く責任がある」と論点をすり替えた。

 政府が集団的自衛権行使の事例に挙げる朝鮮半島有事での米艦防護や中東・ホルムズ海峡での戦時の機雷掃海をめぐる答弁は二転三転した。法案を成立させる必要性を自ら否定する状況になっている。

 「違憲立法」と追及してきた野党は政府答弁に納得していない。国会の内外では、憲法学者や内閣法制局長官OB、最高裁長官経験者が相次いで「違憲」と批判しているが、政府は「一私人の発言」と切り捨て、異論に耳を傾けていない。

 首相は「徴兵制は明確に違憲で、導入はあり得ない」と断言。過激派組織「イスラム国」に対する有志国連合の軍事作戦には「参加する考えはない。法案成立後も変わらない」と言い切る。世論の反発を抑える狙いだが、憲法解釈さえ変えてしまう首相が断定しても説得力はない。

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