関東・東北豪雨:常総最後の不明…実は虚偽通報で実在せず
毎日新聞 2015年09月15日 21時35分(最終更新 09月15日 23時44分)
関東・東北豪雨で茨城県常総市が行方不明としていた15人のうち大半の無事を県が14日に確認していたにもかかわらず、市側に伝えたのは15日午前だったことが分かった。残る1人は虚偽通報に基づくもので実在しなかったことも判明。浸水現場では「15人」を前提に捜索を続けており、連携不足が浮き彫りになった。行方不明者の名前が非公表だったため情報が錯綜(さくそう)したとの指摘もあり、災害時の情報共有のあり方に一石を投じた。
「14人の無事が確認されました」。15日午前9時50分から茨城県庁で始まった県災害対策本部会議で、県防災・危機管理課の大高均課長が報告すると、あまりに急激な減り方に出席者からどよめきが起きた。ほぼ同時刻に開かれていた常総市議会の本会議では、高杉徹市長が「安否が分からない方は今も15人いる」と説明していた。
県によると、15人の安否確認は県警が戸別訪問や電話で進めていた。14日午後0時半から同7時にかけて計13人の無事を確認。しかし、県は「あとからでもいいと思った」(田中豊明防災・危機管理局長)と緊急性はないと判断し、15日の災害対策本部会議まで伝えなかった。会議後に記者会見した田中局長は「すぐ公表しないことは配慮がなかった」と述べた。
残る2人のうち1人は15日に無事を確認。1人については「流されたという通報が虚偽で、実在しない不明者だった」としている。安否情報について県警は「県が統一して発表することでコメントする立場にない」としている。
15日の捜索は約2160人態勢で実施。情報が伝わらなかった現場からは、戸惑いの声が上がった。愛知県春日井市消防本部から応援に来ていた原科享介さん(38)は「私たちは多くの人が不明だったからこそ現場に駆けつけた。一気に減って驚いた」と話し、ある自衛隊員は「15人と信じて、みんなで作業してきた。安否情報はすぐに広報してほしい」と話した。
13日に遺体が市内で発見され、身元が特定された男性2人は15人に含まれていなかった。他に不明者が残されている可能性があり、県警などは捜索を続ける。
一方、常総市内約2万3000世帯のうち、停電が続く4900世帯については16日に復旧する見通しだが、15日夕時点で約7400世帯が断水し、復旧の見込みは立っていない。【蒔田備憲、松本尚也、金森崇之】