アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』第22話 生まれたての勇気を抱きしめて走り出す(前編)
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アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』第22話 生まれたての勇気を抱きしめて走り出す(前編)

2015-09-16 00:05
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 ニコ動で『デレアニ』22話 配信中!




 15話以降の「常務VSシンデレラプロジェクト」から脱却して素晴らしいライブを作り上げた回でしたね! 積み重ねてきたシンデレラ達の成長、導きあう彼女たちの絆、その輝き、その全てが美しかった!
 そして卯月……




○星いっぱい輝く星になれ
・アーニャにとっての「星が見える場所」

 13話の、あの美しかった、皆で見た星空。アーニャにとっては、皆に、特にミナミに「見せてもらった」という意識だったのかな。

 今度は自分の足で、自分の靴で見に行く。ステージから見える『星』を眺めるアーニャは本当に美しい……

 そして、そんなアーニャを、20話で送り出し、21話で隣に並ぶために走り出し、今回、きちんと隣に並び立ってみせた新田ちゃん……

 『ラブライカ』としてではなくても、新田美波とアナスタシアは並んで立っている。二人で秋ライブを彩っている。これもまた『ラブライカ』としての絆の成果・輝きだ。


・「振り返らず前を向いてそして沢山の笑顔をあげる」

 先輩のように奈緒加蓮を勇気づける未央といい、今回のトライアドプリムス関連、特に凛の物語は基本的に3話と13話からの成長譚だ。凛の、3話のあの時のような「大丈夫!」「行くよ!」という張りのある声が素晴らしい。ほんとこの、N+の頃から変わらない「行くよ!」が大好き。

 「良いステージでした」もそう。3話のあの時はあくまでも「美嘉のバックダンサー」としての、仮初めの輝きだった。今はもう違う。全ての光と声援が、主役である凛に向かっていた。また一歩、Pが見たい本当の笑顔へ積み重ねたな。


 そして、もう、こう、「トライアドプリムスのステージが見られた」というだけでも、もう感無量です……
・『Trancing Pulse』

 こういう歌だったのか! 


 しっかりと洗練された加蓮と奈緒の歌声に加え、おっそろしく力強い凛の歌声が楽曲の説得力をいや増している! 硬く張った弦の様な強さとしなやかさ、そして流星のような激しさと麗しさに溢れたこのドラマチックな美しさ! そして「トライアドプリムスのライブってこんな感じかな?」の数段上を行く凄まじい映像美!


 この笑顔!

 ここだけ何度も観ていたい……。
 


○小さな一歩だけど

 Pにも見守られながらトップバッターとしてワクワクを表現するらんこうめに対し、見守る人が誰も声をかけない中で過呼吸で倒れるクローネ側のトップバッター文香。やっぱ12話の新田ちゃんを思い出すよね。

 クローネの中でも、年長だし、数少ない常識人だしw、年少のありすを守らなきゃならないし、ほとんどデビューライブみたいなものだし。重圧は大きかったろう。

 そんな大トラブルに見舞われ混乱するアイドル達と……現場におらん常務と……何よりスタッフなにやっとんじゃ! 「あの常務」の手前、勝手な動きをしづらいというのと同時に、常務自身、「多少のトラブルなら何とかするであろう"最高のスタッフ"」を信じすぎていたんじゃないかな。そんなスタッフ達が『多少どころじゃないトラブル』を前に機能不全を起こした……っていうのはあああああああサラリマンなら実に覚えがありすぎて胃が痛い!!

 そんなプロジェクトクローネを、というより、『仲間』を、『秋ライブ』を救ったのが、救えたのが、今回のシンデレラプロジェクトのアイドル達だった。
 
・ちゃんと成長していた彼女たち
 蘭子もキャンディアイランドも凸レーションも*も、そして新田ちゃんも、7話や13話からちゃんと成長していた。焦りや恐怖の表情は微塵も見せなかった。みんなの言葉も力強かった。掛け声もしっかり合っていた。

 13話を超えて、14話以降一歩一歩進んできた彼女たちはこんなにも強くなっていた。その輝き……。成長する少女は輝いている。絆を培った彼女たちは輝いている。眩しい。美しい。

・支え合えるようになった彼女たち
 5話以降、彼女たちはプロジェクト内で支え合ってきた。15話以降は菜々さんや美嘉や夏樹達とも支え合ってきた。そして今回、ライバルとも目されていたクローネたちをも支える。そういうレベルに彼女たちは達していた。13話で起きたのと似たような混乱を、あの時の経験に裏打ちされた機転で乗り越えた。Pも巻き込んで、セットリスト変更と場繋ぎとクローネチームの精神的フォロー、あの13話における美嘉のような役割を、今度は彼女たちが担っていた。

 アーニャは、10話の新田ちゃんから笑顔の練習を受け継いでいるんだろう。そして何より智恵理ちゃん……。この子が18話で身に着けたクローバーのおまじないをちゃんと『外』へ向けて、『次』へ向けて繋げて行けているというのが本当に素晴らしい。あれだけ内向きだった子の見せる確かな成長ぶりに目頭が熱くなる。杏の「じき慣れるって」は9話から成長した掛け声のことも含んでるかも。

 そしてリーダー新田ちゃん。クローネじゃ奏がリーダーってことになるんだろうか。新田ちゃんは、シンデレラプロジェクト内だけじゃなく、ちゃんと『外の仲間』へ向けてもこういうリーダーシップというか、思いやりの力を行使できるようになっていた。それは、2話以降、ちょっとずつちょっとずつ仲間を支えてきていた積み重ねの帰結だ。

 得意のMCで場を繋ぐ凸レーション、新生ローゼンブルクエンゲル、そして*withなつなな。みくと李衣菜だけじゃなく、夏樹と菜々さんも加わる事で、対応力とか即応力とか様々な力が倍増されている。ひょっとしたらこいつらトークだけで2時間くらいやってもいいんじゃないかw 16話や17話や19話で結束した絆の力で舞台をつなぐ。かっこいい。美しい。


(マジモンのロッカーのギターの隣でエアギターかます李衣菜は、SSAの愛美さんの次のステージでエアギターやらかした青木さんの度胸を彷彿とさせるw)

 莉嘉のMCもね。

あの時はスモック着せられそうになって表情を曇らせていたけれど、今回は大好きな姉からも認められた「カリスマJC」として前向きに捉えている。スモック自体が変わったわけじゃなく、変わったのは莉嘉自身。それも、皆から支えられて。改めてあの17話の美しさを思い出す。
 
 何より、裏方においても人と人を(卯月すらも)繋げ続けた未央。

前回じゃ「主役」としての活躍だったけれど、今回は裏に回り、混乱に陥った現場にPを呼び、裏のアイドルたちと表のアイドルたちを繋ぎ、表に出ないまでも八面六臂の活躍をやってのけた。Pと培った信頼、シンデレラプロジェクトの仲間と培った信頼を元に、そして今度は舞台を根底から支えた。あの3話でド緊張していた未央が、あの6話で泣いていた未央が……。これもまた、7話や13話、そして15話以降で培ってきた経験と信頼、絆が結実した成果だ。
 「私に何かやれることある!?」

「やれることを1つずつ、全部やる!」は14話以降で積み重ねてきたテーマ。「とにかく突っ走る」性格が功を奏した。未央もみく達もPも、やれることをやった結果のステージだ。

・感慨深そうな美嘉
 あの13話で、シンデレラプロジェクトチームのためにMCで場を繋ぎ、新田ちゃんの精神的フォローを行っていたのは美嘉だった。あの時の美嘉に近い役割を、今度はシンデレラプロジェクト全員で担う。

 時間を稼ぐためにMC。チーム同士の精神的フォローは新田ちゃんを中心に行い、倒れた文香の直接のフォローはパートナーであるありすに任せる。
 美嘉がシンデレラプロジェクトに与えた力が、今度はシンデレラプロジェクトを通じてプロジェクトクローネへ繋がっていく。その様子を見てこの感慨深げな表情。

 頼もしくなった後輩、後輩が伝えていく力。先輩である自分達が出て行くまでもなく、可愛い後輩たちは後輩たちの中で問題を解決した。満足だろう。この表情を見てるだけでも泣けてくる。

・「たいしたことはしていない」プロデューサー

 ほんと、ここでPを連れてきたのは未央のファインプレーだった。信頼してるんだな、Pを。あの13話で混乱を治めた、7話で自分を救ってくれた、5話でみくを救ったPを。
 実際、クローネの件に関してはPの管掌範囲じゃないだろうけどね。そういう問題じゃなく、秋ライブ成功のため、アイドル達の笑顔のため、それを観るファンの笑顔のため、いつもの変わらないテーマのためにこの男は動いた。クローネの『最高のスタッフ』が常務の下で遠慮して動きづらそうにしている横で、自由闊達縦横無尽に力を行使する。ホント頼もしい。
 でも、Pが実行レベルで変えたのはセトリの順番くらい。後は未央達の力に任せた。シンデレラプロジェクト全員の、『外』へ向かって働きかける力を補佐するのが今回のPの本当のお仕事。

 常務に説明したように、「現場の人間が現場の混乱を現場で何とかした」だけなんだよね。シンデレラプロジェクトもプロジェクトクローネも関係ない。いつも変わらない「笑顔のため」に動いた結果だった。「できることをやった」のはPも同じ。
 アイドルたちもPも、シンデレラプロジェクトもクローネも、互いを敵だとかは微塵も思っていない。

 だからこそ成し遂げた秋ライブの成功だ。
 クローネは、前回のラストでもそうだったけど、基本的にチームとしての結束力がまだ生まれていない状態だった。ライブ前に手を繋ぐシンデレラプロジェクト達に対し、クローネはバラバラ。

しかし今回、シンデレラプロジェクトの力を借りて、困難を一つ乗り越えて、この団結力。
 クローネにはクローネの個性と笑顔、そして絆がある。この絆もまた美しい!


・常務にとっての「星が見える場所」
 上からだけじゃない。地べたに立ってこそ『見上げられる』星の輝きがある。

 そして、ファンのレベルだけじゃない、Pと同じ地点、舞台の下に立ってこそ見える星の輝きがある。

 それを知る事が出来たな。ある意味じゃ、今回は常務の成長譚でもあった。
 というか、Pに向けた「今日はこれくらいにしといたるわ」にしろ、『現場の大切さ』を知った途端に写真撮影の現場に出てくる辺りにしろ、常務可愛すぎでしょw

 元々、アイドルの輝きを見つける能力は高い人だ。新たな見方を知る事で新たな輝かせ方を知る事も出来るかもね。


○NGとTP、未央と凛
・改めて、未央にとってのニュージェネと、未央にとっての凛
 「ニュージェネが好きだからこそ」

 鏡に姿を映しての会話は『素直な心の交わし合い』。一旦外に出たからこそ確認できる自分の気持ち、チームの大切さ。前回のように美しい『演劇』を通じてではなく、洗練されていなくても素直な自分の言葉で改めて「好き」を伝える未央、そしてその想いを正面から受け止める凛が熱い。
 「to the NEXT STAGE!」

 次を信じている。そのために今頑張る。未央も凛も、目標が明確に見えている。

・『先輩』

 「実感がわかない」から一転、トラブル含みのデビューステージで緊張している奈緒と加蓮。二人の視点に立てば、もしかすると3話の未央のように世界の色が失われているのかもしれない。

 そんな二人を励ます凛と、そして未央と卯月は、ちょうどあの3話で励ましにやってきた先輩二人、茜と小日向ちゃんとダブる。「楽しんでいこう!」は美嘉と同じ台詞だ。あれから、泣いて喜んでまた泣いて色々学んできた未央達は、あの時の先輩の立ち居地に立てるまでに成長していた。これも、美嘉の力がシンデレラプロジェクトを介してクローネへ伝わっていったのと同じ。あの時の美嘉と茜と小日向ちゃんの力が、未央達を通じて奈緒と加蓮に伝わっている。この力の延々とした繋がりの絆、そして未央達のきちんとした成長、たまらなく美しい。
 
・改めて、凛にとってのニュージェネと、凛にとってのトライアドプリムス
 もう凛は軽やかだよね。新田ちゃん達やPが、シンデレラプロジェクトもクローネも関係なく支えられるように、凛もまた、ニュージェネレーションズもトライアドプリムスも両方で輝ける。

 ニュージェネとトライアドの間に引かれた線を好き勝手に飛び越えられる凛。楽しげで、力強い。1話や7話、あるいは前回、自分の立ち居地に悩んで身動きを取り辛そうにしていた凛はもういない。その軽やかさは美しさだ。
 掛け声は13話と同じ「チョコレート!」。

 未央と卯月と共に階段を駆け上がったように、奈緒と加蓮と共に駆け上がる。変わらない姿と、ちゃんと力強くなっている足取り。熱い。

 「あんたが私のプロデューサー?」に対しての

 「私はあなたのプロデューサーです」
 シンデレラプロジェクトでもクローネでも関係ない。『最後』までを面倒見るのがアイマスだからな。この信頼感と絆もまた1話から成長している。



 いやー、部長の言うとおり、個性的な彼女たちの絆は美しい! 成長する彼女たちは輝いている! これまで連綿と紡がれていた、彼女達の個性が活きた成長物語、絆の物語が結実したライブでした。いいもんです、これぞアイマスです。








○で、シンデレラに憧れる少女、島村卯月はどうなりますか

 「私、がんばります!」
>「何を頑張るのですか?」
 「レッスンと、あと笑顔をがんばります!」
>「レッスンしても、歌もダンスも演技も、アイドルとしての輝きは他の皆が先に行ってしまいます」
>「何を頑張るのですか?」
 「じゃあ、笑顔だけでもがんばります!」
>「Pさんによれば、皆の笑顔も同じくらい素敵だそうですが」
>「その笑顔も作れなくなってしまいましたが」
>「何を頑張るのですか?」
 「??????????????????」


・『物語』が卯月を殺す
 『アイドルマスターシンデレラガールズ』は、これまで21話かけて編んできたように、「それぞれの個性を輝かせよう!」という、美しい成長と絆の物語。
 その『成長と絆の物語』が卯月を殺す。

 変わり続ける世界、変わり続ける仲間、変われない自分。

 ニュージェネでもトライアドでも立てるようになった凛、他の皆は変わっていく、成長していく。しかし卯月は取り残される。
 
 卯月の写真立てに入った皆の笑顔、隣にあるのは凛の花立て、生けられているのは未央の演劇の中でも登場したヒース。

花言葉は「私は私らしくありたい」「裏切り」。どちらも、今の卯月には致命的だ。

 疎外、疎外、疎外……。卯月は誰とも真っ直ぐな笑顔を交わし合えない。

合わないピントは心そのものの疎外感を示す。


最終的にはわざわざ段差まで設けて。

 湧いてこない『何か』。掴んでいない。

勇気も、元気も、頑張りも。

 信じていたPの「挽回しましょう」で、「笑顔を作れていない自分」に気づいてしまった。信じていたPだからこそ、信じなければならない言葉。

 「頑張ります!」が空回りしていた事に気づいてしまった。「憧れに向かって頑張りますはいいけれど、何を頑張ればいいか分かっていない」事に気づいてしまった。「頑張ります!」は「頑張らなきゃ!」の裏返し。その頑張りが成果として表出していない事に気づいてしまった。「頑張ります!」を封じられてしまったら卯月は何をすればいいんだろう。それが分からない事に気づいてしまった。

・解ける魔法
 今までずっと『本日の時計』は、彼女達が一歩成長した時、彼女達が絆を確かめ合った時に進んでいた。
 今回も、未央が卯月を励まして57分から58分へ


 ライブが成功して58分から59分へ。

 そう、まるで、カウントダウンのように。

 そうして、お城から逃げ去るシンデレラを見下ろしながら、魔法が解けた

 いや、実際、この物語全体がそうだったかもしれない。みんなで絆を確かめ合って。一歩ずつ成長してきて……。じゃあ、その成長に乗り遅れた子はどうするの? 絆から一歩下がった場所にいる子はどうするの? この物語が一つ進む時計の歩みは、卯月の魔法が解ける時間へ一歩一歩進む一里塚だった。
 15話、地下倉庫に叩き落とされた時に止まっていた時計は55分だったんだよね。
そこから12時までは、卯月にとっては存在しない時間。

 あの美しかった21話で、未央と凛は上手へ向かって一歩進んでいたけど、卯月は下手へ向かったまま立ち止まっていた。今回、下手へはけて行く……。


・それ、笑顔のつもりか?

 強烈……

 この笑顔じゃない笑顔。もはや笑顔の演技すらできなくなった卯月がこんなにも……口に出すのも憚られるけど『おそろしい』ものだとは。

・隣に立つ小日向ちゃん

 Pも、「島村さんが何か殻を破れないでいる」という点は気付いていたのかな。「小日向さんとの仕事が必要」というのは、小日向ちゃん自身が言うように「変われない部分もあるけど頑張らなくちゃ!」を卯月に共有させたかったからだろうか。でも、その言葉は卯月にとって救いにもなるけれど毒にもなる言葉なんだよね。小日向ちゃんは頑張り方を知っている。だからこそあの3話なんかでも誇り高い背中を卯月達に見せる事ができた。
 でも今の卯月は頑張り方を知らない。

 「え、緊張しててもあんなに凄いんですか?」「緊張しててもお仕事を楽しめるなんて凄い」みたいな劣等感の表情。
 アイマスにおける最終兵器、「どうしたいかだけでいいんだよ?」すらも、今の卯月にとっては刃だ。どうしたいかがわかってないんだから。

・卯月を苛んだモノ
 「裏方を頑張る」というのは、「これが終わったら凛ちゃんは戻って来る。全部元通りになる」とでも思っているからだろうか。
 トライアドプリムスで極限に輝いてる凛を見て、祈るような。

卯月自身は何を祈っていたつもりだろう。「凛ちゃん頑張って!」だっただろうか。「凛ちゃん戻って来て!」ではなかったろうか。でもその想いは「裏切られ」た。

 今回も最終的に皆成長してたよ。改めて冬ライブへ向けての決意を固めた上で、敵味方、シンデレラプロジェクトもクローネも関係ない、広い視野で世界を見られるようになっていた。みくと李衣菜も、トライアドプリムスとなつななユニットを同列で語っているし、未央も「どっちも大事だよ」と言っている。最終的な目標へ向けての成長、大事なものが何なのかが見えている。

 例えば1話じゃ、卯月の笑顔が凛をアイドルの世界へと連れ出した。例えば7話じゃ、卯月の笑顔がPを救い、そのPが未央と凛を救った。例えば21話じゃ、卯月の笑顔が凛の背中を押した。今回ですらも、笑顔で凛を送り出した。だからこそ、そこから未央や凛、P、そしてシンデレラプロジェクト全体の絆と成長が生まれた……。卯月一人を置いて。今回、卯月が支え続けた『美しい物語』が全て反転して卯月を刺し殺す。すごい皮肉だ。

 それは『シンデレラストーリーへの憧れ』そのものと言えるかもしれない。誰もが持つ『選定』願望とでも言うべきなんだろうか、「エクスカリバーに選ばれた存在でありたい」「王子様に選ばれた存在でありたい」、厭な言い方をすれば「選ばれたい」という願望や執着。卯月の「変われない、目標がない、上に行きたいという『欲望』が無い」という『無さ』の裏に、そういった『選ばれたいという気持ち』『シンデレラになりたいという憧れ』があって、1話で見せたようなその『憧れ』が今になって卯月をメッタ刺しにしている。

 あるいはそれは、(あの時のように『アイマス』を一人の少女に仮託する『プロデューサー』の厭らしさ・残酷さなんだけど)『アイドルマスターシンデレラガールズ』というコンテンツが持つ根本的問題でもあるかもしれない。「ヘンなアイドル大集合!」なアイドルゲームの中心に在って、「150人以上の少女の最大公約数としての、職人芸のような究極の『普通』『普遍』」を目指して作られた島村卯月という少女。そんな彼女をセンターに擁するコンテンツにとって、「それじゃあ、卯月にとって、他の150人のシンデレラに対する換えのきかないアドバンテージって何?」という問題は、「デレマスにおいてアイドルの個性ってなんじゃいな?」を炙り出す。何で卯月がセンターなの? デレマスで一番大切なアイドル性・シンデレラ性って何? そういった物語。

 あるいは島村卯月が出す答えが、今後の『アイドルマスターシンデレラガールズ』全体の指針になっていくのかもしれない。

・信じたいな目には見えない小さなshining star
 なぜ変われないのか、変わらなくちゃだめなのか。今の卯月に必要なのは、本当に小さなこと、『自分自身の笑顔の価値に気づく事』なんだけど、それこそ今の卯月に、誰がそれを気づかせられるのか。

 誰が導くのか。


・回帰
 ようやく気付きはじめた凛とP。遅かったか? 

 いや、多分、まだ遅くはない。「『今更』なんてない」。今からでも卯月は救いに行ける。
 楽屋で未央が凛に言った「やっぱり私はニュージェネが大好き!」を卯月は聞いていないんだよね。想いは同じであることを卯月は知らない。今の卯月に必要なのは、見落としているものを見つけること。一番大切なのは卯月自身の笑顔の価値に気付くこと。気づかせること。

 次回予告のカットは1話のあの公園。あの時と違って花もなく信号は赤信号だけど、もう一度あの美しさに回帰するのかな。




 今まで、大切に丁寧に美しく積み上げてきた『物語』。その美しさは本当に本物ですが、その美しいはずの『物語』が、しかし深刻に卯月を苛むというのが実に残酷で辛い。笑顔を失った卯月がしっかりと復活するストーリーを今から待っています。



 それでは、それまで、佳きアイマスライフを。


 中編は、プロジェクトクローネや凛たち、アイドルをもう少し細かく。あとPについてなど。
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非常に丁寧な考察記事、いつもありがとうございます。楽しませていただいております。
卯月の『憧れ』が卯月を刺している。この、本来美しいものであるはずのものが反転して残酷なまでに在り方を変えてしまう構造は、6話を代表してデレマスに特徴的な手法ですね。未央Pの自分にとっては6,7話は本当に心苦しかったですが、今回も心の準備があってなお苦しい。

アイドル性・シンデレラ性が問われる、というのはなるほどと感じました。デレマスで卯月がセンターを張る理由。アニメがこの作品を通じて全国のアイマスPに伝えたいメッセージがこの問題のアニメスタッフからの解答になると考えています。(1話のEDも『メッセージ』でしたね)
21分前
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そう、2話以降積み重ねた未央の物語の美しさが6話で未央を刺したのと同じ形になってるんですよね。卯月を救う鍵もきっとそこにあるのでしょう。
1分前
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