日本の有名な版画家
版画家、というカテゴリーは、いわゆる「書」「絵」「器」などに比べればマイナーだと思われる人もいるかもしれません。
しかし、素晴らしい作品を残す、有名な版画家がいるのも事実です。
今回は、日本史上に燦然と輝く、有名な2名の版画家をご紹介します。(以下敬称略)
その才は「仕事の合間」に生まれた〜畦地梅太郎
畦地梅太郎という版画家は、非常に有名な版画家のうちの一人です。
1902年に生まれた作家ですが、「子どもの頃から版画の勉強をしていた」「昔からその道で有名な家系の人間だった」というわけではありません。
もともとは油彩画家になることを夢見ていた少年でした。
彼がその才能を発揮し始めたのは、25歳のころからです。
当時、内閣印刷局に従事していた畦地は、職場の道具を使い、仕事の隙間の時間に版画をはじめます。
わずか1年後、日本創作版画協会の作品展で入選します。
これをきっかけとして版画作家の道を歩み始め、さまざまな大会で入選や受賞を果たし、国際版画展などにも作品をよせるようになります。
独特の「山男」などをはじめとし、山や家族といった暖かみのある作品を打ち出してきた作家です。
96歳の年惜しまれつつ亡くなりました。
面白味、不思議さ、そして「日常」があわさる作風〜野田哲也
現代の版画家としてとても有名な野田哲也は、東京藝大の名誉教授です。
1940年に誕生し、東京藝術大学で油絵を学んだ作家ですが、27歳のときには日本版画協会で新人賞を受賞しています。
その後もさまざまな大会でその功績が認められてきました。
彼の作る版画は、いつも日常とマッチしています。
私たちが当たり前に口にする野菜や、庭先で見る花、観光地のベンチや風呂場といったものを題材にとったものもあります。
特に、ドリット・バルトゥール夫人との結婚後からずっと発表している「日記」シリーズなどはその傾向が顕著です。
しかし氏の版画は、そのなかにも、どことなく不思議で、面白味のある雰囲気が差し込まれています。
その不思議さと日常のマッチングが、氏の版画の魅力である、と言えるのかもしれません。