上遠野郷、吉田拓史
2015年9月14日11時25分
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐり、翁長雄志(おながたけし)知事は14日午前に記者会見を開き、移設予定地の同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消す手続きに入ったと発表した。28日に国側の反論を聴いた後、10月上旬から中旬ごろに正式に取り消しを決める見込み。辺野古移設をめぐる県と国の対立は、法廷闘争も見据えた全面対決に突入する。
翁長氏は会見で、前知事による承認手続きの「法律的瑕疵(かし)」を指摘した第三者委員会の報告について「内容を精査してきた結果、承認には取り消すべき瑕疵があるものと認められた」と説明。8月から1カ月間行った政府との集中協議にも触れ、「私が言葉を尽くしても(辺野古移設反対の趣旨を)理解いただけないことが分かった。政府から(中断していた移設作業の)再開の方針を伝えられ、承認取り消しの決意を固めた」と語った。
県は14日、取り消し手続きに入るとの文書を移設作業の事業主体である沖縄防衛局に通知。28日に県庁で反論の意見を聴取すると伝えた。会見に同席した弁護士は、実際に承認を取り消す時期について「常識的には3週間~1カ月後」としており、国の反論の内容について1~2週間検討した後、10月上旬から中旬に翁長氏が取り消しを表明し、国側に伝えることになりそうだ。
移設計画では、普天間飛行場に替わる基地施設を造るため辺野古沿岸部約160ヘクタールを埋め立てる予定。公有水面埋立法に基づき、沖縄防衛局が2013年3月に埋め立てを申請し、仲井真弘多(ひろかず)知事(当時)が同年12月に承認した。
しかし、14年11月の知事選で「移設阻止」を掲げて初当選した翁長氏が、承認に至る審査過程を検証する第三者委員会を設置。今年7月、第三者委が承認手続きについて「法的瑕疵」があると結論づけた。
知事の承認がない状態で移設工事を行えば違法となる恐れがあるため、承認取り消し後、国は行政不服審査法に基づく不服審査請求などの対抗措置をとるとみられる。県がさらに対抗措置をとり、最終的には法廷での争いに発展する可能性が高い。
移設計画をめぐって県と国は、移設作業を1カ月間中断して移設の是非を話し合う集中協議を8月中旬から行ったが、平行線のまま今月7日に終了。沖縄防衛局は中断していた移設作業を12日に再開し、今秋にも埋め立て工事に取り掛かる構えで、翁長氏はこうした政府側の動きをにらみつつ、承認取り消しに踏み切るタイミングを計ってきた。
翁長氏は今月21、22日にスイス・ジュネーブで開かれる国連人権理事会に出席し、辺野古移設反対を訴える予定で、承認取り消しの手続きと並行して、世論喚起のための行動も展開する。(上遠野郷、吉田拓史)
◇
■普天間移設問題をめぐる今後の動き
《9月》
19日 翁長知事がスイスへ
21、22日 翁長知事、国連人権理事会で演説
28日 県による沖縄防衛局長への意見聴取
30日 名護市辺野古のボーリング調査期限
《10月》
中旬ごろ? 承認取り消しを正式表明
《11月》
1日 県外からの埋め立て土砂規制条例施行
《2016年1月》
24日 米軍普天間飛行場の地元・宜野湾市長選
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