★「選挙により選ばれた議員が審議を深め、決めるべき時には決めていただきたい」。14日、首相・安倍晋三は安保法制を審議する参院平和安全法制特別委員会の集中審議で採決を促した。昨年7月、集団的自衛権の解釈変更を閣議決定してから今日まで、国民はこの強引で順法精神と立憲主義を否定する法案に不安の声を上げてきたが、首相の耳には届かなかった。

 ★そもそもこの法案が可決するまでには多くの政権の仕掛けがあった。安倍の信任の厚いNHK会長・籾井勝人は「政府が右というものは左とは言えない」とか、公平性とは「ひとつひとつ番組の中でやるべき」などと報道の意味を意図的にはき違え、両論併記が公平性であり、政府に沿うことが正しい報道とNHKの報道姿勢を再定義し、民放や大新聞は編集幹部や経営幹部がそれに倣うように首相が食事に誘うとわれ先に会食のテーブルに並んだ。

 ★メディアを骨抜きにした後は地方自治体が、今まで使用させていた市民ホールや会議室などを護憲勢力の集会などには「政治的中立性を損なう恐れがある」などとし、後援から外れたり、使用許可を取り消すなどの動きに出た。また、戦争の悲惨さを伝える漫画「はだしのゲン」を図書館で閲覧しにくいようにさせるなど緩やかな弾圧を進めていく。

 ★そして「イスラム国」に人質になり殺害された邦人に対して「自己責任」という視点を植え付け、「貧困も自己責任」「パワハラも自己責任」と政府への従順さを示す限りセーフティーネットを働かせるという“常識”を作り出した。一連の動きを見る限り、メディアの姿勢が変わったことが最大の政府の効果になって表れたことがよくわかる。窮屈な世の中になったものだ。(K)※敬称略