経済の死角

ドキュメント山口組分裂 
すべてを知る親分が私に語ったこと

暴力団取材の第一人者が緊急寄稿

2015年09月15日(火) 週刊現代,溝口敦
週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

「世界最大の犯罪組織」が、割れた。ネットやテレビでは真偽不明の情報が飛び交うが、いったい「菱の代紋」に何が起こっているのか。暴力団取材の第一人者が現役組長の肉声を交えて現状をえぐる。

首謀者の意外な名前

この8月に山口組は分裂したが、「神戸山口組」が突発的に蜂起・分裂を決めたわけではない。ここに来るまでには周到な準備があった。

なぜそう言えるのか。実は去年10月、私は都内のホテルで山口組の直系組長の一人に会った。彼は弘道会支配が強まる山口組の情況を語った後、

「すでに考えを同じくする者たちが定期的に会合を持っている。われわれが立ち上がる以上、絶対、弘道会側に潰させるわけにはいかない。潰されないだけの準備をしっかり固めて立ち上がります」

と洩らした。

話を聞きながら、私は半信半疑でいた。仲間うちの会合を重ねながら、司忍組長や竹内照明若頭補佐(共に弘道会の出身)に知られずに済むのか。すでに高山清司若頭(弘道会出身)は4000万円恐喝事件で判決が懲役6年の有罪となっていた。一度は最高裁に上告したが、この年の5月に上告を取り下げ、大阪拘置所に拘置されていた。

高山若頭の「社会不在」は蜂起勢にとってプラス材料だが、ヤクザはさほど口が固いわけではない。仲間うちのおしゃべりから事前に構想が漏れ、弾圧されるのではないかと危ぶまれた。

当然のことながら、私は聞いたことを記事化しなかったし、誰にも口外しなかった。だいたい蜂起・分裂する計画があるなど、記事化できるテーマでもない。またどちらに味方するわけではないが、私のせいで彼らの計画が潰れたら、寝覚めが悪すぎる。

次ページ 匿名の手紙に書かれた分裂構想…
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