混乱の株式相場で独り気を吐く「ETF」の正体
取引規模はアベノミクス前の100倍近くに
8月下旬から中国経済減速と米国利上げの懸念がシンクロナイズし、大幅な調整が続く世界の株式市場。そんな混乱相場の中で、東京証券取引所に起きている異変をご存じだろうか。通常の株式に代わって、ETF(上場投資信託)が、証券売買の主役の座をうかがうところまで急拡大しているのだ。
ETFとは「証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託」(投資信託協会HPより)。日本で代表的なのは日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などに連動する商品だ。これらETFは、連動する株価指数とほぼ同じ値動きをするように運用される。
アベノミクス以前の100倍近くに膨張
日経平均株価が2月17日以来半年ぶりの1万8000円割れとなった8月25日。ETFの売買代金は1兆0163億円と史上初めて1兆円を突破した。アベノミクス相場以前では、多い日でも100億円程度だったことを考えれば、ざっと100倍近くに膨張している。その“超”のつく拡大ぶりがわかるだろう。
218銘柄ある国内ETFの中で、売買拡大を主導するのは野村アセットマネジメントの日経平均レバレッジ型(日経レバETF)だ。日経レバETFは日経平均の2倍の値動きを目指すもの。相場が乱高下する中、短期売買益狙いの資金が殺到し、トヨタ自動車などと数倍の差をつけて連日、銘柄別売買代金でトップを走る。
このほか銘柄別売買代金トップ10内には、日経平均のマイナス2倍の値動きを目指す(つまり日経平均が+5%なら-10%、-5%なら+10%といった具合)日経平均ダブルインバース型もランクインしている。
このように短期売買で大幅な利益を狙うレバ・インバ型がETFの全売買代金の約7割を占めるが、ETFにはもう一つ、別の顔がある。長期の安定的なリターンを狙って、国内外の資産に分散投資する際の最適なツールという顔である。
ETFの投資対象は、国内外の株式や債券、コモディティ(商品)、REITなどに広がっているが、それぞれの分野で各種指数(インデックス)への連動を目指すもの(パッシブ投資)が主体となっている。株式を例に言えばインデックス投資は、倒産や不祥事などの個別株のリスクは存在せず、その分、リスク(ボラティリティ)は個別株より小さくなる。そして、リターンは市場全体の平均値となるわけだ。