突然といっていいだろう。9月11日、内閣官房・内閣情報調査室(内調)は、情報収集衛星(IGS)で撮影した、鬼怒川の水害の情況の画像を公開した。公表された画像は2枚。デジタル処理で解像度を落としてあるが、IGSで取得した画像が公開されたのは、これが初めてである。
画像公開の背景には、内調が、現在衛星4機体制のIGSを8機体制に倍増させ、さらに衛星間通信を行うデータ中継衛星を新たに保有する意志を示していることがある。
ところが、同じ11日、グーグルは、災害関連情報を集約して表示するサイト「Googleクライシスレスポンス」で、水害地域の詳細衛星画像を公開した。米民間地球観測会社の衛星が取得した画像は、デジタル処理で劣化させたIGS画像より鮮明。かつグーグルマップの上に重ねて表示され、拡大縮小も自由自在。利用者の利便性は衛星情報センターの2枚の画像を圧倒的に上回っていた。虎の子の画像を公開することで「IGSは国民生活全般の役に立つ」という印象を作りたかった内閣官房は、出鼻をくじかれた。
Googleと同日のデータ公開、期せずして競うことに
IGS取得画像は、2003年のIGS運用開始以降公開されておらず、現在は特定秘密保護法の指定対象となっている。ところが今年9月9日、内閣官房・内閣情報調査室は国内において大規模な災害や事故が発生した場合、かつ画像情報公開に意義がある場合に限り、デジタル処理で解像度を落としたIGS取得画像を公開すると方針を変更した(大規模災害時等における情報収集衛星画像に基づく加工処理画像の公開について:平成27年9月9日 内閣情報調査室 )。
すると翌10日に、台風18号に伴う雨雲により、関東北部から東北にかけての地域を記録的豪雨が襲い、鬼怒川などの河川で堤防が決壊して大水害を引き起こした。9月11日、内閣情報調査室は、方針変更に基づき2枚の画像を公開した(平成27年台風第18号による大雨等に係る被災地域の加工処理画像等について:平成27年9月11日)
IGSは、太陽光で地表を撮影する光学衛星と、レーダーの反射波を使うレーダー衛星の2種類が運用されている。今回公開されたのは光学衛星の撮影データ。衛星搭載センサーは60cmの分解能を持つが、公開画像はデジタル処理で解像度を落としてある。
ところが同日、Googleクライシスレスポンスで、より解像度の高い衛星取得画像が、より使いやすい形で一般に提供された。
IGSの画像と、Googleクライシスレスポンスの画像を比べてみよう。
内調が公開したIGS取得画像は、鬼怒川の決壊ヵ所付近と関東鉄道常総線・水海道駅から鬼怒川・利根川合流点にかけての2枚。IGS光学衛星が撮影した画像に、その画像が地図上ではどのあたりになるかを示した小さな図が附属している。共にpdfファイルに画像を埋め込んである。