サイバーセキュリティー技術者の中でも最高の技術を持つ“トップガン”と称され、日本のみならず世界からも注目を集める、名和利男(44)。その仕事の大きな柱の1つは、サイバー攻撃を受けた可能性のある国や企業から依頼を受け、その実情を正しく捉えることにある。例えば、データを破壊したり盗みとったりするマルウェア(悪意のあるソフトウェアの意)が紛れ込んでいるかどうか、また紛れ込んでいる場合、どのような悪さをするものなのか、その対応は一刻を争う。
しかし年々巧妙化し、かつ悪質化しているサイバー攻撃において、攻撃の実態を正確に把握することは難しくなっている。そこで名和は、こうした緊急対応のとき、つねに「攻撃者になりきる」ことを心得に作業にあたる。
時に何万行にも及ぶ膨大なプログラムの中から、通常あり得ない、異常な文字列を見つけ出すこの作業。文字や数字の羅列からいち早く異常な文字列を見つけるためには、たとえば、「金」や「個人情報」など、攻撃者はどの情報を狙っているのか、想像力を働かせながら探すことが重要だと名和は考える。