2015.09.15  数のいろいろ
数の概念は自然数から始まり、ゼロを取り入れ飛躍的に進展した

松野町夫 (翻訳家)

数は人間の知性が創造したきわめて抽象的な概念である。数にはいろいろな種類があるが、もっとも基本的な数は、1から始まり、2, 3, 4, 5 ・・・とどこまでも続く自然数(しぜんすう)である。自然数は、ものを数えることから自然に発生し、メソポタミアやエジプト、中国など古代文明社会にすでに存在した。

数の概念は自然数から始まり、その後、負の数や小数、分数、ゼロ(zero)など、新しい概念を取り入れながら進化した。とくに、ゼロを取り入れたことで、桁数の多い大きな数も簡単に書けるようになり、数学は飛躍的に進展した。ゼロは古代インドで6世紀頃に発見された。ゼロは「何もないこと」、「無」、”nothing” を意味する。このような無の概念は、とくに目新しいものでもなく きわめて普遍的な概念なので、当然のことながら、古代社会にもあったが、数とは無縁のものと思われていた。

しかしインド人は、古くからゼロを数と認識し、0 という数字を当て、普通の数と同様に、数の表記や計算に活用した。たとえば、1桁の数は、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9、2桁の数は、10, 11, 12, 13 …、3桁の数は、100, 101, 102, 103 … というように。このように、桁(位取り)を数の位置で示すことにより、桁数の多い大きな数でも、10個の数字(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9)だけで、簡単に表記できる。

10個の数字(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9)は、アラビア数字と呼ばれているが、もともとはインドで生まれたものなので、ここではインド数字と呼ぶ。インド数字の特徴はそれぞれが一文字であり、しかも 4,5 を除いて、すべて一筆書き(unicursal)できる点にある。つまり画数は1画となる(ただし 4,5 は2画)。

インド数字は、その他の国の数字と比較すると、文字としての単純さがきわだっている。漢数字やローマ数字は、今も使われるだけあって洗練されているが、文字としての単純性において、また数の表記(記数法)において、インド数字にはおよばない。インド数字は10世紀にヨーロッパに紹介されたが、ゼロの意味も重要性も理解されず、インドの記数法と計算法がヨーロッパに定着したのは15世紀以降だという。

インド数字: 0,1,2,3,4,5,6,7,8,9 (10個の数字ですべての数を表記できる)
漢数字: 一,二,三,…,十,百,千,万,億,兆,京,垓 … (数の表記に限界がある)
ローマ数字: I, II, III, IIII, V, VI, VII, VIII, VIIII, X, L, C, D, M (4000 まで表記できる)

数は狭義には自然数を意味する。広義には実数、さらに広く虚数を含む場合もある。数の概念は奥が深い。しかし数直線を使えば、とりあえず、実数までは理解できる。数直線(number line)は実数を表わす直線で、中央に原点O(origin)をとり、0と対応させ、原点より右側に正の数を、左側に負の数を目盛ったもの。(下図参照)
numberLine.jpg

自然数(natural number)
1から始まり、順次1つずつ増加し、限りなく続く数の総称。1, 2, 3, 4, 5 …
整数(integral number, or whole number)
0,自然数および自然数にマイナスの符号をつけた数の総称。 -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3 …

実数(real number)
数直線上の各点に対応していると考えられる数。整数、小数、分数、無理数を含む。無理数(irrational number)とは分数の形で表せない実数で、たとえば √2 ,√3 ,円周率πなど。
虚数(imaginary number)
2乗すると -1 になる数。虚数単位 i (アイ)= √-1。 虚数は数直線では表せないが、幾何学的に表現でき、その実在性・有効性はすでに証明済みである。

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