安倍首相:9月上旬の中国訪問見送り 安保法案を優先

毎日新聞 2015年08月24日 11時07分(最終更新 08月24日 17時48分)

安倍晋三首相=藤井太郎撮影
安倍晋三首相=藤井太郎撮影

 安倍晋三首相は9月上旬の中国訪問を見送ることを決めた。中国は9月3日の抗日戦争勝利70周年記念式典に首相を招待していたが、菅義偉官房長官が24日午前の記者会見で「式典には出席しない。3日の前後に訪中する予定もない」と明言した。政府は既に中国側に式典欠席を伝えた。首相は今後、9月下旬に米ニューヨークで開かれる国連総会や11月のフィリピンでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)などにあわせて、習近平国家主席との会談を検討する。

 政府は、3日午前に北京の天安門広場で行われる軍事パレードへの首相の出席に難色を示し、同日午後に首相が北京入りする日程を中国側と調整していた。

 訪中見送りについて、菅氏は会見で「国会の状況等を踏まえ判断した」と説明した。今国会は9月27日の会期末に向け、安全保障関連法案を巡る参院での与野党の攻防が大詰めを迎える。政府高官は「1日でも訪中すれば、法案成立は1週間ずれる」と国会審議への影響を指摘した。

 首相は14日のNHK番組で「(中国側の)行事が反日的なものでなく、融和的なものになるのが前提だ」と述べた。自民党内にも当初から「最後は首相の判断だが、世論にも配慮せざるを得ない」(幹部)など、この時期の首相訪中は難しいとの見方があった。

 政府は最終的に、軍事パレード以外の行事も抗日色が強いと判断したとみられる。中国の軍拡を懸念する米英仏首脳らが欠席する方向になっていることにも配慮した。

 首相の訪中見送りについて、日中関係筋は「中国が3日の一連の式典に『抗日』の名称を掲げていることへの日本側の抵抗感は強い。日中が調整を進めていたが、双方の条件の折り合いがつかなかった」と述べた。【高橋恵子、北京・工藤哲】

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