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【世界からみるWEST】蚊取り線香にインド紙「発がん性物質含む」 豪紙「火災の主原因」 安全安心の日本製に商機?

【世界からみるWEST】蚊取り線香にインド紙「発がん性物質含む」 豪紙「火災の主原因」 安全安心の日本製に商機?

吸血して満腹の蚊=2014年(米CDC提供、ロイター)

 夏の定番といえば蚊取り線香。関西発祥のロングセラーはいま、全世界に広がっている。特にマラリアなどの伝染病を媒介する蚊の退治の常備品として、常夏の熱帯地方の国々では欠かせないアイテムとなっている。インドの英字紙が「発がん性物質を含んでいる」とし、オーストラリア紙は「太平洋島嶼(とうしょ)国で起きる火災は蚊取り線香の不始末が多い」などと指摘。外国製品とはいえ、何やら物騒な話題が多いようだが、日本製には商機なのかも?。

インド ザ・ヒンズー紙「たばこ100本程度の喫煙量に相当する」

 「蚊取り線香は発がん性物質を含んでいる」。そんなセンセーショナルな見出しを掲げたのが、インドのザ・ヒンズー紙。呼吸器系疾病研究機関の専門医師の話として、「密閉した室内で、螺旋(らせん)状の蚊取り線香1巻を燃やしただけでタバコ100本程度の喫煙量に相当する」と伝えた。中国、台湾の症例をもとに、蚊取り線香と肺がんに因果関係があるとし、その殺虫成分が肺に有害だと主張している。

 無煙製品には、“煙害”はないものの、高度の一酸化炭素を排出し、危険だとしている。マット状、液体状の製品もガス状になった汚染物質が生じ、「肺に強い炎症を起こす」という。

 この医師によると、調査したインド国内22カ村の世帯の65%は部屋を密閉して蚊取り線香を使っており、有害煙吸引の影響を受けやすいとした。

 衛生状態が悪いインドなどの発展途上国にとって、蚊は人々の生命を脅かす危険生物のひとつ。マラリア原虫やデング熱ウイルスなどの熱帯病を媒介するだけに、蚊取り線香は必須であり、一般市民にとっては聞き捨てならない専門家の指摘といえる。

 記事の中で、別の医師は「蚊帳こそベストだ」と強調し、「窓やドア、そして寝床の周りに蚊帳をつければ万全だ」との指摘を同紙は紹介している。

豪ABC「蚊取り線香の不始末が主要な火災原因」

 蚊取り線香は「金鳥」ブランドでおなじみの大日本除虫菊(大阪市)創業者、上山栄一郎氏が除虫菊に含まれる殺虫成分、ピレトリンを利用した発明品で、関西が誇る世界的ヒット商品の一つだ。100年以上も前、線香に除虫菊を練り込み、渦巻き状にしたアイデアにより、燃焼時間は延び、1巻で7~8時間も燃やせるようになった。安心して睡眠できるための工夫の結果だった。

 現在は、ピレトリンに類似した「ピレスロイド」と呼ばれる化学的に合成した成分が使われている製品が多く、蚊などの昆虫の神経系に作用するが、人などのほ乳類には無害だという。世界各国でさまざまな蚊取り線香をはじめとした関連商品が作られている。

 特に東南アジアやインド、アフリカ諸国、南米など世界各地で安くて、防虫効果が高い利便性が買われている。

 一方で、地域によっては物騒な指摘もある。

 オーストラリアのABC放送(電子版)は、フィジーの元消防庁長官、マーク・リード氏の話として「太平洋の島嶼国で発生する死亡火災の原因は、蚊取り線香の不始末が最も多い」と伝えている。

 リード氏は、蚊取り線香の燃えかすの受け皿を使わず、寝具近くの床面に直接置いて使用することが火災を引き起こす主な原因と指摘。ツバルの寄宿制学校で起きた火災を挙げ、「強盗などの被害を防ぐため、カギが掛かっており、多くの女学生が逃げ遅れて犠牲になった」などと述べた。

韓国・中央日報「気温3・7度で蚊取り線香?」

 オーストラリア・シドニー大学の病理学者によるインターネットのニュースサイトへの寄稿では、「密閉空間」での使用の危険性を指摘している。一般的に人には安全でも、煙が充満する環境下での長時間燃焼の繰り返しは「体によろしくないのでは」という見方だ。

 今回のインド紙の指摘に対し、大日本除虫菊宣伝部は「日本の製品は厚生労働省の認可を受けた医薬部外品。安心して使ってほしい。外国製品についてはよくわからない」としており、日本国内での影響はなさそうだ。ただ、海外では蚊取り線香をめぐる事故や事件も起きている。

 インドネシアのインターネットサイトには今年4月、車内で死亡している親子3人が見つかり、父親の足元に蚊取り線香の燃えかすがあったという。実は父親は宝石の密売人だったといい、取引のために深夜家族で車中泊することがあった。「現場近くに下水道があり、蚊が多くいたのでは」という警察関係者の声を掲載している。

 また、韓国・中央日報(電子版)は2009年2月に「『気温3・7度で蚊取り線香?』保険金目当ての殺人も」と題した記事の中で、女性8人を暴行し殺害して逮捕された男性被告が05年10月、義母宅で起きた火事の際に、失火と誤認されるよう蚊取り線香を使用し、保険金をだまし取ったなどとする記事を掲載。当時は気温が低く、蚊取り線香を使う状況ではなかったという。

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