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移民政策の本当の怖さ

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古谷経衡(評論家)
1982KK
1982年北海道札幌市生まれ。立命館大学文学部史学科卒。インターネットと保守、マスコミ、アニメ評論などの分野で執筆活動、番組出演、講演会などを行っている。主な著書に『もう無韓心でいい』(ワック)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)、『反日メディアの正体』(KKベストセラーズ)、『ネット右翼の逆襲』(総和社)、『クールジャパンの嘘』(総和社)、『ヘイトスピーチとネット右翼』(オークラ出版・共著)など。


 先日、「毎年20万人の移民受け入れ本格検討」として、安倍内閣が移民受け入れを容認し、移民政策の国策を転換する可能性について、ニュースになっていました。具体的には、

 政府が、少子高齢化に伴って激減する労働力人口の穴埋め策として、移民の大量受け入れの本格的な検討に入った。内閣府は毎年20万人を受け入れることで、合計特殊出生率が人口を維持できる2.07に回復すれば、今後100年間は人口の大幅減を避けられると試算している。(中略)だが、移民政策には雇用への影響や文化摩擦、治安悪化への懸念が強い。しかも、現在は外国人労働者は高度な専門性や技術を持つ人材などに限定しているが、毎年20万人を受け入れることになれば高度人材だけでは難しい。単純労働に門戸を開く必要が出てくる。
2014.3.13 産経新聞

 というものです。よく、移民を受け入れる際に大きな問題として懸念されるのは、上記の記事にあるように「移民によって日本人の雇用が圧迫される(雇用懸念)」「移民がつくるコミュニティや宗教的な違いが、日本人社会との軋轢を生む(文化摩擦、治安懸念)」という大きく二つに分けられると思います。

 雇用懸念については、実際にヨーロッパ圏が旧植民地(英連邦のアフリカ、インド、フランスの旧植民地、ドイツや北欧のトルコ系、中東系)からの移民によって、現地の国民の雇用を圧迫している、というのは現実の問題として発生しています。

 また、文化・治安懸念なども同様に欧州の多くの地域で問題になっています。この移民政策による反応は、例えばドイツのネオナチ、フランスの国民戦線など、極右政党の誕生と社会不安につながったり、スウェーデンではイスラム系住民への反目(モスク放火)など、実際に死者が出る事態に発展することも珍しくはありません。

 こういった移民によって引き起こされる数々の社会問題や不安ですが、これらは移民政策の本当の暗部ではありません。例えば中南米に移民した日系移民は、現在、現地の社会に広く受け入れられ、社会的に成功している場合が多くあります(ペルーのフジモリ大統領や、ブラジル空軍のトップが日系人である例)。更に、現在移民を受け入れる側だった英仏独北欧の国々は、かつて自らが最大の移民排出国であったことを押えなければなりません。

 欧州の各国、特にドイツ、アイルランド、イングランド、イタリア、オランダ、スウェーデンといった国・地域の移民が大量に流れこんで成立したのが、現在のアメリカだからにほかなりません。移民がすべて、移民先の国々で社会問題になる、というわけではないことに留意しなければなりません。19世紀の新興国・アメリカの労働力を形成した多くは、こういった「欧州」の中でも比較的所得の低かった、ドイツ系移民、アイルランド系移民によって支えられたのです。

 では、移民が引き起こす最大の問題とは何でしょうか。それは移民の出生率が、異常に高いことです。例えば1990-1998年のフランスにおける合計特殊出生率(平均)は、フランス人女性が1.65、移民の女性が2.50と、実に1.5倍以上の開きがある、というデータがあります。つまり生粋のフランス人は一生に1人か2人の子供を生むのが普通ですが、移民はそれを大きく上回って3人近くの子供を産む、ということがこのデータからわかります。更にその3人がそれぞれ3人の子供を生むと考えれば、この違いが如何に大きなものかが分かるでしょう。

 移民は一般的に所得水準が低く、また就業環境も劣悪な場合が多いです。そんな中で、唯一の娯楽としてのセックス、或いは将来、親を養うための食い扶持という意味で、出生率が突出して高くなるのは、フランスに限らず世界中の移民に当てはまることです。

 これはどういう事を意味するのでしょうか。簡単にいえば、移民第一世代は移民先の国では、マイノリティだったけれども、二世代、三世代と代を重ねると、加速度的に移民の人口が増加していく、と言う事を意味しております。つまり、先の記事に当てはめると、毎年20万人の移民の第二世代、第三世代は、どんどんとその人口を拡大させていく、という事を意味しています。

 現在、主にメキシコ(ヒスパニック系)の移民(不法を含む)人口が急増しているアメリカですが、ある試算によると、ヒスパニック系の増加によって2050年にはアメリカは非白人の国になる、と予想されています。もっと言えば100年後にアメリカはヒスパニックの国になるかも知れません。取りも直さず、その理由は生粋のアメリカ白人よりもヒスパニック系の出生率が圧倒的に高いためです。

 移民による問題では、常に雇用不安と文化/治安懸念が言われますが、これは移民の第一世代についての話であって、本当の問題とは、移民の流入によって、その国の人口(人種)構成が将来、大きく変わる事にほかなりません。

 いま、例えば20万人の移民を毎年受け入れたとしても、単純計算で10年で200万人ですが、その200万人が産んだ子供が、20年、30年後には日本人の出生率を大きく上回って増加する、ということが問題なのです。「単一民族」的、と言われる日本ですが、移民を大きく受け入れれば、第二世代以降の移民の代になって、日本の人種構成は大きく変わるでしょう。日本は日本民族だけの国ではなく成る日が来るかも知れません。

 人種の違いが、日本の国の形を悪い意味で変える、とばかりは思いません。例えば中国系移民が畳の家に住み、インド系移民が剣道や茶道や古典芸能で活躍するとき、日本が伝統的に持っていた文化や価値観は、大きく違うエッセンスが加わり、発展するかも知れません。

 文化の発展は、異民族との混合の歴史であるとは、古代ローマやヘレニズムの時代から普遍的な歴史の道のりかもしれないのです。移民の受け入れによって、二千年の日本の歴史は、大きく違ったものに変革されるでしょう。

 しかし、私が一番気になるのは、果たして現在の日本人に、その覚悟はあるのかということです。日本人とは違う民族が移民してきて、その第二世代以降の子供達が、加速度的に増えていく。もしかしたら22世紀には、日本の3割とか4割の人間が、中国系とかインド系とかブラジル系の「日本人」が占めているかも知れない。

 そういった「日本」の姿を、現在から想像して、「それでも良い」と判断するのなら、移民受け入れもひとつの手かもしれません。街中の神社仏閣が、モスクやヒンズー寺院に置き換わる。京都の寺の住職が韓国系移民になる。

 多くの日本の精神的価値観、例えば「わびさび」とかいう価値観は、移民の価値観とエッセンスして別のものに変革されていくでしょう。日本人の精神文化は、移民が加わることで、もっと合理的で、もっと明確な輪郭を伴うものに、変化していくでしょう。それも「日本の未来の姿だ」と考えるのならば、反対はしません。

 ただ、現在の安倍内閣の目指す移民についての方針には、そのような「想像力」が足りないような気がします。移民問題に大切なのは、当座受け入れた移民第一世代が引き起こす、雇用や治安や文化摩擦ではありません。彼らの子供の時代こそが、大切なのです。そのような「想像力」で、貴方は移民の子供の代に存在する、日本の姿を肯定することができますか。

古谷経衡

1982年札幌市生まれ。立命館大学文学部史学科卒。 インターネットと保守、マスコミ、アニメ評論などの分野で執筆活動、番組出演、講演会などを行なっている。 主な著書に『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)、『反日メディアの正体』(KKベストセラーズ)、『ネット右翼の逆襲』(総和社)、『クールジャパンの嘘』(総和社)、『欲望のすすめ』(ベスト新書)、『竹島に行ってみた!マスコミがあえて報道しない竹島の真実』(青林堂)など。近著に『ネット右翼の終わり──ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)、『戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか』(イースト・プレス)。
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移民ではなく外国人労働者という詭弁

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