「日米通算」をめぐる動きは少し成熟したように思う。

このあいだのイチローの日米通算でのタイ・カッブ越えで、イチローは球場でスタンディング・オベーションを受けた。

日米の実力格差が縮まっている中、イチローが築き上げた4200本という安打は「タイ・カッブの偉業に匹敵する」という声が高まりつつあるのだ。

アメリカに移ったころの驚異的な安打製造機ぶり、すさまじいまでの守備や走塁など、イチローが15年間にアメリカのファンにみせつけてきたものの大きさが、そうした声になっている。
これはイチローの功績の中でも最も大きいものの一つと言ってもよいかもしれない。

しかし一部のメディアは「イチローは果たしてタイ・カッブを超えたといえるのか」という論調の記事を発信したのも忘れてはならない。

MLBの公式サイトの記録は、まったくゆるがなかった。これは自明のことだ。
1877年から連綿と続くMLBの記録は、アナ両リーグとフェデラル・リーグなど消滅したリーグによって構成される。
それ以外のリーグの記録が入り込む余地はない。
今後、ニグロ・リーグの記録が解明されたときに、これをMLBの記録に含むかどうかの議論が起きる可能性はあろう。同じアメリカ国民によって行われた野球のトップ・リーグなのだから。

しかしNPBの記録がMLBの記録と合算され、通算安打数でイチローがカッブの上に来る可能性は全くない。

元をたどれば、アメリカから輸入された競技ではあるが、野球は日米で全く異なる発達の仕方をした。たまたま日本からアメリカへ移籍する選手が増えてきたからと言って合算する必然性は全くない。

アメリカでは野球は、国の歴史を濃密に彩る歴史であり、文化である。ここに東洋の他国の文化が混入することはありえないだろう。

何度か触れたが、NHKの藤井康雄アナの
「イチローの記録から、『日米通算』がとれるのはいつの日になるでしょうか」は、本当に自分の周囲のことしか眼中にない、恥ずかしい意見だと思う。

Baseball Referenceは、非公式だがWARのデータを発表しており、最も信頼される記録サイトの一つと言ってよいだろう。

このサイトは、昨年からNPBの記録を独立して扱うようになった。それまではMinorのカテゴリーの一つだったが、MinorとMLBの間にJapanese League Statsというカテゴリーを設けて、過去80年間の全記録を収録した。
このサイトはNPBの公式より使いやすい部分がある。投手のSTATSでGS=先発を掲載しているのだ。なぜかNPBにはこの項目がないため、先発、救援登板の区別ができない。

また今年からKorean League Statsのカテゴリーも設けた。まだ不十分だが、姜正浩の活躍に伴って、KBOのデータも整備していくのだろう。

さらに今年後半から、All Levelsという項目も設けた。MLB、MiLB、NPB、KBO、アメリカの独立リーグ、カリビアン・リーグなどすべてのカテゴリーの合算の数字を紹介するようになったのだ。

イチローはこうなる。

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フリオ・フランコはこうなる。

All


こういう形で、すべてのプロリーグの成績を網羅したデータを紹介し始めたのだ。

これは明らかに「イチロー効果」だ。イチローがリーグを超えて活躍したことで、記録アナリストたちの視界がMLBだけでなく、他国、他のリーグへと広がり、これを積極的に評価するようになったのだ。

アメリカの野球記録の世界では、日米通算ではなく「すべてのプロ記録」通算が紹介されつつある。野球のグローバル化のためには、素晴らしい進歩だ。

ただし、それはMLB記録に代わる新たな価値基準が生まれたことを意味しているのではない。個別の成績が別にあって「合計するとこうなりますよ」と表示しているにすぎない。
MLBの記録が何よりも優先するのはゆるがない。

Baseball Referenceの各選手のページの1枚目はMLBの記録、2枚目にMiLBやNPB、KBOなどの記録、All Levelsも載る。その秩序は揺るがない。
むしろ、他のリーグも含めた記録が載ることで、MLBの記録の価値、ステイタスはより高まったという印象さえある。

アメリカの記録サイトの、野球の歴史、文化に対する真摯な姿勢は尊敬に値する。

なんでもいいから景気のいいことを言って視聴率や部数を稼ぎたい、という日本のチンドン屋メディアは、つめのあかでも煎じて飲むべきだ。

All Levelsは、今後、世界の野球選手の実績や実力を知る一つの指標になっていくだろう。「日米通算」は、その一部としてのみ価値があると思う。

NPBの公式サイトが「日米通算」を載せるのなら、イチローや松井秀喜だけでなく、日本へ来た外国人選手、さらには李承燁や李大浩のようにKBOでも活躍した選手の記録も載せて、All Levelsに近いものにすべきだと思う。


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