社会への関心が低いといわれてきた日本の若者たち。
今、次々と声を上げ始めています。
先月、結成されたのはブラックバイトに立ち向かう高校生たちのユニオン。
そして安全保障関連法案を巡ってさまざまな意見が交わされたデモ。
今夜は、次の時代を担う若者たちの声に耳を傾けます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
声を上げる若者たちの姿が注目されています。
若者たちのこうした動きは半世紀近く前の学生運動以来日本だけでなく世界のメディアも日本の若者が変わり始めていると報じています。
かつて立ち上がった団塊世代を中心とする人々。
戦後の民主主義、高度成長期に育った当時の若者たちはベトナム戦争や、みずからが享受していた豊かさの裏側で起きていた公害など社会の矛盾に対して抗議や怒り反発の声を上げました。
どんな時代でも純粋なまなざしで社会を捉える若い世代。
しかし長らく、若者たちは政治に無関心だと見られたとえ関心があったとしても若者たちによる目立った行動は見られませんでした。
今、積極的に声を上げ始めた若者たちは、自分たちを取り巻く社会をどのように捉え何を訴えようとしているのか。
今夜は、声が上げやすいとは決していえない社会の中でみずから動き始めた若者たちの思いです。
先月、東京・表参道。
若者ら6500人が集まりました。
デモを呼びかけたグループの一つ、高校生によるティーンズ・ソウル。
共同代表を務める、あいねさんは16歳の高校2年生です。
仲間と共に政治について考えたいと、この夏グループを立ち上げました。
あいねさんが政治に関心を持ち始めたのは特定秘密保護法が、ニュースで話題になっていた2年前。
しかし、学校でその話をすることは全くできなかったといいます。
友人たちは政治に無関心で授業でも政治課題を取り上げることはありませんでした。
そんなとき、ネット上のSNSで知ったのが大学生が主催するデモ。
恐る恐る参加したいとメッセージを送ると歓迎のことばが返ってきました。
ところが、その体験をネット上でつぶやくと思わぬ反応が返ってきました。
厳しい声が次々と寄せられました。
さまざまな高校から集まった仲間たちも皆、ふだん学校では政治や社会問題について語れないといいます。
それでも、あいねさんは自分たちで考え声を上げられる場を大切にしたいと考えています。
声を上げるべきか迷いながらも足を運んでいる若者もいます。
都内の大学で法律を学び裁判官を目指す浅野雄一朗さんです。
不安の理由はデモに参加すると就職に不利になるといううわさがあるからです。
実際、過去にはデモに参加して就職差別を受けた学生がいたという事実も知りショックを受けました。
それでも行動するのは浅野さんは将来裁判官になることを目指しているからです。
揺れ動く若者たち。
その行動の背景にはどんな意識が隠されているのか。
大手広告代理店が行った3000人への調査で浮かび上がったのは若者たちが抱える大きな不安です。
就職や結婚など自分の将来よりも日本の将来が不安と答えた人のほうが上回り全体のおよそ8割にも上ったのです。
調査に当たった小木さんは若者たちには裏腹な心理があると分析します。
老後の生活や政治や経済など将来の不安を抱えながらも自分ではどうにもできないと考えているというのです。
将来への不安から保守的になりがちな若者たち。
その背中を押そうという取り組みも始まっています。
東京・新宿駅から徒歩5分。
ここは、社会的な活動をする学生のために無料で開放されたフリースペースです。
会員は2万8000人。
農業の活性化や被災地支援など社会に役立ちたい学生たちが集い活動の拠点にしています。
ここから国際ボランティアのNPOや障害のある子ども向けの塾などが誕生しています。
目標はどこなの?
みかんで村を盛り上げる。
企業の協賛金を集めこの場所を運営するのは大学4年生の佐藤祐さん。
佐藤さんには、ずっと感じてきたある思いがあります。
失われた20年といわれる中で育った自分たちは将来に希望を持ちにくい世代。
だからこそみずから知恵を出し合い社会を変えていく仲間を増やしたいと考えているのです。
今夜のゲストは、若者のフィールドワークを続けていらっしゃる社会学者の開沼博さん、そしてAKB48の総監督として300人以上の若者のリーダーを務めている高橋みなみさんです。
高橋さん、今のリポートで、自分の将来よりも、日本の将来の不安のほうが大きいという調査結果が出ていたんですけども。
そうですね。
どんなふうに実感されてますか?
そうですね、私自身も今、こうしてお仕事をさせていただいてますけども、将来への不安っていうのは、やっぱりありますね。
これだけ活躍してても?
そうですね、本当にありがたいんですけど、やっぱり自分、50代、60代になったときにどういうふうに、日本がなっているのか、戦争が起きていないだろうか、年金はもらえるのだろうかっていう、そういう不安はやっぱりあります。
そうやって声を上げ始めた人たちがいるんですけれども、自分もやっぱり、上げてみたい。
メンバーの人たちと話してみて、こういうふうに上げようっていう、こうした、なんていうか、こう、マグマの塊みたいなものは感じられますか?
そうですね、今の世代の子たちは、やっぱり自分のことばにするのがすごく苦手な子たちがとても多いんですよね。
やっぱりSNSが普及してますし、メールだとすごくきちんとした考えを持っているんですけど、リアルになってみると、じゃあ何を考えてるの、手を挙げて言ってみてっていうふうに言っても、みんな、手を挙げないんですよ。
誰か言ってくれることを待っているっていう状態になっているんですけど。
1対1でごはんに行ったりすると、私はこのグループに対してこういう思いを持っています、実はこういう夢があるんですっていうふうに個々には本当に、熱い気持ちを持ってる子が多いなというふうに思います。
なるほど、開沼さん、本当にかつて、もう半世紀近く前になりますけれども、学生たちが声を上げた。
今は、その日本の将来が不安だっていう。
社会に役立ちたい。
本当になんか、立派っていうか、国のことを思って、自分たちは何かやりたいという思いで声を上げてる人たちだと思うんですけれども、この違い、どう見てらっしゃいますか?
今の若者たちが抱える課題というのは、たぶん、かつてとは若干、変質してるんではないかというふうに思うんですね。
かつてだったらまあ、例えば、就職をするまで、学生の間に、やっぱり社会の中でいろいろ苦しんでいる方たちのことを考えたりとか、そういう状況があったわけですけども、現状は、なかなか、そうではないと。
自分自身が今、高橋さんがおっしゃいましたように、将来、じゃあ社会保障がどうなっているのかとか、就職先はうまくいくのかというようなことに、不安を持ってる、その切実さが違ってきているのかなと思いますね。
今は幸せだと思ってるんですか?
これはいろんな意識調査とかがあるんですけれども、昔よりも今の若者のほうが幸せであるという統計結果が出ていますが、しかしそれだけじゃないんですね。
将来に希望を持てるかというと、それは逆になるんです。
昔は将来には希望がある、でも、今は将来に希望を持てないんだと。
つまり幸せであるけれども、将来に希望を持てないという、先行きの見通せなさというところが、課題なのかなと。
今、幸せならあえて声を上げないのではないかというふうにも、ちょっと思ってしまうんですけども。
やっぱり、社会の役に立ちたい。
そのためにある程度、自分自身に余裕がないとだめな状況というのもあるわけですね。
だから、そういったある程度日本社会が成熟した結果として、社会にコミットしたいという声が出てくるということは、一つの見方だと思います。
声を上げていた、あいねさんは、自分が声を上げなければ、社会は変わらないんだっていうふうに言っていたんですけれども、どれくらいの切実感で、声を上げているというふうに感じていらっしゃいますか?
かつてだったら、例えば、会社に入って何か労働で、いろんな問題があるとなったら労働組合があったりとかですね、地域でいろんな課題があったら、地域にいろんな共同体、例えば消防団とか自治会とかそういうものがあったわけです。
業界団体とかもあった。
これ、社会学で中間集団っていうんですけれども、この中間集団っていうのが、やはり、ここ20年、急速に潰れてきているんですね。
だから組合とかに加入することがなくなってしまって潰れているような状態の中で、多くの人が、じゃあ、どういうふうに自分の声を社会に届けるのかっていうことで困っている。
で、その届けるような媒介となるようなものがなくなっている中で、どうにかその思いを伝えたいという、切実さが出ていると思います。
個々の人たちの本当のリアルな切実さと捉えていいわけですか?
おっしゃるとおりです。
それを引き受ける先がない中で、声を振り絞ってるという状態だと思います。
さあ、来年には選挙権が18歳の若者にも与えられるようになります。
自分で考え、そして自分の意見を発信できるようになるには、どうすればいいのでしょうか。
この夏福岡の山深い合宿所にアジア各国から高校生が集まりました。
日本をはじめ、中国やマレーシアなど、6か国の高校生180人以上が参加。
2週間にわたる合宿で国や宗教を超えて議論することを学びます。
いや、しないよね。
携帯電話パソコンの使用は禁止。
顔を合わせた対話が徹底的に求められます。
合宿の目的はさまざまな人との議論を通じて視野を広げさせ社会をリードする人材を育てることです。
この日、ことしの議論のテーマが発表されました。
与えられたのは国家を運営するという課題。
7つの国に分かれ10年後の平和をどう実現するか考えさせます。
まず直面したのは軍隊や核兵器をどうするかというふだん考えたこともない大きな問題でした。
どこか、ゲームのように戦争や核兵器を語る高校生たちに異論を唱える学生がいました。
核兵器も軍隊も必要ない理想の世界を主張したのは広島から参加した中田勇喜君です。
中田君は3年前に父親をがんで亡くし命の大切さを深く考えるようになりました。
この日、中田君にショックな出来事がありました。
徴兵制について、全員で議論していたときのことです。
日本の若者たちの発言を聞いていた韓国の高校生が手を挙げました。
いやがおうでも兵士にならざるをえない韓国の現実を突きつけたのです。
目の前の高校生が数年後には必ず兵士となる現実。
中田君は理想を追求するためにはもっと知らなければいけないことがあると痛感しました。
合宿が終盤に入ると就寝ぎりぎりまで、高校生たちは話し込むようになりました。
この日海外で日本語を学ぶ高校生と日本の学生たちとの対話が始まりました。
議論に加わっていた一人青森から参加した長谷川歩果さんです。
学校では部活動の部長を務めながらも極力、目立たないようにしているという長谷川さん。
長谷川さんが求めていた同世代との議論は互いの歴史認識まで及びました。
毎晩、お互いの声に耳を傾け続けるうちに相手への見方も変わってきました。
最終日。
再会を約束して、高校生たちは合宿所を後にしました。
新学期。
青森に戻って、長谷川さんは合宿での体験を友達に話してみました。
周囲からちょっと浮いているのを感じながらも長谷川さんは、自分の変化をうれしく思っています。
開沼さん、若者たちがこういう体験をすることで、本当に変わっていく、真剣なこの議論、多様な人との議論って大事なんですね?
そうですね、私も実は、高校のときにディベートっていうのをやってましてね、ディベート甲子園という全国大会があるんですけど、まさに彼らのように、全国から高校生が集まって、結構、政治的な議論をしてると。
でもやっぱりあの若い時期に、そういう経験をしておくことって本当に、いい経験になるんだなと。
今の私の、この仕事にもつながってる経験だと思います。
社会学者へと?
そうですね。
向かったと。
でも日本には、あまり場がないということで、学校での、こうしたなんていうんでしょうか、議論っていうのは、なかなか行われないですね。
なぜでしょうね?
やはりまあ、政治的な問題になってしまうと、中立性をどういうふうに確保するのかということを、現場は気にしてしまいますし、もちろん、行政の側でもじゃあ、中立性とは何かっていうことを、なかなか決めかねているという状況があるんだと思います。
ディベート以外にも、例えば、新聞を読むことを通してメディアリテラシーを鍛えたりっていうこと、実際は10年以上前から始まったんですけども、なかなか広がりきっていない状況っていうのがあるかもしれないですね。
日本の若者たちは、自分たちは将来、役に立ちたいと思いながら、本当は、でも影響を及ぼすことができないんじゃないかっていうふうにも思っている。
将来、不安。
やりたい。
だけど自分じゃできないかもしれないと思っている。
その一歩前に自分はできそうだって思えるような体験ってされたことありますか?
そうですね。
私自身、やっぱりアイドル活動をしているんですけども、何が人のためになっているのか、どういうふうになっているのか、分からない時期が、正直、ありました。
やっぱり東日本大震災があって、被災地への支援活動を今、AKB48グループとして、月に1度、訪問活動しているんですけれども、そのときにやっぱりかけられたことば、ありがとう、来てくれて、みんなみたいな若い子たちが来てくれると、活気づくよっていう、そういうことばがあったからこそ、あっ、このアイドルという活動はきちんと、誰かのためになっているんだっていう自信につながりました。
そうすると、やっぱり、いわばそういうポジティブな声をかけられることっていうのが大事なんですね?
そうですね、誰かが認めてくれるっていうのは、やっぱりうれしいですね。
そして、しゃべってもいいんだとか、声を上げてもいいんだっていう場をどうやって広げられると思いますか?
そうですね、やっぱり、自分が学生時代あったかと言われると、なかったなっていうふうに感じます。
やっぱり大人の方々が、さっきもあったように、こういうふうにみんなで話してごらんっていう場所を作ってくれるっていうことが、一番大事なのかなっていうふうに思いました。
開沼さんは、社会のために何かしたいと思っている若者たち、でも実際に行動をどう移していいか分からない。
どういう気持ちを大事にすべきだとお考えですか?
もう今、高橋さんがおっしゃったように、単純に、これは人のためになってるんだっていう、自分がうれしいなっていう気持ちとか、あと、もう単純に楽しいな、私自身も高校生のときに、いろんなことをやったときに、これは楽しいなとか、これできたら、かっこいいなという、純粋な好奇心みたいなものが大切だったと思ってます。
何か周りの支えで、力になったっていうことはありますか?
そうですね、やっぱり、それを大人たちが支えてあげると、だから何も話さないことが中立性とかじゃなくて、いろんなことばを、意見を出していいんだっていうことを保てるような場を作っていくということが重要だと思います。
2015/09/09(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「私たちは“内向き”ですか?〜変わり始めた若者たち〜」[字]
将来のビジョンを議論する夏合宿には応募が殺到し、独自の発信を行うフリーペーパーの刊行数が伸びている。「内向き」と言われながら社会と向き合い始めた若者に耳を傾ける
詳細情報
番組内容
【ゲスト】AKB48…高橋みなみ,福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員…開沼博,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】AKB48…高橋みなみ,福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員…開沼博,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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