クローズアップ現代「サメ!凶暴バチ! 温暖化で“危険生物”があなたに迫る?」 2015.09.09


こんばんは。
クローズアップ現代です。
この100年で日本の平均気温は1.1度上昇しています。
気候変動が確実に忍び寄る中で生態系の変化も起きていまして危険な生き物の生息範囲が拡大し身近な脅威となるものも出てきています。
この夏、目撃情報が相次いだのがサメです。
もともと、日本近海に生息するものも含まれていますが南洋のサメも出現し各地では相次いで遊泳禁止措置が取られました。
また陸ではこれまで日本で生息することはできないと思われていた熱帯の有毒な昆虫がいつの間にか定着していることが明らかになっています。
温暖化とともに急速に進んでいるのがグローバル化。
グローバル化によってヒトとモノの行き来が活発になり持ち込まれる外来種が増えています。
持ち込まれた外来種の中には温暖化によって日本に定着しやすくなっているものもあり生態系に大きな影響を及ぼすケースも出てきています。
環境省はことし日本の生態系に被害をもたらすおそれのある429の外来種のリストを発表し温暖化によって定着する事態への対応策を打ち出しています。
温暖化によって危険な生き物の生息範囲がどのように拡大しているのか。
まずはこちらからご覧ください。

沖縄・多良間島沖。
実はこの夏、全国をにぎわしたサメ騒動に先駆けて異変が起きていました。
沖縄で長年サメの駆除に取り組んでいる漁師の前泊清繁さんです。

ここ数年、サメの数が増加。
けが人や漁業被害が後を絶たないといいます。

狙うのはイタチザメ。
8月に茨城県沖でも目撃されたサメと同じ種類のどう猛なサメです。

結局、この日だけで4匹のサメを捕獲。
例年に比べ倍以上もある大物ばかりでした。

7月に沖縄県が行った駆除では88匹ものサメを捕獲。
体長4メートル推定550キロの巨大ザメもいました。

サメの駆除数もこの8年で実に10倍以上に増えています。

サメが確認されたため遊泳禁止となっております。

沖縄から遠く離れた全国の海水浴場でもこの夏サメの目撃情報が相次ぎました。

サメの生態に詳しい専門家は一因として、海水温との関連を指摘しています。

温かい海水を好むサメ。
実はことし日本近海の海水温は例年になく高くなっていました。
夏の海水温の変化です。
サメが各地で目撃された8月上旬関東近海でも海水温は29度を超え沖縄と変わらなくなっていました。
一体、日本付近の海で何が起こっているのか。
気候変動のメカニズムを研究している東京大学の中村尚さんです。
日本沿岸を流れる黒潮の温度変化を長期的に見ると世界のほかの海域と比べ温暖化による上昇が際立っているといいます。

黒潮の温度が高まっている理由。
温暖化によって赤道付近の大気が暖められると空気の循環が活発になり東から西に吹く貿易風が強まります。
すると、温かな海水が貿易風に乗って大量に西へと向かいます。
その海水がフィリピンにぶつかり北上。
黒潮となって日本付近の海水温が局地的に高くなっているのです。
ここに、ことしのような猛暑が重なると海水温の上昇は避けられないと中村さんは見ています。

生態系の異変はほかにも。
かまれると死に至るほどの猛毒を持つヒョウモンダコ。
本来の生息域は熱帯ですが鳥取や神奈川まで北上しています。
さらに、高い水温で活発に動くアンドンクラゲに刺される被害も続出しました。
そして温暖化による生態の変化は海だけでなく、陸でも。
デング熱ウイルスを媒介するヒトスジシマカ。
その北限は今東北地方北部にまで移動しています。
さらに、マダニによる感染症の被害は西日本から徐々に東へと拡大。
そして先週。

北陸、石川県でもマダニによる死者が発生しました。
危機感を強める隣の富山県。
衛生研究所のスタッフがマダニの実態調査を続けています。

致死率の高いウイルスを持つ可能性がある種類がここ数年増加しているといいます。
このウイルスに感染すると発熱やおう吐などの症状が現れ今のところ有効な薬やワクチンはありません。

実は、マダニによる感染症の広がりにはある理由があります。

マダニが寄生するイノシシやシカその生息する環境の変化が深く関わっていると思われるのです。
その一つが、温暖化の影響による積雪量の減少。
これによって、富山県でイノシシが増えマダニの生息域が広がっていると見られます。
県では、細かな調査を続けることで危険なマダニの生態をより詳しく把握していきたいとしています。

今夜のゲストは、生態系の変化についてお詳しい、国立環境研究所の五箇公一さんです。
本当にサメからすると、いやぁ、ことし、日本の近海の海は温かくて住みやすいなっていうことで、どんどん北上したと、適応能力が高かったということですか?
移動能力は持っていますから、サメにしてみれば、本来の住みやすい所へ、住みやすい所へで移動しているにすぎなくて、そういった意味では、関東でも非常に温かい海があり、さらに餌となる魚もたくさんいるからということで、それを追っかけて、あれだけの数が出てきてしまったということだと思いますね。
通常より2、3度高かったというところ、極端に暑かったと。
2度、3度と聞くと、それほどの差もないように思われるかもしれないですけども、海の世界で2度、3度違うということは、まさに関東の海も熱帯の海と変わらないぐらいの環境になっていたという状況で、言ってみれば、サメだけじゃなくて、いろんなたぶん、魚も含めて、いろんな生き物たちが熱帯から渡ってきていたという可能性が非常に高いと思います。
そして沖縄では、数も大きさも、大きくなり、そして数も増えているとなると、じゃあ、もともといた海の生き物たちは、どうなってるんだろうかと思いますけれども。
そうですね、非常に大型のプレデターですね、捕食者があれだけの数で増えてしまうとなると、いろんな水産資源も含めて、魚たちが大量に食べられてしまって、数が減ってしまうと。
イコール、要は言ってみれば人間が食べるための魚も、必然的に取り高が減ってしまう、言ってみれば、漁師さんたちにとっても、生活の糧が失われるという、経済的な部分でも大きな損失を招くことになります。
生態系のバランスが崩れるというイメージが湧くんですけれども、一方でこのマダニ、石川県でも亡くなられた方が出たということですけれども、この場合は積雪量が減って、寄生しているイノシシ、あるいはシカなどの分布が広がったことによるということですけれども、このマダニのこの生息域の広がり、どう見ていらっしゃいますか?
今おっしゃられたみたいにこういった野生動物にとっての個体群のボトルネックですね、減少する一番大きな要素というのは、冬場の寒さ、積雪で幼体が死んでしまうということで、調節が図られていたのが、近年の温暖化で積雪量が減ると同時に、あとは狩猟ですよね、人間が食べるという、そういった行為がずいぶん減ってしまったために、彼らにとっての天敵がいないという環境が、言ってみれば非常に数を増やす要素になっていて、なおかつ、農村部ですね、そういった所に畑作物やあるいは餌となるそういったさまざまなごみ、生ごみですね、そういったものもあるということで、どんどん人の社会、人間の住んでる所にまでこういったイノシシやシカが増えてきているということが、結果的にはそれにくっついてるマダニというものの分布も広げている可能性が非常に高いというふうに考えられます。
都市部までどんどん広がってきますか?
そうですね。
都市部も今、緑化、緑地化ということで、結構、公園緑化やあるいは町の中でも植え込みがどんどん植えられるようになって、動物にとっては、住かとなるエリアというのが、都市部にまで実は接近しているということもあるので、現実に今、すでにアライグマとかハクビシンといった外来鳥獣ですね、そういったものが、こういった渋谷の街にまで実は出てきてるという現実を考えると、いずれ、シカ、イノシシといった動物も割と都心部の近い所までやって来てしまうという日も来るかもしれないということですよね。
非常に自分たちはサメの出現を目の当たりにして、無防備だなっていう状況になっていませんか?
そうですね。
本来は生き物たちがもっと身近にいる時代であれば、そういった生き物たちに対する危機感とか、あるいは接し方といったものも、おのずと人間の習慣というか、性質として体得していたと思われるものが今、これだけ都市部に人間が集中すると同時に、そういった生き物を相手に生きていくという環境がなくなってる中では、ああいう突発的な出現というものに対して、サメのような大きな魚が突然現れたということに対して、やっぱりパニックに陥ってしまうということは、今回、特に関東地方における海水浴場の閉鎖といった、ああいう現象につながってるんだろうと思います。
さあ、その生態系の異変は、グローバル化に伴って、人為的に運び込まれる生き物によっても起きています。
そして中には、日本の生態系が脅かされる事態も起きています。

韓国からおよそ50キロ。
国境の島、長崎県対馬。
今、島の人たちはある生物の脅威にさらされています。

その生物とはツマアカスズメバチ。
特徴は極めて強い繁殖力です。
発見されて僅か3年にもかかわらず対馬全体に生息域を一気に拡大させました。

この男性は後頭部や手の甲など十数か所を刺され入院を余儀なくされました。

影響は農業にも広がっています。
ことし、この農家ではカボチャの収穫が3割も減少しました。

受粉に欠かせないミツバチがツマアカスズメバチに食べられ減少していることが一因だといいます。

もとは中国南部など温暖な地域に生息していたこのハチ。
温暖化によって冬でも生き延びることができるようになり生息域を世界各地に広げています。
フランスでは生息域が国土の半分にまで拡大。
すでに7人が刺されて死亡しました。
韓国では、急速な繁殖に駆除が追いつかず消防車が出動する事態になっています。
そして対馬には韓国からの貨物船に紛れて侵入したと考えられています。
市役所では毎日のように寄せられる住民からの駆除の要請に追われています。

巣が出来ていたのは高さ15メートルの松の枝先。
普通のスズメバチよりはるかに高い場所に巣を作るため取り除くのは困難を極めます。
女王バチを狙って殺虫剤を噴射しますが。

天敵となる生物も少ないため巣は爆発的に増え続けています。
相次ぐ駆除の要請に市の職員だけでは対応が追いつかない事態に追い込まれているのです。

このままでは対馬から日本全体にツマアカスズメバチが広がってしまう。
危機感を強める国は対策を模索し始めています。

これを240ミリリットルまず入れます。

ツマアカスズメバチの生態はよく分かっていません。
そこで島内100か所以上にハチが好む甘い液体を入れたわなを仕掛け、捕獲。

年間を通じて、どの時期に活発に動き回るのかを突き止め、効果的に駆除するための手がかりをつかもうとしています。
ツマアカスズメバチの勢い、なかなか食い止められない様子なんですけれども、環境が種にとってよければ、爆発的に増えていく、定着してしまうんですね?あっという間に。
結局、ツマアカスズメバチは、もともとは中国南部の熱帯、亜熱帯地域にいて、そういう環境では恐らく彼らの天敵となる生物や、あるいは競争相手となるハチといったもの一緒に進化して、ツマアカスズメバチだけが増えるということはない環境なんですね。
ところが対馬という新しい環境に来ることで、非常に餌資源も豊富であると同時に、競争相手もいない、天敵もいないという中では、あれだけ急速に増えてしまって、抑えが利かなくなってしまうという状況になっています。
そういっていったん定着したものを駆除することの厳しさ、実際に定着したものを排除することはできるんですか?
これまで日本に侵入してきて、定着してしまった外来種を完全に駆除できたという事例はすごく少ないんですね。
今、われわれ国立環境研究所のほうでやっている事業としまして、アルゼンチンアリと呼ばれる南米原産のアリがすでに日本各地に定着してるんですが、われわれの研究チームが事業として、この事業を3年間続けてきた結果として、東京都の大田区に定着していたアルゼンチンアリの集団を駆除することには成功したんですね。
要は、計画的にシステマティックにそういった薬剤防除というものを実施すれば、駆除することはできます。
ただし、必要となるのは早期発見と、早期対応ですね。
それがやっぱり大きく広がりすぎてしまえば、必然的にかかる時間とお金、予算ですね、そういったものが大きくなってしまって、現実、予算というリミテーションで防除が難しくなってしまうというケースがたくさんあります。
環境省が発表した、日本の生態系に被害をもたらす外来種429というのがあるんですけれども、これからますますそのグローバル化によって、望まないというか、生態系に害を与えるようなもの、入ってくる可能性が高まりますよね。
そうですね。
これまで外来種といえば、ペットとして入れたアカミミガメであったりとか、あるいはアライグマ、そういったものが逃げ出して増えてしまったという事例はたくさんあったりするんですが、これからは、それ以上に入れたくなくても入ってきてしまう、つまり非意図的外来生物というんですけれども、輸入される貨物、コンテナ、あるいは農作物、そういったものに付着して、いろんなアリやクモといった見えない形で外来種が入ってくるというケースが非常に増えてくるであろうと。
今、おっしゃられたようにグローバリゼーションですよね、ますます貿易が自由化されるという中では、実はそういった検疫といった、水際対策がむしろやりにくくなってくる、場合によっては、非関税障壁と見なされて、検疫を撤廃せざるをえないという事態も起こりかねないという状況になっている。
そういった中で、ますますこういった外来種というのは増えてくる可能性は非常に高くなってくると思われます。
そうすると、いったん入ってきたものをどうやってコントロールしていくのか、何が一番の鍵になっていくと思われますか?
まずは外来種というものに対する意識ですね。
そういったものが国民レベルで非常に高く備えておくという必要がある。
つまり見たことない生き物が入ってきてるということを、できるだけ早く発見して、早期にそういった、侵入した生き物の集団というものを駆除するという、そういうシステムを作るということが大事で、その前提となるのは、今ある日本の自然環境といったものに対する理解ですね。
そういった価値観といったものを高めていくということが必要になってくると思います。
その外来種が入ってきた場合、日本のもともとある固有の生き物たちが、絶滅するおそれすらあるかもしれないという?
今もう、環境がどんどん変わってくる中では、在来の生き物たち自身も今、大きく数を減らしている中に、外来種が追い打ちをかけてしまうおそれがあるということを、まず知っていただきたいということですね。
そういう意味での理解を深めることが大事だと。
そういうことです。
ありがとうございました。
2015/09/09(水) 01:49〜02:15
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「サメ!凶暴バチ! 温暖化で“危険生物”があなたに迫る?」[字][再]

記録的な猛暑となったこの夏。巨大なサメや猛毒のタコが日本の海を北上し、中国産の凶暴なハチが猛威をふるっている。気候変動がもたらす新たな脅威に対策はあるか。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】国立環境研究所 主席研究員…五箇公一,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】国立環境研究所 主席研究員…五箇公一,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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