生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは10時5分「くらしきらり解説」です。
きょうのテーマはこちらです。
少子化対策の一環で子どもの医療費を無料にする自治体が増えています。
その一方で財政難から無料化に踏み切れない自治体もあり住む場所によって患者の自己負担の差が広がっています。
こうした中、厚生労働省は子どもの医療費の在り方の見直しについて検討を始めました。
担当は村田英明解説委員です。
うちも子どもがいますがよくママ友たちと自分が住んでいる地域の医療費が無料なのかどうなのか話題になってみんな非常に関心が高いと思いますが実際自治体によって医療費はどんな状況なんですか。
村田⇒制度からご紹介します。
子どもの医療費の自己負担小学校入学前の乳幼児の場合は2割小学生以上は大人と同じ3割を窓口で支払うことになっています。
これは国が決めていることで全国どこに住んでいても条件は同じですが自治体の独自の予算で医療費の負担を減らすことができるようになっているんです。
それが、子どもの医療費助成制度です。
今では全国のすべての市区町村がこの制度を設けています。
厚生労働省の調査によると去年4月1日の時点で医療費の自己負担を無料にしている自治体は全体のおよそ57%です。
ただ、あとで詳しく説明しますが所得制限を設けている自治体もありますので全員が無料になるわけではありません。
そして、およそ43%の自治体では一部負担を求めています。
金額は自治体によって異なりますが、1回の診療につき500円程度の自己負担を求めるところが多いようです。
医療費の助成は、子どもが何歳になるまで受けられますか?対象になる年齢は自治体によって違います。
通院にかかる医療費で見ると中学校を卒業するまでを対象にしている自治体が最も多いです。
次に多いのは小学校に入学する前まで。
そして小学校卒業まで高校卒業までと続きます。
ばらばらなんですね。
少子化対策や人口の流出に歯止めをかけようと自治体どうしが競い合って歯止めをかけようとしています。
大学を卒業するまで医療費の負担を無料にする自治体も出てきました。
北海道の南富良野町です。
町に大学はありませんが町外の大学や専門学校に通う子どもの医療費の負担を町が肩代わりすることで親の負担を減らそうというわけです。
自治体によってばらつきがあって医療費がこれだけ不公平なのはどうなのかという声もよく聞きます。
確かに不満の声はよく聞きますし医療費は無料かどうかということを基準に引っ越し先を決めるという人も最近はいます。
自治体による差を分かりやすく説明しようと思います。
その例として東京と横浜市の場合をみます。
東京23区はいずれの区も通院にかかる医療費は中学卒業までが無料です。
保護者の所得制限もありません。
これに対し横浜市では現在無料になっているのは小学1年生まで。
来月からは小学3年生までが無料になりますが、所得制限がないのは0歳児だけで1歳以上の子どもは保護者の所得が一定額を超えると医療費の助成を受けることができません。
助成を受けられないのは子どもがいる家庭の4割に上ります。
こうした所得制限は全国の369の市町村で行われています。
横浜市の場合は20歳未満の子どもの数が64万人と全国の自治体で最も多いので横浜市の担当者は財源の確保が難しいと説明していますが横浜市で子育てをしている方からは不満の声が聞かれます。
自治体で差があると少子化対策を進めている国は自治体を後押しする支援などしていないんですか?支援するどころか国は補助金を減額しています。
子どもの医療費の窓口負担を減らす自治体に対して国は国民健康保険の国庫負担を減額しています。
例えば乳幼児の2割の窓口負担を無料にした自治体に対して医療費が仮に全体で1000万円かかったとすると国庫負担を50万円余り減額しています。
減らされた分は穴埋めしなければならず、それが自治体の負担になっているんです。
なぜ減額するんでしょうか?窓口負担を無料にすると患者が増える患者が増えると医療費が増える医療費が増えると国庫負担が増えるすると医療費を無料にした自治体に補助金を多く支給することになって、予算を公平に配分できなくなる。
だから無料化した自治体への補助金を減額していると厚生労働省は説明しています。
医療費が増えるようなことをしてくれるな、というペナルティー的な意味合いがこの減額措置にはあります。
国の対応は、自治体の努力に、水をさしているようですね。
このため全国知事会や全国市長会などが減額措置を廃止するように、国に再三にわたって要望しています。
それに対してこの問題について国の検討会で議論が始まったばかりなんです。
検討会には自治体や医療団体の代表などが参加し子どもの医療費の自己負担や国庫負担の見直しを議論しています。
来年の夏までに結論を出すとしています。
先週初会合が開かれました。
出席した自治体の担当者そして日本医師会の役員などから減額措置の廃止を求める意見が相次ぎました。
減額措置があるので無料化に踏み切れない自治体がある。
少子化対策を進める国の政策と矛盾するというのが廃止を求める主な理由です。
それに加えて、私は国が進めている子どもの貧困対策にも矛盾していると思います。
日本では17歳以下の子どもの6人に1人が貧困状態にあるとされています。
平成24年の国の調査では国民の平均的な所得の半分貧困ラインと呼ばれるんですが122万円でした。
貧困ラインの基準に達しない所得層にいる子どもたちは6人に1人300万人以上いるんです。
そうした中で問題が起きています。
子どもが病気になっても医療機関で治療を受けない受診抑制という問題が研究者の調査で明らかになりました。
3年前に貧困問題の研究者のグループが、西日本の小中学生合わせて6000人余りを調査したところ親が子どもを病院に連れて行ったほうがよいと思いながら実際には受診させなかったケースが、1200人余りありました。
このうちの、128人は医療費の自己負担金を支払えないという理由で受診を控えていたということです。
病気になっても病院に行くことができない。
豊かになった日本にもこういう子どもたちがいます。
安倍政権は子どもの貧困対策に力を入れていると言っていますがそうであれば、自治体の足を引っ張るような制度は見直すべきだと思います。
この問題どうすればいいでしょうか?医療費の無料化は本来は、国が少子化対策として取り組むべき課題だと思います。
少子化対策を進めるうえで重要なことは子どもを安心して育てられる環境を整えることです。
働きながら子育てができるよう保育所の待機児童の解消に力を入れていますがそれと同じように子どもの医療費の負担を軽くする対策にも力を入れてほしいと思います。
具体的には多くの自治体が求めているように国が子どもの医療費を助成していく制度を作ってその中で国と自治体の、財源の負担の割合を考える所得制限もなくし対象年齢を拡大していくにはどうすればいいか。
具体的な制度作りを考える必要があります。
その前提として国民健康保険の国庫負担の減額処置この廃止を、国は考えてほしいと思います。
検討会では子どもの医療費の在り方を見直す中でまずは国としてこれらの問題にどのような姿勢で臨むのか、はっきりと示してほしいと思います。
子どもの問題です。
安心して不公平感をなくしてほしいですね。
次回は、山崎登解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2015/09/08(火) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「どうする?子どもの医療費無料化」[字]
NHK解説委員…村田英明,【司会】岩渕梢
詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…村田英明,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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