日本人はなぜ現金が好きなのか。そんなテーマのテレビ番組が少し前にあった。例えば結婚披露宴に出て、現金でお祝いを渡すことに外国人は驚く。なぜプレゼントでないのか。また、なぜ支払いにカードを使えない飲食店が多いのか▼確かに日本では今もカード類をなるべく持たず、「現金主義」を貫く人がいる。無駄遣いを警戒する人。単に面倒くさい人。買い物の履歴を誰かに把握されるのは嫌だという人もいる。日本では現金を持ち歩いても危険が少ないという面もあろう▼社会保障と税の共通番号であるマイナンバーのカードがこれから配られる。受け取るかどうかは本人の自由だから、どれほど普及するかわからない。個人情報が漏れたり、不正利用されたりすることへの国民の不安は根強い▼消費税率を10%に上げるにあたり、このカードを活用する案が出ている。酒を除く飲食料品や外食について、増税分の2%を後で「還付」するから、店頭の端末にカードをかざし、ポイントをためておいて下さい、というわけだ▼最初から8%の軽減税率にすればいいのに、と考える人もいよう。10%と8%が併存していると、麻生財務相の言う通り、税を扱う側が「面倒くさい」ということか。では払う側に面倒を押しつけていいのか、という批判が与党内から出たのも当然と思える▼また、カードを持つ持たないは自由という仕組みと、還付制度のつじつまは合うのか。負担の軽減で誘い込む策のように見えて、釈然としない。
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