秋の味覚、サンマ。
おいしい!やばいね。
うまっ!
おいちい。
このままでは食べられなくなるかもしれません。
ここ数年、サンマの価格が高騰。
5年間で3割上昇しています。
日本の近海で、サンマがとれなくなっているためです。
要因の一つと見られるのが急増する海外の船によるサンマ漁。
日本の排他的経済水域のすぐ外側の公海で日本に来る前のサンマを先獲りしているのです。
さらに巨大なアームであらゆる魚を一網打尽にする新型船まで出現。
その操業の様子が、初めてカメラで捉えられました。
背景には、アジアで高まる魚食ブーム。
中国では、国を挙げた大型船の建造が急ピッチで進められています。
日本周辺の海で加速する争奪戦。
その最前線に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
新鮮なサンマのお刺身に熱々のサンマの塩焼き。
日本近海でとれる生サンマは安くておいしい庶民の味ですけれども今、日本はこのままではサンマの資源量が大幅に減少するという強い危機感から、国際的な漁獲規制に向けたルール作りを始めています。
日本は世界有数の魚の消費国です。
これまで日本は、クロマグロの乱獲が資源量を大幅に減少させたとして国際社会からは資源管理を徹底するよう強く迫られる立場でした。
このサンマを巡っては、日本がルール作りを主導するというこれまでとは違った姿勢を見せています。
日本のサンマの漁獲量です。
7年前、35万トン前後ありましたけれども、ここ数年は20万トン前後にまで落ち込んでいます。
卸売価格も、1キロ当たり300円前後だったものがおととし、500円を超えました。
このサンマはどこでとれるかといいますと、サンマは太平洋全域に生息する回遊魚です。
夏から秋にかけて日本近海にやって来て、そこで大量にとっていたのです。
しかし最近では、日本の排他的経済水域の外の公海・公の海で日本に来る前の魚を海外の漁船が獲得。
いわば先獲りしているのです。
これがここ数年、日本の漁獲量の落ち込みの背景の一つだと見られています。
どこの国にも属さない公海・公の海でのサンマをはじめとする大衆魚に関する国際的な漁獲規制を作ろうと初めて国内に事務局を置いて動き始めた日本。
初めに、しれつなサンマの争奪戦の現場からご覧ください。
先月下旬から北海道沖で本格化しているサンマ漁。
鮮度を重視するため近海で漁を行っています。
かつては、船いっぱいにとれていたサンマが、今では4分の1ほどしかとれない日も少なくないといいます。
きのう開かれた恒例の目黒のさんま祭り。
はい、どうぞ。
7000匹のサンマが無料でふるまわれました。
おいしい。
いける!
ところが、ここにも影響が及んでいます。
毎年、祭りにサンマを提供しているのは、岩手県宮古市。
この時期の水揚げが大幅に減り必要なサンマを確保するのが難しくなっているといいます。
背景に浮かび上がってきたのがサンマ漁をする海外の船の急増。
日本の排他的経済水域の外側公海で行われています。
中国や台湾、それに韓国。
多いときには、一つの漁場に50隻から60隻がひしめき合います。
日本では見られない1000トン級の大型船。
増えてきたのは、ここ3、4年のことだといいます。
公海でのサンマ争奪戦。
最大の漁獲量を上げているのが台湾です。
これは、台湾の水産当局と漁業組合が共同で制作したサンマのPRビデオ。
サンマが庶民の味として定着しています。
(花火の音)港で次々と打ち上げられる花火。
サンマ漁船の出港の合図です。
船は全長70メートル余り。
総トン数はおよそ1000トン。
日本の一般的なサンマ漁船の50倍に匹敵します。
こうした船は、台湾全体で90隻以上。
漁獲量はこれまで世界一だった日本を抜き、およそ23万トンに達しています。
今回、10隻以上のサンマ漁船を所有する、台湾有数の水産会社が取材に応じました。
船は1隻、日本円でおよそ14億円かけて造りました。
集魚灯や魚群探知機など主要な装備はいずれも日本製です。
一方で、日本のサンマ漁船にはない設備もありました。
巨大な冷凍庫です。
最大で850トン保管することができます。
冷凍庫がいっぱいになるころ台湾から運搬船が送られサンマを次々に回収。
漁船はおよそ半年間一度も港に戻らず操業を続けます。
さらに今、公海でのサンマ争奪戦を過熱させているのが中国です。
和食ブームで、サンマを出す日本食レストランが増え人気が高まっています。
これまでは台湾からの輸入を年々増やして、賄ってきました。
しかし、今、中国もサンマ漁に乗り出しています。
中国各地でサンマ漁船の建造が急ピッチで進んでいます。
この3年間で建造されたのは1000トンクラスの巨大な船が44隻。
ことしもさらに十数隻が完成する予定です。
3年前、2000トンだったサンマの漁獲量は、去年は40倍の8万トン近くまで拡大。
今後数年で、台湾や日本に迫ると見られています。
実は、こうした動きの背景には中国政府が示した新たな方針があります。
これは2年前に出された公文書。
近海での魚のとり過ぎと環境汚染が深刻化していることを理由に、今後は遠洋漁業に力を入れる計画を打ち出したのです。
取材を進めると、その影響はすでにサンマ以外にも及んでいることが明らかになりました。
これは日本の排他的経済水域のすぐ近くで操業する中国の新型の巨大漁船です。
この夏、日本の水産庁の取締船が漁の様子を初めて捉えました。
船に取り付けられた長さ50メートルほどのアーム。
それを四方に伸ばして幅100メートル以上ある巨大な網を広げます。
灯光かぶせ網漁法と呼ばれています。
強力な光と、細かい目の網を使いサバやイカなどをとっていると見られます。
こうした船は、これまでに確認されただけで100隻以上に上っています。
今夜のゲストは、水産資源の状況にお詳しく、そして数々の国際的な水産交渉にも携わった経験をお持ちの、水産総合研究センター理事長の宮原正典さんです。
サンマのおいしい季節がやって来たんですけれども、現場は厳しいんですね。
そうですね。
サンマはやっぱり季節感がある魚なので、皆さん、ことしは夏が早く終わったんで、早く食べたいと思われると思いますが、なかなかサンマの南下が進んでないんで、これは温暖化の影響かもしれないんですが、まだまだ高いんで、ことしのサンマはどうしたんだという声が出てるんじゃないですかね。
やや小さいなという印象も。
そうですね。
痩せているというのもことしの特徴かもしれないですね。
小さな船で、近海でとっている日本のサンマ漁に比べて、大型船で大量にとっている海外の船、漁師さんのことばに、無限にとれるものだと思ったけれども、不安になってきたと、どれぐらいの脅威なんですか?
やっぱり、大型船が急激に増えたっていうのがやっぱり、問題なんだろうと思いますね。
台湾船で100隻ぐらい、中国船でも44隻ございます。
それから先ほどもビデオに出ていた、全くよく分からないかぶせ網ですとか、訳の分からない船が中国船ですが100隻、船が少なくともですね。
これらの漁船がとる量なんですけれども、簡単に試算しますと、100隻の例えばかぶせ網船だけでも1隻1000トンとれば、10万トンなんですね。
日本の漁獲量規制、年間、日本のサンマとっていい総量が26万トンくらいですから、いかに大きい数字かということが分かると思います。
これが急速に、1年、2年で漁獲を増やしてしまったことがあって、大きな脅威ですね。
こうした大量の船が日本の排他的経済水域の外の公海にいるっていうことですけれども、それは各国では、きちっと管理などはされてるものなんでしょうか?
残念ながら、漁獲量の報告もまだきちっとされていないんではないかと思われます。
それから本当にその船が、そこにいるのかっていうことも、ちゃんと、本国では把握できていない状況だというふうに思います。
日本が今回、主導して、国際的な漁獲規制に向けたルール作りをしようとしていますけれども、危機感の核にある部分っていうのはどういうことなんですか。
日本の周りの三陸から北海道にかけての漁場というのは、世界の三大漁場の一つといわれていまして、現在でも、全世界の漁獲量の4分の1を、この水域だけで占めるという大変いい漁場、ある意味残った優良漁場なんですね。
今までは日本もロシアも、そういう外国漁船の寄港、港に来ることを認めなかったんで、いわば前線基地がない状態だったんで、中国船も台湾船も来なかったんですが、だんだん性能のいい漁船、大型船を造り、冷凍技術も出来て、運搬船も使うというようになったんですね、いよいよ離れた三陸漁場の公海に出てくる、ツールを手に入れてしまったという状況が最近のことだと思います。
そうすると、サンマだけじゃないということですか?
そうですね。
サンマばかりじゃなくて、先ほどのビデオにもありましたとおり、サバでもイカでも、浮いてる魚なんでもとれるということですから、これは大変な脅威だと思いますね。
クロマグロの交渉などに携わった経験をお持ちですけれども、これから先の、こうしたルール作りを展望されると、マグロに比べて、ここでの交渉っていうのは、どのように見通しますか。
マグロの場合は、確かに難しかったですが、日本が圧倒的な市場ということで、日本がある程度、我慢することによって、漁獲量全体をコントロールすることができた。
だけど、今度の場合は、サンマをこれから食べ出して、もっと食べてしまおうという国もあれば、輸出しようという国もあって、日本だけが一生懸命頑張っても、なかなか漁獲量の削減を迫れないという難しさがあると思います。
難しい交渉になるだろうということですけれども、このままでは、資源が枯渇するのではないかという、不安の声が上がっている中で、日本はお伝えしているように、このサンマ漁に関する国際的なルール作りを始めました。
先週、日本や中国、台湾など7つの国と地域の代表が東京に集まりました。
ことし発足した北太平洋漁業委員会の初めての会合です。
サンマなど、これまで規制がなかった魚について国際的なルール作りを行うことが目的です。
呼びかけたのは日本の水産庁です。
会議ではまず、サンマの漁獲量に上限を設け、資源を保護する枠組みを作ろうとしています。
かつて日本は、マグロなどを乱獲しているとして国際的な批判を受けました。
資源が枯渇しかねないと漁獲制限を迫られたのです。
今回は日本が率先してルール作りを進めていこうとしています。
サンマのルール作りを進めるうえで、鍵を握るのはロシアです。
日本と同様、公海ではなく自国の近海で漁を行っているからです。
ロシアにとってもサンマは重要な水産物の一つです。
年間10万トンのサンマが消費されています。
サンマと野菜を煮込んだスープはロシアの代表的な家庭料理です。
日本での会議を前に漁業庁のトップがインタビューに応じました。
しかし、漁獲量の上限を決める交渉は容易ではありません。
北太平洋全体でのサンマの漁獲量は、去年は62万トン。
日本は上限を、40万トンまで減らすべきだと主張。
一方、台湾は、70万トンまで引き上げられるとしています。
中国も、具体的な数字は示さないものの、まだ漁獲量は増やせると主張しています。
初会合では、漁獲量の無秩序な拡大を防ぐため今後、サンマ漁船を急激に増やさないことでは合意しました。
しかし、漁獲量の上限についてはさらに2年以上かけて議論していくことになりました。
交渉、始まったわけですけれども、今回の決まったことは、2017年末までは漁獲量について、議論を継続すること。
そしてサンマ漁船の数は急激に増やさないことで合意したと。
そして中国の新型漁船につきましては、削減など、管理強化を求めることも決まったということですね、この全体の成果というのはどう受け止めていらっしゃいますか?
こういう国際的な枠組みが出来たということ自体が大変な前進だと思うんですね。
ただ、やっぱり時間はかかる。
ここに出てますとおり、資源の評価をして、議論を本当の漁獲制限の議論に入るのは2年後ですから、さらに時間がかかると思います。
その間に、やっぱり駆け込み操業で漁獲を増やしていくでありましょうし、漁船数も増えていくということになりますんで、その間に、やっぱり資源が減っていくことが大変心配です。
皆さん、将来を考えて、長期的に持続性が大事だって考えてくれればいいんですが、やっぱりこの漁船を造っている人たちの中には、全く漁業と関係ない資本が入ってるところもあって、こういう人たちは、短期的な利益というところを追求しておりますので、全く違う考え方で、パイが小さくなることよりは、今とれるもののほうが大事だということを考えてるところだというのは、大変難しいところだと思います。
そうはいっても食べたいものが食べられなくなると、きちっと管理をすれば、持続可能だというのが、この魚の資源なわけですけれども、どうやって説得していきますか?
これからのことですけれども、1つは、ファクツ・事実をきちっと突きつけていくということです。
ここに資源量がありますけれども。
今、資源量自体は、こういうふうに半減してますが、これからさらに減る可能性が高いわけですね。
今、これだけ急激に中国、台湾が増やしたことによって、本当に資源が悪化したのかどうかという因果関係がはっきりしていませんから、これは調査をきちっとして、資源の状況を明確にする必要がある。
それから先ほどから出てました、100隻のなんかよく分からない中国船きてる話。
これについては、一体、どんな操業をして、本国が見てない所で、一体何をやっているのかということを取締船なんかを使って、そういう違法漁獲の状況を事実として突きつけていく、この2つが大変必要です。
もう一つ、今後の問題として、大変大事なのは、日本ばかりが市場じゃないですから、大きな市場ですと、EUですとか、あるいはロシアですとか、アメリカですとか、こういった市場国で協調して、乱獲をするような漁業の生産物は買わないっていう強硬な姿勢を示していくことも大事になってくるというふうに思います。
台湾は70万トンは大丈夫なんじゃないか、日本は40万トンまで規制すべきだと、日本にとっても、みずから痛みを伴う数字ではないですか?
ただ、やはり先ほど、曲がり角を曲がっている状況だとお話しましたが、日本の周りで乱獲がもう起こっている状況ですから、やはり日本側もリスクを考えて、リスクを取ってでも厳しい状況を提案していかなきゃいけませんし、その分、供給が減るかもしれませんが、そこは我慢していただかなければいけないかもしれません。
なんかおいしい魚をいつでも食べられたわけですよね、これまで。
これまでが幸せだったということですね。
そうですか。
どうもありがとうございました。
宮原正典さんと共にお伝えしてまいりました。
今夜のクローズアップ現代は、これでお別れです。
2015/09/08(火) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「サンマ争奪戦〜どう守る“日本の秋の味覚”〜」[字][再]
秋の味覚・サンマに異変が起きている。日本の周辺の海で、台湾や中国などの大型船が日本に来る前のサンマを“先どり”しているのだ。しれつな争奪戦の最前線を取材する。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】独立行政法人水産総合研究センター理事長…宮原正典,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】独立行政法人水産総合研究センター理事長…宮原正典,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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