タクシードライバーの推理日誌 2015.09.07


(母)いいヒデくん?面接会場に入るときはまず面接官の目を見てお辞儀をしてその後もう一度面接官の目を見るの。
これだけでずいぶん印象が違うんだって。
(息子)うん…。
面接のときは「うん」じゃなくって「はい」って言うのよ…。
だってボク…。
(母)「ボク」じゃなくって「わたし」って言うの。
(息子)ボクできるかなあ?
(父)大丈夫だよ。
面接なんてのは堂々としてればいいんだ。
(母)自信を持つの。
ヒデくんやれば出来る子なの。
あなたは天才なのよ〜!
(夜明日出夫)面接って就職の?
(父)そうなんです。
今日は息子の一生を決める大切な日なんです。
秀男!頑張るんだ!
(母)ママがついてるわよ!頑張るの!フレ〜フレ〜ヒデくん!
(父母)フレ〜フレ〜ヒデくん!
(母)運転手さんもご一緒に!ア!運転手さんも“ヒデくん”!
(父母)フレ〜フレ〜ヒデくん!そういう言い方ないだろ?別に君に用だから電話かけてるわけじゃないんだから。
…あゆみは?いや就職活動で忙しいのはわかってるよ。
だから心配して電話かけてんだろ。
…それで?10社受けて…全部ダメ?
(社長)ご家族のことをおききしますが履歴書によれば同居はお母さんだけになってますね?お父さんは?
(あゆみ)両親は8年前に離婚しました。
離婚を…。
(あゆみ)はい…。
(夜明)あゆみの就職活動がうまくいかないの俺のせいだっていうの?夫婦の離婚と娘の就職活動関係ないだろ?何でもかんでも俺のせいにするなよ!
(秋山周平)他社はどういったところ受けました?新聞社や出版社をいくつか…。
(秋山)なるほど。
君大学の部活はマスコミ研究会だったね。
本当はそっちの方が希望というわけだ。
いえ!そういうわけでは…!
(秋山)君の受け答えには熱意が感じられないんだよ。
マスコミ関係を受けたもののうまくいかない。
この際ほかの業種も受けてみようかしら?当社への志望動機はそんなとこじゃないのかね?いらっしゃい!
(安達)サンマ定食2つ!…夜明さん!こちら今度うちに入った高橋さん。
高橋といいます。
あ…夜明です。
お恥ずかしい話経営していた会社が倒産しまして…。
この歳で勤まるかどうかわかりませんが…。
大丈夫ですよ。
頑張りましょ!ウッ…!!山中湖まで。
山中湖…?山梨県の?ああ。
あ…すみません。
帰りの高速代もいただくことになりますけど…。
ああ。
はい。
ありがとうございます。
山中湖はご旅行ですか?…ああ。
最高ですねえ!今日は天気もいいし。
…ラジオでもかけましょうか?
(秋山)いい。
(夜明)《なぜかこの乗客のことが気になった》《乗車してからというものひと言も口をきこうとしない》《2人はどういう関係なのか?》《詮索する気はないが旅行に行くにしては“静かすぎる”のが気になった…》
(秋山)仕事で人に会うことになってまして。
ここで私はいったん降りますが2時間ほどしたら迎えに来てください。
彼女はその間暇つぶしに河口湖へでも案内してください。
わかりました。
河口湖まで20分ぐらいかかります。
(杉本梨花)湖ばかり眺めても仕方ないわ。
そういえばこの辺じゃなかった?青木ヶ原の樹海って…。
はい…出ます。
散歩してくるわ。
待ってて。
はい…。
お客さん!あの…ご存じだと思いますけどここ自殺の名所ですから。
それがなに?いえ…あんまり奥に行くと迷いますよ。
(梨花)わかってるわよ。
すぐ戻るわ。
樹海散歩だって…。
なに考えてんだ?おかえりなさい。
まだ時間あるわね。
市内に戻って。
喫茶店にでも行くから。
あはい…。
どうもありがとうございました!ありがとうございました。
やれやれ…。
ウワァッ!!なにあゆみ〜!おどかすなよ。
ビックリしたよ!…いつ来たの?
(あゆみ)今…。
もうこんな時間か…。
あたしもうダメだわ…。
ダメってなに?今日はデパートの面接だったんだけどどこを受けても通る気がしないの…。
大丈夫だよそのうち…。
ダメよ…。
無理だわ…。
なああゆみ…。
社会っていうのは厳しいよ。
大変なのはわかるけどそんな弱音はいててどうすんだよ。
頑張ってりゃそのうちきっとさ…。

(ノックの音)誰だろ?…まさかあいつ?お母さん?お前ここに来ること言った?うん。
冗談じゃないよ。
あゆみの就職うまくいかなくてなんで俺が文句いわれなきゃいけないの?…はいはい!ハイッ!!山梨県警富士南署の加川と言います。
津田です。
やはりあなたでしたか。
はっ…?夜明さんとは昔警察官の全国柔道大会でお手合わせ願ったことがありましてね。
覚えていらっしゃいませんか?…加川さん?この方はね元警視庁捜査一課にいらした夜明警部補だ。
そうでしたか。
柔道は凄腕でまったく俺なんかかなわなかった。
夜明さんがタクシーの運転手をなさってるとは知りませんでした。
それで何か?実は今朝方山中湖で男女2名の変死体が発見されまして。
この2人に見覚えはありますか?この2人昨日私山中湖に運びましたけど…死んだ?
(加川)ワインに農薬のパラコートを混入しての服毒死。
発見者は女性の勤めるクラブの同僚で飯塚里美28歳。
彼女の話によると今日は3人でゴルフをやる予定だったそうで。
ところが別荘を訪ねてみると2人がいない。
近くを散歩でもしているのかと湖畔へ来て2人の遺体を発見。
現場の状況から心中と思われます。
…でこの2人は?発見者の話によると2人は愛人関係にあったそうです。
女性は杉本梨花24歳。
男性の方はユーロ食品という会社の総務部長で秋山周平46歳。
…どうかしましたか?あいえ…。
私就職活動でユーロ食品受けたもので…。
知ってんの?
(あゆみ)面接官だったの。
この2人心中っていうのは間違いないんですか?
(加川)疑問がないわけでは…。
(津田)遺書がありませんでした。
別荘を調べたところベッドが…あ…。
あゆみ。
向こう行ってなさい。
…ベッドを使用した形跡がないんです。
一般に心中する男女は死ぬ前にこの世の別れと身体を求め合うもんです。
ということは…?そこで夜明さんにお訊きしたいんですがタクシーに乗っていたとき2人の様子はどうだったでしょうか?心中するように見えましたか?無口っていうか…。
妙に静かだったの覚えてます。
それに…男性が降りた後女性が「青木ヶ原に行きたい」って言い出して…。
樹海へ?そうですか…。
ユーロ食品ってどんな会社?有名な会社よ。
健康食品はもちろん最近は世界中の高級食品を輸入してて業界じゃトップクラス。
イメージもいいし女性には人気の企業なの。
その総務部長か…。
でもあの人がねえ…。
死んだ人の悪口言う気はないけどあの秋山って人感じ悪かったの。
あたしがマス研の部活ってだけで軽蔑したような目で見て…。
なんか高圧的っていうか…。
あたしにはとても自殺するような人には見えなかったけどなあ…。
(神谷警部)そんなことで電話されても困りますよ。
(東山刑事)夜明さん?
(国代刑事)めずらしいですね。
夜明さんから電話だなんて。
(神谷)それもくだらない用件で。
「くだらない」ってなに?夜明さんが乗せたお客さんが心中したからって事件に首つっこんでどうするんです?夜明さんは民間人なんですよ!首なんかつっこんでない!気になってるだけ。
なんか情報があったら教えてほしいと思って!だから管轄の違うそれも心中事件の情報をどうして我々が調べなくちゃならないんです?冷たいヤツ…。
神谷。
お前知ってる?最近警察ものすっごい評判悪いよ!失礼します!失礼なヤツ!
(パトカーのサイレン)
(刑事)ガイ者は古賀高男47歳。
職業はフリーのジャーナリスト。
(東山)で凶器は?
(刑事)発見されていません。
検視官の話では遺体の硬直が解けているので死後少なくとも2日は経っているんじゃないかと。
ジャーナリストねえ…。
(東山)最近はどんな記事書いてたんだろう?
(刑事)それでしたら発見者から話を聞かれた方が…。
(金子哲也)「週刊NOW」の編集やってる金子ってもんです。
「週刊NOW」ってあの写真週刊誌の?そうそう…。
で3日ぐらい前か古賀さんから電話あって「渡したい原稿あるから今日の1時くらい取りに来てくれ」と言うんでで…伺ったら…。
鍵はかかっていなかった?
(金子)そうそう。
その原稿なんですけど内容はどんな内容だったんですか?それ聞いてない。
いつも古賀さん原稿こっち持ち込みだったから。
(無線)「1646応答願います」はいこちら1646。
どうぞ。
夜明さん。
秋山さんという女性から指名が入ってます。
「迎車は可能ですか?」可能です。
秋山さん…?
(秋山恵美子)私秋山の妻です。
…どちらへ?2日前主人が行った同じコースで山中湖までお願いします。
運転手さんのことは警察から聞きました。
警察は心中と決めているようですけど私には信じられません。
だって理由がないじゃないですか。
主人がどうして死ななければならないんです?警察は「運転手さんも“2人の様子は妙だった”と証言しているだから間違いない」と。
…私は「嘘だ」と言いました。
すると「その運転手さんは元刑事さんだ嘘をつくはずがないでしょう」と…。
車出してください。
…はい。
「心中するように見えた」って証言したわけじゃありません。
ただ…。
会話もなく沈んでいた。
ええ…。
富士吉田工場長の松村です。
わざわざお呼びだてして申し訳ありません。
この度のことは本当に…何と申していいか…。
ここで主人と会われたのは仕事のことで?はい。
工場に新たに導入するOA機の件や総務のことで2時間ほど打ち合わせいたしました。
その時の主人の様子どうだったんでしょう?はあ…こう申しては何ですが何か悩みごとでもおありなのか時おりぼんやりとしてらっしゃいました。
あの…主人が降りた後女の人は樹海へ行ったんですよね?はい。
そこへ案内してください。
現場…すぐそこですけど行ってみますか?はい…。
大丈夫ですか?すみません…大丈夫です。
ちょっと休んだ方がいいですよ。
これよろしかったらどうぞ。
ありがとうございます。
失礼な質問していいですか?あの…亡くなったご主人に女性がいたことは…?いえ…知りませんでした。
私…妻として失格です。
私埼玉の川越で小さなレストランやってるんです。
仕事に追われて主人の秘密に気づきませんでした。
主人が何に悩み何に苦しんでいたのかも…。
動機に関しては私もちょっと引っかかるんですよね。
いやもちろんご主人のこと何にも知りませんけども死のう…って人がその前に仕事の打ち合わせしますかね?それに警察の話ですと発見者の方と3人で次の日ゴルフをやる予定だったって…。
心中する2人でゴルフってのはわかりますよ。
でも3人っておかしくないですか?あ…すみません。
つい昔の癖で。
夜明さん…どうして刑事をお辞めになったんですか?昔…捜査にかかわった女性との関係を誤解されて週刊誌にまで書かれてそれで…。
おまけに離婚するはめになりました。
娘が1人いるんですけど…つらい思いさせてしまいました。
さっき「失格」っておっしゃったけど私なんかそれ以上に夫として…父親として…失格です。
この夕陽…どこかで見たことあるような…。
コモだわ…。
「コモ」?イタリアの北部の町にコモ湖という湖があるんです。
以前その畔のホテルで修行していたことがあって…。
そうですか。
人が亡くなった湖だというのにこんなに綺麗な夕陽が見れるんですね…。
まるでコモ湖の夕陽と同じだわ…。
先輩!どうした?
(東山)昨日小岩のマンションで他殺死体が見つかりました。
(国代)殺害されたのは「古賀高男」という男性で…。
その古賀の部屋にあった写真ちょっと見てほしいんです。
今日俺さあ山中湖!長距離!疲れちゃってもう。
(東山)いや先輩…!俺は民間人なの!民間人に事件の話してもしようがないだろ。
じゃ…民間人!見なさい。
この人は…?「杉本梨花」古賀高男は梨花の元恋人なんです。
解剖の結果古賀が殺害されたのは11日の夜だとわかりました。
その翌日梨花は秋山と一緒に夜明さんのタクシーで山中湖で心中した。
12日の2人の行動が知りたいんです。
…山中湖行きたいの?長距離…よし行こう!いえ…そうじゃないんです!場所を教えていただければそれでいいんです。
教えるだけ?何すんだよ?凶器です。
ありましたっ!古賀のジャーナリストとしての評判はあまりよくありませんね。
獲物を嗅ぎつけてはハイエナのように付けまわす。
そんなブラックジャーナリストとして有名で…。
(国代)その古賀がユーロ食品近くの喫茶店で秋山と口論していたというんです。
…つまりこういうこと?古賀はつき合ってた梨花が秋山に寝返ったことを許せなかった。
古賀は秋山を脅しにかかった。
奥さんに浮気をばらすって言ったのかもしれない。
あるいは別の弱みを握ったのかもしれない。
とにかく古賀は秋山を脅し金を無心した。
はい。
そこで秋山が…逆に古賀を殺した。
秋山はそのことを梨花に話し2人で山中湖の別荘に逃げる。
途中で梨花が樹海に凶器を捨てる。
山中湖まで来たついでに仕事の打ち合わせをしたり友人とのゴルフを予定していたが事件の発覚が急に怖くなった。
逃げ切ることはできないと観念した秋山が梨花に心中を持ちかけ梨花はそれをのんだ。
ナイフに付着していた血液も古賀と一緒のAB型。
そしてDNAも一致しています。
心中と殺人。
2つの事件が一気に解決したわけです。
なるほど。
これでやっと夜明さんの寝覚めもよくなると。
うん。
疑問は全部解けたよ。
秋山が心中した動機も梨花が樹海に入った理由もあゆみが「マスコミ研究会」って言っただけで秋山が不機嫌になった理由も。
(2人)えっ?ううん。
何でもない。
ご苦労さん!もしもし…夜明さんですか?
(あゆみ)嵐がくるかもね。
お父さんと外食するなんて何年ぶりだもの。
なに言ってんだ。
去年の…。
(あゆみ)おととしで〜す!…そうだっけ?で何ごちそうしてくれるの?イタリアン・レストランって言ってたよ。
へえ〜なんか期待しちゃう!「リストランテコモ」っていうんだ。
…アーッ!このお店知ってる!グルメ雑誌に紹介されてたの。
関東でも指折りのイタリアンて。
ウワッすごい!楽しみ!行こ!行こっ!なにあの変わり身。
よくいらしてくださいました。
今閉店時間なんです。
その方がゆっくりしていただけると思ったものですから。
気を遣っていただきすみません。
娘のあゆみです。
秋山恵美子です。
お招きいただいてすみません。
さあどうぞ。
…いろいろ大変でしたね。
いえ…。
いつまでも悲しんでばかりはいられませんから。
さあ夜明さんもどうぞ。
お口に合うかどうかわかりませんが腕によりをかけて調理いたしますので。
“季節野菜のスープ仕立て生ハム添え”です。
いただきまーす。
(あゆみ)いただきます。
すごい!私こんなにおいしいイタリアン食べたの初めて。
俺も!デザート2つ食うの?
(あゆみ)ありがとう!いかがでしたか?ごちそうさまでした。
おいしかったです!いやあ正直いって驚きました。
野菜こんなにおいしく食べたの初めてです。
あの肉のうまさってのはどう表現するの?そう言っていただけると嬉しいです。
私にとって何よりの励みになりますから。
もう食材から違うんでしょうね。
お野菜の方は農家と契約してうち用に作ってもらってます。
あのぉ…恵美子さんはいつごろからイタリア料理のシェフになろうと思われたんですか?そうねえ…まだほんの小さな子どものころかな。
でもね高校でるころには“絶対料理人になるんだ”って決めつけちゃってた。
えそうなんですか?あれ?これこないだのアレでしょう?コモ湖です。
修行中この綺麗な湖の畔に立つとそれまでのつらかったことなんか全部忘れられて…。
また一から頑張ろうっていつも自分を励ましてました。
思えば今の私の原点だったと…。
それで店の名前が「コモ」?はい。
素敵なところですねぇ。
でもすごいな!こうして自分の夢を実現されてるなんて。
・おそれ入りまーす!何しにいらしたんですか!?月刊「グルメニア」ともうしますが店内を撮影をさせてください。
取材はお断りしてると言ったはずです!いつかもグルメ雑誌に無断で掲載されて…!お店を紹介することがどうして迷惑になるんですか?帰ってください!お帰りください!!
(ママ)金子さ〜ん!いらっしゃいませ!
(金子)里美ちゃんいる?
(ママ)いるわよ。
里美ちゃん!すみません。
ちょっと失礼します。
言っとくけどこの店高いのよ。
古賀さんもういないんだしあなた古賀さんと違ってサラリーマンなんだから。
こんなもん経費で落とす。
言ってみれば取材なんだ取材。
知らなかったよお前…。
あの心中の遺体あれお前が発見したんだって?
(里美)そうよ。
それがなに?でもあれよ…本当心中だったのかな?あゆみちゃん。
あ…!こんにちは。
来てるんだったら声かけてくれればいいのに。
あれから何度か来てくれてるんだって?はい。
今日も就職活動だったの?…このお店に来て恵美子さんのパスタを食べてると私何だか励まされるんです。
ねえ今度一緒に東京で食事しない?何これ…?これでもスパゲティ?ずいぶん違うこと…。
(恵美子)あゆみちゃんどういう会社に就職したいの?
(あゆみ)どこでもいいんです。
贅沢言える時代じゃないから。
そんなことであきらめちゃダメよ。
何かしら絶対“これだけは”ってものがあるはずよ。
そう言われるとぐらついちゃうけど…。
恵美子さんは何か料理人になるきっかけってあったんですか?私にはね忘れられない思い出があるの。
5歳のときにね父が亡くなって借金もあって母と2人だけの貧しい生活だったのね。
母はいつも働きづめで私はいつも夜遅くまで母の帰りをお腹すかせて待ってたの。
あるとき母が外食に連れてってくれたことがあったのね。
小田原の小さな食堂だったけどそこで食べたスパゲティがたまらなくおいしくて。
“ああ世の中にこんなにおいしいものがあったんだなあ”って…。
私ね食べながら泣いちゃったの。
それまでのつらいこと全部忘れられたような気がして。
(悲鳴)
(東山)本当ですか?
(刑事)間違いありません。
金子哲也。
古賀の死体を発見したあの編集員です。
待てよちょっと待てよ…。
こりゃいったいどうなってんだ?凶器はこれですかね?まだ新しいぞ。
(刑事)体温の低下と硬直の状態から死亡推定時刻は午後9時前後でしょうね。
9時…ですか。
犯人は金子とここで会い口論になった。
で転がってたコンクリートを使って撲殺した…。
はい。
…でいったい誰が?んっ?
(カーラジオ)「昨夜11時ごろ東京都墨田区の駐車場で男性が死んでいるのが発見されました。
亡くなったのは出版社に勤める金子哲也さん37歳で頭部を鈍器で殴られ死亡した模様です」「なお金子さんは10日前東京都江戸川区内で起きた古賀高男さんが殺害された事件の第一発見者であり捜査本部は古賀さんの事件との関連を含め捜査を進めています。
続いて…」
(夜明)これじゃわかんねえよ…。
(木下)おはようございます!おはようっす!ちょ…何ですか?いやいや。
載ってねえや…。
載ってないって何が?地方版か…。
係長そういえばマイホーム買ったんですよね?うん。
青森でしたっけ?茨城です!毎朝5時起きでねえ…。
いいでしょ遠くに住んだって。
(東山)古賀さんと金子さんの関係どんな感じだったんですか?
(編集長)仲よかったですよ。
住まいが近いこともあってたまに一緒に酒なんかも飲んでたようですし。
刑事さん。
2つの事件がつながってるって本当ですか?いやそれはまだ…。
(編集長)2人を恨んでた…つまりウチの雑誌を恨んでいた人間の犯行とか…。
心当たりがあるんですか?批判や言いがかりはしょっちゅうですよ。
そんなことを気にしてたら雑誌なんか作れない。
(東山)なんだかなあ…。
人のスキャンダルばっか書いてんだろ?でも…考えられますよね?
(東山)えっ?マスコミに対する連続報復殺人。
国代くん。
君でっかいわりに大きなこと忘れてないか?古賀を殺した凶器はどっから出てきた?そこなんですよね。
そうすると古賀の事件と今度の事件は…?つながってます!神谷。
いきなり訪ねてきてなにとんちんかんなこと言ってんの?問題は古賀が書こうとしていた記事です。
それをネタに古賀は秋山を強請っていた。
金子も…記事の内容を知ってたんじゃないでしょうか?じゃあ何?金子も古賀と同じように脅して殺された。
同一犯の犯行だっていうの?古賀を殺した秋山は心中したんだよ。
死んだ秋山がどうやって金子を殺せるの?古賀が強請っていたのは秋山だけだったのか…?神谷。
お前妙なこと考えてないだろうな?古賀が握っていたネタは秋山の浮気なんかじゃない。
記事にできるほどの別の弱味だったと思われます。
それを公表されれば秋山は破滅。
だとしたらそれは妻である恵美子にとっても…。
バカ!バカ!神谷のバカ!金子が殺された以上犯人は別にいる可能性があるんですよ!そうすると心中も怪しくなってくる。
心中に用いられた農薬も入手先はまだわかっていません。
神谷…。
古賀を殺したのは本当に秋山だったのか?秋山と梨花は本当に情死だったのか?それで恵美子さんを調べたわけ?はい。
古賀が殺された11日の夜および心中があった12日の夜彼女にアリバイはありません。
昨日は?昨夜はアリバイありました。
そ〜らみろ!だからお前バカだっていうの!神谷今日何しに来たの?夜明さんに用事があって来たんじゃありませんよ。
(あゆみ)ただいま〜!
(夜明・神谷)おかえり〜!
(あゆみ)あいらっしゃい!あゆみちゃん。
昨日の夜7時半から9時までの間秋山恵美子さんと一緒にいたって本当?ええ…。
代官山のレストランで食事を。
店を出たのは…?ちょうど9時ごろだったかなあ?金子の死亡推定時刻は?え…?金子の死亡推定時刻何時って訊いてんの!9時前後ですけど…。
ほらみろ。
お前バカだろ?代官山に9時にいた人間がどうして同じ時間に墨田区で人を殺せるの?…どうかしたの?何でもない。
ただたんに神谷のおじさんボケてるだけ。
いやぁ〜!あゆみのイタメシが食えるとはな。
恵美子さんの足元にはぜんぜん及ばないけどね!簡単なようでけっこう難しいんだよなぁ!私一度でいいからイタリアのコモ湖見てみたい。
恵美子さんの話聞いてるとすごい素敵なとこって感じなの!それからミラノもいいし…フィレンツェもいいなあ…!ねえお父さん!ドキッ!就職決まったらぁイタリア旅行…いいわよねえ?…いいよなあ。
いいだろなあ。
あゆみが恵美子さんとねえ…。
(神谷)〔秋山と梨花は本当に情死だったのか?〕〔亡くなったご主人に女性がいたことを…?〕〔いえ…知りませんでした〕
(神谷)〔心中に用いられた農薬も入手先はわかっていません〕農薬か…。
〔お野菜の方は農家と契約してうち用に作ってもらってます〕まっさか…。
里美ちゃんなら辞めたわ。
辞めた…?杉本梨花さんと秋山さんの2人がつき合っていたのは確かですね?ええ。
半年ほど前だったかしら。
それまで梨花古賀さんとつき合ってたんだけどそれはひどい男で…。
梨花は逃げるように秋山さんとつき合いだしたの。
飯塚里美さんにはどなたか…?あの子はいつも片思いだったから。
本当いうとね里美ちゃんも秋山さんにゾッコンだったの。
つまり…三角関係?
(ママ)古賀と金子さんを加えたら何角関係になるのかしら?
(東山)つまりこういうことなんです。
梨花秋山そして古賀。
三角関係ここだけじゃなく梨花秋山里美。
こちらも三角関係だったんです。
さらに金子は里美に惚れ込みしつこくいい寄ってたそうです。
飯塚里美は今回死亡した4人すべてとかかわっていたのか…。
(加川)山中湖の別荘を訪ねたのはゴルフをする約束だった…?そうよ。
でも3人で遊んでもおもしろくないよねえ?だって杉本梨花さんはあなたが秋山さんに惚れてるの知っててそれで誘ってたんでしょ?そりゃ妬みが募っても当然だよね。
…何がいいたいの?あなたは金子さんにもストーカーまがいに付けまわされていたそうですね?だから私が殺したっていうの?いいかげんにしてよ!どこに証拠があるっていうの!?勝手なこと言うんじゃないわよ!すみません。
川越の埼玉医大病院お願いします。
川越?川越ですか。
はい!こんにちは。
夜明さん!?近くまで来たもんで。
…ちょっといいですか?あゆみがごちそうになったそうでありがとうございます。
いえ。
お礼を言いたいのは私の方です。
あゆみちゃんあれから何度か私の店に来てくれて。
あゆみが?それにあゆみちゃんのおかげで助かったのは私の方ですから。
次の日刑事さんがお見えになっていろいろと質問されて。
金子っていう編集者が殺された事件の…?ええ。
事件のことは朝刊を見て知ってましたけど…。
でなんてお答えに?「あゆみちゃんと食事をした後真っ直ぐ家に帰りました」「会ったこともない人の事件のことでどうして私が質問されなければならないんでか」って…。
警察ご主人の心中洗い直してるみたいです。
私が疑われてるんですね…。
いえいえ。
警察みんな疑うんですよ。
警察は疑うの仕事ですから。
夜明さんは…?いえいえとんでもない!私民間人ですし。
そんなあなたが事件にかかわりがあるなんてとんでもない。
本当ありがとうございました。
あゆみ就職問題で落ち込んでたんです。
それじゃ私ここで。
…夜明さん。
あゆみちゃんにおっしゃってください。
“もう会えないかもしれないけどあゆみちゃんの就職希望がかなうことを私祈ってます”って。
「もう会えない」?実は私来週イタリアへ発つんです。
イタリアへ…。
ミラノの郊外で修業時代の友人が新しくリストランテ開くんです。
それで“ぜひ手伝ってくれないか”って。
考えたんですがもう一度本場で勉強し直すいい機会かなって…。
そうですか…イタリアへ…。
その方が…亡くなった主人も喜んでくれると思うんです。
(社長)秋山くんは心中だったんでしょう?終わった事件を今さらつついていったいどうするんです?
(国代)いえまだ心中と決まったわけではありません。
刑事さん!ご存じのように食品会社というのは消費者の信用がすべてです。
売ってるのは食品だけじゃないイメージも売ってるんですよ。
心中事件だったからこそ実名報道されずに済んだものを。
すみません。
質問に答えてください。
脅迫されることなど何もありません!株主総会を控えたこの時期に勝手な想像で事を荒立てるのは営業妨害も甚だしい!お答えすることは何もありません。
どうぞお引き取りください。
わかりました…失礼します。
本当ですか!?
(宮辺)ユーロ食品は総会屋との癒着がうわさされ東京地検と捜査2課が内偵を進めていた企業なんです。
(国代)総会屋…。
(宮辺)大物総会屋岡田龍三です。
半年ほど前から岡田の手下がユーロ食品へ接近する妙な動きを始めまして。
その窓口になっていたのが総務部長の秋山だったんです。
しかも岡田は暴力団だけでなくゴロつきジャーナリストともつながりが。
(東山)ジャーナリスト!?まさか!古賀高男は岡田の手下です。
じゃあ今度の事件はすべて総会屋がらみの…?デカいことになりましたね。
警部…。
岡田の周辺を徹底的に洗うんだ。
(国代・東山)はい!恵美子さんイタリアへ?来週。
あゆみによろしくって。
すごいなぁ…恵美子さんてホントすごいよね。
あゆみ。
卒論て何書くの?私人間を書きたいの。
難しく言うと「マスメディア論及び人間考察と情報処理」。
人間を書くってだれ?恵美子さん。
彼女の人生を書きたいの。
彼女に会って取材するわけ?本人に聞いたんじゃただのインタビューじゃない。
私が独自に調べるの。
この間食事をごちそうになったとき恵美子さん昔の話をしてくれたの。
貧しかった子供のころ初めて行った食堂でお母さんと食べたスパゲティが忘れられないこととか…。
そのお店小田原の家の近所で「蓬亭」っていうんだって。
その辺を基点にして…。
あのさあゆみ…。
おまえが恵美子さんのことを尊敬するのはいいんだけどシェフになりたいなんて言わないよね?調理師の資格を取りたいから料理学校に通いたい…とかさ。
こういう言い方するとおかしいけどお父さんできるだけ早く就職してもらいたいんだよね。
いや…養育費はおまえが学生の間っていう約束なんだ。
シェフになりたくて恵美子さんと会ってたんじゃありません!あの人見てると励まされるから…。
ヒドイ!ごめんごめん…そういう意味じゃなくてあゆみにできるだけ早く一人前の女性として自立して欲しいとそう思ってるわけだな。
お金のことじゃないよ。
ホントだよ?あぁ〜っ。
わっ!?ビックリした〜。
ドアが開いていたもので。
脅かすなよ…3人そろって何?夜明さんのお知恵をお借りしたい。
(神谷)違うだろう!今回の事件は元はといえば夜明さんが秋山と梨花をタクシーに乗せたことから始まってる。
夜明さんからも改めてお話を伺いたいと思いまして。
捜査うまくいってないんだ?
(東山・国代)はい。
総会屋?はい!古賀が総会屋に雇われてたっていうの?こういう推測が成り立ちます。
古賀は岡田の指示を受け秋山に接近した。
もちろんユーロ食品のスキャンダルを握り利益供与を要求するためです。
ところが話がこじれ秋山は古賀を殺害。
手下を殺された岡田は山中湖へ逃げた秋山と梨花を追い心中に見せかけて殺害した。
金子を殺害したのも古賀から何らかの情報が漏れていたのかもしれません。
それはあり得るな。
これは推測なだけで証拠の方が何ひとつ…。
今の推測が正しければ秋山と梨花は心中ではなく殺しだったことになる。
…本当のところどうなんです?タクシードライバーとして2人は心中しそうな客に見えましたか?そういうふうに言われてもなぁ…。
神谷また妙なこと考えてる?実はもう1つ引っかかってることがあります。
(神谷)本当に総会屋がこの3人を殺ったのか…。
どういうこと?凶器を見てください。
農薬と現場に落ちていたコンクリート。
やつらがこんな物を使うでしょうか。
どういうこと?でも警部…だとしたら犯人は他にいることに…。
…それ考えすぎ。
総会屋当たれ!そのうちボロ出すよ。
がんばれよ!警察最近評判悪いよ!
(2人)夜明さん!やっぱり民間人に頼ったのが間違いでした。
東山国代。
秋山恵美子を洗え。
でも彼女にはアリバイが…。
秋山恵美子がどんな女か徹底的に洗うんだ!警察ですか!?すぐ来てください!住所は…うっ…!「もしもしどうしました?もしもし…!」夜明さん電話!はい。
はい夜明です。
あ東山どうした?恵美子さんが?ホントか!?たった今埼玉県警から連絡が入りまして。
命に別状はありません。
頭に裂傷を負った程度で。
わかった!夜明さん…。
大丈夫ですか?わざわざ来てくださったんですか。
いったい何があったんです?昨夜帰宅してみると室内が荒らされていて。
慌てて警察に電話したんです。
そしたら突然だれかに後ろから殴られて。
犯人の顔を見たんですか?一瞬でしたけど黒い目出し帽をかぶった大柄な男の人でした。
でも気づいたときにはこのベッドの上で…。
1時間ほど気を失っていたようです。
東山!捜査はどうなってんの?はい。
今本部を挙げて全力で総会屋を洗ってます。
夜明さんできすぎてると思いませんか?神谷!おまえまだ恵美子さんを疑ってんの?彼女はご主人を亡くし自分も暴漢に襲われた被害者だよ?おまえは知らないかもしれないが彼女は貧しさをバネに自分の夢をつんかんだ立派な料理人だよ。
人間的にも素敵な人だよ。
あんな人を疑うなんて…おまえとはもう絶交!スパゲティください。
(店主)はい。
お客さんさっき電話くれた人?
(あゆみ)はい。
うちは電話して訪ねて来るような店じゃないのに。
実は私ある人のことを調べてるんです。
昔この店でスパゲティを食べた女の子が今有名なイタリアンレストランのシェフになってるんです。
へえ〜なんて人?
(あゆみ)秋山恵美子さん。
近所だと言ってましたけどご存じないですか?さあねぇ…。
…あそっかドジだなぁ。
旧姓聞いてなかった。
恵美子さん…?お母さんと2人暮らしでここでスパゲティを食べておいしくて泣いたことがあるって。
…だったら栗原さんだわ。
(あゆみ)栗原?栗原…恵美子…。
そうですか。
それでどんなお子さんだったんでしょう?あなた…新聞記者?
(あゆみ)いいえそんなんじゃ…。
かわいそうな子だったのよ。
お母さんをあんな事件で失って。
事件?
(あゆみ)図書館でコピーしてきたの。
17年前殺されたこの栗原豊子さんは恵美子さんのお母さんなの。
「栗原豊子さんと交際関係にあった窪井正容疑者は別れ話に腹を立て栗原さんの自宅へ押し掛け殺害。
犯行後自殺した…」恵美子さんにこんな過去があったなんて…。
こんなこと知るために行ったんじゃないのに。
あゆみ。
おまえ人間を書きたいって言ったよね。
だったら事実はしっかり受けとめなきゃ。
それが取材ってもんだろ。
《今回の事件で見落としていたことがある》《殺された古賀と金子…2人ともマスコミ関係だったということだ》《そして…》〔取材はお断りしてると言ったはずです。
帰ってください!〕《恵美子さんはどうしてあれほどマスコミを嫌っていたのか…》本当ですか?恵美子にそんな過去が!?絶交したおまえだけど知らせた方がいいと思うから。
おう東山!どうした?
(東山)これから捜査のため小田原へ行きます。
神谷が…絶交している夜明さんのタクシーで行けと。
この先を左です。
この家です。
栗原さん親子が住んでたのは。
でも住人はとっくに変わったしもともと栗原さんは近所づき合いのない人だったから…。
…あそうだ!日ノ出旅館の正子ちゃんに聞いたら何かわかるんじゃないかしら。
(正子)恵美子とはもう長いこと会ってません。
恵美子が東京へ出たあとしばらく文通をしてた程度で。
なんでもお弁当屋で働きながら調理師学校に通ってるとか…。
恵美子…大変だったと思います。
(東山)17年前事件があったときのことを話していただけますか。
その頃たしか恵美子さんは高校3年生ですよね?ええ。
事件のことは詳しくは知りません。
新聞や週刊誌で知った程度で…。
でもマスコミの記事の中にはそれはひどいものがあって。
恵美子のお母さんが犯人をたぶらかしていたとか恵美子も事件にかかわっていたんじゃないかとか。
根も葉もないことを書かれて…。
だから恵美子この町を出ていくしかなかったんです。
(恵美子の母)〔イヤッ…イヤ…〕
(悲鳴)犯行は恵美子さんの目の前で行われたのか…。
悲惨な事件ですよね…。
その上妙な記事まで書かれたんじゃ。
マスコミ嫌いになってもしょうがないよな。
(東山)ただ母親が殺されたときどうして恵美子が部屋にいたのか。
恵美子にも何かあったのか…。
(携帯電話の音)はいもしもし東山です。
本当ですか!?埼玉県警から電話があって恵美子の部屋から指紋が検出されたそうだ。
その男は…暴力団構成員河上勝32歳。
河上…ですか!?
(国代)岡田が引き連れてた!?どうした?事件は解決です!解決?
(東山)秋山恵美子さんの家に何しに行った?
(河上)知らねえよ!何の話だか。
物証出てんだよ。
傷害!家宅侵入!器物破損!それだけじゃない…。
殺しの方も吐いてもらうよ。
よ〜し…一件落着。
よしよし。

(車の急ブレーキの音)あぶないっ!大丈夫ですか!…高橋さん!?それにしてもよかったよ。
たいしたケガじゃなくて。
まったくだよ〜もう心配したよ。
おかげさまで脳震とうを起こしただけでお医者さんも奇跡だって。
事故のときはよける間もなかったの?それが何にも覚えてないんです。
事故が起きたときのことはもちろんどうしてあそこを走っていたのかも…。
事故で頭を強く打つと記憶が飛ぶっていうのはホントなんだな。
(医師)つまりこういうことですか。
1時間も気を失うほどの打撃を頭部に受けた人間が襲われた瞬間のことを記憶しているものなのか…?…無理でしょうなぁ。
それだけの打撃を受けたのなら逆行的な記憶喪失を起こすのが普通です。
逆行的記憶喪失?いいですか。
頭を強打しますとねそのショックで記憶を司る大脳皮質の電気運動が乱されて強打された瞬間はもちろんのことそれを逆上る数分前の記憶形成までもが阻害されるんです。
じゃあ襲った相手の特徴を覚えてるってことは…。
そのケースだとまずあり得んでしょうな。
神谷。
調べてもらいたいことがある。
どうしたんです夜明さん。
3番目の金子の事件のときの…恵美子さんのアリバイだ。
アリバイ?何を調べるんです?新聞だ。
夜明さん…。
私送ります。
夜明さん方向逆じゃないですか?山中湖へ行ってみませんか。
冗談おっしゃらないでください私これからイタリアへ。
車停めてください!物証はないんです。
ですがあなたは2つミスを犯した。
1つは自宅で何者かに襲われたという狂言です。
〔私…慌てて警察に電話したんです〕〔そしたら突然だれかに後ろから殴られて…〕〔黒い目出し帽をかぶった大柄な男の人でした〕1時間も気絶するほど強く頭を殴られたあなたが犯人の特徴を覚えてるはずないんです。
そんなこと言われても…。
絶対に記憶が飛ぶと断言することはできないんじゃないですか?まあ確かに“絶対”とは言えません。
ですがもう1つのミスは絶対ありえない。
金子が殺された事件であなたは私にこうおっしゃった。
〔次の日刑事さんがお見えになっていろいろ質問をされて事件のことは朝刊を見て知ってましたけど…〕私昔刑事やってまして新聞のことは少し詳しいんです。
一般的に朝刊は最終版と呼ばれる14版まで印刷されその途中でいろんな事件があると紙面を改訂していくんです。
その最終版の最終原稿の締切が午前1時30分。
確認したところ金子の死体が発見されたのが午後11時。
警察発表が深夜午前1時。
だからかろうじて最終版には間に合った。
夜明さんおっしゃってる意味がよく…。
〔ちょっと〕〔なんですか?〕〔載ってねえ…〕〔載ってないって何が?〕〔地方版か…〕ところがこの最終版は配達される区域が限定されるんです。
東京23区と武蔵野それに…神奈川県の一部。
これが事件の翌日埼玉県下に配達された朝刊です。
事件のことどこにも出てない。
都内の最終版はこの広告のスペースが飛んでここに事件の記事が出てる。
あゆみと別れたあとあなたはまっすぐ川越に帰ったと言った。
それでどうして事件の載った朝刊を読むことができたんです?私にはアリバイがあります。
犯行時刻あゆみちゃんと一緒に。
あのトリック…考えてみたら簡単なことです。
駐車場には車止めとしてブロックが取り付けてある。
そのブロックの一部が欠けコンクリート片が放置されたままになっている。
それを凶器にして死体があれば…だれだって駐車場が犯行現場だと思う。
ところがそのコンクリート片を持ち出し他の場所で殺したとしたら…。
〔ごちそうさまでした〕〔じゃあまた〕あゆみと別れたあとあなたは近くに呼び出しておいた金子の許へ行く。
(金子)〔金持って来たろ金?〕〔おまえ何てことすんだ〕
(うめき声)その夜…あなたは川越には戻らなかった。
都内のホテルにでも宿泊したんでしょう。
だから事件の載った朝刊を読むことができた…。
樹海にナイフを捨てたのはあなたでしょ?あなたは梨花が樹海に入ったことを利用した。
そもそも私のタクシーに乗ったのは当日の彼女の行動範囲を知るためだった。
樹海から凶器が発見されれば古賀を殺したのは秋山で秋山と共犯の梨花の死は犯行を苦にした心中になる。
やめてください!夜明さんのおっしゃってること全部推測じゃないですか。
朝刊のことだって裁判では通用しません!思い違いだと言えば済むだけ…!あゆみ…あなたの生き方に感動してました。
家族の死を乗り越えて夢を現実のものにしたあなたの前向きな生き方に。
しかし今のあなたは…前向きに生きているとは私には思えない。
あなた…イタリアのコモ湖で死ぬつもりですか?あなたはその湖が心の原点だとおっしゃった。
そこで死ぬのもいいのかもしれない。
けどそれでいったい何になるんです?死んだお母さんが喜ぶと思いますか。
夜明さん…。
17年前…母は窪井正という男に殺されました。
そのころ母は小さなスナックに勤めていて窪井はお店に来るお客でした。
母は幼いころに親を亡くした窪井の境遇に同情して心から親身に相談に乗ってあげてたんです。
でも窪井はそれだけだとは受け取らなかったんです。
母に対して男と女の関係を求めるようになってそれで…母も距離を置かざるをえなくなったんです。
〔母はいません帰ってください!〕〔お帰りください!〕
(窪井)〔どうして俺を嫌うんだよ!〕〔え?どいつもこいつも〕〔やめてください!〕〔やだーっ!いやぁー!!〕〔やめてっ!やだー!〕
(恵美子の母)〔どうしたの!?〕〔窪井くん!何してるの!?離しなさいよ!〕〔ちょっとやめて!警察呼ぶわよ!〕
(恵美子の母の悲鳴)私は一瞬気を失いました。
(恵美子の母の悲鳴)母は私を守ろうとして殺されたんです。

(パトカーのサイレン)〔うわあぁー!!〕悲劇はそれだけでは終わりませんでした。
マスコミです。
興味本位無責任なうわさと人権無視。
母は被害者なのに。
母は二度殺されました。
窪井に殺され…そしてマスコミに殺されたんです。
そしてあの…古賀が私の前に現れました。
(古賀)〔取材に応じてくれたっていいだろ?〕〔お話しすること何もありませんから〕〔近所の人がさお母さんが帰ってくる前にあんたの悲鳴を聞いてるんだよ。
窪井と何かあったんだろ?〕〔帰ってください!〕〔話聞かせてよ〕古賀は私がレイプされたと書き立てました。
17年前の事件に古賀が絡んでた…?記事が出て…町の人の私を見る目が変わりました。
東京に出てからも心安まる日はありませんでした。
そんなとき秋山と知り合ったんです。
結婚して川越に念願のお店も出して私は幸せでした。
主人が私の人生に明かりを灯してくれたんです。
そのご主人が浮気したことは?気づいてました。
半年ほど前から外泊が多くなって。
でも本気でなく遊びならと我慢しました。
主人のこと信じてましたから。
そんなとき…。
古賀がまた現れた。
そうです。
〔人の女に手出しておいてタダで済むと思ってんのか!?〕〔俺も仕事柄いろんなこと調べるのは得意でね〕〔そしたらあんたもよくやるねまったく〕〔出入りの業者からの賄賂工作どんどん出てきたよ〕〔とりあえず500万。
明日中に用意しろ〕〔嫌とは言わせねえよ〕〔…これは栗原恵美子さん〕〔とうとうまた会っちゃったな〕〔旦那調べててさまさかとは思ってたんだけど…〕〔やっぱり世の中広いようで狭いねえ〕〔実はあれから俺は散々な目にあったんだよ〕〔あんたの記事を見て正義漢ぶった連中が俺を突き上げやがった〕〔会社はトラブルを嫌って即俺をクビにした〕〔それ以来俺はゴロつきジャーナリストのレッテルだ〕〔おとしまえはきっちりつけてもらうよ〕〔これは楽しみだな〕古賀は完全に私を逆恨みしてました。
そしてそれを正当化する古賀を私はもっと許せませんでした。
〔ねえいつまで古賀の要求に応じるつもりなの〕〔この半年で3000万も〕〔…仕方ないだろっ!〕〔こんな過去があったくせに!〕〔今ここで世間に知れたら俺はどうなると思ってんだ!?〕
(ドアの開く音)〔何ですか!?いきなり入ってきて〕〔俺はあんたに用事があって来たんだよ〕〔帰ってください!何するんですか!?〕〔あなた!…いやっ!〕〔やめてよ!あなた…〕〔私は絶対重役になってみせる〕〔いや社長のイスだって夢じゃない!わかるだろ?今私はおまえなんかに邪魔されたくないんだ!〕〔自業自得じゃないのか!?〕秋山は自分を守るために私を売ったのです。
信じていただけに許せませんでした。
このとき私の中で殺意が芽生えました。
古賀だけじゃない主人に対しても…!そこで考えたのが偽装心中…。
〔古賀を殺す?〕〔私がやる…〕〔古賀が死んで真っ先に疑われるのはあなたよ〕〔杉本梨花との三角関係…。
だからあなたアリバイ作って〕〔彼女と一緒に山中湖の別荘に行けばいいわ〕勝手な記事を書いて人を傷つけ食い物にする。
あげくの果てに相手を逆恨みしてさらに罪を重ねる。
そんな古賀を私は自分の手で地獄へ落としたかった…。
〔山中湖まで〕〔山中湖!?山梨県の?〕杉本梨花にはすべてを話していました。
彼女も古賀には散々な目にあっていましたから。
〔うまくいった〕〔そうか…〕〔奥さん…〕〔いいの…古賀にはみんな泣かされてきたんだもの〕〔暑いわね。
外に出て乾杯しましょ〕〔うっゲェッ…!〕ナイフを樹海へ捨てたのは夜明さんの言ったとおりです。
金子を殺した方法も。
金子は古賀からあなたを脅迫していたことを聞いてた。
それで…。
心中の疑惑を記事にすると言って脅してきたんです。
金子も結局古賀と同類のケダモノです。
それで…。
…しかし金子が死んで警察があなたを疑いはじめた。
そこであなたは総会屋の方に目を向けさせた。
秋山が総会屋の窓口になっていた関係でそれまでも河上は何度か家に来てました。
それで…必ず指紋が出ると思ったんです。
〔警察ですか!?すぐに来てください!〕〔住所は…うっ!?〕皮肉なものですね…。
夜明さんが気づいた私のミス。
マスコミを恨んでいた私のミスが新聞だったなんて。
夜明さん。
やっぱり私のような人間には…幸せ来るはずないですね。
恵美子さんあなたは…イタリアでの苦しい修業時代美しい湖見て再生を誓ったっておっしゃってましたよね。
自殺しても…罪の償いにはならない。
苦しくても…どんなに苦しくてもでもあなたには救いがある。
あなたは人を幸せにすることができる。
あなたの作った料理は食べた人を幸せにする力を持ってる。
いつかあゆみが言ってました。
あなたは貧しくていちばんつらいときにお母さんと一緒に食べたスパゲティがいちばんおいしくて幸せな気持ちにしてくれたって。
いつの日にかあゆみと一緒にあなたの作った料理を食べることができたら…。
そう願ってます。
恵美子さんの罪は重いけど追い込んだ人がいるのも確かよ。
昔刑事やってたときにいいブンヤさんがいてさ。
その人がいつも言ってたよ。
「情報」ってのは字のとおり「情け」がなきゃいけないって。
お父さんお願いがあるの。
…私就職しない。
えっ?今度の事件で情報の怖さやマスコミがどうあるべきかすごく考えさせられた。
私大学院行きたいの。
大学院…。
大学院に行ってマスコミの勉強をして2年後改めて就職活動をしたいの。
自分の夢追いたいのよいいでしょ?志はいいけど…。
大学院て…?受験料3万5千円学費120万円。
お願いします!…あゆみ!お願いできないこともあるよ!
これまで数多くのテレビドラマ・舞台・映画などで幅広く活躍してきた名脇役
2015/09/07(月) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
タクシードライバーの推理日誌[再][字]

死にたがる乗客・夫が愛人と心中?ルート139黒い樹海にトリックが…

詳細情報
◇出演者
渡瀬恒彦、秋本奈緒美、平田満、風見しんご、石丸謙二郎、林美穂 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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