こうした政府への批判を加速させているのが、インターネットです。
掲示板には、首相や与党を公然と批判する書き込みが見られるようになりました。
フェイスブックなどでの呼びかけを見て集会に参加したロイ・ヌーンさんです。
ロイ・ヌーンさん
「インターネットを通じて、多くの人たちが政府とは違う考えを持っていることがわかった。」
公営団地で両親や兄姉と暮らすロイさん。
ブログを通じ、シンガポールの社会問題について自分の考えを発信してきました。
注目したのは、働く全ての国民に加入が義務づけられている年金基金です。
基金の運用の詳細は国民に知らされて来ませんでしたが、ロイさんは実態を自ら調べて発表しました。
ロイさんは、政府は基金の運用で高い利回りを得ながら、国民に還元していないと主張。
さらに、政府が基金を不正に使っているのではないかとリー・シェンロン首相に疑いの目を向けました。
ブログへの関心は日を追うごとに高まり、2年間でアクセスは300万回を超えました。
すると、今年(2014年)5月、リー首相の弁護士から書面が届きました。
ブログは、首相が犯罪に関わっているかのような根拠のない疑いをかけたと非難。
この後、ロイさんはリー首相から名誉棄損の罪で訴えられ、裁判で負ければ、多額の賠償金を支払わなければならなくなりました。
ロイ・ヌーンさん
「政府と話し合いを持ちたかったのに、かなわず残念です。」
勤め先の病院からも、規範に反する行動があったとして解雇されました。
こうした対応にも屈せず、活動を継続することにしたロイさん。
ネットを通じて支援を求めると、国内外から900万円近くが裁判費用として寄せられました。
先月(6月)、ロイさんの呼びかけに応じて、およそ2,000人が集まりました。
ロイさんは、今こそ政府に対して国民が声を挙げるべきだと訴えました。
ロイ・ヌーンさん
「国民の声に耳を傾け、それに応えるのは政府の義務だ。
国民の問いかけを政府が阻むのは間違っている。
我々シンガポール人にも権利はあるのだ!」
「サンキューロイ!
サンキューロイ!」
参加者
「私はロイを支持する。
我々には言論の自由があるんだ。」
インターネットの普及によって抑えきれなくなった政府批判。
シンガポール政府は、「一市民にも首相にも、名誉を守る権利がある」として徹底して争う姿勢を示しています。