戦後日本の復興を支えたものづくりの町です。
しかし…。
変わりましたね。
町工場を復活させたい。
その思いで立ち上がったのは下町の名物社長。
真っ赤な町工場で今誕生しようとしているのが…。
エネルギー問題を解決しようという驚きの発電機。
総発電量に換算すると50年分ぐらい一つの台風が持っているわけですよ。
下町の頑固職人と若手起業家がタッグを組んだ台風発電プロジェクト。
その行方は…。
『日本のチカラ』。
今週は世界に挑むスーパー町工場の物語です。
日本の経済を縁の下から支えてきたものづくりの町東京都墨田区。
数は減ってきたとはいえ現在でもおよそ3000軒の町工場があります。
その中に画期的な挑戦で世界から注目を集めている工場があります。
カラフルな外観の浜野製作所。
年間2000社以上と取引を行うスーパー町工場です。
得意とするのは精密な金属加工。
技術者たちを率いるのは下町の名物社長です。
(浜野さん)おはようございます。
(社員たち)おはようございます。
2カ月と4日でありますけれども…。
代表取締役の浜野慶一さん52歳。
父親が始めた小さな金属プレス工場を継ぎ新しい挑戦を続けてきました。
真っ赤なシャツがトレードマーク。
こんな小さな墨田区のね町工場ですけれども…。
浜野製作所が一躍脚光を浴びたのは小型電動自動車の製造でした。
大手の下請けとして部品を作るのが町工場という常識を覆し設計から製造まで全てやり遂げたのです。
さらには町工場が力を合わせればこんな事も出来ると世界をあっと言わせたのが深海探査ロボット江戸っ子1号。
新技術で捉えた世界初の深海3D映像は大きな話題となりました。
普段工場で手がけているのは自動車部品から医療機器部品レジャー関連部品と月に数千種以上。
新製品の依頼も多く含まれるため厳重な機密保持契約のもとに製造されています。
例えば作っている部品が完成すると何になるのか職人には知らされないケースがほとんど。
この板は…。
一般の町工場はプレス専門カット専門など得意の分野に特化しています。
しかし浜野製作所はその他にも多くの加工部門を持つ事でものづくりの幅を広げてきました。
さらに浜野社長は去年世界へ向けたものづくりの拠点を立ち上げました。
(清水さん)お疲れさまです。
お疲れさまです。
駐車場の空きスペースに造った赤い建物。
その名もGarageSumida。
新しいアイデアを持つ起業家を募り製品開発につなげるためのシェアオフィスです。
室内には3Dプリンターやレーザーカッターなど最新のデジタル工作機器も完備しています。
町工場の進化形ガレージスミダから世界に打って出たいとやってきたのは清水敦史さん。
株式会社チャレナジーを立ち上げ今開発しているのが…。
画期的な風力発電機らしいのですがメカニズムはかなり複雑。
清水さんが仕組みを教えてくれました。
マグナス式じゃない風力発電機の説明をしたほうがいいと思うんですよね。
(清水さん)これあくまで羽根で回ってるんですよね。
で問題になるのはそういう事が実際に起きるんですね。
それをこちらはマグナス式風力発電機の小型模型。
垂直の白い軸が6本あります。
右側はその1本分を再現した実験機。
軸は透明の筒になっています。
軸にはモーターが付いていて自ら回転する仕組みです。
今は棒を回していないのでただ棒が置かれているだけですね。
微動だにしません。
今度はモーターで軸を回転させます。
動き出しました。
一体これは…。
簡単に説明すると野球のカーブボール。
回すとですね力が生じる。
垂直軸を上から見た図でマグナス力を説明しましょう。
自転している軸に右から風を当てると上側は風の流れが加速され下側は回転軸の抵抗があるため流れが遅くなります。
すると下から上に押し出される力が働きます。
これがマグナス力です。
実際全ての軸を回転させた状態で風を送ってみると…。
全体が力強く回り始めました。
この形のメリットは軸の回転速度を調節する事で台風のような強い風にも対応出来るという事。
強大な台風のエネルギーで発電する夢の次世代発電機なのです。
清水さんは2つの軸を組み合わせたこのタイプのマグナス力発電機で特許を取得しました。
大手電気機器メーカーで開発の仕事をしていた清水さん。
福島の原発事故をきっかけに一念発起し会社を設立。
新時代の発電機の開発に取り組み始めます。
…と部品の製作と。
実験機のラフスケッチが描かれたのは8カ月前。
これを実際の形にするためには熟練職人の技術が頼りです。
今年の春からその挑戦が始まっていました。
どっちが入れる側だったっけ?ドライブ側固定したほうがいいとか言ってました。
18歳の時から金属加工をしてきた熟練職人です。
ガレージスミダの守護神。
難しい仕事ほど燃えるという金岡さん。
この日は清水さんから依頼を受けた実験機の組み立て作業が始まっていました。
金属類は浜野製作所で製作しプラスチック部品は付き合いのある工場に発注。
町工場の力が結集します。
ものづくりの経験はないけれどアイデアがある若者。
それを形にする技を持つ職人たち。
その出会いの場がガレージスミダなのです。
この日思わぬハプニングが発生。
ホントはねこれが付くんですけど…。
手違いで大切な部品がない事が発覚。
こんな時は…。
山もっちゃんにちょっとプログラム作ってほしいんだけど。
一報を入れたのはガレージスミダの向かいにある浜野製作所本社ビル。
山もっちゃんことプログラマーの山本佳代さんが部品の形状サイズなどをコンピューターに打ち込みプログラムを作成します。
同じものを4つ…。
このプログラムデータが…。
今度はレーザー加工機へ。
厚さ4ミリのアルミ板をレーザーで溶かしながら瞬時に正確に切り取っていきます。
プラスチックの筒のサイズに合わせた円盤が完成。
でもこれで終わりではありません。
ぴったりと筒にはまるように金岡常務が微調整。
レーザーで溶かした時に出来る目に見えない突起を指先の感覚を頼りに削ります。
終了。
そして取り付け。
アクリルの筒にアルミの円盤がぴたりとはまりました。
部品が足りないとわかってからわずか30分。
町工場の底力です。
とにかく。
そしてついに実験機が完成。
夢の台風発電を目指して世界初の実験がスタートします。
送風機で実験機に取り付けた筒に風をあてどれくらい発電出来るかその効力を検証します。
実験を何度も繰り返し数値を計測。
こうして地道に集めた検証データが将来実用化する時のカギになります。
こちらは共同経営者の宮さん。
実験が始まってから2人とも不安げな表情を浮かべています。
突破口が開けると信じてやるしかないですね。
実験は始まったばかり。
今後の課題が見えただけでも収穫です。
ガレージスミダではもう1人の若者が開発を行っていました。
現役の大学生手押し車にモーターを取り付けています。
いい感じ?
(嘉数さん)いい感じですね。
嘉数さんが開発しているのは手押し車にモーターを搭載し運搬を楽にする電動ねこ車。
あっ楽。
これ上り坂じゃないんでわかりにくいですけど…。
人をのせて動かしても軽々と動きます。
あとは私有地内の運搬。
おはよう。
これまで金岡常務と相談しながら細かな調整をしてきた試作品はほぼ完成。
商品化するにあたりあとはここで話し合うより実際に農家の方の意見を聞こうという事になりました。
やってきたのは山の斜面にある農園を借りて電動ねこ車の作動テストをします。
地元の皆さんも興味を持って協力してくれました。
電動ねこ車に重さ60キロの肥料を載せ斜面で動かします。
ここは今…ここはボタンは何も今…。
ここを電源入れると…。
皆さん興味津々。
あ〜なるほど。
これで…。
左右はちょっと…。
スイッチを入れてみると…。
70代の方が重い荷物を載せたまま斜面をスイスイと登っていきます。
(男性)全然楽。
あれいいな。
勝手に上がって…。
こちらはいったん後ずさりしてしまいましたが…スイッチオン。
お〜!速い速い速い…。
すげえすげえすげえよ。
いやこれ…。
これ最高だよ。
すごい力あるから。
うん。
評判は上々。
でも問題は…。
いくらぐらいなら買いたいと思えますか?実際は6万ぐらいはかかってしまいそうなんですど…。
そして使う立場から貴重な意見が寄せられます。
こういうところもさ…。
参考になるというかもうすぐに試作をまた積み重ねていこうかなと思いますね。
また一歩商品化に近づきました。
ガレージスミダがある長年この町に暮らし町工場を営む浜野社長。
ここ30年ほどの間に町は大きく変化したといいます。
変わりましたねえ。
まずやっぱり
(浜野さん)ここもそうですしここもそうですし…。
高度経済成長期墨田区にはおよそ9700軒もの町工場が林立していました。
しかし景気の低迷や後継者不足などが原因で次第に減少。
今では3000軒ほどになりました。
こちらは浜野社長の友人が営む金属プレス工場。
社長の臼井さんと従業員1名です。
後継ぎはいないです。
うん。
息子もやっぱり…。
このままではものづくりの町の灯が消えてしまう。
浜野社長は起死回生を狙っています。
(浜野さん)高橋さんのとこにも色々お世話になってね…。
ことごとく少なくなってますよね昔に比べるとね。
みんな2代目がやらないからね。
そうねえ…。
あっ本当ですか?うん…。
浜野社長はこうやって近所を巡りながら町工場同士の横のつながりを強めていこうとしています。
そこから新たな未来を創り出せる。
そう考えているのです。
行政もこうした動きを後押しするプロジェクトを始めていました。
ものづくりの墨田区の姿をですね未来につなぐための仕組みです。
っていう事業ですね。
意識の高い事業者の皆さんに集中的に支援をすると。
浜野製作所はこれに申請し駐車場にガレージスミダを作ったのです。
スタートから1年が経ったガレージスミダ。
記念イベントが行われました。
弊社ガレージスミダの1周年の報告会という事でご出席を頂き本当にありがとうございます。
この日集まったのはおよそ150名。
ガレージスミダの注目度がうかがえます。
開発者によるプレゼンテーションの時間も設けられました。
清水さんの風力発電機皆さんにアピールするチャンスです。
垂直軸型マグナス風力発電機というものでして…。
台風一つの持っているエネルギーってどれぐらいかご存じでしょうか?実はですねこのエネルギーを使わないともったいないですよねと。
実際に台風で発電出来るような風力発電を作ってやろうと。
(拍手)
(拍手)発表のあとに開かれた交流会。
清水さんのブースに多くの人々が集まりました。
台風による発電という発想が皆さんの心をつかんだようです。
こちらの建築会社社長は実験段階にもかかわらずぜひ買いたいと言ってくれました。
しかし実用化までには越えなければならないハードルがまだまだあります。
まずは実験機で残念な結果となった効力をどうやってアップするかです。
その先生に話を聞きに行って。
実験機でデータの収集を始めてから2カ月。
清水さんは試行錯誤を続けていました。
筒の表面に細かな加工を施す事で空気抵抗に違いが生まれます。
その抵抗を測るために様々な形状で実験を行っていたのです。
やっぱ溝を掘ったほうがいいのか?しかし簡単に結果は出ません。
その後も風洞実験などを繰り返し…。
新しい形状を試し続けました。
そして2週間後。
清水さんから連絡がありガレージスミダを訪ねてみると…。
(清水さん)倍いけたのは。
台風発電で世界へ挑みます。
この日浜野製作所の会議室に金岡常務チャレナジーの清水さん宮さんそして研究者が集まっていました。
いよいよ台風発電を目指し新型の風力発電機のプロトタイプを製作する事になったのです。
今日は設計会議。
しかし…。
だめです。
撮影はNG。
設計図は超機密なのです。
その後実験では効力が100倍にも上がり実用化のめどが立ちました。
下町の町工場が世界に挑戦する台風発電。
発売は3年後2018年を目指しています。
7月末浜野製作所とガレージスミダの見学会が行われました。
台風であろうと安全に暴走する事なく発電が出来るはずだと。
たくさんの方々が参加してくれました。
ものづくりの町を誇りに思い挑戦を続けてきた浜野社長も今しっかりとした手応えを感じています。
僕らが今こういうね仕事をやってる…ものづくりの仕事をやってるのもやっぱりこれ先人なり先代なり先輩たちが色々こうずーっとこうねやってきてくれたものをその次の世代へこういうものづくりをちゃんと引き継いでいかなきゃいけない。
磨き上げてきた職人たちの技術。
全く新しい起業家のアイデア。
両者の出会いがかつてない町工場の可能性を切り開こうとしています。
彼らが見つめるのは世界の舞台です。
『日本のチカラ』次回は福島県。
世界一薄いシルクを生み出した機織り工場の物語です。
2015/09/06(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本のチカラ[字]
東京墨田区の小さな町工場…ここでとんでもない開発が行われています。世界を変えるかもしれない画期的な風力発電機!!なんと台風の力を利用するのだとか。その秘密とは!?
詳細情報
◇番組内容
昭和の面影が残る下町、東京・墨田区。高度経済成長期にはおよそ9700軒もの町工場が軒を連ねる「ものづくりの町」でした。しかし現在では、3000軒ほどに激減。原因は景気の低迷や後継者不足などです。今、この町に次々と新しい試みにチャレンジし、注目を浴びている町工場があります。父親のプレス工場を継いだ社長は「町工場から、日本のものづくりを変えたい」そんな熱い思いで日々、新しいことにチャレンジしています。
◇番組内容2
去年、新たな試みが始動。デジタル工作機器を完備した、ものづくりのシェアオフィス…培ってきた技術・職人の技で、アイデア豊富な若手起業家と共に製品開発が行える場所…現在開発を進めているのが、プロペラ式に変わる次世代風力発電機。順調に開発が進めば「台風の強大なエネルギーを電力に変える事ができる発電機」だというのです。この何とも夢のある発電機の開発が、今着々と下町の町工場の中で進められています。
◇番組内容3
全国各地の「魅力あふれる産業」を通して、地域の歴史や文化・人々の英知や営みを学び、日本の技術力・地方創生への道・温かいコミュニティー、生きるヒントを描き出す、教育ドキュメンタリー番組。
◇ナレーション
下平さやか(テレビ朝日アナウンサー)
◇音楽
高嶋ちさ子「ブライト・フューチャー」
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:テレビ朝日
協力:文部科学省/中小企業基盤整備機構
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.minkyo.or.jp/
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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