放送90年ドラマ 経世済民の男(3)「小林一三」(前編) 2015.09.05


お姉ちゃん早く!待ってよ〜!
(一三)おい何やってんだ?ちょっちょっ…待ちなさい!待ちなさい!うわ〜!あ〜!
(冨佐雄)
これは僕の父です
父は後に阪急電鉄や阪急百貨店宝塚歌劇団などを作り出しその斬新な発想と手法は現代にも引き継がれるビジネスモデルとなりその名を経済史に刻む事になります。
ですがそのころは現金輸送中に本を読むようなでたらめな銀行員でした
申し遅れましたが父の名は小林一三と申します

そのころの父の職場は三井銀行大阪支店でありました
今日もええ天気ですな。
新しい小説でっか?うん。
こないだ現金輸送中に子どもに金を盗まれそうになって思いついたんだ。
え?え?うん。
いや〜何が幸いするか分からないよね。
(栄田)小林さん!新しいのん出来たんだす!見ておくんなはれ!ちょっちょっちょっ…触っておくんなはれ!小林さんこれね今までのとは全くちゃいまんねん!小林さん!ちょっと見ておくんなはれ!分かった!分かった分かった。
離せ。
分かりました?小林さ〜ん!小林…。
(高橋)素人の発明なんかに融資できる訳ないだろ。
何回も言ってるんですけどねえ。
高橋さん何かいい話ないですかねえ?どっかの新聞社で人探してるとか。
支配人。
ん?こちらは…?おいちょっとこれ。
あはい。
いいじゃない。
うちにいてこそこそ小説書いとけば。
前にも申し上げましたがこういうのはどうも不純な気がするんですよ。
じゃあ小説一本で食べていけばいいじゃないか。
地方紙とはいえ新聞に連載された実績があるんだから。
前にも申し上げましたが小説…。
支配人!これは。
こちらは。
これはまたおそろいで。
じゃあねそこに入れよう全部。
父は甲州の裕福な家に生まれました
(ベル)
(拍手)お先さまです。
親は幼い頃に他界。
…とはいえ育ての親は優しく十分すぎるほどの財産も残っとりましたので金の苦労とは無縁の人生を送っておりいまだに仕送りをもらってさえおりました

(歌声)なあお前のとこの新聞社人探してないかい?ハッハッハッハッ。
お前働かなくても一生食っていけるご身分じゃないか。
そんなものを当てにしてどうする!遺産ってのは減る一方で増えやしないのさ。
そんなもの当てにして。
だからお前の小説はつまらんのだよなあ。
ああ〜!?・よろしおますやろか?誰か芸妓呼んだのか?ぽん太何でこんなとこに?お目にかかりとうて…。
いいよなああいつは。
あんな美人にほれられて。
鼻がよくないよ。
鼻がよくないのは化粧でもどうにもならん。
じゃあどんなのがいいんだ?そうだねえ…高すぎず低すぎず。
筋は太すぎず細すぎず。
長いよりは短めで小鼻は…。
あれだ!あれ!あの鼻!何やってんだ?
(コウ)あの〜どっかでお会いしましたやろか?「君恋し雪が涙の滝となり」。
(せきこみ)いや〜こんなところでお目に…。
かかれるて…。
一三さん。
はあ〜やっと会えたね。
お初っちゃん…。
お初っちゃん…。
うわっトミさん!
(トミ)雪ん中何時間も突っ立っとったら熱出るて福沢はんの慶応では教えてくれはりまへんのか?お初を見つけたんだ。
お初?近松の!えっ?「曾根崎心中」のお初!徳兵衛の恋人の!ああ…熱引いたら家賃入れとくなはれな今月の。
おはようございま〜す。
(笑い声)もうええんですか?恋煩い。
(笑い声)え?・おいでやす。
おおきに。
ネタ元はばばあですか?いいじゃない。
1週間ものずる休みを笑い話にしてくれたんだから。
僕は真剣なんですよ!あっ実は一つ話があってね。
え?どこか…空きが出たんですか?新聞社の。
俺だ。
お前じゃない。
俺。
え?俺がかねてからの念願の三井呉服店に転勤する事になりました。
ハハハハ!いいなあ高橋さんは願ったり叶ったりで。
僕は何一ついい事ないですよ。
そりゃあ日頃の行いがよくないんだ。
行い?うん。
・高橋さんよろしおますか?はいはい。
どうぞ。
いつもごひいきにおおきに。
運命だ!君と僕は運命なんだよ!いつもごひいきに。
「霜柱君を想ふやその鼻柱」。
この人どないするん?おコウちゃん?へえ!例の三井さんから。
お芝居つきおうてくれたら花代はりこむて。
(浄瑠璃)
(すすり泣き)生きらるるだけ添わるるだけたかは死ぬると覚悟しや
(すすり泣き)「たかは死ぬると覚悟しや」。
「あ〜そうじゃ。
生きらる…」。
口数少ないよねえ?おコウちゃん。
小林さんはうちのどこが気に入りはったんだす?え?顔。
顔?あのねえ心根だの何だの言うけれどねそんなものは心がけ一つでどうにでもなるんだ。
しかし顔はそうはいかない。
引っ剥がして取り替える訳にはいかないだろ?顔を一番に考える方が最も合理的というものだよ。
ほなあきまへんな。
え?わては目元の涼しい方が好きですさかい…。
(笑い声)バカだね君は!あ〜バカだ!男は…男は見た目じゃないんだよ。
見た目で選んでどうするんだ。
(笑い声)失礼だな君は!何だよ!
かくして…
青春の危険地帯に突入した父は…

その日が新しい支配人の着任の日である事などすっかり忘れておりました
あっ。
おはようございます。
(岩下)銀行という業態は変革期を迎えている。
大阪支店は緩やかな気風らしいが岩下が統括する間においては時間厳守でお願いしたい!店は一分一秒たがわず9時には完璧な状態で開ける!出勤は最低でも30分前!これは岩下の個人的見解であるが時間を守れぬ人間にろくな仕事はできない!岩下からは以上だ!ニューヨークとかパリの商社で活躍してたのをうちの上が呼んできたっちゅう話やけどね。
貸付係は誰だ?僕です…。
あの…藤田組って?軍需品で大もうけした藤田傳三郎翁だ。
(藤田)いや〜待たせたな。
お久しぶりです。
日清戦争の景気が一気に引いてしまってなあ当座の資金繰りに困っとるんだよ。
あの!7万は本店の判断を仰がなきゃいけない額だと思うんですよ!明日までとかありえないと思うんですよ!岩下の判断は岩下がする!え?手形用紙を明日の朝までに上げておくように。
ええ〜。
痛っ。
(岩下)川崎造船の新船製造に融資する。
え?昼までに手形用紙を。
え…。
岩下さんの仕事のやり方は何につけ破天荒だったそうで…
すみません。
岩下は10分前に出まして…。
わしとの約束があるのにかいな!岩下は5分過ぎると約束はなかったものと判断するんです!すみません!おいおいおい!お前どこ行くねん!どこ行くねん!
父はそのいちいちに振り回され…
いつしか仕事漬けの日々に陥っていきました
あ〜!
(ため息)あ〜!どどど…どないしたんですか!僕の手はそろばんをはじくためにあるんじゃない!ペンを握るためにあるんだ!くそ〜。
(栄田)ええからええから!大丈夫やて。
小林さ〜ん!小林さ〜ん!あ〜もう〜。
小林さん!改良に改良を重ねましたんやて!おい…。
帰って下さい!どうした?
(岩下)何だ?これ。
(栄田)従来のゴムとは耐久性が違うんです。
あの…倍長もちするものを半分の時間で作る方法を見つけたんです。
年…1,000円の研究費を貸す。
無担保。
出世払いでいい。
そ…そんな話聞いた事ないですよ!これからは電気の時代になる。
どこのどんな家にも工場にも電線が引かれ電気が通る。
それとゴムと何の関係があるんですか!発電所から電気を引いた場合電線が必要になる。
電線には必ず電気を通さぬよう絶縁せねばならない!つまりは…ゴムが必要だ!
(岩下)町なかには電線が引かれいろんなものが電気で動くようになる。
鉄道工場の機械。
電気で動くようになればそこには必ず絶縁体が必要になる。
金の話は岩下が引き受ける。
思いっきり…やれ!ありがとうございます!
(泣き声)岩下さん。
ん?金というのは面白いもんですねえ。
金一つで事業を生かす事も殺す事もできる。
つまり銀行家は小説家なんです。
ペンと金は同じなんですよ。

(岩下)我々はこの国を1等国にするための事業を育てかつその見返りとして莫大な収益を得る事ができるようになる!我々はそのような高みを目指す。
岩下からは以上!始業!
(一同)はい!
岩下さんの熱はやがて支店全体に伝わり…
ありがとう!
大阪支店はぬきんでた成績をあげるようになりました
一三さん!うわっ!どうしたの?今日はお座敷は?わて…。
ん?わて…。
うん。
わてこんまい頃旅の行者さんにななっ言われた事あるんだす!わてはめったにないええ相をしてる。
わてをお嫁にする人は必ず出世するて!ああ…そうなんだ…。
それを言いにわざわざ?
そしてその日は突然やって来たのです
泉南紡績の新工場うちでやらせてもらえそうです!
(ため息)何かあったのか?岩下さん辞職しはるんやって。
え…?岩下さん!待って下さい!岩下さん!何があったんですか?大した話じゃない。
問題になったんだよ。
支店の裁量超えの融資が。
回想7万は本店の判断を仰がなきゃいけない額だと思うんですよ!明日までとかありえないと思うんですよ!いろいろやり過ぎたんだろ。
三井の看板で自分の夢を叶えようってのは虫のいい話だった。
夢?岩下の夢はこの国を世界に冠たる1等国にする事だ!「その陰に岩下あり」と言わしむる事だ。
今後自分で銀行を作ろうと思う。
どうだ?ついてくるか?いや。
あっ…あっいや…。
ちょっと考えさせてもらってもいいですか?その…僕は…博打は苦手なもので。
博打?いや…。
いえ…。
(笑い声)達者でな!小林。
こうしてあっけなく父はついていくべき背中を見失いその後あっけなく名古屋に転勤となり…
必ず…すぐに戻ってくるから。
(汽笛)
2年半後またあっけなく戻ってきたのでございます
嫁を連れて…
行こうか。
(トミ)眉毛どないしはりましたん?いや…汽車の中が暑くてね墨が流れてしまったんで「ちょっと洗ってきたら?」って言ったんですよ。
うん。
そしたら…本当に顔洗ってきただけで…。
ひっどい顔だねえこれは。
すまないねえトミさん。
新居に移れるまで2〜3日。
駅でコウちゃんには会わへんかった?いや。
そうだっか…。
トミさ…トミさん言ったの!?コウ…。
あの…。
りょ…旅行行こうか?悪いねえ。
結婚したばかりだというのに。
会社の皆さんとのご旅行でございますものしかたありませんわ。
全く不粋で困るよ。
こうして父はこの世でかなり最低の部類のうそをつき…
今度大阪の支配人になる人がね「身を固めろ」って言うんだ。
うん。
僕もコウをと思ったんだよ?けどその平賀さんっていう人がね「結婚と遊びは分けるべきだ」って。
君とは遊びって訳じゃないけれどもね結婚する相手というのは置物。
置物なんだよ。
まあ出世のためだよ出世の。
いや…君の予言がうそだとは言わないけれどもね!あ〜…。
え…。
僕が悪かったです!ごめんなさい!ふう〜。
(妻)「随分前から懇意にしてらっしゃるお方がいるとのこと実家に帰らせていただきます」。
ばばあ!
(平賀)新聞種にまでなっちゃなあ。
平賀さん面白がってるでしょう?
(笑い声)この…この見出し…「色町の女にうつつを抜かしかよわき新妻を」…。
(笑い声)
(平賀)「人の噂も七十五日」って言うしさまっまあ辛抱する事だな。
(平賀の笑い声)お茶どす。
熱いんで気ぃ付けて下さいね。
ありがとう。
(トミ)「身ぃから出た」やおまへんか?あなたにだけは言われたくないですけどね!貧乏くさっ。
びっ…貧乏!?ぼ…ぼ…ぼ…僕のどこが!僕は生まれてから貧乏だった事なんか!僕は貧乏だけは巧妙に避けて生きてきたんだ!貧乏ちゃいます!貧乏くさい言うてるんだす。
え?人様の事を顧みず自分だけがうまい汁をすすろうとするその心根が貧乏くさい言うんだす!貧乏くさいちゅうんはその本人の生き方の問題だす!「共白髪月を見上げる幸ありや」。
改めて言うのもなんだが…僕も子どもの頃に親を亡くしてね。
わてもそうだす。
親の残した財産もあったしわがまま放題にさせてもらってきたけれども家は別のやつが継ぐし…。
実は…あまり頼りにならない身の上なんだよ。
それはその…分かっておいてほしいんだ。
心配おまへん。
わての旦さんは必ず…出世しますさかい。
うん。
その後いくばくかして…
僕が生まれようとする頃父は東京本店の調査係に異動となりました。
そこは全国の支店会計などを調査して回る部署でその冴えなさから紙くずと呼ばれていました。
そこで父は丸6年黙々と働きました。
それは異例の長さであり…
あ〜!
(水に落ちる音)
父が出世コースから完全に外れてしまっていた証拠でもありました
猫ちゃん汚いねえ。
(鳴き声)節約のために自転車で行ってるのに背広は駄目になるし自転車は壊れるし。
これじゃあ何のためか分からんよ!
(貯金箱に小銭を入れる音)
そのころの父はいつもいらいらしていました
お母さん。
本部長さんの奥さんお裾分けやって!お裾分け?何やろなあ?
(猫の鳴き声)はいおとうさん。
お父さんも早く本部長さんになって!本部長さんになったら毎日ハム食べられるんでしょ?とめ子どうやったら本部長さんになれるか知ってるか?偉〜い人の娘さんを奥さんにもらったらなれるんだ。
仕事の内容じゃないんだ。
そのころの父の唯一の楽しみといえば…
出張ついでに旧知の知り合いを訪ねる事のようでした
岩下さんが設立した北濱銀行は的確な判断と大胆な融資で大阪の発展に貢献し…
岩下さん。
おう小林。
小林さん!栄田さん…。
社長!お時間が…。
今はあのころと違って工場だらけだからなあ。
大阪は紡績鉄鋼。
帝国第一の工業地帯になってる訳だ。
そろそろうちに来ないか?え?今度新しい会社を作るんだ。
はあ…。
日本には株式仲買はあっても外債や公債社債の引き受け募集や売り出しをする外国にあるような証券会社がない。
それなら岩下が作ろうと思ってな。
はあ。
そこの…社長が欲しい。
はあ…社長…。
しゃ…社長!?社長お電話でございます!ああ。
はい。
社長の小林でございます。
(一同)社長!社長!今や飛ぶ鳥を落とす勢いの北濱傘下だぞ!こんな話二度とないぞ!出世街道だ〜!パカランパカランパカラン。
(笑い声)痛っ。
あっ大丈夫?うん。
大丈夫。
こうして父は長年勤めた三井銀行を辞め…
僕たち一家は東京から大阪へと移る事になりました
(せきこみ)ええ匂いするなあ。
ああどうも。
小林といいます。
あ〜小林さんかいな。
ここやここ。
お母ちゃん!わしもうおなかすいた!ここに5人住むん?仮住まいだ仮住まい!正式に就職が決まったらもっといいとこに越せるから!あの…どうにもええ予感がせんのだすけど。
大丈夫だって!今日は大阪取引所で株が市場最高の770円突破したんだぞ!平賀さんだって三井辞めて大阪で会社作ったんだ。
そういう時代なんだよ。
そうなんでっか…。
ああ。
しかし…
その翌日から株式相場は一気に暴落を始めたのでした
岩下さん!平賀さん!ああ小林君!あの話は一旦忘れてくれ。
え?めどがついたらまた連絡する!ちょっ…ちょっ…ちょっちょっ…。
はあ〜。
まだか〜!あ…。
ついに失業者だな。
お前は?俺は〜お前の〜借金だるま〜!
(笑い声)俺は〜お前の〜借金だるま〜!うそだ!やめろ!借金だるま〜!借金なんてな〜い!あ…。
(せきこみ)頂きます。
すいませんこんなもんしかのうて。
君のあれさあうそなんじゃないのか?「君の旦那は出世する」ってあれ。
実際僕が落ち目になったのは君と一緒になってからなんだよね。
色町の知恵でしたか?だまされたんはわての方だす!ふざけるな〜!ハッ…。
(コウ)失礼します。
(平賀)うっ…うっ…。
すいません。
すいません。
今日岩下さんと会ってね…。
あっもうもう…。
あっはい…。
この暴落騒ぎで北濱銀行が関わってる事業案件で清算を余儀なくされるものが出てきたんだ。
そのうちの一つを任せたいって話なんだ。
箕有鉄道という電鉄の清算業務だ。
電鉄…?
(平賀)ああ。
当時大規模に供給できるようになった電力を背景に日本各地では電鉄電気鉄道の建設がブームになっておりました
箕面有馬電気鉄道略して箕有電鉄というのもその一つでその路線は梅田から箕面有馬などの景勝地へと延びるものでいわゆる行楽列車の計画でした。
そんな浮ついた計画でも好況の時は我も我も株式を分けてくれとなっていたのです。
しかしこの暴落で投資家たちの気分は一転。
建設費も集まらないという状況に陥っており計画に初期投資した資本家たちを憤慨させておりました。
そこでこれ以上の損は出さぬよう事業を清算する方向に持っていくのが父に与えられた仕事でした
どうした?箕有電鉄があわれで…。
調子のいい時は持ち上げられて具合が悪くなったら捨てられて…。
(岩下)事業というのは…引き際が肝心だ。
どうしたんだ?あ…。
辰郎のせきがきつうなってしもて。
(せきこみ)風邪やないんですか?気管支炎ですねえ。
まあ空気のいいところへでも連れてってあげて下さい。
お母さん。
たっちゃん大丈夫?
(コウ)だんないだんない。
(鳴き声)
(牛の鳴き声)ここに電車が通るの?な〜んもないねえ。
はあ〜気持ちええなあたっちゃん。
うん。
フフフ。
やった〜!市内とは大違いだね。
こういう所に住めたらよろしいですなあ。
そうか。
うまい。
お〜い!
(子どもたち)お父様!もう日が暮れるぞ。
中に入りなさい。
あなたお帰りやす。
ただいま。
そうか。
住めるようにすればいいのか。
ここを住めるように。
家賃だ。
家賃と同じ額で…。
(ため息)
(発起人)そもそもどうにもならんから清算するという話と違うんか?素人が!わしらはなあ嫌っちゅうほど話しましたんや!そうだ!うまい事いくはずないやろ!鉄道を開業すると同時に住宅地を開発分譲しそこであがった利益で開発費を補填していくという事ですがかなり安い価格での土地取得が採算がとれる前提になっておりますなあ?あ!あ!地域の住民はもう鉄道は通らぬと思ってるようなんです。
あかんあかんあんな電車。
結局通らんし。
そうなんですか。
あ?そうなんですか〜。
え?ですからそこを逆手に取ればいいかと。
逆手に取る?鉄道の計画はもうなくなったものと思わせたままにしておけばそのくらいの価格で投げ売ると思うんです。
なるほど。
…で最初はどの辺りの住宅地が?まずは梅田に近い池田石橋辺りから。
ここは乗車時間を含んで家の戸口から市内まで1時間で悠々行ける範囲です。
その1時間の根拠は?家主さんたちに聞いたところそれが人の望む通勤時間の限界だからです。
(岩下)その希望を満たす家を1戸当たり約2,500円で売るという事ですが財産もない一般市民がぽんと出せるような金額ではないんじゃないんですか?そこに関しては住宅を担保に貸し付けをし家賃並みの支払いで済む月賦払いというものを提案しようかと。
月賦?住宅で月賦払いて!そんな話聞いた事ないで!ほんまですな。
(笑い声)この家を買うのは勤め人を想定しています。
そんな輩に2,500円も出せる訳ないやろ!彼らの強みは毎月決まった額が手に入る事です!家賃を払う感覚で10年後には家が手に入る仕組みなら絶対に飛びつきます!どこに飛びつく保証があるんや!僕が飛びつくからです!僕の夢は彼らの夢ですから!飛びつく…かと。
飛びつかなかったらどうするんだ?そうや!そうや!せや!どないするんや!わしらの清算してもらう金はどないしてくれんねや!僕が…。
僕が借金をしてでも全損失を補填します!
それはリスクを取る事を極力避けてきた父が初めて博打を打った瞬間でした
やっちまったなあ。
お前…やっちまったよ。
フッフッフッフッ…。
資本家たちの了承は取り付けたものの権利放棄された株数はなんと5万4,000株
方々を走り回ってなんとか1万株の引き受け手は見つけたものの…
それ以上はどうにもならず…
あんたばっかり遊びに行って!たまに子ども連れてくくらいの事!
(旦那)ボケ!
残りの4万4,000株は岩下さんが北濱銀行で請け負ってくれる事になりました
ありがとうございます!
父は経費削減にひた走りました
自由に自由に使ってもらって構わないからね。
事務所はそのころ平賀さんが作っていた会社の空き部屋を間借り雇ったのは学校出たての佐藤君だけ
おい!どっから持ってきはったんでっか?いいから早く降ろせ!はい。
佐藤手伝えほら。
先にこれ降ろすぞ!
中止になった工事の資材を安く回してもらい…
気を付けろ!
(佐藤)ああ…。
柵…あるとないでは安心感が違いますよ。
安心が違うの?安心感が違うの?感ですけど…。
じゃあ要らない!無駄だ!無駄無駄無駄。
こんないっぱい建てるの無駄!無駄だ!
工事費も可能な限り節約
急げ!だから違う!違う!言ってる事違う!違う!
同時に実に刺激的な宣伝活動を展開。
今で言うパンフレットを作り…
「美しき水の都は昔の夢と消へて空暗き煙の都に住む不幸なる我が大阪市民諸君よ!」。
あかん!あんたこんなとこ住んでたらあかん!うん。
あかんな。
「出生率10人に対し死亡率11人強にあたる大阪市民の衛生状態に注意する諸君は慄然として都会生活の心細きを感じたまふべし!同時に田園趣味に富める楽しき郊外生活を懐うの念や切なるべし」。
お願いします。
せやけどこんな立派な家に…ほんまに買えるんかいな。
買えます!ほんまに?ほんまです。
(そろばんをはじく音)さんはい!
(子どもたち)・「東風ふく春に魁けて」・「開く梅田の東口往来ふ汽車を下に見て」・「北野に渡る跨線橋」・「業平塚や萩の寺」・「新淀川の春の風」お父さんよう作ったなあ。
これでやっと…おとうさんに偉そな顔できるなあ。
今更だがどうやってこの計画を思いついた?嫁が言ったんですよ。
「空気のいい郊外に住めないか?」って。
そこから僕自身の理想の生活を思い描いたんです。
あとはひたすらそろばんをはじいて。
お前にしかできん事業かもしれんな。
(平賀)そうですなあ。
え?
(笑い声)梅田発箕面行き間もなく発車致します!
(拍手)それでは…出発進行!今夜…2015/09/05(土) 21:00〜22:00
NHK総合1・神戸
放送90年ドラマ 経世済民の男(3)「小林一三」(前編)[解][字]

阪急電鉄や宝塚歌劇団をユニークな手法で創設し、現在にも通じるビジネスモデルを作り上げた小林一三。最後まで夢を形にすることを大切にした男の波乱万丈の生涯を描く。

詳細情報
番組内容
近代日本の経済人シリーズドラマ第2弾。阪急電鉄、阪急百貨店や宝塚歌劇団をユニークな手法で創設し、現在にも通じるビジネスモデルを作り上げた小林一三。小説家志望で落ちこぼれ銀行員だった一三が、ビジネスと人生の師に出会って事業のおもしろさに目覚め、独創的な手段で弱小電鉄を大企業へと成長させる。彼の成功を支えたのは、庶民の夢を的確にとらえる力。最後まで夢見ることを大切にした男の波乱万丈の生涯を描く。
出演者
【出演】阿部サダヲ,瀧本美織,草刈正雄,矢島健一,麿赤児,星田英利,奥田瑛二,【語り】井上芳雄
原作・脚本
【作】森下佳子

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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