海に漂う煙のようなもの。
こんばんはタモリです。
「巨大災害MEGADISASTER」。
昨年に引き続き放送する事になりました。
第1回目の今日は…最近極端に暑かったり激しく雨が降ったりする…と感じてる人も多いのではないでしょうか。
その原因を探っていくとこの地球に仕組まれた振り子が見えてきます。
(雷鳴)今日本列島は極端な気象現象による災害に次々と見舞われています。
温暖化が進む地球で何が起きているのか。
災害発生の鍵を握っているのは実は海と大気の変動である事が分かってきました。
最も注目されているのが赤道を1周する巨大な雲の集まり。
強力な台風を次々と生み出し日本や世界に被害をもたらしていました。
大気と水そして大地が絶えず循環している星地球。
秘められたエネルギーは時として暴走し私たちに襲いかかります。
荒ぶる地球。
その脅威が日本列島に迫っています。
科学者たちは膨大なデータを基に災害を引き起こすさまざまな変動を解き明かそうとしています。
太平洋やインド洋などで海水温の高い所が周期的に入れ代わる変動。
はるか上空で劇的に変動する大気。
こうした海と大気の変動がいくつも重なり合った時極端な気象現象がもたらされるのです。
変動が重なる事で太古から繰り返されてきた巨大災害。
最新の科学は過去2,000年の気象の変化を明らかにしました。
数百年に一度気象が激変する時代が日本を襲っていたというのです。
温暖化も重なり誰も経験した事のない巨大災害の危険性が高まるのです。
気象はどこまで極端化するのか。
日本列島に迫る脅威を探ります。
「MEGADISASTER」またやる事になりました。
はいそうなんです。
今年は日本に迫る脅威についてお送りします。
まず今夜は「極端化する気象」。
そして明日は災害からの避難についてお送りします。
タモリさん。
極端化する気象というの実感はお持ちでしょうか。
2〜3年前までは「これぐらいの幅はあるだろう」という事だったんですけども去年からそうも言ってられないですね。
「これちょっとおかしいんじゃないか?」とかなり多くの人がそう思ってんじゃないかと思いますけどね。
まず夏の暑さについて今年最高気温の記録が更新された所をまとめました。
最高気温の記録が更新されたのが全国で60か所以上。
これ北の方が多いですね。
そうですね。
北海道37度1分。
北海道が37度っていうのはすごいですね。
避暑にならないですね。
ならないならない。
福島・伊達市で39度7分。
すごいよね。
もう一つ特徴的だった事がありまして台風の発生が多かった事なんです。
そう。
多いですね確かに。
今年最初の台風が発生したのは1月でした。
えっ?そうでしたっけ。
そうなんです。
早かったんですよね。
その後も毎月発生しまして7月までで13。
これは平年に比べて2倍近いペースなんだそうです。
そんなに違うんだ。
特に6月末から7月にかけて9号10号11号。
そうそう。
この3つの渦が並んだ映像覚えてる方も多いかと思いますけれどもこのうち2つが日本に近づいたんです。
更に8月には台風15号が上陸しました。
西日本や東海では猛烈な雨が降り沖縄県の石垣島では観測記録を塗り替える最大瞬間風速71メートルの風が吹きました。
確かにこれ異常ですよね。
何か台風もまだ9月ですから。
そうですそうです。
まだこれからも来ますからね。
これからも心配なんですけれども台風が多いのタモリさんどうしてだと思われます?これは一般にいわれてるのは海水温との関係というのがねいわれてますよね。
潜水士の人とちょっと話したんです。
今年は異常にやっぱり高いらしいですよ。
海の中?海の中。
へえ〜!表面は34度ぐらいはある。
えっ熱い!何かそういう感じで言ってましたよ。
もうお風呂ですね。
そう。
まさにそうなんです。
今年海面水温は高かったんですね。
こちらの地図をご覧頂きますと太平洋の中央から東側の海面水温が高くなっています。
これはエルニーニョ現象といわれる状態なんです。
ええ。
平年より2度ほども高くなったんですがこれは温暖化による長期的な変化をはるかに超える高さだったんです。
う〜ん。
ただ台風が多かった理由それだけではありません。
もう一つ台風を発生させた大きな要因があるんです。
今年太平洋で相次いで発生した台風。
そのうち8つは最大風速60メートル以上のスーパー台風となりました。
3月。
最低気圧が896ヘクトパスカルとなったサイクロン・パム。
5月に発生した台風4号は910ヘクトパスカル。
いずれも太平洋の島々に甚大な被害を与えました。
7月。
西日本に大雨をもたらした台風11号も一時スーパー台風となっていました。
なぜ強力な台風が相次いで発生しているのか。
今年赤道付近で何度も起きていたある大気の変動に気付きました。
今年3月。
赤道付近に出来た発達した雲の集まり。
東西数千キロに及びます。
よく見ると少しずつ東へ移動しています。
7月にも雲の集まりが現れ移動していきました。
発達した雲の集まりが赤道付近を移動していくこの現象。
マッデン・ジュリアン振動MJOと呼ばれています。
MJOはインド洋付近で発生。
太平洋を通過して40日前後で赤道を1周します。
発生のメカニズムはよく分かっていませんが今年は年明けから何度も現れていました。
MJOによってなぜ台風が発生しやすくなるのか。
そこには風の動きが深く関わっています。
太平洋上空の風のデータです。
赤道付近ではふだん水色で示した東風が吹いています。
ところが突然緑色で示した西風が吹く事があります。
この西風をもたらしているのがMJO。
MJOが移動してくると強い西風が吹きます。
MJOが発生している所では東西からの風がぶつかり合って強い上昇気流が生まれ雲が発達します。
更に風がぶつかり合う所の周辺ではいくつもの渦が出来ます。
こうした渦が雲を巻き込み次々と台風が出来るのです。
3月。
MJOの雲から台風3号とサイクロン・パムが同時に発生。
7月には台風9号11号などが次々と発生していました。
今年何度も発生していたMJO。
その度に台風が生み出され日本にも数多くやって来たのです。
ではなぜ台風の多くがスーパー台風にまで発達したのか。
そこには海の変動が大きく関わっていました。
太平洋の東側の水温が高くなるエルニーニョ現象です。
太平洋では温度の高い海水が数年ごとに東西に移動しています。
温度の高い海水は去年初め太平洋の西側にありました。
それが次第に東へ移動しエルニーニョの状態となります。
この影響で太平洋の中央付近では海水温が平年より2度近くも高くなっていました。
温度の高い海水からは台風のエネルギーの源となる大量の水蒸気が発生しています。
そこにMJOが移動してきたのです。
大量の水蒸気をMJOの上昇気流が一気に巻き上げます。
爆発的に発達した雲が渦を巻き強力な台風が生まれていました。
数年ごとに発生する海の変動エルニーニョ現象。
赤道上に現れたり消えたりを繰り返す大気の変動MJO。
海と大気。
この振り子のような2つの変動が重なり合った時スーパー台風が生まれるのです。
我々はこうした…海と大気の変動が重なり合う事で強さを増す台風。
今後温暖化が加速していくとどうなるのか。
今年のようなスーパー台風が増加し日本を度々襲うようになると指摘する科学者がいます。
重なり合うMJOやエルニーニョ現象更に温暖化による海水温の上昇を想定し今後100年間に発生する台風をシミュレーションしました。
すると台風の発生はやや減るもののスーパー台風は増えるという結果になりました。
更に複数のスーパー台風が連続して日本を襲うケースも起こりうる事が分かりました。
海と大気の変動が重なり合う事で多発するスーパー台風。
温暖化によってその脅威が増していくおそれがあるのです。
ここからは東京大学教授の木本昌秀さんにお話を伺っていきます。
木本さんは気象庁の異常気象分析検討会の会長も務めていらっしゃいます。
よろしくお願い致します。
今年は確かに暑いし台風も多かったんですけどもまあこれからまだ来る可能性ありますけどもこれはやっぱり温暖化の影響というのが相当ある訳ですか?一回一回の気象の変化これは気圧配置とかその時その時の気象の事情で起こってるんですけれどもそれを長い目で見てどうも最近暑い年の方が多くないか最近妙に強い台風が多くないかっていう長期傾向には確実に温暖化の影響があります。
ですけど今年のエルニーニョは久しぶりに本格的なエルニーニョになってますのでそれに結構本格的なマッデン・ジュリアン・オシレーションが重なって台風の数としても強さとしても結構強い多い年になってしまっています。
MJOマッデン・ジュリアン初めて聞きましたね。
ちょっとかわいい名前なんですよね。
そうですね。
本当にこの名前はどこから来てるんでしょう?マッデンさんという研究者の名前それからジュリアンさんという方が1970年代の初めに初めてこういうものがあるというのをデータで発見されたんですね。
70年代にはもう既に…。
かなり前ですね。
だけどそのころは衛星のデータもあまりありませんしそれからどういう現象なんだっていう事を何十年もかけて最近では割とよく分かってきたという事です。
特にマッデン・ジュリアン振動が西の方から来ますと赤道に強い西風が吹く。
VTRにもありましたように。
そうしますとこちら側に渦巻きが出来やすい。
南半球側にも出来やすいんですね。
ですからツインサイクロンといいまして双子低気圧っていうのが出来る事が多いんです。
両側に出来る訳ですか。
MJOが出来るメカニズムっていうのは根本的にはまだはっきり分かってないんですか?マッデン・ジュリアン振動はいつでもある訳じゃありませんので一旦出来ると大体インド洋で出来て西太平洋の方来ますのでインド洋を監視しておれば大体来そうだなっていうの分かるんですけれどもじゃあそれがいつ出来るんだっていう事になると分からない部分が多いですね。
出来ない年もあるんですか?全くない事はないけれどやっぱり多い年と少ない年っていうのはあります。
それとエルニーニョが今年は重なった。
重なってるって事ですね。
エルニーニョは赤道の海水温を高くする。
そこへ西風が吹きやすくなる。
マッデン・ジュリアン振動はそれを例えば数か月…エルニーニョの方は数か月以上のタイムスケールでそういうバックグラウンドを作る。
そこへMJOがやって来ると赤道の西風が更に強くなる。
そうすると更に強い台風が出来やすい環境を生むという事になりますね。
何回も繰り返し来ますと何回も何回も台風が出来ますので数も多くなるという形になります。
ちょうど重なったという事ですね。
2つの振り子が。
こうじゃなくてこう…ここが重なったって事ですね。
そういう時にふだんと離れた珍しい極端現象が起こるという事になります。
はい。
近年注目されているMJOマッデン・ジュリアン振動なんですけれども台風以外の災害も世界各地にもたらしている事が分かってきました。
赤道上に突然現れ台風を発生させるMJO。
今MJOとほかの変動が重なり合って起きる災害に警戒が広がっています。
この夏ヨーロッパで開かれた地球科学に関する国際学会。
90か国から4,000人を超える科学者が集まりました。
今年大きな関心を集めたのがMJOに関する研究。
どんな条件が重なった時に災害が引き起こされるのか議論されました。
MJOの影響で起きる災害に警戒を強めている国があります。
赤道直下のインドネシア。
雨季を迎えていたインドネシアで大洪水が発生しました。
雨季でも雨が一日中降る事はあまりありません。
それがなぜか数日間も降り続いたのです。
首都ジャカルタを含む多くの都市が水につかりました。
当時の雲の画像です。
インドネシア付近に集まる発達した雨雲。
この時MJOが発生していたのです。
現地の気象当局はMJOの発生が雨季に重なった場合雨量が極端に多くなると見ています。
赤道付近を移動するMJO。
遠く離れた地域にも大きな影響を及ぼしていた事が分かってきました。
アメリカの西海岸。
3年前から500年に一度といわれる記録的な大干ばつが続いています。
空気が乾燥し山火事が続発しています。
ところが去年12月一転して大雨となりました。
土砂崩れが頻発。
およそ15万棟に大雨の被害が出ました。
水不足に苦しんでいた町が洪水に襲われたのです。
干ばつのさなかになぜ突然大雨が降ったのか。
アメリカ海洋大気局は大雨を引き起こしたのはMJOにある条件が重なったためだと見ています。
まず注目したのは水蒸気の流れです。
赤道付近には赤で示した大量の水蒸気があります。
この時MJOはインドネシア付近にあり大量の水蒸気を上空に巻き上げていました。
一方アメリカ西海岸は乾燥した状態。
ここに重なったのは風の変動です。
上空では偏西風が大きく蛇行しながら西海岸に向かっていました。
偏西風に流された水蒸気が西海岸に到達。
これが突然の大雨を降らせていました。
赤道付近にあった水蒸気が偏西風の蛇行によって西海岸まで運ばれていたのです。
500年に一度の干ばつから大洪水へ。
さまざまな変動が重なる事で気象に極端な変化がもたらされるのです。
MJOがはるかに離れたアメリカに影響を及ぼしてるんですけども日本にも影響が来るんですか?日本の場合ですねまあこれMJOと書いてありますが雲だけじゃなくてその周りの循環も含めて現象MJOという現象だという事なんですがインド洋の方からゆっくりと太平洋に入ってきます。
そうしますとこの辺りに来ますとこの雲に向かって西風が吹く訳ですね。
先ほどからVTRにあったように。
そうしますと赤道には強い西風が吹くんだけれどそのすぐ北ではこういう低気圧性の回転といいいますか風がこういう低気圧みたいに巻く訳ですね。
気圧ももちろん低くなります。
で場合によってはこの低気圧性の風が非常に強くなると台風が出来たりします。
今年の状況はそういう状況ですね。
この低気圧が…ここは台風なんかがあります低気圧。
上昇気流になりますからちょっと見えにくいかもしれませんが横から見て頂くと分かるんですが上昇気流が出来てそれが日本の近くで下降気流になる。
下降気流になりますと高気圧が強くなりますのでちょうど先ほど日本の最高気温のグラフが出てまして結構北の方東北の方に最高気温の記録多かったですよね。
ですから台風が7月が多かった影響がそういう形で高気圧を強くしたっていうのがある意味影響していると。
事ほどさように赤道の現象なんですけれど結構日本付近まで影響を与えます。
このエルニーニョプラスMJO。
ほかにも何か原因があるんですか?異常な気象を起こすような。
その辺りのいろいろな変動を地図にまとめたのでご覧頂きたいと思います。
このようにエルニーニョもそうですしマッデン・ジュリアン振動もそうですけれども太平洋数十年規模振動とか…。
これ先生海水温の変化と思っていいんですか?いろいろありますね。
MJOは海水温の影響もあるとはいわれてますが基本雲と風で出来る。
エルニーニョ現象は皆さんご存じのとおり赤道の比較的浅い所の外洋が赤道とその周りを行ったり来たりするような周期で起こる。
先ほどちょっと初めて見る言葉ダイポールモード。
これインド洋…。
これは日本人の研究者の方が発見された現象でエルニーニョと割とよく似てるんですけれどもインド洋でも東が高いと西が低いとかですね。
その反対になるとかですねそういう現象があるという事を発見されてその具合によってはまた先ほどみたいなやり方で日本付近にも影響を与えるという事はいわれてます。
ほう。
これそれぞれの現象が振り子のようになっているようなイメージでいいんでしょうかね?そうですね。
振り子といいますと柱時計は正確ですけれども気象の場合はそれほど正確じゃなくてあんまり規則的じゃないんですね。
振り子だったらひもとおもりだけで済むんですけれど気象の場合は海があり風があり。
風は自由に吹きますよね。
そういう事があるのでおおむね振り子なんだけれど実は非常に不規則な振り子であるという事になりますね。
先ほどのVTRにもありましたがこういういろいろな変動が重なり合うと大きな災害が起きるという事なんですね。
いろんな時間スケールでいろんな現象。
短期もあれば長期もある。
それぞれの振り子というか現象は影響し合ってるんでしょうか?そうですね。
お互い同じ地球の上で起こってる事ですし境目がありませんので。
MJOが実はエルニーニョ現象が始まる時にそのきっかけを与えるともいわれております。
西太平洋にたくさん温かい水がためられて東太平洋は低いラニーニャの状態ですね。
去年の初めがそうですがそれがMJOが来て西風がビュッと吹くとそれをきっかけにして西の方の温かい水が東へド〜ッと移動して実際今のエルニーニョの一番最初の時はそういう形でMJOにトリガーするって言うんですけども引き金を引くみたいな感じでですね引き起こされたと。
だからお互い影響を与え合ってる訳ですね。
いつどこでこうそれが影響し合うか。
それがなかなか…。
分かんないんですね。
最近地球温暖化で暑くなってますので振り子自体はエルニーニョ自体は温暖化してもエルニーニョなんでしょうけれどそれの起こり方が少しずつ微妙に変わってくる。
だから今まであれっと思うような事が起こるようになるっていう事じゃないでしょうかね。
はあ〜。
いや〜極端な気象の変化これからどうなっていくのか気になるところなんですけれども今過去数千年もの気象の変化を詳細に分析する事で将来の予測をしようという研究が始まっています。
私たちがこれまで経験した事のない大変動の可能性も浮かび上がってきています。
地球上のさまざまな変動が重なり合う事で起きる大災害。
次はいつ起きるのか。
過去を解き明かす事で予測しようとしている科学者がいます。
気候学者の中塚武さんです。
全国各地の遺跡から見つかる古い木を分析しています。
中塚さんは木の年輪を調べる事で過去数千年の雨量の変化が1年ごとに推定できると言います。
年輪から過去の雨量をどのように推定するのか。
注目したのは雨水の中に含まれている酸素同位体と呼ばれる元素です。
雨は毎年年輪に吸収されます。
水が蒸発しても酸素同位体は年輪に残ります。
このため雨が多い年の年輪にはより多くの同位体が含まれています。
年輪に含まれる同位体の割合を調べる事で年ごとの雨量の傾向が推定できるのです。
中塚さんはこの手法で過去2,000年にわたる本州付近の雨を推計しました。
紀元前50年以降の分析結果です。
グラフが上に行くほど雨量が多く下に行くほど少ない事を示します。
歴史上の災害の記録と比較してみます。
例えば雨量が多かったと見られる平安時代後期の1134年。
古文書からも洪水が起きていた事を示す記述が数多く見つかります。
一方近年を見てみると…。
戦後間もない1949年昭和24年。
この年にはキティ台風など3つの強力な台風が襲来し全国で水害が相次ぎました。
中塚さんが過去2,000年の中で特に注目している年があります。
雨量が飛び抜けて多かったと見られる年。
弥生時代半ばの127年です。
本州付近では現在の3倍以上に相当する極端な大雨が降っていたと中塚さんは考えています。
当時大規模な災害に見舞われたと考えられている場所があります。
静岡県にある弥生時代の遺跡登呂遺跡です。
この辺りに住んでいたと見られるのは数百人。
弥生時代の半ばなぜかこつ然と姿を消していました。
発掘調査などに基づいて当時を再現します。
降り続く雨であふれた川の水が住居や米の倉を襲います。
洪水は何度も発生。
水の深さは最大3メートルに達したと推定されています。
集落は壊滅的な被害を受けていたと考えられるのです。
このころのような極端な大雨に将来襲われる可能性はないのか。
中塚さんは127年の前後数十年間雨量が激しく変化する時代がある事に気付きました。
激しい変化が見られる時代はほかにも見つかりました。
気象が激変する時代がおよそ400年ごとに繰り返しているように見えるといいます。
気象が激しく変化したのは地球上のさまざまな変動が一度に重なり合ったためなのか。
それとも数百年の周期で巡ってくる未知の大変動があるのか。
まだその答えは見つかっていません。
中塚さんは手がかりを探ろうと歴史学者と共に過去の災害を検証しています。
気象が激変する時代が最後に訪れたと見られるのは1700年前後。
それから既に300年余り。
次の激変の時代が近づいているのではないかと中塚さんは危惧しています。
そういう意味では…温暖化が進む今気象が激変する時代を迎えたら何が起きるのか。
東北大学の風間聡さんです。
数百年に一度起きる大雨の被害をシミュレーションしています。
関東地方の全域で一日300ミリという大雨が降ったと想定しました。
赤で示したのは水の深さが1メートル以上になる地域です。
風間さんが考える最悪の被害です。
山間部で大規模な土砂崩れが発生。
大量の水と土砂が巨大な土石流となり市街地に向かっていきます。
川の中流から下流では大規模な洪水が発生します。
100年に一度の雨を想定した堤防は各地で決壊。
水深は所によって10メートルを超えると考えられます。
東京の都心部も水没。
多くの人が逃げ場を失い社会が機能停止に陥るおそれもあるのです。
昔の事が1年単位で分かるんですね。
これすごいね。
はい。
先ほどの過去2,000年分の雨量の分析の結果こちらです。
は〜。
すごいねこれ。
うんと遡ってみましょうか。
ちょと見てみましょうか。
前の方ぐっと。
この飛び抜けて高い…。
この突出してるところがありますね。
127年。
すごい雨がこのグラフではっきり分かりますけどね。
そうですね。
日本の気象台の観測のデータっていうのはたかだか百数十年しかありませんので。
400年に一回の現象なんて捉えられてないし数十年に一回の異常気象でも何回か数えるほどしか捉えられてないですよね。
ですから過去の事を振り返るだけではなくてこれから先の事をより確実に知るためにも過去の分析というのが非常に大事だと思います。
先生この400年に一度雨が多かったんじゃないかという分析もあったんですけれどもこれは先ほどの振動というか現象が重なったもの。
そうですね。
地球にはいろんな現象がありますのでそれに影響を与えてこのABC3つが重なって起こるとすごいところまで行ったりしますよね。
更に言いますとこれ今地球温暖化が進んでる途中ですけれどもこれから数十年たつともっとはっきりしてきますね。
温暖化っていうぐらいですから温度は上がるんですけども温度上がりますと水蒸気が増えて雨も変わってくるんですけど雨の場合は降る場所ではたくさん降るけど降らない場所では…。
要するに極端化が起こります。
そうしますとこれから先地球温暖化がもっと進んでくると降る時はべらぼうに降る渇水になると全然降らない。
そういう極端化がもっとはっきりしてくる可能性もありますね。
今までだったら400年に一回だと思ってた現象がそれこそ200年何十年に一回という形でリスクが増えていくっていうのは気候が徐々に変わっていくっていう事の結果だと思います。
その温暖化の影響という事で日本の気温について気になるデータがあるので見て頂きたいと思います。
日本の夏場と冬場の平均気温の変化を表したグラフで温暖化といわれていますとおり全体として右肩に上がっているんですけれども。
最近10年間を見ると夏場の気温がより高くそして冬場は逆に低くなっている。
日本の気候はどこまで極端に変化するのか最新の研究から見ていきます。
温暖化が進んだあとの日本を予見させるような地域があります。
ここ数年極端な猛暑に見舞われているオーストラリア。
気温が50度前後になる日が多くなっています。
熱中症で多くの人が病院に運ばれ山火事も相次いでいます。
地元の科学者は猛暑の原因は海の変動に温暖化が重なったためだと考えています。
オーストラリアの東側の太平洋では10年から数十年の周期で海面水温が変動しています。
ここ数年は沿岸部の海水温が低くなり沖合が高くなってきています。
沖合からは上昇気流が発生。
それが暖かい風となって陸地に吹き降ろし気温が上がります。
更に温暖化の影響が重なり暑さに拍車をかけているといいます。
極端化が進む夏の暑さ。
高齢者の安否を確認するなど国を挙げた対応を迫られています。
日本でもおととし観測史上最高の気温41度を記録。
ここ数年40度前後の気温が全国各地で観測されるようになっています。
東京大学の渡部雅浩さんは海と大気の変動に温暖化が加わる事で極端な猛暑がどれほど起きやすくなっているのか解析しました。
その結果おととしのような40度を超える猛暑になる確率は温暖化の影響がない場合に比べておよそ7倍に高まっている事が分かりました。
気温40度を超える猛暑が頻発するとどんな事態が引き起こされるのか。
医師の本田靖さんです。
国の研究プロジェクトの一員として気温上昇が人体に与える影響を研究しています。
本田さんが所属する研究グループは今世紀後半気温が今より4度前後高くなると予測し人や社会に与える影響をシミュレーションしました。
7月。
関東では広い範囲で気温が40度を超す極端な暑さが続きます。
路面からの照り返しで体感温度は50度近くに。
僅か10分歩くだけで熱中症になるおそれがあります。
屋外ではほとんど活動できません。
(テレビ)「日中の最高気温は東京の都心で42度と予想されます。
熱中症に警戒して下さい」。
冷房を適切に使わないと室内は蒸し風呂のような状態になります。
(人が倒れた音)心肺に負担がかかり心筋梗塞や呼吸器不全が多発します。
(サイレン)病院には救急患者が殺到。
そこ準備しといて。
大丈夫ですか?職場や学校地域などでも混乱が広がります。
最悪の場合夏の熱中症の搬送者はおよそ11万人。
多くの死者が出るおそれもあります。
温暖化が加速させるのは暑さだけではありません。
意外にも冬の寒さがより厳しくなる可能性が指摘されています。
去年の冬関東甲信は記録的な大雪となりました。
今世紀に入って日本は度々強い寒波に見舞われています。
温暖化が進む中でなぜ冬の寒さが厳しくなるのか。
北極海で調査を続けている国立極地研究所の猪上淳さんです。
注目しているのが北極海の氷。
かつて海面を覆っていた氷は年々減り続けています。
夏の氷の面積は過去30年余りで最も小さい状態となっています。
特に氷の減少が著しいのがロシアの北のバレンツ海です。
猪上さんはほかの研究者と共同でバレンツ海の氷の減少が気象に与えた影響を分析しました。
冬のユーラシア大陸の上空には偏西風が流れその南側に冷たい空気がたまりシベリア寒気団が出来ます。
氷が減って海面が現れると偏西風の流れに変化が生じ北へ蛇行します。
その分冷たい空気をため込んだ寒気団が大きく発達します。
こうして大量にたまった冷たい空気がやがて日本列島にも流れ込み強い寒波をもたらすというのです。
温暖化による冬の厳しい寒さが既に世界に広がりつつあるという見方もあります。
今年2月北半球の広い範囲がほぼ同時に極端な寒波に襲われました。
アメリカの東海岸。
ふだん雪の少ない南ヨーロッパ。
更には中東までもが雪に覆われたのです。
これほどの寒波はなぜ起きたのか。
新潟大学と国立極地研究所のグループは北極の氷の減少が大気の変動に影響を与えたと見ています。
北極の氷の減少によって上空2万メートル付近までの気流がどう変化したのか分析しました。
北極の上空には高速で回転する気流が流れています。
氷が多かった時代はこの気流の内側に強い寒気が閉じ込められていました。
氷が解けて海面が現れると変化が生じます。
気流が遅くなって流れに乱れが生じ強い寒気が外に流れ出しやすくなるというのです。
研究グループは氷が解けるほどこうした傾向が強まると考えています。
温暖化が進む事でこれまでの常識を超える極端な気象の変化に多くの人がさらされる可能性があるのです。
う〜ん。
夏は更に暑く冬は更に寒い。
これ大変ですね。
厳しい状況ですね。
まああの温暖化しているのに冬が寒いっていう事についてはいろいろ今調べてる最中ですからその傾向がずっと温暖化が何十年も先まで続くかどうかはまだ分かりませんけどね。
はいええ。
熱帯は大体海水温の変動で説明しやすいんですけども中緯度になりますと偏西風がいつでもフニャフニャッと曲がれるような状態ですのでなかなかこれの原因はあれあれの原因はこれっていうのは難しい。
いろんな地域の気象がいろんな事に影響を受ける要素が中緯度だとより大きくなりますのでね。
しかしいずれにしても今気候が変わりつつある最中であるというのは間違いないですね。
あのシミュレーションに出てきた気象予報の四十何度がいくつも。
ああいう事はいずれ起こりえるんでしょう…?起こりえます。
残念ながら。
私たちどうすればいいんでしょうかね?まずですね命の危険を感じて下さい。
サウジアラビアに出張してた友達がいるんですがやっぱり炎天下外に何分何時間以上いると命の危険を感じるって言ってましたから。
建設とか土木の作業は夜間という事になりますね。
昼間作業するってのは本当に危ないと思います。
社会全体が変わってくるんだ。
そうですね。
考えないといけないかもしれない。
やっぱりもう一つの問題は予測の技術をもうちょっと向上させて頂いて早めに対処できるようにする事が大事ですね。
対処して頂く。
災害の場合は避難して頂く。
それは大事なんですけれども予報とかそういう情報が少しでも早く正確に出れば対処の効果も上がるししかたも簡単になるしって事ですのでね。
今日最初に話題になりましたマッデン・ジュリアン振動。
MJO。
あれなんかは新しい計算をしますと4週間近く先まで結構その動向動きがね…。
分かるんですか。
うん分かる。
で何週間か先にそこから台風が出来るなんていうのもね分かる…。
分かるようになったとまでは言いませんがその可能性が出てきましたんでね。
少しでもいい情報をなるべく早く出せればそれだけで助かる命もありますし助かる財産もあると思いますので。
だから今日知ったのは要因があんなにあるのかという事ですよね。
MJOも。
その要因の振り子の周期が一定ではなくてこっちは速い向こうは遅いになったし。
その年によってその要因の振り子も長さが変わったりなんかする。
そのとおりですね。
それがいつどこで重なって災害になるか分からないという事ですけども必ずやっぱり来るという事ですよね。
やっぱり気象の極端現象災害っていうのは必ず自分のところにもやって来るんだって事でそういう時には私はどういうふうに動くんだ。
家族はどういうふうに動くんだって事を考えて頂いた方がいいと思いますね。
まだ9月ですから今年もまだ台風が…。
まだ来ます。
これから台風シーズンも本格化しますし残暑もあるでしょうしね。
秋雨もひょっとしたらあるかもしれませんので気を付けて頂きたいと思います。
気象はどこまで極端化するのか。
科学者たちは世界中から膨大なデータを集めて未来を予測しようとしています。
赤道付近の海に生息するサンゴ。
その年輪に刻まれていたのは過去数千年の海水温の変化です。
エルニーニョ現象による変動が温暖化によって次第に大きくなっているのではないか。
その影響を読み解こうとしています。
地球に残された気象激変の痕跡。
今世界中の科学者が結集し過去2,000年の気象を解き明かす大規模なプロジェクトが進められています。
巨大災害につながる未知の大変動が隠れていないか探ろうというのです。
スーパー台風や大雨の被害をもたらすMJO。
その危険性を事前につかむための研究も始まっています。
台風の発生や大雨の兆候をスーパーコンピューターで1か月前から予測。
MJOが発生する前から情報を出す事が目標です。
海と大気の変動が重なり合う事で極端化する気象。
温暖化が進む今更に大きな脅威となって私たちに迫っています。
巨大災害の時代をどう乗り越えていくのか。
その答えを探していかなければならないのです。
「巨大災害MEGADISASTER」。
このあとも放送が続きます。
日本に迫る脅威が見えてきます。
第2集は大避難。
都市を襲うスーパー台風。
僅か数分で襲う津波。
どうすれば多くの命を守れるのか科学が解き明かします。
第3集は火山。
今日本の地下で何が起きているのか。
最新報告です。
第4集は地震。
あの巨大地震を境に変化した日本列島。
見え始めた新たな脅威に迫ります。
2015/09/05(土) 19:30〜20:45
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル 巨大災害 第1集「極端化する気象〜海と大気の大変動〜」[字]
猛暑や記録的な雨など、気象が“極端”になり始めている。地球に仕組まれた「振り子」のような変動が幾つも重なることで極端になっているのだ。司会タモリで徹底解明する。
詳細情報
番組内容
統計開始以来の高温や記録的な降水量など、気象の変化が“極端”になり始めている。原因は、地球に仕組まれた「振り子」のような大気や海の変動がいくつも重なったためであることが明らかになってきた。一方、木の年輪を数千年分解析する研究プロジェクトは、過去の日本を襲った「大変動」の存在を突き止めた。今後、温暖化によって、異常気象が頻発するのではないか。大変動が襲うとき何がおきるのか。司会・タモリで徹底解明する
出演者
【司会】タモリ,久保田祐佳,【ゲスト】東京大学教授…木本昌秀,【語り】武内陶子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 報道特番
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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