09月11日の「今日のダーリン」

・昔は、よく言われていたものだ。
 「北極圏に住む人たちに、冷蔵庫を売るのが
 優秀なセールスマンというものだ」とね。
 まぁ、よくよく考えてみたら、
 電気の通っているところに住んでいるなら、
 家のなかに冷蔵庫があったほうがいいに決まってる。
 だから、このセールスはやればできることだろうな。 
 広告の仕事というのも、その「優秀なセールスマン」
 のように言われることが多かった。
 つまり、「この人が広告をつくれば、なんでも売れる」
 というようなことが、よいとされていたように思う。
 ずっとコピーライターをやっていたぼくも、
 じぶんの関わった商品やサービスが売れるのは、
 もちろん望むところだった。
 しかし、広告だけがよければ売れるというものでもない。
 そして、広告がとびぬけて好評だったとしても、
 それだけでは、お客さんの「よろこび」にはならない。

 ぼくがときどき言われていたよくある誤解は、
 「ばりばり売れるようないいコピー書いてくださいよ」
 というようなものだったけれど、
 現実のクライアントは、こんなことは言わない。
 酒の場の冗談みたいな言われ方がほとんどだ。
 ろくでもない商品に、うまくできたコピーを
 ぺたっと貼りつけたところで、どうにもなりゃしない。
 それでも、コピーライターというと、
 「なにやらうまいこと言って売りつける人」であると
 思いたがっている人たちはたくさんいた。
 そういう人たちに、あえて、
 そうじゃなくと説明するとしたら、
 いいコピーライターというのは、いい仲人なのだと言う。
 「男女、たがいのいいところを見つけて、
 それをわかりあってもらう」
 それがうまくいって、どちらも幸せになれたら、
 いちばんうれしいことではないだろうか、と。
 「うまいことを言う」のではなく、「わかってもらう」。
 このちがいは、ずいぶん大きいと思うのだ。
 コピーライターとして知られたことで、
 「うまいことを言うやつ」というイメージが付いてくる。
 これは、なかなかめんどくさいオマケなんだよねー。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
いろんなことまとめて「顧客の創造」とは言えるんだよね。