鯛のカルパッチョ、パプリカのマリネに鮭と茸のクリームパスタという晩御飯だったので、スパークリングワインを開けることにした。
ワインをグラスに注いでいると、奥さんが「わあ。今日はシャンパン?」と聞いてきた。
俺は、違うよと言った。
シャンパンというのは、フランスのシャンパーニュ地方で採れたブドウを定められた製法で醸造した泡のワインだけが名乗ることが出来るんだ。これは同じフランスでもロワール地方のワインだからシャンパンとは言わない。そもそも正式にはシャンパンじゃなくてシャンパーニュって呼ばないと…
黙って俺の話を聞いていた奥さんは、話が終わると俺の目じっとを見てこう言った。
「その話、他所でしたらダメだよ。ぜったい面倒くさい奴って思われるから」
奥さんは満足そうに俺の頭を撫でるのであった。