BEAT SCIENTISTS 〜HIP HOPのおとづくり〜 特別編 feat. Mummy-D (RHYMESTER) & PUNPEE(後編) |
DATE : 2015/09/11 |
インタビュー:高木“JET”晋一郎
写真:cherry chill will
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「シャシャれることだけが絶対じゃないですけど、歌モノのリミックスをしたときに、ラップのヴァースを付けて返したり、世界観に肉付けが出来たりできる。ラップが出来ることでそういう要素を加えたり、全体的なプロデュースやリミックスが出来ると思うんですよね」」 -- PUNPEE
【前編はコチラ】
■お二方とも、トラックもラップも手がけられるので、その上で伺いたいんですが、自分のトラックに自分のラップで載るのと、人のトラックにラップで載るのとでは、感覚的な違いはあったりしますか?
Mummy-D「ケース・バイ・ケースかな。自分で作ったトラックなのに、全然乗れないってこともあるから。例えば、“B-BOYイズム”はオリジナルと、“B-BOYイズム (80’s Remix)”の二種類が正規でリリースされてるんだけど、その両方とも俺がトラックをやってるんだよね。だけど、オリジナル・ヴァージョンを作るとき、オリジナルのトラックじゃ全然上手くラップできなくて。だから、同時に出来てたリミックスの方のトラックを聴きながらラップしてるんだ。それで、そのラップをオリジナルのトラックに載せ替えてて」
PUNPEE「へー!」
Mummy-D「意外でしょ? ラップに関しては俺はリミックスで録って、宇多さんはオリジナルで録って、それをまとめてる。だから、俺のヴァースに関しては、リミックスの方がオリジナルっていうか(笑)」
PUNPEE「BPMは一緒でしたっけ?」
Mummy-D「一緒だね」
■ただ、リミックスの方は、オールドスクール・エレクトロ調の重心が低いタイプですよね。
Mummy-D「そうだね。オリジナルみたいな疾走感っていうわけではない。そういう感じで、自分のトラックでも、載せやすいのと載せにくいのがあるし、結局、レコーディング・ブースに入るときは誰のトラックであろうと、『そのトラックに上手く載ること』しか考えてないよね」
■ラップもトラックも両方手掛けることによるメリットはありますか?
PUNPEE「俺は『シャシャれる』ってことですかね(笑)。プロデュース作品にラップを自分で入れることも出来るし、『P』っていう声を入れて、自分のトラックだってことをアピールも出来たり」
Amebreak伊藤「P君が歌ったり、自分の声を入れたりするのは……」
PUNPEE「THE NEPTUNESとかSWIZZ BEATZの影響だと思いますね。彼らみたいに、その人なりの“印”をトラックに入れることが必要なのかなって」
Mummy-D「俺もSOUL SCREAMの“コンパス -Mr.Drunk Remix-”のリミックスとかに声を入れてたりしたけど、そういうハンコの押し方がPUNPEEと似てるかな」
PUNPEE「もちろん、シャシャれることだけが絶対じゃないですけど、歌モノのリミックスをしたときに、ラップのヴァースを付けて返したり、世界観に肉付けが出来たりできる。ラップが出来ることでそういう要素を加えたり、全体的なプロデュースやリミックスが出来ると思うんですよね」
Mummy-D「作業環境の違いもあるよね。P君は自宅で録ることも多いからそれが出来ると思うんだけど、俺は昔ながらの、スタジオに入って考えるタイプだから、簡単にヴォーカルを入れることが出来なくて」
Amebreak伊藤「『ラッパーの気持ちが分かる』という面でのメリットは?」
Mummy-D「それはあるかな、ある程度は。『ラップが載ったときのことを考えると、これ以上、このトラックには音を足したらダメ』とか、『ここまで踏み込んだ方がラップが映える』とかは、普通のトラック・メイカーよりは分かるかもしれない。KEN THE 390のプロデュース(“FANTASTIC WORLD”)をしたときに、『彼の声に対してトラックのキーを上げた方が美味しいところに行くぞ』っていうのが感覚として分かるから、そこで修正したり。そういう、ラッパーだから分かる部分はあると思うね」
PUNPEE「リミックスや外部プロデュースでのフェイヴァリット・ワークは何ですか?」
Mummy-D「OZROSAURUSの“045BB”はすごく好きだな。MACCHOのラップ自体が好きだし、手応えもある」
PUNPEE「西寄りな雰囲気もありますよね」
Mummy-D「ちょっとそっちに近づけたけど、でもビートは“FUNKY PRESIDENT”(笑)」
PUNPEE「やっぱり好きじゃないですか(笑)」
Mummy-D「言われりゃそうだね(笑)。“ヤバスギルスキル Part 3”も好きだし、フェイヴァリットなのはあの時期の作品かな。やっぱり、あの時期以降は『迷ってる』部分があるんだよね。例えば“HEAT ISLAND”も、もっと先のことをやりたいのにやれてないっていうジレンマを感じるし。そういう風に、2000年代に入ると、90年代後期よりも、もっと音楽的に欲深くなってるから、そういう悩みや迷いが強くなってるんだよね。だから、自分のフェイヴァリットを選ぶとしたら、素直に“自分”が出せてる時代の曲になるかもね」
PUNPEE「ビートで初めてお金をもらったのっていつでした?」
Mummy-D「最初に外部でプロデュースしたのって、RIP SLYMEとかMELLOW YELLOWだったと思うんだけど、順番は覚えてないな〜。でも、ギャラは一応もらってたと思う」
PUNPEE「ライヴはノルマ払ってました?」
Mummy-D「話が全然ビート・メイクと関係ないじゃん!(笑)」
PUNPEE「単純に、いつから音楽がお金になったのかが気になるんです。俺はノルマばっかり払ってたし、ギャラもらえるようになるまで何年もかかったんで……」
Mummy-D「なるほどね。『YOUNG MC IN TOWN』は自分たちの主催イヴェントだったけど、みんなで分配できるぐらいのギャラにはなってたね。結局ファミレス行ったらなくなるぐらいのもんだけど。なんとなく、音楽制作でお金が取れるようになったと感じたのは25〜6歳ぐらいのときだから、『エゴトピア』ぐらいの時期かな。音楽業界の景気も良かったから、アンダーグラウンドのラッパーのビート提供やリミックスでも、それなりにお金は払ってもらえて」
■MICADELICでもですか?
PUNPEE「“有視徹戦 Mr. Drunk REMIX feat.宇多丸”ですね」
Mummy-D「MICADELICが一番安かった、と思う(笑)。でも、5千円ってことはなかったよ。まあ、別にギャラ云々じゃなくて、面白い仕事だと思えば、ギャラがいくらだろうがやるんだけど、当時はアナログも売れてたから、みんなそれなりに払ってくれて。だから、今の方が大変だと思うな」
PUNPEE「ちょっとマニアックな質問なんですけど、“口から出まかせ feat. King Giddra & Soul Scream”のプロデュース・クレジットが「Mummy-D & Zeebra」になってますが、どういう分担だったんですか?
Mummy-D「ギドラのパートはZeebraが作って、RHYMESTERとSOUL SCREAMのパートは俺だね。当時、Zeebraの方が良いサンプラーを使ってたから、ギドラの部分だけ音の抜けが良いんだよね。俺の作った方はS950だから、ちょっと沈んでる。で、Zeebraの使ってるビートは“FUNKY PRESIDENT”(笑)」
PUNPEE「あと、JAMES BROWNのリミックスが出来なくて悩んだけど、一晩酒呑んで作ったら出来たっていうのをどこかで読んだんですけど」
Mummy-D「“GET ON THE GOOD FOOT (Mr. DRUNK MIX)”だ(「ジェームス・ブラウン アルティメット・リミキシーズ」収録)。やったね、その仕事。でも、酒呑んで作るのは毎回だから……(笑)。そのときは、JBのリミックス盤を作るっていう企画だったんだけど、その素材として、JB’sの演奏のパラ・データ(註:バンド・パートごとの演奏音源)がもらえたんだよ」
PUNPEE「あー。デカいですね!」
Mummy-D「『マジで!そんなのもらえるの!』って。しかも、もらったらスゲェ良い音で、昨日録ったみたいな音なんだよね。JBのカウントで演奏が始まって、終わると取り巻きが拍手するっていうのまで入ってた(笑)。それぐらいスッゴい臨場感のある音で。その素材をもらって、どこかを切り取ってループすればHIP HOPになるかなと思ったら、始めから基本はループの曲だし、始めからHIP HOPを感じる音だったんだ。だから、ちょっと切り取るぐらいじゃJB'sの劣化版にしかならなくて、作りながら『HIP HOPってなんなんだろう……』とかまで考えちゃって。あの曲は苦労したね。呑んだら出来ちゃったけど(笑)」
■インスト曲としては、上記曲や「ILL-CENTRIK FUNK」収録の“Hit it! Mr.Drunk”がありますが、あまり長尺のインスト曲は作られてませんよね。
PUNPEE「あのインスト好きですよ、俺」
Mummy-D「あのときも『もう、どうすればいいんだ……』って泣いちゃって(笑)。TR-808とTR-909のビートを順繰りに使うっていうテーマは決まったんだけど、そこから作っても作っても、『これって曲として成り立ってるのか?』って。インストとしてはアレが最初に作った曲だったのもあって、正解が分からなくなっちゃったんだよね。だから、インスト作るの下手なんだよ、俺」
■ラップが載って完成するということですか?
Mummy-D「インストだと、トラックの展開と音色だけでいろんなことしなくちゃいけないから、それが大変じゃん(笑)」
PUNPEE「音だけで引っ張るのは大変ですよね」
Mummy-D「それが得意な人もいるけど、そういう人のトラックにラップを載せると、今度は密度が高すぎちゃったりして」
■PUNPEE君もインスト曲は少ないですね。
PUNPEE「OIL WORKSのコンピ『Oilworks Presents / The Visionaries EP 』に入ってる“Salary Madness”で一曲やってるんですけど、ちょっと悩みましたね。でも、Dさんのインストを聴き直したら、音の抜き差しで生まれるHIP HOPの美学があの曲にあったんで、それを参考にして組み立てていって。だから、すごく勉強になりました」
Mummy-D「あのときは、如何に手を加えないでイケるかっていうミニマリズムで曲を作ってた時期なんだよね。とにかく引き算を目指してた頃だったから、余計にインストは苦手だったかもしれない。だけど、今は足し算が大好きだし、展開が変わったり、3番でビートが急に変わるとか、Bメロ!Cメロ!」
■大サビ!とか(笑)。
Mummy-D「そうそう。そういう展開の多さだったり、音の膨らみだったりっていう『足し算』が好きになってるから、あのときよりはインストが上手く作れるかもね」
■RHYMESTERでは「グレイゾーン」付近から、Dさんのプロダクションに足し算的な切り口が強くなっていったと思うんですが、それと同じ年にバンドというアプローチで始まったユニット:マボロシでの「ワルダクミ」がリリースされているのが非常に興味深いと思います。その意味では、音楽的な広がりを求めたときに、竹内朋康さんというプレイヤーとの共同作業を選択されたのは何故だったんですか?
Mummy-D「マボロシに関しては、タケ(竹内朋康)ありきっていうのもあるんだよね。タケに『一緒にバンドやろうよ』って言われて始めたっていうのもあるし。でも、後押しになったのはやっぱりN.E.R.D.だね。今だから言うけど、N.E.R.D.やりたかったんだよ、ぶっちゃけ(笑)。それぐらい、N.E.R.D.の影響は大きかった」
■マボロシがプロデュースした“I Say Yeah!”(註:PUSHIM/RHYMESTER/HOME MADE 家族/マボロシ/May J.によるシングル)は、その影響をすごく感じますよね。
Mummy-D「THE NEPTUNESには1stの『IN SEARCH OF』から一気にヤラれてたし、それ以前からファレルの音色やコード感が好きで、ああいったサウンドが作ってみたいって思ってたんだよね。そう思ってたときに、タケと一緒に作ったら“ザ・グレート・アマチュアリズム”が出来ちゃったから、これは可能性がすごくあるなって。しかも『タケのギターを掘ればいくらでも曲が出来る! もうレコ屋に行かなくていいかもしれない!』って(笑)。それでマボロシを本格始動したんだよね」
■PUNPEE君は楽器も出来るので、それでサウンドを膨らませる部分もあると思うんですが。
PUNPEE「簡単なアコギやギター・ソロは足せるんで、それで展開を作るときもありますね」
Mummy-D「実際、今回のPUNPEEのトラックには、相当生楽器が入ってるんだよね。元トラックだとそれがすごく分かる。ベースも生で弾いてたりするよね。ズレズレだったりするんだけど(笑)」
PUNPEE「それをProToolsの画面上で合わせて完成させるんで(笑)」
Mummy-D「楽器が出来るのに、バンド的なアプローチをやらないのが意外だよね」
PUNPEE「一回、弟(5lack)に提案したことがあったんですよ。PSGの次はバンドで出さないかって」
Mummy-D「BEASTIE BOYSみたいじゃん」
PUNPEE「そしたら『そんなのみんな想像するでしょ。ダサいよ』って当時、即却下されて」
Mummy-D「厳しいな〜、弟(笑)」
■KEN THE 390君のLIQUIDROOMワンマンで久々に登場したマボロシを拝見して、やっぱり稀有なグループだし、また活動してほしいなと思ったんですが……。
Mummy-D「俺もやりたいんだけど、残念ながら俺がひとりしかいないって部分がネックなんだよ。やりたいことはいっぱいあるし、アイディアもあるんだけど、今はRHYMESTERを回転させないといけないから、そっちに集中しようと」
「俺らはどこまでいってもファンクの未来形なのかなって、自分でも思う。今はHIP HOPをやってても、そこにファンクとかブラック・ミュージックって制約のない世代の子たちもいるけど、俺たちはどうしてもファンクが根っこに出ちゃうんだよね。それが持ち味なんだと思うよ」-- Mummy-D
■RHYMESTERの活動再開後、Dさんの立ち位置として作品のトータル・ディレクションという部分を手がけられ、トラックにはあまり携わられなくなりましたね。
Mummy-D「もう分業しないとクオリティ・コントロールが保てないって判断したんだよね。トラック・メイク自体、労力を昔と比較すると、倍どころじゃないぐらいのクリエイティヴィティが必要になってると思う。“ガラパゴス”は3rdヴァースのビートを変えてて、そういうのは簡単だけど、3番のためだけにイケてるビートを作らなきゃいけないわけじゃん。だから、単純計算で二曲分以上の労力が必要ってことだよね。だから大変だよ、今は」
■ワンループのみで進むというのは、今は難しいですからね。
Mummy-D「制作の分業化が進んでるのは、そういうこともあると思うよ。それに、メジャー以降はサンプリングの問題もある。お金の問題だけじゃなくて、今はもうちょっと解消されてるかもしれないけど、前はサンプリングのクリアランスを取るのに時間がかかったんだよね。しかも、OKかは許可が出るまで分からないから、制作進行にその不安要素を組み込むのは難しい部分もあって。だからインディの頃みたいに、『サンプリングして、一晩で組んで、イエ〜俺天才〜』みたいな(笑)、楽しいサンプリングでの作業は難しくなっていって。それに、自分の興味や憧れが、THE NEPTUNES/PHARRELL以降には、バンド的な質感も含めてきっちり音楽しつつも、HIP HOPの感覚があるものに移っていったし、それが自分が出来ていないって感じるようにもなって。だから、トラックに関しては外部プロデューサーに任せて、それで出来た時間は、歌詞のクオリティだったり、作品全体の構成力だったりを上げるために費やすようになったんだよね」
■RHYMESTERの新作では“The X-DAY”を手掛けられましたが、その数は増えそうですか?
Mummy-D「アイディアやイメージは、あるはあるんだけど、自分の中でそんなに納得がいってないんだよね。メンバーに聴かせると『いいじゃん!』って言ってくれるんだけど、自分的にはちょっと……って。いろいろ(な方法論や手法が)出来るようになったとは思うんだけど、一方で『俺がやりたかったのってこれだっけ……?』って。作ってもそういうジレンマも生まれてしまう。誰かラッパーが載ってくれて、そこにマジックが起きるんなら提供したいし、嬉しいんだけど、今作ってるトラックに自分が載ることを想定すると、自分ではマジックが起きないような気がしてしまって」
■PUNPEE君は、自分でトラックを作って、これに自分はハマらないって思ったりする?
PUNPEE「あんまり、自分のラップを想定しながらトラックは作らないですね。カッコ良いトラックが出来たら『じゃあこれをどうしようか』って後から考えます。トラックって作ってると、あるときからメロディとかフロウが浮かんで、そこで固まっちゃうときがあるんですよ。でも、人に提供すると自分が想像したものとは全然違う形で返ってきたりするんで、そこに新しいマジックが起きると思うんですよね。“SOMINSAI”のフックも、絶対自分では浮かばないフックだなって思ったし」
Mummy-D「言ってたよね。でも、逆に言えば俺はアレしか浮かばなかった」
PUNPEE「それが人と一緒に作る楽しさだと思いますね。Dさんは作風としてメロディ感が強くなってきてると思うんですけど」
Mummy-D「最近はもうアリかなって。やっぱり、メロディの持つ『フック力』ってスゴいじゃん」
PUNPEE「それはありますね」
Mummy-D「そこは解禁しちゃっていいかなって。『マニフェスト』のときはまだそれを強くは思わなかったけど、だんだん強くなってきてる」
PUNPEE「どうやってメロディを作るんですか?」
Mummy-D「なんとなく頭の中で鳴ってると思うんだよね、それはリリックを書いてるときに。でも、それが自分の声の美味しいところ(音程)に合うかは分からないから、スタジオに入って歌ってみて、決めていくかな。だけどヴォーカリストではないから、上で歌うと上ずっちゃうし、下で歌うと密度が出ないし、ってことも起きるんだよね。今回だと“The X-Day”はもともと作ってたトラックから、自分の声が一番響くところまで音程をトランスポーズして完成させたんだ」
■再始動後はメロディ/フックの強度を高めるという部分も推し進めてると思うんですが、それは“ポップス”という部分にも繋がると思います。その意味では、“HIP HOP”でありながら“ポップ”の強度を求めるのは何故ですか?
Mummy-D「戦ってかなきゃいけないからだよね。そういうところ(ポップ・シーン)と。それは、リリース物としてもそうだし、フェスとかでもそう。だから、自分たちからにじみ出るポップ・センスだったら、いくらでも武器にしようと思ってる。そりゃシンガー呼んで、サビ歌ってもらって、大ヒットした方がいいけど -- WIZ KHALIFAとかB.o.Bもそういう方法論だし -- それを日本でやっても、『ヴァースをラップする人』としては認められるかもしれないけど、作品全体としては認められにくいと思うんだよね。だから、アーティストとして全体で認められるには、『バンドとして』認められるには、俺たちがフックを歌わなきゃいけないと思う。カッコ良いものを作ればいいってだけじゃなくて、どう見せるかも重要だからさ」
■DさんとPUNPEE君には、共通として「ポップ・センス」という部分があるのかなとも思うんですが。
PUNPEE「それもあるし、共通点として、新しい波が来ると『それぐらい俺も出来るぜ!』ってならないですか?」
Mummy-D「そうだね〜!」
PUNPEE「弾きが流行ったら『こういうことでしょ?』、誰かが歌ったら、『こっちの歌の方がいいでしょ?』みたいな」
Mummy-D「完全にそうだね(笑)」
PUNPEE「新しいのが生まれると、悔しくてやってみるっていうのはありますよね」
Mummy-D「『俺にも出来る!』もあるし、『出来るようになりたい!』もあるよね」
PUNPEE「挑戦したくなりますよね。それがモティヴェーションになる」
Mummy-D「単純に音楽的なスキルを上げたいんだよね。ミュージシャンとして強くなりたい」
PUNPEE「俺より若い奴が流行の方法論を器用にやってると『くっそー!』ってなりますもんね(笑)」
■改めてキャリアを振り返ると、Dさんのフル・プロデュースするアーティストや、プロデュース・アルバムがないのはちょっと意外にも思えて。
Mummy-D「そういう動きもやってみたいし、『全曲俺のプロデュースでやってほしい』って話はもらうことも多々あるんだけど、それは今じゃないかなって。もう一皮剥けたときにやろうと思うね」
■PUNPEE君はRAU DEF君の「ESCALATE」でエグゼクティヴ・プロデュースを手掛けたりという動きもありますが。
PUNPEE「普通にトータル・プロデュースをするのは好きですね。全体のバランスとか構成を考えるのは、トラックのプロデュース作業と似てる部分もあって」
Mummy-D「俺も、『トラックも込み』って拘らなければ、エグゼクティヴ的なプロデュース作業はやってみたいね。実際、starplayers recordsで誰かをリリースするときはそうなると思う。それは大いにやりたいね」
■『プロデュースする』という、誰かアーティストを立てて、そこに自分のアイディアやエッセンスを込めたり、良さを引き出すという行為の醍醐味はなんですか?
PUNPEE「『今までこの人のこういう部分は引き出してなかった』とか『この人だったらこういうアプローチが自分なら出来る』っていうことを思いつくと最高ですね。あと、最近は個性の強い人に頼まれることが多くなったので、単純にストックのトラックを渡すんじゃなくて、その人の個性に合わせた、自分なりのアプローチが出来るのが楽しいです」
Mummy-D「どんなトラックを提供するかってこと自体が、その人へのメッセージになるよね。『君はこのトラックだったら今までより映えるかもしれない!』とかさ。その時点から“プロデュース”って作業は始まってるよね」
■例えばDさんのトラックでPUNPEE君がラップしたりという、今回の逆の動きなどは考えられますか?
PUNPEE「それは考えてますね。Dさんの昔のトラックとか欲しいです」
Mummy-D「ああ、それはKREVAにも言われた」
PUNPEE「SPとかで作ってた時代のトラックを聴かせてほしいなって」
Mummy-D「過去のトラックは全部2ミックスにしてテープに録ってたんだけど、それをもう持ってないんだよね。SPのデータは、あるはあるけど、フロッピーが読み込むのかどうか……」
PUNPEE「DさんとJINさんのふたりでビートを作ったRHYMESTERのアルバムも聴きたいですね」
Mummy-D「それもよく言われるんだけど、う〜ん……まあ、ね……」
■メチャクチャしみじみした声が出ましたね。
Mummy-D「ハハハ。気持ちも分かるんだけどさ、大変なんだよ」
PUNPEE「“キング・オブ・ステージ”の宇多丸さんのヴァースにあるように、『フューチャー・ファンク』っていうのがRHYMESTERのジャンルかなと思うし、それはDさんとJINさんのトラックから感じる部分なんですよね」
Mummy-D「なるほどね。確かに、俺らはどこまでいってもファンクの未来形なのかなって、自分でも思う。今はHIP HOPをやってても、そこにファンクとかブラック・ミュージックって制約のない世代の子たちもいるけど、俺たちはどうしてもファンクが根っこに出ちゃうんだよね。それが持ち味なんだと思うよ」
Amebreak伊藤「『COMPTON』のDR. DREとDJ PREMIERの共同作業じゃないけど、例えばDさんが選んだ素材をP君が料理するとかっていうアプローチもあるのかなって」
PUNPEE「あー、それはやってみたいですね」
Mummy-D「面白そうだね。そういうのもやりたいけど、PUNPEEはとにかく早くソロ・アルバムを作れ!!(笑)」
PUNPEE「……頑張ります(笑)」
Mummy-D「RHYMESTERを手伝ってくれたことが、PUNPEEのフル・アルバムに繋がってほしいし、そのときには関わりたいなって思ってるんだよね」
PUNPEE「制作のタイミングは7回ぐらい逃してるっすね(笑)」
Mummy-D「超〜完璧主義だからね。ケツがなければ自分の作品、一生ブラッシュアップし続けちゃうような気がするな。だから、よく『MOVIE ON THE SUNDAY』が出たなって」
PUNPEE「あれも、散歩したりドライヴしたり、遊園地で聴いたり色んなシチュエーションで聴いて、どこでもフィットするように考えたりもして」
■……確かにそれだと相当時間がかかりそうな(笑)。
PUNPEE「でも『COMPTON』が刺激になったんで、自分も頑張ろうかと」
Mummy-D「フフフ。タイミングが世界レベルだね(笑)」