2015年4月、新たに国立病院機構災害医療センターと連携協定を締結し、特に緊急災害医療現場において有効なシステムを開発して、災害医療関係者とともに評価を行うこととなりました...[続く]
災害対応航空技術(D-NET2)
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- 2015年6月22日
- DMATとD-NET/D-NET2研究開発の連携協定を締結
2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災では被災地域が広域にわたり、また発災から日没まで3時間程度しかなかったことから、ヘリコプターによる情報収集の妨げとなり、情報収集、判断に時間を要したり、初動時の円滑な救難活動が行えなかった地域がありました。
災害時においては、発災後72時間以内の救援活動が何より求められます。この期間は陸上の交通網の機能が低下しているため、災害救援航空機を最適に運用するためには、航空~宇宙機器の有効活用が最重要課題です。
JAXAでは、ヘリコプター等の航空機、無人航空機、人工衛星の統合的な運用による災害情報の収集・共有化及び災害救援航空機による効率的かつ安全な救援活動を支援する「災害救援航空機統合運用システム(D-NET2)」の実現に必要な技術を開発することで、将来起こりうる大規模災害への対応能力強化に貢献します。
災害救援航空機統合運用システム(D-NET2)のシステム構成
D-NET2の目標
JAXAでは、D-NET2の評価を定量的に行うため、「QOL(Quality of Life)」を用いて、地域ごとの救援活動の進捗を数値的に可視化することを検討しています。
航空宇宙機器や他の情報源から入手した災害情報や救援活動状況を、統合・整理することにより、救援活動の地域格差が生じるのを防ぐことが可能になります。
内閣府等が中心となって、大規模広域災害の被害想定・対策の見直しが進められています。JAXAはこの見直しを踏まえて、D-NET2の性能目標を、「発災後72時間以内において、現状の手法・システムではQOL=3(生命の維持)に必要な救援機会の提供が不可能な事案を、航空宇宙機器によって提供可能な事案に対して、2/3減少すること」と定義しました。
JAXAは目標達成に向けて、必要な航空宇宙技術の研究開発、他分野との連携、災害対応機関との連携を、一層進めていきます。
東日本大震災におけるQOL分布の時間変化(JAXA独自調査結果に基づく評価)
情報の統合的管理
DREAMSプロジェクトの一環として研究開発している「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」では、災害救援ヘリコプター、ドクターヘリ、航空機の運航拠点、災害対策本部、地上の救助隊員、無人航空機、その他の災害上システムと情報の統合化を図ることができました。
そこに、陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)などによる地球観測衛星や滞空型無人機のような無人航空機が観測した災害情報データを共有化することで、より迅速に必要な救援機会を提供することが可能になります。
最適運航管理判断支援
「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」では、局所的・確定的な災害情報、ヘリコプターの飛行可能時間帯や気象条件等に基づいて、各航空機へ最適な任務を割り振ることができ、給油の順番待ちや任務の割り当て待ちの時間を削減することを可能にしました。
ここに人工衛星等で観測した広域的・不確定的な災害情報も加え、アルゴリズムを見直して、より災害救援航空機の最適な運航計画の判断支援を行うことを目指します。
任務支援サブシステム
例1: ヒューマンインターフェースの改良
災害情報の共有化には災害救援航空機からの災害情報の送信は不可欠なため、「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」ではより簡単に操作できるヒューマンインターフェースを研究開発してきました。
更なる入力負荷低減と、それによる災害任務情報の伝達時間の短縮を目指し、ヘルメットマウンテッドディスプレイ(HMD)等の採用によるヒューマンインターフェースの改良に取り組みます。
JAXAが開発した災害情報入力画面
例2: 救急・搬送情報の共有
「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」はドクターヘリにも対応しており、受け入れ病院とドクターヘリの間で、患者の生体情報を共有することが可能になっています。
大規模災害時に発生する多数の重篤傷病者を、より戦略的な判断(トリアージ)等により救助するため、人工衛星による救援識別サインの活用も視野に入れ、情報活用技術を確立します。
例3: 消防航空機による空中消火支援
これまでJAXAでは、消防航空機による空中からの消火活動において、延焼シミュレーションによる放水点の判断支援や、放水点へ精密誘導するためのコックピットのヒューマンインターフェース技術の研究を行ってきました。
より目標に正確に水が的中するよう、風の影響等の考慮した、消防航空機の精密誘導技術を研究します。
例4: IMCで飛行可能なIFRルート網の設定
大規模災害発生時は広域応援として全国から災害救援航空機が災害地へ集結します。悪天候時でも速やかに終結できるよう、IMC(計器飛行気象条件)で飛行可能な、IFR(計器飛行方式)により飛行できるルート網の設定を、関係各所と協力しながら目指します。
例5: HMD等による視界情報支援
ヘリコプターによる飛行は原則有視界による飛行に限られるため、夜間や天候不良時に飛行することができず、これまで捜索活動等が制限されてきました。JAXAではこれまでヘルメットマウンテッドディスプレイ(HMD)と赤外線カメラを組み合わせて、HMDに赤外線カメラの映像や地図データを表示することで、夜間・天候不良時の飛行安全技術を高める研究を行ってきました。
更にヒューマンインターフェースを改良し、要救助者情報の表示等を可能にすることで、搭乗者の負荷低減と捜索・救援活動の所要時間の短縮を目指します。
ヘルメットマウンテッドディスプレイ(HMD)と赤外線カメラの映像や地図データを表示した例
例6: 気象情報の配信
これまでJAXAでは、地上からヘリコプター等の航空機に気象情報を配信し、パイロットが飛行可否判断を行うための技術を開発してきました。航空機同士の気象情報を共有することで、より局所的な気象情報を把握することができ、戦略的な最適運航管理判断への活用が期待できます。
例7: 航空機の衝突防止技術
これまで航空機の位置情報を共有することで、航空機同士の衝突を避けたり、地図データベースを共有することで、送電線や鉄塔等地上の障害物への衝突防止は可能になっています。
航空機が検知した障害物の情報を共有することで、より最新の障害物の状況を把握することが可能になり、一層の衝突防止につながります。
例8: サイレントタイムへの対応
より迅速に救援活動を行うためには航空機を最適に運航させることが重要ですが、地上における要救助者捜索においては、航空機の騒音が妨げになることがあり、サイレントタイムという周辺空域を飛行禁止にする措置が取られることがあります。
情報共有技術と低騒音運航技術により、サイレントタイムの空域を最小限にかつ動的に管理することが可能になります。
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