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【スポーツ】

<首都スポ>両打ちゴルファー 栃木の超異色スター候補生・高橋慧

2015年9月10日 紙面から

双子のゴルファー登場!? ではなく、高橋慧の左打ちと右打ちのスイングを組み合わせた写真=宇都宮市のケントスGCで(斉藤直己撮影)

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 左右両打ちでプレーする衝撃の「スイッチゴルファー」が登場した。新潟・開志学園高3年の高橋慧(けい、17)=栃木県さくら市在住=は、世界的にも極めて珍しい両打ちを武器にトップジュニアへ駆け上がってきた。「誰にもまねできないスタイルで、強い選手を目指したい」という超異色のスター候補生。唯一無二の両打ちに挑戦する思いに迫った。 (松岡祐司)

 パットやグリーン回りの小技だけ普段とは逆で打つプレーヤーはまれにいるが、長距離のショットまで左右で打ち分ける選手は世界でも例がない。「日本や世界でもこういった選手はいない。初めて見る人はまず驚きます」。そう言って、高橋は屈託なく笑い、少し胸を張った。

 小学2年でゴルフを始めたときは右打ちだった。1年もたたないうちにトップアマの父・良実さんから左打ち用のクラブも手渡され、「人が絶対にまねできないことをやってみよう」と両打ちの挑戦は始まった。

 学校が終わると、良実さんの職場の駐車場に特設された打撃ゲージに直行した。座布団を敷き、膝立ちの状態でクラブを握り、一日に左右合わせて2000球打った。両打ちのため、その練習量は2人分。帰宅するのは、いつも午後9、10時だった。

 「人と同じ練習量だったら、自分は人の半分しか練習していないことと同じになってしまう。だから、他の人よりも練習しないといけない。右はタイガー・ウッズ、左はフィル・ミケルソンに勝とうというのが当時のテーマでした。大変だけど、うまくなりたい、強くなってやるという気持ちだけで続けていました」

 左右で特長は異なり、ドライバーの飛距離では290ヤードの右に対し、左は270ヤード強とやや落ちるが、「右よりラインが出る」という精度では左が上。右は9番アイアン、左は8番アイアンが得意で、「どちらもよく使う番手なので、うまく使い分けられてちょうどいい」

 いまは14本のクラブのうち、左打ち用として6番、8番、ピッチングウエッジの3本を使用。自宅には左右それぞれ2セットのアイアンが用意され、左右の調子によってクラブの構成を変えることも可能といい、「(左右で)調子の違いはあります。どっちも調子が良いときもあるけど、どっちも調子が悪くなることはほとんどないので、(左右で)調子が良いクラブを使うことができます」と、“スイッチ”できる自らの特性を明かした。

 林に打ち込んでしまった場合でも、「木の真後ろに球がつかなければ右でも左でも打てる」というメリットがある。「左右ともに打てれば、体を壊しにくく、バランスも良くなる」という効果もある。左右の技術を磨き上げ、調子や状況によって打ち分けられれば、両打ちは最高の武器にほかならない。世界で誰も体得していない、前人未到のチャレンジだ。オンリーワンへの強いこだわりこそが、高橋の最大の原動力と言っていい。

 「うまい選手はいっぱいいます。強い選手もいっぱいいます。そんな中で、人にはまねできない、人とはまったく違うスタイルで自分は強くなりたいんです。話題にもなるし、自分だけが目立つこともできると思うんです。本当は1日目は左、2日目は右で−とやりたいけど、いまは左の飛距離がまだまだなので、現実的には厳しい。でも、やってみたい気持ちはあります」

 もっとも、両打ちという話題性だけではない。今年7月には国内アマチュア最高峰の大会「日本アマ」(マッチプレー方式)でベスト64に勝ち残り、世界ジュニア(米国・サンディエゴ周辺コース)に日本代表として出場した。同月の日本男子ツアー「ダンロップ・スリクソン福島オープン」には、アマ予選会でトップとなって初のプロツアー出場を果たした。夢に向かう第一歩は、すでに踏み出している。

 「今年のQT(来季のツアー出場資格を争う予選会)で上位に入って来年はツアーに出たい。近い将来、両打ちで賞金王になりたいです。いま、一番の目標は松山英樹選手。厳しい現実もあるけど、松山選手に近づけたらいいなあと思っています」

 世界で唯一、高橋慧にだけに与えられ、育んできた「スイッチゴルファー」としての挑戦。たとえ、夢物語と言われてもいい。誰よりも高橋慧だけは、本気で目指している。

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