国立大・文系廃止通知:下村文科相「見直し求めた」と釈明
毎日新聞 2015年09月11日 20時03分
◇「誤解を与える表現だった」とも
国立大学に文系学部の改組や廃止を求めた文部科学省の通知で、下村博文文科相は11日、閣議後の記者会見で、人文社会科学系については廃止ではなく見直しを求めたものだったとして「誤解を与える表現だった」と釈明した。通知に対し学術界から「文系軽視か」と批判が出るなど波紋が広がる中、文科省は火消しに躍起だが、通知の見直しや撤回は予定していない。
通知は文科相名で6月に出された。各大学が作成する2016年度から6年間の業務運営計画の基になるもので「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については(中略)組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」ことを求めた。
これに対し、日本学術会議は7月、「人文・社会科学の軽視は大学教育全体を底の浅いものにしかねない」と批判する声明を出した。大学改革が政府の成長戦略に位置づけられたこともあり、有識者らから「実学重視」の流れを警戒する声が強まると、経団連は今月9日、文科省の通知について「即戦力を求める産業界の意向を受けたものであるとの見方があるが、産業界の求める人材像はその対極にある」との文書を出した。
下村文科相は11日の会見で「人文社会科学系は廃止ではなく、見直しが必要ではないかというのが通知の本来の趣旨だった」と述べ、「廃止」対象は教員養成系だと説明。特に教員免許取得を卒業条件としない「新課程」(いわゆるゼロ免課程)について、少子化に伴い教員数が減っているため「廃止は当然のこと」と強調した。
通知の文章について下村文科相は「一字一句私が全部チェックしているわけではない」と弁明した。【三木陽介】