「中国は敵を作らず、対外平和を求める国家である。習近平が『中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張はしない』と強調したが、これは外交辞令などではなく、中国人の対外(外交)の知恵である」
「中国の国際民主への渇望とは覇権を強奪するものではない、また中国人も自国が新たな帝国になることを望んでいない」
中国政府は事前から軍事パレードの目的を「平和維持」だと繰り返したが、好戦的な中国が平和を連発するその変貌ぶりは、むしろ違和感さえ覚えさせるものでもあった。
国際社会での孤立を怖れた?
“中国の強気”の後退
一方、同社説は日米牽制も忘れていなかったが、その一文は次のようなものだった。
「米日が中国に圧力をかけ利益の最大化を実現させている、これは打ち破るべき虚偽である。平和と安定は事実に基づいて真実を求めるものでなければならない」
中国語による2700字の原稿中、わずか79字にとどまるものである。
上海市民もその変化を敏感に感じ取っていた。民間企業に勤務する会社員の女性は「軍事パレード開催時に行われた習近平国家主席の重要演説からは、日本への恨みや憎しみが薄れたことを感じさせる。メディアも民衆に対し扇動的な記事を書かなくなった」と話す。
確かに重要演説は「抗日戦争」というキーワードがちりばめられていたものの、現在の日本を名指しで批判する箇所はない。中国政府は、9月3日に北京で開催される記念式典について「現在の日本や日本人に向けられたものではない」と繰り返していたが、軍事パレードそのものは、むしろ習近平が政権基盤を固めるための国民向け政治ショーだったということだ。
そこから読み取れるのは“中国の強気”の後退である。日中関係を注視する中国人識者は次のように語っている。
「天津の爆発事故など国内問題は山積みだ。軍事パレードには“朋友”のはずの欧州首脳陣が欠席したが、このままでは国際社会での孤立は免れない。株価暴落や日本企業の中国離れなど、経済成長の鈍化とともに中国が失う求心力、こうした複数の要素が指導部を変化させた可能性は十分にある」