韓国南部の済州道にある楸子島沖で釣り船「トルゴレ号」が転覆した事故で、済州海洋警備安全本部は事故から4日たった9日、船体を引き揚げ、楸子島の新陽港に移したが、船室から行方不明者8人は見つからなかった。船体は一部が破損していた。
引き揚げ作業は150トン級のクレーン船を使って行われた。トルゴレ号の船体は前方と側面の塗料が剥がれ、穴が開いた部分もあった。また、後方の一部は破損していた。海洋警察は「破損部分が事故の衝撃によるものか、漂流過程や引き揚げ過程で生じたものかについては調査が必要だ」と説明した。
海洋警察は船体に違法な改造がないかどうかや外部からの衝撃の痕跡、エンジンなどに対する調査を開始した。船体が引き揚げられたことで、岩や網などに衝突したのか、悪天候による高波を受けたのかなど、事故原因は近く判明するとみられる。
一方、トルゴレ号の正確な乗船名簿が作成されなかった経緯や実際の乗船者を確認する作業は難航している。トルゴレ号が出港前に提出した乗船名簿には22人が記載されている。しかし、名簿にある4人は実際には乗船しておらず、名簿にない3人が乗船していたことが判明した。
海洋警察は実際には死者10人、生存者3人、行方不明者8人の計21人が乗船していたとみている。海洋警察は乗船名簿を作成したとされる船長の妻(42)を取り調べたが、「夫が言う通りに記載しただけで、詳しいことは知らない」と話しているという。
海洋警察は入院中の生存者3人が集中治療室から出た段階で事情を聴く方針だが、回復が予想よりも遅れている。海洋警察はこれまでの捜索に成果がなかったため、捜索範囲を済州島と全羅南道沿岸まで広げ、日本側に流された可能性もあるとして、日本の海上保安庁にも協力を要請した。
一方、死者の死因をめぐり、海洋警察と遺族が対立している。遺族は「救命胴衣を着用していなかっためにおぼれ死んだのではなく、捜索作業が遅れたため、低体温症で死亡した可能性が高い」と主張している。遺族や行方不明者家族は事故対策本部がある済州海洋警備安全本部を訪れ、抗議を行うことにしている。