五輪エンブレム選考の不可解さ
デザイナーの佐野研二郎氏(43)が制作した2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムが撤回された問題で、大会組織委員会は都内で9日、新エンブレムを選定するための2つの外部有識者組織「準備会」、「エンブレム委員会」(いずれも仮称)を発足させることを発表した。
来週中にも創設するという「準備会」は、座長に「さまざまな分野に見識の深い人間」を据え、旧エンブレム選考過程の問題点の検証や新エンブレム選定の基本方針などを定める。そして、「エンブレム委員会」のメンバーを決める。「委員会」は理事会の承認を経て発足し、応募要項から選考に携わるという。
実は、この会見で発表されたのは、これだけだった。具体的な情報量が乏しく、不可解な点ばかりが気になった。
まずは、「準備会」と「委員会」という2つの組織を発足させる理由が判然としない。組織委は「より開かれた透明性の高い形で、広く支持されるエンブレムを作るため」と繰り返し主張したが、果たしてそうだろうか。準備会については「会合は2、3回を要する可能性がある」としており、その後「委員会」を作るまで、どれだけ時間を要するか不透明だ。
そうなると、エンブレム選定は一体いつになるのか。1日の撤回会見では、武藤敏郎事務総長(72)が「できるだけ早く、新たなエンブレムを決定したい」などと話していたが、その説明と矛盾しているのではないか。これが本当に「国民に広く支持される」選定方法なのだろうか。
組織委は、新たに発足する2つの外部有識者組織の人数、メンバーの条件、それぞれの役割分担を明確にしないどころか、エンブレム選定の期限も決めていない。記者に問われると、「準備会が決める」の一点張り。そこには、早くも“丸投げ感”が漂った。たまらず「このようなアバウトなミッションで大丈夫か」、「このグダグダ感が、世の中に受け入れられていないのでは」とたしなめる記者もいた。
またこの日、佐野氏が制作したエンブレムが、理事会の承認を得ていなかったことも判明。組織委は「理事に報告はした」というが、今回の新エンブレムに関して「なぜ、理事会の承認を得ることにしたのか」という問いには「今の段階では答えられない」と回答を避けた。
新国立競技場に続き、五輪エンブレムまで白紙撤回となった非常事態において、決定事項を早く発表することは、確かに大事なことだ。ただ、今回の会見は、あまりに拙速で、新たな不安が募るばかりだった。
コラムランチ