急伸中の「クラウドファンディング」市場で注目は“貸付型”

「ソーシャルレンディング」と呼ばれる貸付型のクラウドファンディング市場が急伸している。矢野経済研究所が先月(2015年8月)28日に発表した調査結果によると、国内クラウドファンディングの2014年度市場規模が前年比6割近い成長を遂げるなか、ソーシャルレンディングがその8割を占め156億円となっていた。

2014年度の市場規模は6割増の200億円弱に

2014年度の市場は貸付型(ソーシャルレンディング)が約8割を占める(矢野経済研究所
 不特定の人から事業などの資金を募るクラウドファンディングは、矢野経済研究所の調べによると専業事業者だけで40社近くあるとみられ、2014年度の市場規模は197億1200万円にのぼるとみている。
 
 その形態は4つあり、「READYFOR?(レディーフォー)」や「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」などで注目を集める「購入型」をはじめ、「寄付型」「投資型(ファンド型)」「貸付型(ソーシャルレンディング)」がある。
 
 市場規模では、購入型が約20億円で、投資型(ファンド型)の約19億円が続き、もっとも市場が小さかったのが寄付型の市場が約1億円だった。
 
 一方、群を抜いて規模が大きいのは、貸付型(ソーシャルレンディング)の約156億円だ。市場全体の約8割を占める。

貸付型の「ソーシャルレンディング」とは?

SBIソーシャルレンディングは「個人が主役となる新しい金融マーケット」と説明する
 貸付型のクラウドファンディングである「ソーシャルレンディング」は、お金を借りたい人と、貸したい(投資したい)人をインターネットで結ぶサービスだ。
 
 SBIソーシャルレンディング(東京都港区)によると、ネットを使うことでコストが抑えられるという特徴を持ち、通常の借入や貸付事業に比べて仕組み上のメリットもあるという。そのため、「借手には低金利、投資家には高利回りという形で利益を大きく還元する事ができる可能性がある」という。
 
 2005年に開始した英ZOPAや同06年の米Prosperなどがその源流とみられる。
 
 日本初のソーシャルレンディングだというmaneo(マネオ、東京都千代田区)によると、「投資した資金が何に使われ、どのように役立つのかの実感が持てること」や「少額かつ短期での資産運用が可能」な点を特徴としている。

「クラウドファンディングと類似のビジネスモデル」

募集案件の一例(maneoより
 ソーシャルレンディングによる投資案件の一例をあげると、現在maneoで募集中の「不動産担保付きローンファンド141号」の場合、売上高500億円超のパチンコチェーンである「事業者M」の運転資金として3000万円の投資を募っている。8月31日現在で1600万円超が集まっており、1人当たりの平均投資額は31万円ほどだ。
 
 投資する側は、ここに7万円を投資した場合、11カ月後には税引前収益が3957円となる。なお、借り手側である事業者Mは、土地や建物を担保に入れているため「安全性に配慮した投資案件」(maneo)という形で紹介されている。
 
 購入型にように、人とプロジェクトをつなげるというよりは、投資的な色合いが強く、「クラウドファンディングと類似のビジネスモデルで資金貸付を行う」(矢野経済)ものといえる。

2015年度は44%増の283億超の市場規模

 矢野経済研究所によると、国内クラウドファンディングの市場については、来年2015年度は前年度比で43.9%増の283億7300万円と見込んでおり、「株式型の法整備が進展していることから、今後はネット証券の参入の可能性もあり、さらに市場規模は拡大する」と予測している。
 
【写真上】日本初のソーシャルレンディングだという「maneo(マネオ)」のWebサイト

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