WEDGE REPORT

人口減少、少子高齢化に対応ドイツ、難民開放政策の背景

佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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強まる日本への圧力

 EU欧州委員会のユンケル委員長は9日、「見て見ぬふりをするのは欧州のやり方ではない」として難民を加盟国で分担することをあらためて提案した。これまでと合わせ、分担する難民は16万人。ドイツ(3万1443人)、フランス(2万4031人)などと具体的な数字も示した。英国はこの割り当て制に参加しないが、5年間で2万人を受け入れる。

 この分担義務化は14日の緊急内相会議で議論されるが、紛糾するのは必至だ。ハンガリーなど東欧諸国やバルト諸国が猛反発しているからだ。難民の流入防止のためセルビアとの国境に壁を建設中のハンガリーや、スロバキアは高い失業率、経済の低迷にあえいでおり、これ以上の負担は避けたいという立場だ。スロバキアは「少数は受け入れるが、キリスト教徒に限る」とイスラム教徒を忌避し、文明の衝突も恐れている。

 こうした中で世界各国から難民の一部を受け入れようという動きが急速に広がってきた。オーストラリアが1万2000人の受け入れを表明したのをはじめ、ブラジルやアルゼンチンなども前向きな姿勢を示し、米国、カナダも受入数を増やす考えだ。国連は日本にも受け入れを要請しており、今後日本に対する圧力が強まるのは間違いない。

 日本は昨年5000人の難民申請に対して認めたのはわずか11人。うちシリア人は3人だ。難民に対して極めて厳しい姿勢だが、政府は住宅、教育、保険、子供対策といった日本の得意分野で貢献していくとするだけで、受け入れに慎重な方針を変えていない。日本も人口減少、少子高齢化社会。ドイツのしたたかな考えを取り入れる時かもしれない。

  


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星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

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