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改正労働者派遣法成立 衆院本会議で成立
9月11日 12時29分

改正労働者派遣法成立 衆院本会議で成立
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今の国会の焦点の1つである改正労働者派遣法は、11日の衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決され、成立しました。
改正労働者派遣法は、一部の業務を除き、現在は最長で3年までとなっている派遣期間の制限を撤廃する一方で、1人の派遣労働者が、同じ部署で働ける期間を3年に制限するなどとしたものです。
また、労働者の雇用の安定を図るため、派遣会社に対し、派遣期間が上限の3年に達した労働者を直接雇用するよう、派遣先に依頼することや、正社員に採用されなかった場合でも、新しい仕事を紹介することを義務づけています。
改正法は、審議の遅れを踏まえ、今月1日となっていた施行日を今月30日に先延ばしするなどの修正を加えて、参議院で可決されたことから、衆議院に送り返されていました。
そして、11日開かれた衆議院本会議で、採決が行われ、自民・公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決され、成立しました。

改正労働者派遣法の詳細

労働者派遣法は、昭和60年に、13の業務に限定して制定されて以来、改正のたびに対象が拡大され、平成11年に原則、自由化されました。
現行では、「通訳」や「ソフトウエア開発」、「財務処理」といった専門性が高いとされる26の業務では、派遣労働者が、同じ部署で働くことができる期間に制限はなく、これ以外の業務は、派遣期間は原則1年、最長でも3年までとなっています。
今回の改正では、この「専門26業務」を廃止し、派遣期間の制限を撤廃する一方、1人の派遣労働者が同じ部署で働ける期間を3年に制限します。
一方で、改正法には、労働者の雇用安定措置も盛り込まれており、派遣会社に対し、派遣期間が上限の3年に達した労働者を、直接雇用するよう、派遣先に依頼することや、正社員に採用されなかった場合でも、新しい仕事を紹介することを義務づけています。
さらに、派遣会社に、計画的な教育訓練を行うことを義務づけているほか、悪質な業者を排除するため、すべての派遣事業を厚生労働大臣による「許可制」にするとしています。
改正法について、厚生労働省は、「派遣労働者のキャリアアップを図るとともに正社員への道を開くものだ」としていますが、労働組合などは、「3年ごとに派遣労働者を入れ替えれば、何年でも同じ業務を任せることが可能で、派遣労働の固定化につながる」などと批判しています。

 

「専門26業務」とは

(1)ソフトウエア開発、(2)機械設計、(3)放送機器等操作、(4)放送番組等演出、(5)事務用機器操作、(6)通訳、翻訳、速記、(7)秘書、(8)ファイリング、(9)調査、(10)財務処理、(11)取引文書作成、(12)デモンストレーション、(13)添乗、(14)建築物清掃、(15)建築設備運転、点検、整備、(16)案内・受付、駐車場管理等、(17)研究開発、(18)事業の実施体制の企画、立案、(19)書籍等の制作・編集、(20)広告デザイン、(21)インテリアコーディネーター、(22)アナウンサー、(23)OAインストラクション、(24)テレマーケティングの営業、(25)セールスエンジニアの営業、金融商品の営業、(26)放送番組等における大道具・小道具  

改正労働者派遣法 審議の経緯

改正労働者派遣法は、これまで、2回、廃案になっています。
最初に国会に提出されたのは、去年3月でした。
しかし、罰則を定めた条文の中で、「1年以下の懲役」とするべきところが「1年以上の懲役」となっていることが発覚し、審議に入ることなく、廃案となります。
その後、政府は条文を訂正して、去年9月、改めて臨時国会に提出し、衆議院で審議入りしましたが、採決には至らず、衆議院の解散にともなって再び廃案となります。
また、ことし1月、担当の厚生労働省の課長が人材派遣会社でつくる団体の会合で、「これまで派遣労働は、期間が来たら使い捨てでモノ扱いだった」と発言していたことが明らかになり、塩崎厚生労働大臣が陳謝する事態となりました。
こうしたなか、政府は、今の国会での成立を期して、ことし3月、改正案を閣議で決定し、みたび国会に提出し、6月に衆議院を通過し、参議院に送られました。
ただ、安全保障関連法案を巡る与野党の対立や、年金情報の流出問題などの影響もあって審議は遅れ、改正案の施行日だった今月1日をすぎても参議院で審議が続く、異例の事態となっていました。

法改正後の動き

法改正とあわせて、参議院では、民主党などの主張を踏まえ、派遣は臨時的、一時的なものという基本原則のもと労働者の正社員化に向けた取り組みを講じることや、悪質な派遣会社は許可の取り消しを含め処分を徹底すること、さらに派遣会社が得る料金と労働者の賃金の差額の割合に関する規制の在り方を検討することなど39項目に上る付帯決議が可決されました。
厚生労働省は、今後、こうした付帯決議の内容も踏まえつつ、今月30日の改正法の施行に必要な政省令の取りまとめを急ぐとともに、派遣会社などを対象に説明会を開くなどして、周知をはかることにしています。
ただ、今月30日まで、残された時間が限られていることから、派遣会社などからは、現場で混乱が起きないか懸念する声も出ています。

改正労働者派遣法には懸念の声も

労働者派遣法の改正には労働組合などから派遣労働者の雇用がさらに不安定になると懸念する声も上がっています。
今は、一部の業務を除き、1つの業務で企業が派遣労働者を受け入れられるのは最長でも3年とされていますが、改正労働者派遣法ではその制限が撤廃され、労働組合などに意見を聞いたうえで人を入れ替えれば、何年でも派遣に業務を任せられるようになります。
このため労働組合などは派遣労働が固定化して正社員のポストが減り、低賃金の非正規雇用が増えると主張しています。
また、これまで秘書や通訳などの26種類の専門業務は派遣期間の制限がなく、同じ職場で働き続けられましたが、改正法では3年で職場を変わらなければならなくなるため雇用がさらに不安定になるおそれがあるとしています。
一方、政府は、派遣会社に対して派遣労働者を派遣先の企業に直接、雇用するよう依頼したり、新たな派遣先を紹介したりすることなどを義務づけており、雇用は安定するとしています。
また、派遣会社を許可制にして派遣労働者に教育訓練を行うことも義務づけているためキャリアアップが図られ、希望する人には正社員の道が開かれるなど待遇改善に結びつくとしています。

連合「法律制定以来の大改悪」

連合は、「派遣労働者の低処遇をそのまま放置し、常態的な間接雇用を導入するもので、法律の制定以来の大改悪と言える。極めて短い周知期間しか置かずに改正法を施行することで、派遣労働者に不利益を招くようなことは絶対にあってはならず、厚生労働省に対し責任を持った万全の対策を講じるよう強く求める」とするコメントを出しました。

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