切り貼りデジカメ実験室
FUJINON 13mm F1.1をPENTAX Q-S1に装着
8mmムービーカメラから超大口径レンズを移植
Reported by 糸崎公朗(2015/9/11 09:00)
フジカ シングル-8の超大口径レンズがデジタルで蘇る
中古カメラ店のジャンクコーナーで「フジカ シングル-8 AX100」というカメラを手に入れた。シングル-8 AX100は1973年に富士フイルムから発売された、8mmカメラだ。8mmカメラとは、8mmフィルムを使って、映画を撮るカメラだ。
映画の規格はフィルムの幅によって70mm、35mm、16mmとあって最も小型なのが8mmだ。ホームビデオが普及し始める昭和の終わり頃までは、アマチュア用ムービーは8mmが主流だった。富士フイルムは1965年に8mmフィルムを独自規格のマガジンに入れた「シングル-8」システムを開発し、フィルム、カメラ、映写機などさまざまに商品展開していた。
そして、1973年に発売されたのがAX100なのだが、このカメラはなんと、「FUJINON 13mm F1.1」という超大口径レンズを搭載しているのだ。F1.1クラスの超大口径レンズは、どのメーカー製も最高性能を誇り、非常に高価だ。しかしAX100はあくまで初心者向けの簡単カメラなのである。当時の値段を調べると2万2,600円とあって、同時代の普及タイプ35mmコンパクトカメラと同程度だ。
こんなクラスのカメラになぜF1.1の大口径レンズが搭載されているのか? 実はこのカメラは“暗さに強い”ことを最大の謳い文句にしていたのだ。同時発売されたISO200の高感度シングル-8フィルムをセットすれば、ろうそくの炎でも撮影が可能とされていた。
しかしあくまで初心者向け8mmカメラであるため、露出はオートのみで、ピントは固定である。つまりボタンを押すだけで誰でも簡単に撮影できるが、露出はおろかピント調整もできない。FUJINON 13mm F1.1は焦点距離が短いぶん被写界深度は深いだろうが、開放F1.1ともなればピントはそれなりにシビアになるはずだ。
しかし、そもそも画面サイズが小さい8mm映画は粒状性が悪く、またムービーはスチル写真ほどピンぼけが気にならないため、この仕様でOKと判断されたのだろう。
そのように一点豪華主義のAX100なのだが、その豪華すぎるレンズを現代のデジタルカメラに装着すると、どのような描写をするのか? を試してみたくなったのである。
幸いにもそのような実験にうってつけのカメラがあり、それが「PENTAX Q-S1」だ。このカメラはレンズ交換式ながら、1/1.7型という極小撮像センサーを採用しており、これがシングル-8の画面サイズ(5.79mm×4.01mm)と同クラスなのである。
というわけでAX100を分解してレンズを摘出し、PENTAX Q-S1に装着してその描写のポテンシャルを確認してみることにしたのだ。
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テスト撮影
テスト撮影は無限遠と至近距離の2種類で行ってみた。また参考として01 STANDARD PRIMEと05 TOY LENS TELEPHOTOとの比較もしてみた。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
実写結果とカメラの使用感
Qマウント改造FUJINON 13mm F1.1は、超大口径F1.1で絞りが無い! と言うヘンタイ的レンズとなった(笑)。この特性を活かすため、まずお盆で帰省した長野市の夜の街並みを撮ってみた。どの写真も三脚を使用せず、なおかつできるだけISO感度を上げすぎないように撮影している。
全体的にぼやっとして、光がにじんだような描写だが、拡大すると思いのほか細かいディテールが写っていてなかなか楽しい。また電車のヘッドライトが映り込んだ写真には、レンズの内面反射によるゴーストが派手に映り込み、面白い効果になった。
Q-S1は初めて使ってみたが、操作はしやすく説明書を見なくとも迷うことはない。Qマウント改造FUJINON 13mm F1.1はMF仕様のため、拡大機能を使って精密にピント合わせした。
次に、この改造レンズの最短撮影距離の短さを活かして、身近な花の撮影もしてみた。非常にクセのあるボケ味で、なかなか味わい深い写真になった。
F1.1固定のレンズだが、QS-1は最高1/8,000秒の電子シャッターを搭載しているため、薄曇り程度までなら適正露出を得ることができる。また、ピント合わせにはピーキング機能を利用してみたのだが、ピントの山がつかみやすくマクロ撮影にはこちらの方が便利だった。
2015年9月11日
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