内藤尚志、神山純一
2015年9月10日21時14分
日本郵政と、子会社2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)の株式上場が10日、東京証券取引所に承認され、上場予定日が11月4日と正式に決まった。郵政側は、投資ブームを生んだ1987年のNTT上場のように、個人投資家に買ってもらえると期待している。
郵政の株主である政府は1株あたりの価格について、郵政1350円、ゆうちょ1400円、かんぽ2150円と想定。時価総額は郵政約6・1兆円、ゆうちょ約5・2兆円、かんぽ約1・3兆円となる計算だ。投資家の意見を聞き、ゆうちょ株とかんぽ株は10月19日、郵政株は10月26日に売り出し時の価格を確定する。
上場先は、大企業中心の東証1部の見通し。各社の株式は11%ずつ計約1・4兆円分が売り出される。この8割は国内の投資家に買ってもらいたいという。初回の売り出し額は、NTTの約2・2兆円や、98年に上場したNTTドコモの約2・1兆円に次ぐ規模だ。
郵政側は、圧倒的な知名度から「個人投資家の関心が高い」(郵政幹部)とみる。上場する3社は8月に株式を30分割し、1株あたりの価格が下がるようにした。購入は100株単位からで、100万円以下が対象のNISA(少額投資非課税制度)も意識したとみられる。
さらに郵政は純利益の50%以上を株主への配当に回す方針も示している。ゆうちょも50%以上、かんぽは30~50%と高く、銀行預金の超低金利に不満を持つ人たちに、高利回りを狙える資産として提案できるとみる。「貯蓄から投資へ」を掲げる安倍政権の意向にも沿っている。
証券業界でも「投資未経験者を掘り起こす大チャンス」(大手幹部)との期待がふくらむ。ただ、ここに来て日本株市場は乱高下を繰り返している。そこに大量の株式を放出する形になり、市場では「需給に悪影響を与える可能性もある」(楽天証券の窪田真之氏)との懸念も出始めている。
政府は東日本大震災の復興資金を得るため、全株式を持つ郵政を2015年秋に上場させると決定。郵政は、ゆうちょとかんぽの株式売却益で政府から自社の株式を買い取り、政府に資金が入るようにする。22年度までにさらに2回ほど株式を売り出し、政府は計約4兆円を得る計画だ。(内藤尚志、神山純一)
■日本郵政グループの主な重点戦略
◎日本郵政 2016年3月期純利益見通し3700億円
・純利益の50%以上を株主に配当
【子会社】
◎日本郵便
・アジア中心に国際物流事業を展開
◎ゆうちょ銀行 同3200億円
・三井住友信託銀行、野村ホールディングスと投資信託会社設立へ
◎かんぽ生命保険 同840億円
・お年寄り向けの商品開発を強化
※日本郵便の純利益見通しは非開示
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〈郵政3社上場〉 政府は東日本大震災の復興資金を得るため、全株式を持つ日本郵政を2015年秋に上場させると決定。郵政の主要3子会社のうち、ゆうちょ銀行、かんぽ生命も同時に上場するが、日本郵便は非上場のままとする。郵政はゆうちょとかんぽの株式売却益で政府から自社の株式を買い取り、政府に資金が入るようにする。22年度までにさらに2回ほど株式を売り出し、政府は計約4兆円を得る計画だ。最終的には、政府は郵政株を3分の2弱、郵政はゆうちょ株とかんぽ株をそれぞれ5割程度まで手放す予定だ。
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